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■オープニング本文 天儀本島、理穴の国。 国土の東半分を魔の森に飲み込まれた、弓術士の国である。 国王自ら最前線に立って魔の森討伐に向かっているこの国でも、魔の森討伐に開拓者達の助力を求める声が上がっていた。 魔の森討伐に開拓者傭兵が狩り出され、国土の東方にある魔の森近郊では、激戦が繰り広げられていた‥‥。 ――傭兵を指揮するサムライの男、名を雷牙と言った、豪胆な巨漢である。先日は最南端の朱藩国で開拓者達とともに鬼アヤカシとの激戦を制し、魔の森の掃討に成功している。先日の成果を手に入れて、雷牙は五十人近い傭兵たちを率いて、今度は北の理穴国に姿を見せている。 氏族の長に過日の戦火を告げると、自らの傭兵たちを売り込んで、魔の森討伐に参加する。 「全く‥‥いい時代になったもんだな。刀一本で立身出世も夢じゃないぜ。俺はいつの日か、天儀最大の傭兵集団を組織して、この天儀に雷牙ありと知らしめてやるぜ」 雷牙は立ち向かってくる死人アヤカシを叩き切った。 現在雷牙たちは理穴国東部にて、魔の森を焼き払いながら、死人アヤカシの群れと激戦の最中にあった。 長い戦いで果てた人々の無念が渦巻いているようである。骸骨剣士、幽霊、人間のゾンビに狼ゾンビなど‥‥亡者の群れが続々と出現する。 確証は無いが魔の森の中ではアヤカシの力は増すという情報もあった。が、今のところこの死人アヤカシの群れの攻撃は散発的なもので、雷牙たちはその攻撃を粉砕していた。 戦闘隊形を組んでアヤカシを撃破しながら森を焼き払っていく傭兵たち。 と、その時である。森の木々の間から、巨大な影がゆらゆらと出現する。 「な、何だあれは?」 傭兵たちは巨大な影に警戒する。 巨人である。二メートルから三メートルはあるだろう、大きな刀とぼろぼろの鎧で武装した巨大な骸骨巨人である。それらが四方から迫ってくる。 「噂に聞いたことがある‥‥がしゃ髑髏って奴だな」 雷牙は傭兵たちに警戒を喚起する。 「骸骨巨人のアヤカシだ! パワーはそこいらの死人と比べ物にならんぞ! 集団で掛かれ!」 がしゃ髑髏は猛威を振るい、傭兵たちは吹っ飛ばされた。 それでも、がしゃ髑髏は少数、負傷しながらも傭兵たちは何とか骸骨巨人の攻撃を凌いだ。 更なる異変が訪れたのはそれから間もなくのことである。一体の幽霊が傭兵たちの至近に舞い降りて来たのである。その幽霊は、赤い光をまとっていて、立派な着物を着た男性の姿をしていた。そして、幽霊は人語を話した。 「ふっふっふ‥‥またしても人間どもがここまで来たか。無駄なことを繰り返すものよ。人間よ、我らは不滅の存在だぞ。我らを滅することなど、もはや人の手に到底届くものでは無いわ」 「な、何だ貴様は」 「お前達に死をもたらすものだ、クカカカ‥‥」 赤い幽霊は腕を一振りすると、傭兵の体がズバアアアアアアア! と切り裂かれた。 「ぐあああああああ!」 「な、何だこいつは!」 「クカカカカ‥‥ここまで来たことを後悔するがよい」 赤い幽霊が腕を一振りするたびに、周囲の傭兵たちは切り刻まれていく。 そして襲い掛かってくるがしゃ髑髏、死人アヤカシの群れ‥‥。 「いかん‥‥退け! 引き上げろ! 撤退するぞ!」 雷牙に言われるまでもなく、傭兵たちは逃げ出した。 ――神楽の都、開拓者ギルド。 「‥‥と、言うわけで、理穴の国の一角で、魔の森討伐が滞っているようです」 受付の青年は、理穴の国、魔の森討伐戦で起こった出来事を話して聞かせる。 