【浪志】浪志組設立!
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/16 00:04



■オープニング本文

●浪志組
 尽忠報国の志と大義を第一とし、天下万民の安寧のために己が武を振るうべし――浪志隊設立の触れは、広く諸国に通達された。
 参加条件は極めて簡潔であり、志と実力が伴えばその他の条件は一切問わなないという。出自や職業は無論のこと、過去の罪には恩赦が与えられる。お家騒動に巻き込まれて追放されたり、裏家業に身を落としていたような、立身出世の道を断たれた者にさえチャンスがあるのだ。
「まずは、手早く隊士を募らねばなりません」
 東堂俊一(iz0236)は腕に覚えのある開拓者を募るよう指示を飛ばす。浪志組設立に必要な戦力を確保することを第一とし、そして――いや、ここに来てはもはや悩むまい。
 ――賽は投げられたのだ。

●諸国から集まりし者
 東堂の門下生であるチェン・リャン(iz0241)は、浪志組への参加を希望してきた浪人たちを別邸に集めていた。諸国から夢や野心を抱いて、神楽の都へ集まって来た者たちである。
「いいか! 聞け!」
 リャンは大声で浪人たちに呼び掛ける。
「浪志組は確かに広く門戸を開いているが、もちろん誰でもなれるわけじゃない! 聞いてはいると思うが、志と実力が伴わなければ受け入れることはできない! 逆に、それさえ認められれば我々は誰でも受け入れる用意がある!」
 そう言ってから、リャンは続けた。
「これより選抜試験を行う! 各自、それぞれの組に分かれて待機しろ! 呼ばれた組から模擬戦の展開予定地へ向かえ! 相手は俺や開拓者ギルドの腕利きだ! 手加減なしで行くからな! お前たちも全力でぶつかって来い! 以上だ――!」

●開拓者ギルド
 それからリャンは、ギルドを訪れた。開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)のもとを訪ねる。
「そこのあんた、橘はいるか――」
 リャンは、橘のアシスタントの佳織に声を掛けた。
「はい。何のご用でしょうか?」
「リャンが来たと伝えくれ。橘と直接話がしたい。依頼を頼みたい。浪志組の件だと伝えてくれ」
 佳織は数瞬考えてから、「お待ち下さい」と言ってカウンターを離れた。
「橘さん、リャンって人が浪志組の件で会いたいって来てますけど」
「あのチェン・リャンか?」
「そうだと思いますけど」
「ふーん‥‥」
 橘も浪志組の件は聞き及んでいた。開拓者の中にも、参加しようと動いている者たちがいることも。
「分かった」
 橘は言って、リャンのもとへ向かっていく。
「よおチェン、東堂はこんなでっかいことをやらかそうとしていたんだな。正直言って驚いたぜ。お前さんもそのために働いているんだろ」
「そんなところだ」
 言ってから、リャンは口許に笑みを浮かべた。
「そこでと言うわけじゃないが、人を集めに来た」
「浪志組にか」
「ああ。これから希望者を集めて選抜試験の模擬戦を行うんだが、開拓者にも声をかけに来た。まあ様子見でもいいから、浪志組に興味のある奴を集めてくれないか」
「なるほどねえ‥‥」
「この機会に、浪志組への参加希望者がいれば喜んで受け入れるつもりだ。それから――」
 リャンは橘を見やる。
「あんたにも協力してもらいたい」
「俺に何を」
「試験の対戦者として、相応の実力がある者が必要だろ。俺もその立場なんだがね」
「尽忠報国の志と大義を第一とし、天下万民の安寧のために己が武を振るうべし、か」
「そうだ。だから、ギルド屈指の剣客であるあんたには試験官を頼みたい」
「まあ構わねえけどな。大伴様が積極的に進めておられることでもあるしな。協力するにやぶさかじゃねえ」
「有り難い。では、開拓者の方も出来るだけ集めて来てくれ」
「分かった」
「よろしく頼む」
 そう言って、リャンは立ち去った。
「‥‥‥‥」
 橘はその背中を見やりつつ「さて」と吐息する。
「開拓者の連中がどこまで集まるかねえ。行きたい奴は自分から行くだろうしねえ」
 橘は席に戻ると、佳織に声を掛ける。
「佳織、依頼書を作ってくれないか。浪志組の選抜試験への参加希望者を募る内容で、試験に合格した者は正式に浪志組の隊士として迎え入れられる、と」
「私、浪志組の設立には賛成です」
「そうなんだ?」
「だって、最近の神楽の都は物騒な事件が多いですし、大伴様が憂慮されるのも分かります」
「まあ、発足したらしたで、運営して行くのは大変だと思うんだがねえ‥‥」
「依頼書、作りますね」
「よろしく」
 橘は、思案顔で瓦版に目を落とした。
 尽忠報国の志と大義を第一とし、天下万民の安寧のために己が武を振るうべし――。
「東堂俊一か‥‥奴は本物かね‥‥」


