【浪志】迷い屋敷
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/14 23:25



■オープニング本文

 その家は、神楽の都の真ん中にあって、ひときわ異形な様相を呈していた。この百万都市の中心にあるその家は、巨大な廃墟だった。有力な氏族が住まいとしていたその邸宅は、いわゆる藩邸に近い機能を果たしていた。だが、氏族が衰退してしまうと邸宅は放置され、買い手のつかないまま家は荒廃して行った。やがて、その邸宅は「迷い屋敷」と呼ばれるようになり、誰がそんな名前をつけたのかも忘れ去られてしまった今、不気味な廃墟として人は近づかなくなってしまっていた……。

 迷い屋敷の中に入って行くと、入口には血が飛び散っており、視線を下に向けると凄惨なものが横たわっている。更に奥に進むと、あちこちに目を覆いたくなるような遺体が転がっている。そして、それを貪り食う者たち……。
「くくく……迷い屋敷とはよく言ったものだ。馬鹿な人間どもが誰もやってこない。食料を持ち込み自由じゃないか」
「全く、笑いが止まらんな。大都市の盲点。人間が多少消えたところで大した事件にもならない。ここは最高の狩り場だよ」
「だが、やり過ぎは禁物だ。それなりに用心して掛からないと。これからは下調べを十分に行って行動するようにしよう」
「都市の孤独な人間、寂しさを抱えたような、人の記憶には残らない、それでいて社会と関わりの薄い人間とか……」
「そうさなあ……次の獲物をどうするか……俺たちの正体に気付かれないようにしないとな……」
 闇の中で、アヤカシ達の笑声が響き渡る。

「迷い屋敷のアヤカシだったか――」
 邸宅の外で、チェン・リャン(iz0241)は、仲間のシノビが捉えたアヤカシ達の会話を伝え聞く。さらに陰陽師が人魂で内部の映像を捉える。
「役人たちの目を盗んで好き放題とはな。やってくれるじゃないか凶風連ども。さて……この一件、どうかたをつけるかな。奴らが次に動き出す前に勝負をかけたいところだが……」
 リャンは思考を巡らせると、仲間たちと開拓者ギルドの門を叩いた。

 ……東堂俊一(iz0236)は、さる男の訪問を受けていた。
「それで、屯所の設営準備は進んでいるのかね」
 男の問いに、東堂は頷き、口許に笑みを浮かべる。
「資金さえあれば屯所に改装できそうな物件が見つかりました。ご存知でしょうか? 例の、迷い屋敷ですよ」
「ああ――」
 男は驚いたように目を開いた。
「成程、あれは改装すれば確かに使えるかも知れんな。いわく付きの物件ではあるが」
「どうやら、アヤカシの巣になっているようですので、綺麗に掃除する必要がありそうですがね。遺体の供養も必要でしょう」
「それは、随分と物入りだろう」
「左様ですね」
 東堂が軽くお辞儀すると、男は傍らの千両箱の蓋を開けた。
 箱には黄金が詰まっている。
「浪志組には期待しているんだよ。私には何も出来ないが、受け取ってくれるかね」
「恐れ入ります」
「うむ。それではな。また近況報告をよろしく頼むよ」
 男が立ち去るのを、東堂は眼鏡の下に潜む氷のような眼差しで見送るのだった。


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
立風 双樹(ia0891
18歳・男・志
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
ウィンストン・エリニー(ib0024
45歳・男・騎
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰


