|
■オープニング本文 朱藩、砲術士の氏族が中心となって形成された国である――。 長年鎖国を続けてきたのだが、近年になって若い王が開国政策に転換し、各国との交易も盛んである。開国したことによって、首都には大規模な飛行船駐留基地も建設され、程ほどの賑わいを見せている。 だが、この国でもアヤカシの脅威は日々増しつつあり、氏族の長達は拡大する魔の森の掃討に頭を悩ませていた‥‥。 魔の森――。 「――抜刀隊、突撃!」 巨漢の男が号令すると、刀を構えた志士やサムライ達が鬼アヤカシの群れに突進。 ギャアアアア! グオオオオ! と小鬼たちはわめいて反撃してくる。 「鬼どもを生かして返すな! 奴らに情けは無用だぞ!」 開拓者達を指揮する豪胆な男は、志士やサムライ達に怒声を叩きつける。 「おお!」 このために雇われている開拓者の傭兵たちは刀を振るう。 それでも鬼の群れは倒れることなく前進してくる。 「陰陽師前に出ろ! アヤカシどもを叩き潰してやれ!」 そうして陰陽師が前に出ると、次々と式を叩き込んでいく――。 式の攻撃に鬼アヤカシは悲鳴を上げて後退する。指揮を取る男は冷たい瞳で鬼の群れを見つめると、傭兵開拓者たちを怒鳴りつける。 「一気にかたをつけるぞ! 切って切って切りまくれ!」 開拓者たちの攻勢に鬼はばたばたと倒れていく。だが、森から新手の鬼が出現する。 「ちっ、数だけは集めたものだな‥‥」 それでも傭兵たちは散発的な小鬼の群れを撃退して行く。 と、そこで森の奥から屈強な大男が姿を見せる。毛皮を身につけた巨漢で、身の丈は二メートル以上あった。顔はいかめしい人間の男だが、額からは角が伸びており、口もとからは牙が生えていた。そして巨大な残馬刀を肩に担いでいた。 「ぐははは! 人間ども! 無駄なあがきだ! この地はもはや落ちたわ! 森に飲み込まれるのもそう遠いことではない!」 巨漢の鬼アヤカシの言葉に指揮を取る男は眉をひそめる。 「奴は‥‥アヤカシの首領格か、気をつけろ!」 巨漢の鬼アヤカシは天に向かって咆哮すると、森の中から次々と小型、中型の鬼が姿を見せる。 ガオオオオオオオオオ――! 「我らの軍勢を前に貴様らは滅びるのみよ! 自らの血で教訓を刻み付けるがいい!」 巨漢はどん! と大地を蹴ると、疾風のように抜刀隊の剣士たちに襲い掛かった。長大な残馬刀で志士やサムライ達を吹っ飛ばす。そして鬼の群れが突進してくる。 「どうやら、ただでは通してくれんようだな‥‥氏族長に伝令を飛ばせ! 魔の森討伐に敵の増援あり、至急来援を請うとな!」 指揮官の男――雷牙は沈着で豪胆な男であったが、アヤカシの大軍を前に戦慄を覚えずにはいられなかった。 神楽の都、開拓者ギルド――。 朱藩における魔の森討伐戦の状況がギルドにも入ってきた。 「‥‥朱藩、かの国でも魔の森討伐作戦が行われているようですが、目だった成果は上がってはいないようですね」 受付のお嬢はやって来た開拓者達を前に思案顔で、依頼書に目を落としていた。 「砲術士の国で行われている魔の森討伐作戦に、神楽にも支援要請が来ました。アヤカシの総数は百体余り。人語を解する巨漢の鬼アヤカシが一応集団を統率しているようですが、ここまで数が多いと、実際手足となっている手下の中型鬼が小型鬼らを統率しているのでしょう」 お嬢は戦いの詳細について説明する。 かくして、朱藩国における魔の森討伐戦――鬼アヤカシとの激闘が幕を上げる。 |
■参加者一覧
万木・朱璃(ia0029)
23歳・女・巫
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
六条 雪巳(ia0179)
20歳・男・巫
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
那木 照日(ia0623)
16歳・男・サ