無数の死人アヤカシのリーダーで、がしゃ髑髏を率いる強力な幽霊アヤカシが出現したと。 「傭兵たちは雑魚やがしゃ髑髏は何とか出来るようですが、この強力な幽霊アヤカシに一方的に打ち負かされました。幽霊アヤカシが使っているのは『無刃』と呼ばれるアヤカシの攻撃手段の一つで、離れた場所から思念によって相手を傷付けることが出来ます。傭兵が受けたダメージを見るに、かなりの使い手のようです。みなさんには、大目標としてこの幽霊アヤカシの撃破ないし撃退、次に死人アヤカシたちを撃退して魔の森を焼き払うことが求められます。敵は数が多いですし、森の中の戦いとなりますので、十分に気をつけて下さい。魔の森ではアヤカシの能力が上昇するという情報が寄せられています」 そう言って、受付の青年は神楽を出立する開拓者達を見送ったのである。 |
■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
青嵐(ia0508)
20歳・男・陰
那木 照日(ia0623)
16歳・男・サ
鬼啼里 鎮璃(ia0871)
18歳・男・志
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
紬 柳斎(ia1231)
27歳・女・サ
時任 一真(ia1316)
41歳・男・サ
海藤 篤(ia3561)
19歳・男・陰
佐竹 利実(ia4177)
23歳・男・志 |
■リプレイ本文 傭兵たちと開拓者達は魔の森に踏み込んだ、焼け崩れた木々を乗り越え、静寂の中を進む‥‥。 「‥‥噂じゃあ近々大きな戦いがあるそうだな。まあ俺も風の便りにしか聞いてはいないんだが。お前ら何か知っているか? 神楽に何か話が入っているとか」 傭兵たちの指揮官雷牙は、開拓者達に問いかける。 顔を見合わせ、肩をすくめる開拓者達。自分達も噂には聞いているが‥‥。 「俺たちも詳しいことは知らないんですよ。あくまで噂でしょう。まあどこから出た噂か知りませんがね」 佐竹利実(ia4177)は言って、逆に雷牙の経歴などを問いかけながら手帳にまとめていく。人脈作りも地道に、いずれこの男も天儀に名を響かせる日が来るかも知れない‥‥。 「今回も‥‥宜しくお願いします‥‥私も頑張りますから‥‥」 先の戦いで雷牙とともにアヤカシを撃退した那木照日(ia0623)。おどおどした人見知りの激しい女の子のような風貌の少年だが、侮るなかれ、腕は熟練の域に達している。 「おう、こちらこそ宜しくなあ。今回も期待しているぜえ」 ばしばしと照日の背中を叩く雷牙。鋭い目つきで森の中を見渡す。 「あの幽霊野郎‥‥一度は不意を食ったが、今度は仕留めてやるぞ」 「またよろしくね♪ あんたの指揮、頼りにしてるわよ」 言ったのはスリルを求める陰陽師の霧崎灯華(ia1054)。灯華も先の戦いで雷牙と矛を並べた。 「まあ万事任せろなどと気前のいいことを言うつもりはさらさら無いがね。お嬢ちゃんにも期待してるよ。最近の神楽の連中は見る間に実力をつけてるようだからなあ」 雷牙は思案顔で灯華を見やる。 「雷牙殿、魔の森ではアヤカシの動きが違うと聞き及びましたが‥‥その辺りはどうですか」 「ああ‥‥」 三笠三四郎(ia0163)の問いに雷牙は唸った。 「それは恐らく間違いないかも知れん‥‥雑魚の屍人や骸骨どもが森の外とは明らかに動きが違う。森の中ではアヤカシの力が増すのだろう」 「そうですか‥‥」 「斬り潰されるのと焼き尽くされるの、どちらがお好みで?」 