■リプレイ本文

「さて、浪志組隊士としての初仕事どすが、何とも血なまぐさい仕事どすなぁ」
 と感想を云う華御院 鬨(ia0351)。鬨は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。
「いいか――」
 依頼主のチェン・リャン(iz0241)は、冷たい口調で言った。
「俺たちは世界のために血を流すことになるだろう。浪志組はもとより、必要とあらば流血もいとわない。正義のためであれば。朝廷の歴史にも影があるように、俺たちは綺麗事で片づけたりはしない」
「朝廷の歴史の影?」
 鬨は問い返した。
「そんなものあんさんが知っとると言うんどすか」
「華御院、お前が思っている以上に、俺は多くのことを学んだ。この世界には、朝廷に虐げられた人間もいると言うことを覚えておけ」
「何どすと? あんさんは朝廷に対して恨みでもあるんどすか」
「そんなことはどうでもいい。いずれ真実が分かる日が来る」
「…………」
 鬨は、チェンを見つめた。この男、何かを隠している? 一体何を……それは朝廷と関わりがあるのだろうか?
「今日のお仕事はフォロー、っと。逃げるアヤカシを倒すだけの簡単なお仕事、ってかっ」
 鴇ノ宮 風葉(ia0799)は言って、チェンを眼鏡の奥から覗き込んだ。
「あたしは浪士には参加しないよ。いい権限でもあるならともかく、世の為人の為なんてあたしの趣味じゃないってーのっ」
「風世花団の団長か。惜しいな……浪志組の趣旨には賛同できんか」
「あったり前でしょー! あたしの野望は仲間たちと世界征服なのよ! 警備隊よろしく神楽の都でちまちま巡回とかしてられないのよ。それに、あの謳い文句には正直納得が出来ないわ。いきなり浪人集団が世のため人のためって……神楽の都で武力を用いて捜査活動とか、退屈でしょ」
「浪志組の設立には、もう一つ目的がある」
「あ? あんですって?」
「名もなき浪人たちの集団でも、朝廷から認められれば、朝廷を中から変えていける。俺たちは、封印された暗い歴史の中で、苦しむ人々を救うために活動するために浪志組を作った」
「あ? 何言ってんのよ? 朝廷を内側から変えて行く? あんたら政に口を挟みたいわけ?」
「違う。帝には真実を明らかにし、その目で確かめてもらいたいものがある」
「あんた何考えてんの? 意味不明よ。浪志組は世のため人のために尽くすんでしょう? 私利私欲のために多くの人間を巻き込むつもり?」
 そこで立風 双樹(ia0891)が口を開いた。
「尽忠報国の志と大義を第一とし、天下万民の安寧のために己が武を振るうべし――東堂さんはそう言われましたよね? その言葉が真であると、僕は信じています。チェンさん、あなただってそうですよね?」
「もちろんだ。ただし、何が大義で、何が天下万民のためか――それを決めるのも俺たちだ」
「と、とにかく! 屯所の確保、とは責任重大ですね。とは言えこれも浪士組隊士としての業務の一貫。天下万民の安寧の為に尽力致しましょう。アヤカシ撃破のための作戦としては、前衛四人で手分けし、一人で一体を抑え込む間に遊撃のお二人が一体ずつ各個撃破――と言う流れでどうでしょうか」
「ああ――どうだコルリス」
 チェンは、コルリス・フェネストラ(ia9657)に言った。
「私は鴇ノ宮さんと組み、屋敷屋外からの支援射撃でアヤカシ退治を支援する事にします。鏡弦で敵位置を捕捉しつつ月涙による射撃を行い、屋敷の壁や柱などの構築物や、中で展開する皆様を『通過して』確実にアヤカシにのみ射撃ダメージが届く形で屋外から退治を支援します」
「そうか。華御院はどうだ」
「うちも立風はんの案でいいと思いやすが。うちらは屋内に入って一対一で戦う様にするのがええでしょう。あんさん達三人には屋敷から出てきたアヤカシを追撃してもらえればと思いやす。うちらが討ち漏らした際の保険どすな」
「何だと? 俺達に保険に回れと言うのか? 大した自信だな」
「あんさんらが過激な策に出るくらいならおとなしくしておいてもらった方が戦いやすいどすからなあ」
「ふん。言うじゃないか。それで――鴇ノ宮は」
「あたしはそれでいいと思うわよ。コルリスと遊撃的に動けばいいんでしょう。ただ、コルリス、さすがにこの屋敷は馬鹿でかいから、あたしと一緒に中に入りましょうよ。中も結構障害物だらけみたいだし」
「分かりました」
 そこで、ウィンストン・エリニー(ib0024)が言った。
「償いの衝動は抑えきれぬが故に、オレは存分に発揮しえるであろうこの浪志組――組織に参加を望むのであるな」
 頭を垂れる。
「宜しくお願いするのであるな、チェン」
「そうか、分かった。期待させてもらおう。俺たちの最初の仕事準備は進んでいる。大きな仕事だ。まず最初に、天儀の諸悪の根源を叩く。年明けまで待て。それが済んだら、俺たちの最初の目的のほとんどは達成されたも同然」
「ほう。大きな仕事か。それは楽しみであるな。ところで、今回は、浪志組の屯所設営用に場所を物色したらアヤカシ付の物件を見つけたのに相成ったのであろうか。しかしながら神楽の都に存ずる不審な輩を滅するのが浪志組ゆえ、ある意味好都合に値するものであろうか。ここで手柄を立てれば、参加の後押しとなろうものであるな」
 髭の奥でエリニーは笑う。
「エリニー、お前は前衛として立ってもらうが、構わないか」
「ああ、立風の作戦で良いと思うであるな。もちろん、建屋の中では状況次第で連携していく必要があるだろうが、前衛クラスで一対一で仕留めて行くのは、恐らくアヤカシ側も人間並みの知恵が回るなら、完璧に不意を突くのも難しいだろうから、そうなるであろうな」
「長谷部――」
 チェンの問いに、長谷部 円秀 (ib4529)は思案顔で顎をつまんだ。
「さて、隊士の端くれとして仕事しますか。拠点は必要ですしね。理想のための第一歩と行きましょう」
 それから、長谷部は言った。
「基本的には屋敷の制圧ですね。アヤカシも今後を考えればできる限り討ち果たして、人々に犠牲が出ないようにしたいですね。人を守らずに何のため力か――戦闘形式は前衛四人が屋敷に侵入してそれぞれ一体ずつ当り、後衛はその援護で。一対一ですし、早めに倒して手伝いに行きたい所ですね。――ええチェンさん。私も立風君の作戦で大丈夫だと思いますよ。後は、状況次第で臨機応変に」
「そうか……では、いいだろう。俺達は外を固めておこう、おとなしくな。お手並み拝見と行くか」
 チェンは言って、口許に笑みを浮かべて鬨を見やる。
 長谷部は「ごほん」と咳払いして、続けた。
「先ずは侵入ですが、コルリスさんが敵の位置を特定できればかなりやり易いですね。その位置まで進んで後はアヤカシを倒すだけですし。一応、罠や老朽化には気を付けるようにしましょう」
「任せて下さい。私の鏡弦は、瘴策結界や心眼より射程が長いですから、最初の攻撃くらいは不意をつけるかも知れません。せめて、アヤカシがまとまっていてくれたらやりようもあるのですが。チェンさん、アヤカシは間違いなく四体なのですよね」
「ああ。それは間違いない」
「では最初に周辺から鏡弦で細かく探査していきましょう。地道に走査すれば発見出来るかも。鴇ノ宮構いませんか」
「いいわよー」
 鴇ノ宮はコルリスに親指を立てて白い歯を見せる。
「よし、ではよろしく頼んだぞ。こっちは待機だな」
 チェンは言って、出入り口を固めに回る。
「それじゃあ、僕達も行きましょうか。コルリスさん宜しくお願いします」
 立風が言うと、コルリスは頷き、
「行きましょう」
 と、仲間たちと屋敷の敷地内へ入って行く――。