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ |
■リプレイ本文 魔の森に到着した開拓者達はすぐさま傭兵たちと合流する。指揮官の男、雷牙はやってきた開拓者を見て、にやりと笑う。 「来たか、神楽の連中。全くアヤカシというのは次から次へと沸いてくる。おかげで飯の種には困らないがな」 雷牙は大きく笑うと、ぎらりと光る瞳で戦場を見渡した。 「まあそれは良いとして、あの大鬼は厄介だぞ‥‥果たして俺たちに止められるかな」 「止めて見せよう」 言ったのはサムライの輝夜(ia1150)。 開拓者達には策があった、傭兵たちを十個の班に分け、アヤカシたちを分散させる。そこで取り巻きが薄くなった大鬼に開拓者達で速攻を仕掛けるというものである。 「何? お前らが奴を仕留めるというのか?」 「もっとも、あ奴が大軍を呼び出せば話しは別じゃが。そうなる前にかたを付けたい所じゃ」 「ほう‥‥まあ良かろう。ならば結構。こっちの兵隊は雑魚どもを担当しよう。構わんぞ、骨は拾ってやる」 雷牙は言って大きく笑った。 ――そして戦いの幕が上がる。 アヤカシを半包囲するように展開した傭兵たちからサムライのスキル咆哮が飛び交い、小鬼たちを引き付けていく。さらに開拓者達を含む三つの傭兵集団が中型鬼と相対する。 「‥‥うっしゃあ! 行くぜぃ!」 ルオウ(ia2445)は中型鬼に突進するところで立ち止まった。友達の巫女、六条雪巳(ia0179)とかは身体弱そうだし護ってやらねえと‥‥と思い直して後衛の護りに着く。 水鏡絵梨乃(ia0191)と酒々井統真(ia0893)の泰拳士コンビ、陰陽師にして並みのサムライより腕は立つ犬神・彼方(ia0218)、サムライの那木照日(ia0623)に輝夜たちは瞬く間に中型鬼を叩き潰して行く。開拓者達の拳と刃の前にことごとく瘴気に還っていく中型鬼。 その様子を後方で見つめていた雷牙は凍りついた。 「何だあいつら‥‥滅茶苦茶強えな‥‥神楽にはあんな強い奴がいるのか?」 渾身の力で槍を叩き込む輝夜。槍は鬼の胸を貫通して、中型鬼は絶息して消滅する。中型鬼の列が割れると、目の前には、このアヤカシたちのボス。大型鬼の姿が目に入った。 「よし、行くぞ。一気にあ奴を仕留めるのじゃ」 輝夜が踏み出せば、前衛系の開拓者達は、散開して大鬼に向かって接近していく。 「ぐははははは――! 少しは出来る奴がいるようだな!」 大鬼は残馬刀を持ち上げると、立て続けに一閃した。残馬刀から放たれる真空刃が次々と開拓者達をなぎ倒す――! とっさに身をひねった統真の胸が真空刃でざくっと切り裂かれた。血飛沫が飛ぶ。 「ぐあっ‥‥痛ぅ!」 統真はがくっと膝をついた。 「ぐ‥‥畜生。何て一撃だ」 「統真君、大丈夫ですか」 「いや、こりゃ大丈夫じゃねえな」 万木・朱璃(ia0029)は統真の胸に手を置くと、恋慈手でダメージを回復させる。 立ち上がる統真。 「野郎‥‥この痛みは倍にして返す!」 サムライのルオウや照日ですらダメージを受けた一撃、凄まじい破壊力だ。見れば地面がえぐれている。 唯一かすり傷程度で済んだのは輝夜、絵梨乃は奇跡的にかわした。 「ほう‥‥俺様の衝撃刃を受けてまだ立ち上がってくるとは。こいつは叩き潰しがいのある!」 大鬼は開拓者達に向かって踏み出してくる。どうやらそう何度も使える大技でも無いらしい。 ざしっと、大鬼の前に立ちはだかったのは輝夜。これみよがしに槍をひゅんひゅんと回すと、低い姿勢でそれを構えた。 「汝の名を聞いておこうか、汝が瘴気に還ってしまう前にな」 「ぐはは! 俺様は魔の森の闘将『雅洛』よ! この名前を聞いて生き延びた開拓者はおらんわ! 貴様らもここで死ぬのだ!」 「雅洛か‥‥覚えておこう。貴様が死ぬ束の間だが」 「何おう!」 大鬼――雅洛は輝夜の挑発に乗ってずんずんと踏み出してくる。 