突然、青嵐(ia0508)が天儀人形を撫でながら腹話術で声を出す。 「何だって?」 雷牙は怪訝な瞳で青嵐を見やるが、青嵐の表情は長い前髪で窺い知れない。青嵐は時折こっくりさんで意思を伝えることがあった。多分幽霊アヤカシへの決め台詞だろう。 雷牙は開拓者の意見を取り入れ、十個部隊に分けた傭兵たちを前方に展開させると、スクリーニングでアヤカシの接近に備える。 「それじゃ、俺も少し敵の動きを見てきます」 佐竹は仲間達にそう言うと、先行して森の奥に進む‥‥。 「気をつけて進みましょう」 傭兵の志士に呼びかける佐竹。目の前に死人アヤカシが徘徊している。 佐竹はざわりと鳥肌の立った肌をさすった。森の中には禍々しい気配が充満している。 「ここから先はアヤカシの領域と言うわけですか」 「あの赤い幽霊がどこから来るか分からんぞ。あの怪物、とんでもない攻撃力だからな」 見れば普通の幽霊も空中を漂って、つんざくような笑声を上げて耳障りだ。 「仲間達に注意を喚起しておきましょう。そろそろ敵の攻撃範囲に入りつつあると――」 先行する佐竹たちの話を聞いた雷牙は、傭兵たちに戦闘隊形を取らせる。 開拓者達は主にがしゃ髑髏やボスの赤い幽霊アヤカシを狙っていくことで一致している。 時任一真(ia1316)は無精ひげを撫でながら魔の森を見渡す。 「やれやれ、魔の森に踏み入るなんて怖い怖い。それでも逃げてばかりじゃそれこそ周りが魔の森だらけ、か。これも志体もちの因果、だね」 一見浪人崩れのサムライ一真は思案顔。腕は確かで他の面子に退けはとらない。 「幽霊に髑髏か。最近まともにアヤカシとはやりあっておらぬし、腕がなるな」 言ったのは小麦色の肌をした女サムライ。紬柳斎(ia1231)だ。 「さて‥‥ここまでは難なく通してもらえたが、例の赤い幽霊やがしゃ髑髏‥‥奥に進めば難敵が待ち構えているだろう。一気阿世に押し通るというわけにはいかん。そこでお前達を呼んだわけではあるが」 雷牙は開拓者達に目を向ける。 「強敵は拙者たち開拓者で引き受ける。雑魚どもを傭兵で片付けてもらおう」 柳斎の言葉に雷牙は頷く。 「妥当な選択ではあるな。だがあの首魁は強力だぞ。ただ闇雲に突進しても遠距離攻撃で蹴散らされるだろう」 「‥‥‥‥」 柳斎は思案顔で前方を見つめると、不意に表情を崩して豪快に笑った。 「我々は突き進むのみ。拙者たちが狙うは敵の首魁の首だ。雷牙、お前たちには道を整えてもらいたいね」 すると、雷牙は吐息して思案顔。 「気をつけて行け、およそ人外の魔物に人の戦の道理は通じんが、それだけにあの赤い幽霊は一体で一軍に匹敵するだろう」 「そのために神楽の開拓者を呼んだのだろう、雷牙」 柳斎は牙を剥くと、雷牙はかすかに笑みを浮かべる。 「では、頼んだぞ」 「ああ」 そして、雷牙は傭兵たちに突撃を命じる。 開拓者達も戦場に飛び込んだ。 ――傭兵たち、開拓者達は雑魚の死人アヤカシを蹴散らしながら歩を進めていく。 と、大きな影が幾つか出現する。 ‥‥オオオオオオオオオ‥‥オオオオオオオオ‥‥。 怨念の邪悪な声が森にこだまする。 ゆらり、と木の影から姿を見せたのはがしゃ髑髏たち。 巨体を揺らして進み出てくると、長大な剣を振るって木々をなぎ倒し、接近してくる。 「がしゃ髑髏に注意を払え!」 雷牙は亡者を真っ二つに切り裂き、傭兵たちの戦列を整える。 「こいつがしゃ髑髏ですか‥‥さて」 三四郎は刀を構えた。 がしゃ髑髏の強烈な一撃が繰り出されるが――。 