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
立風 双樹(ia0891
18歳・男・志
郁磨(ia9365
24歳・男・魔
ティンタジェル(ib3034
16歳・男・巫
鞍馬 涼子(ib5031
18歳・女・サ
九蔵 恵緒(ib6416
20歳・女・志
羽紫 稚空(ib6914
18歳・男・志
和亜伊(ib7459
36歳・男・砲


■リプレイ本文

 すでに数々の浪人たちが選抜試験で叩き落とされていた。恩赦の言葉につられて参加した者も多く、それだけで参加した中途半端な腕の持ち主たちはことごとくふるいに掛けられて行く。
 だが逆に、腕が達人級でなくとも、志の高い浪人たちは採用されていた。
 これは予想以上の狭き門であった。
 敗れ去った者は捨て台詞を残して会場を去って行く。
「け! 何が尽忠報国の志だ! そんなもので飯が食えるか! やってられるかよ!」
「ああ。こっちからお断りだぜ! 浪志組なんざ!」
 試験に落ちた者たちの罵声を、チェン・リャン(iz0241)が受け止める。
「喚くな。そう言う奴に用は無い。浪志組は質の高い人材を求めているんでな。お引き取り願おうか」
 そのリャンに痛めつけられた浪人たちは、恐れをなして後退する。
「お、お前、ちょっと腕が立つからって‥‥畜生! 覚えてろよ!」
 華御院 鬨(ia0351)はそんな様子を見ていて、橘鉄州斎(iz0008)に歩み寄る。
 鬨は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回はクール系の女重戦士を演じていた。
 鬨は選抜試験に合格するつもりで、浪志組参加を希望していた。今までに荒っぽい事をしてきた浪志を見ているので余り気がのらないが、外から何かをするよりも内から何かをした方がやりやすいので、浪志組に参加しようとする。
「橘さんと戦闘することになるとは思いやせんでした‥‥。橘さんも浪志組には賛成なんどすな‥‥」
 と何とも意味深に、橘の真意を探る様に、クールに挨拶をする。
「よお鬨。俺もお前さんと手合わせ出来るのを楽しみにしていたぜ? まあ、俺個人としては、東堂がどこまで本物なのか、確信は無いがね。差し当たり今は、大伴様の方針に従う。今回はおまけだがね」
「手加減はしまへん‥‥」
「おおっと、手加減して俺に勝とうとは、甘く見られちゃ困るねえ」
 橘も、そしてリャンもギルド屈指の凄腕だ。
「尽忠報国の志と大義を第一とし、天下万民の安寧のために己が武を振るうべし――もしそれが真に正しく果たされるなら、命だって惜しくありません。相手は天儀屈指の剣客たちですが、けれど万民を護ると己に誓うなら、退けない戦いは決して少なくはないでしょう。今は死命を賭して挑むのみですね」
 立風 双樹(ia0891)は言って、リャン達に挨拶する。
「よろしくお願いします」
「立風双樹か。浪志組には、大義がある。その大義を果たすために、自己を犠牲にしなくてはならない。この大義を果たすことこそ浪志組設立の目的だ。お前には大義を果たす覚悟があるか」
「はい。万民を守るための戦いに、僕は命を差し出します。これ以上、人々が傷つくことを見てはいられません。こんな血まみれの僕でも、役に立つなら、民のために剣を振るいたいと思います」
「そうか。楽しみにしているぞ」
 リャンは、立風の肩を叩いた。
「‥‥人を護れるなら、俺は浪士組でも何でもなりますよ」
 陽気に笑って言ったのは郁磨(ia9365)。
 楽観的で楽しければ何でも良い。争いは嫌いだが戦うのは好き。何時でものんびりな気分屋で偶に口が悪い腹黒。こんな郁磨であったが、浪志組への参加意欲は本物だった。
「‥‥近頃アヤカシや不逞浪士が活発化してますねぇ。故郷には幼子や老人しか居ないし、平穏が脅かされるのは御免だな‥‥。‥‥浪士組に入るっていうのも面白そうだし、久々に本気で戦おうかな(笑)」
「郁磨か、お前はどうだ。浪志隊の大義に賛同するか」
 リャンは戦う前に一人一人聞いて回っているようだった。
「‥‥大義かあ〜。もちろん、それに賛同する気がなかったら、ここへは来てませんよ。‥‥俺には俺なりに守りたいものがありますからね。争い事は好きじゃありません。でも、避けては通れない戦いがあることも分かっているつもりです‥‥。偉そうなことを言うつもりはありませんが、万民のために剣を振るうなら、俺は鬼にだってなるつもりです‥‥」
 郁磨の口調が感情を帯びる。リャンは黙然と頷いた。
「ふむ‥‥では本番ではよろしくな」
「転職仕立てなので、手加減して下さいね〜(へらり)」
「そうはいかん」
「とっきん、依頼では久しぶりだね〜。まさかこんな所で会えるなんて、意外だなあ。とっきんが浪志組に参加とはねえ〜」