 コルリスが鏡弦で走査していくと、アヤカシのいる場所が明らかになって来る。
「中心から少し北東へ外れた場所ですね。ここから直線で距離約五、六十メートル。そこにアヤカシの反応があります」
「中の様子はここからでは分からないであるな……ここからは瘴策結界と心眼が頼りであろう」
 エリニーは、暗がりの中へ目を凝らす。
「向こうはまだ気付いていないはずどす……奇襲作戦で行きましょう」
「それでは、僕とエリニーさんで側面と背後に回ります。華御院さんと長谷部さんで正面を押さえてもらえますか。攻撃の合図は僕が声で合図します」
「了解しました。鴇ノ宮さん、コルリスさん、援護お願いしますね」
「まかしときー」
「では行きましょう――」
 開拓者たちは暗闇の中へ踏み出した。
 華御院と長谷部は距離を保ちつつ、ゆっくりと前進する。立風とエリニーは大きく迂回して、奇襲ポイントの側背へ回り込んでいく。
 やがて、不気味な低い咆哮と笑声が聞こえて来る。
「…………」
 立風は、地面に横たわる亡骸を見やり呼吸を整える。
「くくく……次の標的はどうするか? 場所を移して、都の北部まで足を伸ばして見るか?」
「そうだな……細く長く狩りを続けるには、こちらもそれなりに移動していった方がいいだろう」
「まだ人間どもには気付かれていない。そろそろ情報収集を……」
 目を凝らして見ると、アヤカシ達は浪人者のような姿をしており、異様な赤い瞳が暗闇の中で浮かび上がっていた。
 立風はもう一度呼吸を整えると、飛び込んだ。
「浪志組、御用改めです! 神楽の都に貴様らアヤカシの住まうべき場所なんか無い! 黄泉路に迷わず無に還れ――!」
 エリニー、鬨、長谷部らも加速する。
 アヤカシ達は仰天したように立ち上がると、呆気にとられたように開拓者たちを見つめる。
 立ちつくすアヤカシ達に開拓者たちは問答無用で切り掛かる。
 立風の連撃が切り裂き、エリニーの剣が貫通し、鬨のレイラが凄絶にアヤカシを切り裂き、長谷部の拳がアヤカシを吹き飛ばした。
「何だ……! 何でここに人間が……!」
「それはこっちの台詞だ凶風連! 世界一の大都市がお前たちの住処になっていることを、黙って見過ごすと思うか!」
 立風は刀身を押しつけた。
「おのれ……人間が……!」
 アヤカシは立風の剣を押し返す。
 と、次の瞬間――。
「貫!」
 コルリスの月涙による射撃が味方をすり抜けてアヤカシを貫通する。
 立風は裂帛の気合とともに剣を繰り出した。アヤカシの腕が飛ぶ。
 アヤカシは咆哮すると、逃走を試みるが、鴇ノ宮が立ち塞がる。
「そうはいかないっての! この魔物!」
 鴇ノ宮は白狐を連打する。白毛の九尾が二体召喚され、アヤカシに食らいつく。アヤカシは絶叫して、ずたずたに引き裂かれて、瘴気に還元した。
「まず一体!」
 立風はエリニーの方へ回る。
「エリニーさん!」
「やるな立風」
 エリニーは挑発でアヤカシを引き付けていた。と、エリニーは反撃に転じ、大剣を万力を込めてスイングした。受け止めたアヤカシの腕が吹き飛ぶ。
 逃げようとしたところへ、立風が立ちふさがる。
「おのれ……」
 アヤカシは歯ぎしりして、反転するとエリニーに突撃して来た。
「ぬう――!」
 ドン! とエリニーとアヤカシは激突した。エリニーの大剣がアヤカシを貫通していた。アヤカシは咆哮を上げて崩れ落ちて行くと、瘴気に還元した。
「折角やし、うちの舞でも見ていきなはれ」
 鬨は美しく舞うようにレイラでアヤカシを切り裂いていく。
 ――ザン! とアヤカシの首が飛ぶ。続く一撃にスキルを乗せて、鬨はアヤカシを両断した。
 長谷部は、追い詰めたアヤカシに絶破昇竜脚からの破軍重ねがけの一撃を叩き込む。青い閃光が龍のように走り、雷雲のような鳴き声を轟かせる。
 ブロックしたアヤカシの肉体が吹き飛ぶ。アヤカシは意味不明の咆哮を上げて、突撃して来るが、長谷部は投げ飛ばした。
 転がるアヤカシはそのまま逃げだしたが、
「翔!」
 コルリスの月涙+響鳴弓の合成射撃技に撃ち抜かれ、鴇ノ宮の白狐によって噛み殺された。
「終わりましたね……」
 立風は立ち尽くして、剣を収めた。
「チェンさんを呼んで来ましょう」
 それから、チェンがやってくる。
「終わったか。ご苦労さんだったな。これで、新たな屯所のめども立ったし、来年から浪志組も忙しくなるな」
 チェンは、言って遠くを見つめる。彼が見ているものは……。
 立風は怪訝そうな顔で、チェンを見つめる。チェンの瞳には、悲しみとも苦悩とも怒りともとれる憂いがあった。この男が感情を表わすのは珍しい、と思った。
「ここを駐屯所にするとは、幽霊でも出そうどすなぁ」
 鬨はそう感想を言った。天儀の世界で幽霊と言えばアヤカシだが……。