開拓者達は雅洛を取り囲み、用心深く間合いを計る。 するすると指先を伸ばして、朱璃は力の歪みを放つと、雅洛の腕を狙う。 「ぬう!」 この大鬼はかすかに鈍ったが、ほとんど意に介した風もなく輝夜に残馬刀を叩きつけた。 ズン! と長大な残馬刀を受け止める輝夜の足が地面にめり込む。 「はああああああ‥‥!」 輝夜は残馬刀を跳ね返すと、万力を込めて槍を叩き込んだ。 雅洛は驚いたように輝夜の一撃を受け止める。 鈴梅雛(ia0116)が神楽舞・攻、六条雪巳(ia0179)が神楽舞「防」で前衛の味方をサポートする。 「ひいなも応援します」 雛は照日を神楽舞で支援する。 「雛の舞いで‥‥力が湧き上がってくる‥‥!」 照日は刀を振り上げると、大鬼の足目がけて地断撃を繰り出す。地面を切り裂く衝撃波が雅洛の足に命中すると、大鬼はよろめいた。 「‥‥さぁて、どんなものかぁね」 犬神は符を取り出すと、至近距離から残撃符を打ち込んだ。カマイタチの式が雅洛を切り裂くが、軽傷程度だろう。大鬼はうなって子揺るぎもしない。 「いい感じに酔いが回ってきた‥‥これなら、イケるッ! 統真、今こそ、泰拳士の底力を見せる時だ」 絵梨乃はすでに酔っていて酔拳を使いながらの攻撃。 「さっきの借りは変えさせてもらうぜ!」 統真と絵梨乃は側面に回りこむと、大鬼の上半身に連続攻撃を叩き込む。 「はあ!」 絵梨乃のかかと落としが大鬼の肉体に打ち込まれるも、大鬼はハエを払いのけるように手を振った。 「さあ、楽しい火遊びの時間を始めましょ♪」 霧崎灯華(ia1054)はステップを踏みながら式を飛ばす。 「抉れ、眼突鴉」 ――鋭い嘴を持つ黒い鴉が大鬼の眼に襲い掛かる。鴉の嘴は大鬼の目を突いたが、嘴は跳ね返された。 「キャハハハ、これはどうかしら?」 続いて雷閃。出現した小人アヤカシが紅い雷を雅洛目がけて飛ばす。 ビシバシ! と雷光が大鬼を包み込む。 「よおし‥‥良い子だからそのままそのまま‥‥」 ルオウは大鬼の背後に回りこんでいた。 集中攻撃を受けてびくともしない大鬼の背後からスキル全開の一撃を叩き込む。 「取ったあ!」 ルオウの渾身の一撃が雅洛を打ち据える。ザクッとルオウの一撃が大鬼の分厚い肉体に打ち込まれる。 「ぬっ!」 大鬼は思わず身をよじった。 「行け! 照日の兄ちゃん!」 「行きます‥‥! 当てないと‥‥! 当てないと‥‥!」 照日は疾風のように駆け抜けると、大鬼の側面から敵の脛に弐連撃を打ち込んだ。 ズン! ズン! と照日の刀が大鬼の脛当てにめり込む。 輝夜が大鬼の注意を逸らし、絵梨乃や統真が上半身に攻撃を集中させて、最後に照日が鬼の足を封じる――ここまでの攻撃は見事に決まった。 これを何度か繰り返した開拓者達だが、大鬼雅洛は正面の輝夜に突進し、構えた輝夜を踏み台にして開拓者の囲みを突破すると、傭兵たちの集団戦の方へ向かって飛んだ。 「‥‥待て! お前の相手はこっちだ!」 そんな声を無視して、雅洛は傭兵たちの方へ駆け抜ける。 「ちっ‥‥何する気だぁねあの鬼野郎、追いかけるよ!」 犬神が言うと、開拓者達は雅洛を追った。 「‥‥ぬ? 大鬼がこっちへ‥‥!」 雷牙は小鬼を叩き切って、突進してくる大鬼雅洛を見つめる。 雅洛は走りながら旋風のように傭兵をなぎ倒すと、戦場を撹乱しながら咆哮した。 「ぐはははは! まだまだ! 鬼は疲れ知らずよ! ――グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」 すると、森の奥から鬼の咆哮が轟いてきて、さらに小鬼の集団が出現する。 「傭兵の‥‥皆さん! 戦闘態勢を崩さずに‥‥小鬼たちに向かって下さい! 大鬼は私たちが押さえます!」 照日は手近な傭兵たちに声を掛けながら大鬼に突進する。 雅洛は暴風のように戦場に吹き荒れ、傭兵たちをなぎ倒す。 