「うちにも興味がありましてな‥‥」
「そうなんだ〜」
 ティンタジェル(ib3034)は浪志組への参加は迷っていたので今回は見送っていたが、興味はあった。
「今の僕の実力で、どの程度まで通用するのか‥‥全力で行かせて貰います!」
「ティンタジェルだったな。参加するつもりはないそうだな」
「正直まだ迷っています‥‥今は、心を決めることが出来なくて。私の力で大義を果たすことが叶うのか。私の力なんて、本当に大したことはありませんし‥‥とても万民を守るために、とは言えませんし‥‥」
「そうか。ならどうしてここへ来たんだ」
「それは‥‥」
「浪志組に惹かれるものがあったからだろう。大義を果たすこと、それに惹かれたのじゃないのか」
「それは何とも‥‥」
「答えが見つかったら、また来ると良い。今日はよろしく頼むぞ」
 鞍馬 涼子(ib5031)は、リャンに話しかけた。
「世のため、人のためか‥‥それはとても『良いこと』だな。浪志組の大義には賛同する。私は悪人を討ちたくて浪志組に参加を希望している」
「そうか。鞍馬、お前にも分かる時が来るだろう。この世には強大な悪がはびこってるんだ。浪志組はそんな悪とも対決せねばならない。それは、見逃されてきた悪であったり、逃げおおせた罪人たちであったり、浪志組は全ての悪を撲滅する。そのためには多くの力が必要だ」
「悪‥‥? リャン殿が言われる悪とは、何だ? その言い方だと、どうも抽象的で、何を差しているのか分からない。あいまいな言い方では、隊士たちの士気にも関わるぞ」
「今はまだいい。浪志組が動き出す時、大義を果たすために悪の芽は摘み取られるだろう」
「ふーむ。ま、いっか。では、お相手お願いする‥‥言う必要ないと思うが女だからといってなめるなよ?」
「それはない。本気で掛かって来るんだな」
 九蔵 恵緒(ib6416)は、ふわふわとリャンに近づいていく。
「浪志組、ね‥‥危ない所行くかなぁ? ふ‥‥ふふ」
「九蔵だな。浪志組は危険な仕事にも挑むことがあるだろう。楽しいぞ。少なくとも、退屈はせん。お前にも志はあるなら、参加してみろ」
「ふふ‥‥浪志組の大義には賛同するよ。私は東堂さんみたいに学があるわけじゃないけど、天下の万民のために戦うって‥‥面白そうじゃない。大きなことをするって楽しそうだし、わくわくする‥‥」
「浪志組に参加したら、隊士には勉強も義務付けられる。東堂先生が掲げる大義について、お前にも学ぶ機会があるだろう。世界には決して正義だけで片付けられないものがあることもすぐに分かる」
「ふーん、そうなんだ‥‥」
 羽紫 稚空(ib6914)は、リャンに元気よく話し掛ける。
「チェン、俺、ずっとこの浪士組ってあこがれていたんだよなー。上手く入れてラッキーだぜ! 全力で向かって結果を出すしかねぇよな」
「羽紫稚空か。気合が入っているな。浪志組には、実力さえあれば誰にでも幹部への道が開かれている。大義を果たすために、鍛練を怠ることなく、力を付けてほしいものだな」
「浪志組の大義ってすげーよな。あんなこと考え付くなんて、東堂先生は頭がいいだけじゃない。あんな志をストレートに呼び掛けるなんて、かっこいいよ」
「浪志組の大義には、正義を貫くことが求められている。この世界の悪には、誰かが立ち向かわなくてはならない。お前にもいずれ分かる時が来る。正義を貫くことには厳しい現実も待ち受けているだろう。だが、俺たちは万難を排して大義を果たさなければならない。誰かが、悪の根を断ち切らなければならないんだ。浪志組の大義は、まさにそこにある」
「まー良く分かんねえけど、浪志組に入ったら、悪人どもはぶっとばす!」
 稚空は言って、晴れやかな笑顔を見せる。
 和亜伊(ib7459)は、リャンに言った。
「今回はうだうだ考えないで試験に集中しよう。浪士になれるよう全力で臨むだけだぜ」
「和、まあその意気は買うが、浪志組の大義についてはどうだ」
「それについては意義は無いさ。立派な大義だと思うぜ。あんな言葉を言えるなんて、そうはいないだろう。言葉が人を動かす。東堂って奴は頭もいいんだろうが、言葉を知っている」
「東堂先生には夢がある」
「夢?」
「ああ。今のこの世界で、悲しみにくれる人々を救うという夢だ。どうにもならない悪に翻弄されて、人は生きる道を見失うことがある。東堂先生はそんな人たちを守りたいと願っているんだ。助けたいとな。だから、天下万民のために、悪を討つつもりでおいでなんだよ」
「まあ今日は試験に集中するつもりだが、悪と言ったって色々だと思うんだがね。まあ今日はよろしく頼むわ」
「確かにな。では、よろしく頼む」
 そうしてリャンは、一同に会場に入るように指示する。
 ――いよいよ選抜試験が始まる。