開拓者たちの戦闘能力は傭兵たちの想像を遙かに越えるもの。 瞬く間にがしゃ髑髏を圧倒し、この骸骨巨人の腕や足が打ち砕かれる。 「さすがに‥‥尋常では無い連中が揃っているな‥‥近頃の神楽は」 雷牙は開拓者の戦いぶりを見て笑みを浮かべる。刀を振り上げて傭兵たちを鼓舞する。 「髑髏を打ち倒せ! 雑魚どもを一蹴するぞ!」 その時である、上空に赤い幽霊アヤカシが出現したのは。 「ふっふっふ‥‥愚かにもまた、まろの餌になりに来たか人間たちよ」 赤い幽霊はふわりと降り立つと、腕を一振りする。 ズバアアアアア! と傭兵の一人が木と一緒に切り裂かれた。幽霊アヤカシの攻撃「無刃」だ。 傭兵たちは後退し、開拓者達はお互いにサインを送ってこの幽霊に接近する。 木陰から飛び出した三四郎は疾風のように駆けると、幽霊の背後から刀を突き出した。実体が無いので手ごたえが無いが、赤い幽霊は驚いたように振り返る。 「風姫、対巨体様形態『天乃尾羽張』」 青嵐が幽霊の腕や目を狙って斬撃符を飛ばせば、カマイタチが刀を振り回しながら幽霊アヤカシを切り裂く。 「まろに痛打を加えるとは‥‥人間の力でまろを倒せるとでも?」 赤い幽霊は無刃で三四郎と青嵐を切り裂いた。ザクッと血しぶきが飛ぶ。 三四郎は後退し、青嵐も距離を保つ。 「ご挨拶、です‥‥」 照日は幽霊に駆け寄りながら地断撃を放った。大地を走る衝撃波が幽霊を直撃する。幽体の一部が飛び散って砕け散る。 「おのれ‥‥こしゃくな」 幽霊が腕を一振りして、無刃が照日を切り裂く。 その側面から鬼啼里鎮璃(ia0871)が槍を振りかざして突き入れる。 「ぐお!」 幽霊は飛んで後退する。 「逃がさないよ」 鬼啼里は槍をくるくると頭上で操りながら、さらに一撃突き入れた。 槍が幽霊を貫通し、幽霊は顔をしかめる。 「さあ、楽しい死舞を始めましょう」 接近した灯華は服に縫い付けた符を飛ばして斬撃符を叩き込む。真空波と化したカマイタチが幽霊を切り裂き、反撃の無刃が灯華を切り裂く。 ザン! と灯華の肌から血が飛ぶ。 「キャハハハ、流石に効くわね。でも、これでどうかしら?」 さらに一撃、斬撃符を叩き込む。 「貴様に似合いは地の獄よ! 二度と迷い出るな!」 柳斎は幽霊との間合いを詰めて大斧を一閃する。凄まじい一撃が幽霊の肉体を切り裂いた。幽体が砕けて消滅すると、このアヤカシは悲鳴のような絶叫を上げた。 「ぐあああああ! まろの‥‥まろの体が!」 「さっさと成仏するがいい、このアヤカシめ」 柳斎はさらに一撃、斧を頭上から振り下ろした。ザシュウウウ! と幽霊は切り裂かれて絶叫する。 「おのれ!」 無刃を連発する幽霊アヤカシ。さすがの柳斎の肉体が切り裂かれると、距離を取る。 さらに一真が突進。二天、直閃で幽霊に二刀を浴びせかける。 ザン! ザン! と幽霊が切り裂かれて悲鳴を上げる。 さらに海藤篤(ia3561)が呪縛符を飛ばすと、幽霊の周りに式が取り付いて動きを束縛する。海藤は幽霊の腕を止められないか試してみたが、反撃の無刃が飛んできた。 「止めることは出来ませんか‥‥ならば‥‥」 海藤は雷閃を飛ばして攻撃する。 佐竹は裂ぱくの気合いとともに刀を叩き込んで、一撃離脱。が反撃の無刃を食らって切り裂かれる。 「あ痛!」 佐竹は転がるようにして逃れる。 「ここは我らの世界‥‥人間どもがいかに集まってこようがここは取り戻せぬわ。もっとも‥‥まろを倒すことなど出来ようはずも無いがな」 幽霊アヤカシは上空に飛ぶと、開拓者たちの頭上から次々と無刃の雨を降らせる。 