 後日――。
 チェンは奉行所に連絡し、遺体の回収を行う。亡骸は白装束で包まれ、修復されて遺族に引き渡されることになる。
「ひどい事件だったどすな……」
 鬨は、お祓いが済んで、解体されて行く迷い屋敷を見つめて、呟く。
「それにしても、凶風連……いつになったら掃討出来るんどすかな」
「そうですね……神楽の都は僕たちの町ですけど、いつの間にかアヤカシたちの入り込む危険な街になりつつありますね。そのためにも、浪志組が作られるわけですから、天下万民の安寧のために、僕は刀を振るいます」
 立風は言うと、決意を胸に、迷い屋敷を見つめる。
「ま、頑張んなさいよー! あたしゃ興味はないけど、別に応援してやんないわけじゃないからさー!」
 鴇ノ宮は言って、明るく元気に笑うと、立風の背中をばしばしと叩く。
「まーそれにしても、こうして屋敷が解体されてことが終わっても、犠牲者が帰って来るわけじゃないしねえ……感情としては複雑だわ」
「これで終わった……わけではありませんからね」
 コルリスは短く言った。彼女は多くは語らないが、仲間たちはそれを察した。事件に関わった者として、言葉には出来ない思いがある。
「俺は、亡くなった者たちのためにも、剣を振るおう。いつかこの町が平穏を取り戻す時まで。言葉で言うのは簡単だろうが、浪志組の道のりはこれからであろうからな。ささやかながらでも、俺なりに万民のために……」
 エリニーは言って、胸で十字架を切った。
 長谷部にも複雑な感情が胸の内にあったが、声に出しては自身を奮い立たせるように言う。
「今回の事件で、アヤカシを多少なりとも倒すことが出来ましたが、まだ凶風連はいるのでしょう。油断はできません。それに、蝮党のような連中がいつまたどこかに潜伏しているとも限りません。この都の百万都市の輝きが、敵にとっては憎しみの象徴であり、恐れているものなのです……私たちは負けるわけにはいきません――」
 かくして、浪志組の屯所へ大改築が始まる「迷い屋敷」を後に、開拓者たちは歩き出したのだった。