「行きますどす‥‥」
 鬨は障害物からするすると前に出て行く。
 銃撃と矢が飛んでくる。盾を上げて避ける。
 そこへ橘が加速して来る。
「よお鬨――」
「橘さん‥‥」
 鬨は槍を繰り出した。橘はかわすと、鋭い一撃を繰り出して来る。それを弾いて、鬨は天辰を叩き込んだ。――キイイイイン! と橘は弾き返すと、刀を振り下ろす。
「‥‥‥‥」
 鬨は凄まじい橘の一撃を盾で受け止めたが、衝撃に膝をついた。何とか押し返し、立ち上がる。予想はしていたが、橘の実力は尋常ではなく、やはり強い。
「さすがどすな‥‥」
「こんなものじゃないだろう鬨」
「まだまだどす‥‥」
 一撃、二撃と打ち合う。
「立風双樹、入隊を希望します。今の僕が何所までやれるか、どうか見極めて下さい」
 立風は積極的に踏み込むと、打ち込んでいく。
 相手は名うての志士、立風の打ち込みを軽くさばいていく。
「それまでか立風、ではこちらから行くぞ」
「まだまだ、僕は諦めません――」
 立風は裂帛の気合とともに五月雨を叩き込む。四連撃――。
 しかし志士はかわして、立風を押し返した。勢いよく地面に転がる立風。
 立風は反転して起き上がると、後ろを見やりつつ、呼吸を整える。
「僕は浪志組の大義が為されるならば、命だって惜しくありません。覚悟は出来ています」
「ならばその覚悟、打ち込んでい来い!」
「行きます――」
 ティンタジェルはまず加護法で前衛陣の防御強化を図る。
「さすがは浪志組の腕利きですね‥‥僕の力がどこまで通用するか‥‥」
 物陰に身を隠して攻撃を避けつつ、味方の回復に努める。
 戦闘の様子を見やりつつ、ティンタジェルは前衛の様子を確認する。
 仲間たちは激しい戦闘に身を置いている。浪志組の相手は凄まじい勢いで仲間たちを吹き飛ばしている。
 鞍馬は隼人を使い、戦闘場所の中央あたりで咆哮を使い敵を引き寄せる。
 だが、試験官の相手は誰一人として咆哮の影響を受けない。
「咆哮か、まだまだだな」
 リャンが悠然と接近して来る。
「鞍馬、試してやろう。行くぞ!」
「ぬ――!」
 鞍馬は後退しつつリャンの一撃を十字組受を使いつつ受け止めた。凄まじい衝撃が来る。その拳から放たれるのは凄絶なる連撃。
「ふん、さすがに‥‥噂に聞くリャンだな」
「怖くなったか」
「そんなわけ‥‥ないだろ!」
 鞍馬は加速する。
 九蔵は回り込んでいくと、物陰から銃で陰陽師を狙撃、不意を突く。
「やってくれるじゃない」
 陰陽師は符を装填して、九蔵を睨みつける。
 九蔵は素早く移動、安全な所で再装填、そうして狙撃地点を特定させない。
「ああもう、ちょっと火薬飲んじゃったわ、もったいない」
 言いつつ、心眼を使って周囲を確かめる。
「みんなは大丈夫かなあ‥‥」
 顔を出すと、建物の上から声がする。
「はい、ごきげんよう」
「え?」
 陰陽師が九蔵の上から笑っている。
 九蔵は慌てて刀に持ち替え、態勢を整える。
 陰陽師は飛び降りて来ると、刀を構えて接近して来る。
 九蔵は飛び込む寸前、ほんの少しだけ溜めて飛び込みをずらす。
 陰陽師はその動きに合わせる。
 激突――!
 九蔵は陰陽師と打ち合う。さらに二刀を抜いて対する。
「やっぱり強いわねぇ‥‥じゃあ、本気でいこっかな」
 郁磨は接近していくと、障害物から飛び出して砲術士にウィンドカッターで攻撃。前に出ず、間合いに敵を誘導する。
「和さん、来ますよ‥‥っ!!」
 砲術士が出て来るところへ、和がバーストハンドガンで連射を叩き込む。和は問答無用で銃を撃ち込む。
 砲術士が反撃してくる。ズドン! と和は直撃を受けて吹っ飛んだ。
「和さん‥‥!」
 ティンタジェルは神風恩寵をかけると、和は立ち上がった。
「凄い相手だな‥‥やはり」
 砲術士はティンタジェルに一撃を撃ち込む。
「攻撃手段の無い人を狙うなんて、狡いなぁ‥‥人を護りたいから、俺は戦うんですよ(微笑み)」
 郁磨は砲術士にウィンドカッターを討ち込む。
 稚空は志士と打ち合う。
 上手くお得意のフェイントを使いながら敵を拡散も考え、受け流し、隙をみて月鳴刀で攻撃する。
「あんたらがどれだけ強くとも、俺達も諦めない。絶対に合格してやるぜ!」
 一撃、二撃と撃ち合い、志士の打撃を受けて吹き飛ぶ。
「‥‥く、みんなは‥‥」
 稚空は試験会場を見渡す。
 ティンタジェルが倒れている。
 立風も鞍馬も前衛で相手を引き付けているがやはり押され気味だ。
 