小さな鈴梅雛(ia0116)は傷つく仲間達を懸命に恋慈手で回復させる。 「長引くと、ひいなだけじゃ回復しきれないです」 「あなたは間もなく死すでしょう」 青嵐はそれでもこっくりさんで、上空に斬撃符を投げつける。カマイタチが赤い幽霊を切り裂く。 「飛ばれちゃあな‥‥どうにもならんねえ」 鬼啼里は弓に持ち替えて幽霊を狙う。 「残念、終演時間よ」 灯華は気力を使って攻撃力を上げると、雷閃を叩きつける。止めの一撃を――! 赤い雷が幽霊を打ち据えるが、ボスアヤカシは悲鳴を上げて墜落したものの、まだ生きている。 「まろは不滅なり!」 腕を振るって無刃で開拓者たちを切り裂く。 「何が! 逃がさんぞ!」 柳斎は短刀を投げつけて間合いを詰める。 幽霊は飛び上がって逃げる。 そこへ海藤が符を投げつけ、雷閃を叩きつける。 揺らぐ幽霊アヤカシに、一気怒涛に攻めかかる開拓者達――。 だがそれでも幽霊はかろうじて上空に舞い上がると、後退する。 「まろをここまで追い詰めるとは‥‥口惜しや‥‥この借りは必ず返させてもらうぞ。いずれ人間の血であがなってくれるわ」 赤い幽霊アヤカシは、そう捨て台詞を残すと、森の奥に飛び去ったのであった。 ‥‥ボスの幽霊アヤカシが戦線を離脱した後、開拓者と傭兵たちは雑魚敵を全滅させた。 「ひいなは、もう、限界です」 雛は練力を使い果たして泣きそうに言った。 「良く頑張ったな小さな巫女さん。戦いはもう終わりだぜ」 雷牙は戦場を見渡して雛の労を労った。アヤカシは跡形もなく消滅し、瘴気に還っている。 「さすがにあの幽霊は強力でしたが‥‥アヤカシの殲滅には成功したようですね」 三四郎は傷跡に手を当てながら仲間達を顧みる。 「貴方が思っているほど、世の中は澄んでいる訳じゃありません。だからこそ、良いのです」 青嵐は相変わらずこっくりさんで見えない方々と話していて、雷牙を困惑させた。 「何とか‥‥無事に終わったみたいで‥‥良かったです‥‥」 照日はおどおどしながら口もとを着物の袖で覆っていた。 「後はこの森を焼き払って、神楽へ帰るだけだねえ。とっとと終わらせようぜ」 鬼啼里は松明をかざして、周辺に目を向けていた。森は静かで、邪悪な気配は遠くに去っていた。完全に消えたわけではないが‥‥。 「お楽しみはこれからよ♪ ふっふっふ〜魔の森をじゃんじゃん燃やしちゃうわよ♪」 灯華は松明片手に喜色満面であった。 「天に人、地に花、人に愛。もっともこの森は人外の魔境だ、盛大に焼き払ってやろうぜ」 柳斎は言って、雷牙を顧みる。 「アヤカシを撃滅するには、何としても俺たちの結束が必要だろうがな。まあ俺は戦争屋だ、飯の種が今すぐなくなるのは正直困るが」 雷牙は唸りながらそう言って、腕組する。 「そうは言っても、アヤカシは強大です。いつの日か、平和な日々が来るのでしょうかねえ」 一真は無精ひげを撫でながらのんびりした口調で呟く。 「まあ、今はこれが私たちの精一杯ですから‥‥」 海藤は言って、瘴気の漂う森を見つめる。 「さあさ、始めるとしましょう。ここを焼き払って、ひとまず氏族の長に吉報を持って帰りましょう」 ‥‥正直平和とか民を守るとかどうでもいい佐竹であったが。油を撒いて火をつけていく。 傭兵たちもそれぞれ森に散って火を放っていく。 やがて、轟々とたけり狂う炎が魔の森に広がって焼き尽くしていく。 かくしてアヤカシの殲滅を成し遂げた開拓者達は、氏族の長に吉報を届けると、神楽の都への帰路に着くのであった。 |