 そうして――。

 開拓者たちは全員が武器を弾き飛ばされ、攻撃手段を封じられ、敗北にまで追い詰められた。
「よーしここまでだ!」
 リャンが試験の終了を告げると、負傷した開拓者達はすぐに巫女の術で回復された。

 試験終了後‥‥。

 リャンの口から、開拓者たちに合否の結果が告げられる。
「ああ、楽しかった‥‥ねぇ、私も浪志組に入れてくれる?」
 九蔵は言って、しかめっ面をしているリャンに笑いかけた。
「華御院鬨、立風双樹、郁磨、鞍馬涼子、九蔵恵緒、羽紫稚空、和亜伊、以上七名について、合格とする! 今日より浪志組隊士として働いてもらう!」
「さて、どの様になるのでしょうか」
 と鬨は演技をしていない口調でボソッと感想を云った。
「御指南、ありがとうございました!」
 立風は最後に一礼した。
「‥‥そもそも浪志組はなんで設立するんだ? 今までも悪党討伐依頼はあったのだから。なにか設立することで利点が?」
 鞍馬の問いに、リャンは頷いた。
「浪志組はこの神楽の都専属の攻勢組織だ。まずはこの世界一の都を守ることで実績を積む。浪志組はそれから次の舞台に進める。それは、これから隊士全員で考えて行くことだ――」
 かくして、選抜試験は終了する。