それでも開拓者達は疾風のように駆け抜けると、雅洛との距離を詰める。 絵梨乃と統真は雅洛に飛び掛る。 「お前の思い通りにはさせんぞ」 「てめえ! 相手はこっちだっつってんだろー!」 泰拳士たちの連撃を受けて牙を剥く雅洛。 「何を! 貴様らあ!」 さらに輝夜、照日、ルオウが駆けつけて攻撃を加える。 ザン! ザン! ザン! とサムライ達の攻撃が雅洛を切り裂く。 「貴様ら!」 犬神、灯華は式を放って雅洛を打ち据える。 「おのれえ!」 雅洛は怒りの咆哮を上げると、反撃の残馬刀を叩き込むが――。 輝夜が先頭に立って雅洛の攻撃を一手に引き受ける。ガツン! と強烈な一撃を食らってさすがの輝夜が傾く。 「これだけ数がいると討伐というかもうちょっとした戦争ですね。一家総出で当たりたいくらいですねぇ‥‥」 瘴索結界を張り巡らせていた朱璃は、雷牙に小鬼の群れの動きを伝える。 「むう‥‥態勢を立て直す。何というでたらめな大鬼の攻撃だ‥‥」 雷牙は伝令を飛ばして、再度態勢の立て直しを図る。 「敵は小鬼の群れだ! あのでかぶつと切り離せ!」 開拓者達は再び雅洛を包囲すると、傭兵たちと協力して雑魚アヤカシと切り離す。 雛と六条、朱璃は回復の練力を残して後方で待機する。 「俺様を倒せば勝てると‥‥逆に、貴様らを倒せば奴らを粉砕することも可能か」 雅洛は開拓者達を睨みつけると、ぎらりと牙を剥いた。 「‥‥‥‥」 沈黙が落ちる。周囲の戦いの雑音が、束の間消えたように、開拓者と雅洛は睨み合った。 そして、大地が震動して空気が弾けて、開拓者と大鬼雅洛が大地を蹴って加速する。 輝夜の一撃が雅洛を思い切り切り裂くが、残馬刀の一撃は輝夜を吹っ飛ばした――! 照日は激突するように突きを叩き込めば、大鬼の肉体を貫通して――反撃の残馬刀を受けて照日は叩きのめされたが十字組受で堪える。 裂ぱくの気合いを込めて刀を打ち込むルオウ。気力もスキルも全開で渾身の一撃を叩き込む。 「これに全てを賭けるぜ!」 ルオウの刀身が大鬼を凄絶に切り裂いた。鮮血が飛び、雅洛は叫びを上げた。 「ぬおおおお!」 雅洛は残馬刀を振り回すと、気力を使い果たして気絶寸前のルオウを叩き伏せた。地面をバウンドして吹っ飛ぶルオウ。 雛が駆け寄ってルオウを抱き上げる。恋慈手でルオウの傷を癒す。 「合わせるぞ統真!」 絵梨乃と統真は雅洛を挟撃、サムライ達が作り出した間隙に拳と蹴りを叩き込む。 「残撃!」 「雷閃!」 犬神と灯華が残撃符と雷閃を叩きつける。 残馬刀を跳ね返しつつ、輝夜は雄叫びを上げて槍を一閃、突進する。 ズバアアアア! と槍が雅洛の分厚い肉体を貫通する。 「ぐおお‥‥貴様ごときに!」 残馬刀を突き入れる雅洛。輝夜は直撃を受けてまたまた吹っ飛んだ。 かすかに顔をしかめる輝夜。腹部が切れた。手で押さえると、赤く染まる衣服の血がついた。 「輝夜さん、すぐに回復します」 六条が神風恩寵をかけると、傷が見る間に塞がっていく。 「やってくれるのう。このような一撃を受けるとは‥‥すまぬ」 輝夜は礼を言ってから再び大鬼に飛びかかる。 「何て奴だぁね‥‥化け物じみた体力‥‥」 式を飛ばしながら、犬神は目の前の怪物を見つめていた。 罵り声を上げながら残馬刀を振り回し、開拓者の攻撃に耐える大鬼雅洛。 開拓者たちも傷つき、巫女の練力も残り少なくなっていく‥‥。 だが大鬼もずたぼろだ。血だらけで、肉体はずたずたに裂けている。 「ふふん、俺様をここまで追い詰めるとは‥‥だが無駄なあがきだ。この地は落ちた。それを食い止めることは出来ん」 「この地がもう終わりじゃと? まさかアヤカシが冗談を言うとはの」 輝夜の言葉に、大鬼はにたりと笑うと、ぐっと腰を低く落して、飛び上がった。逃げる気だ。 「逃がすかよ!」 統真は飛び掛って食らいついた。 墜落する大鬼は怪力で統真を引きはがすと、投げ飛ばした。 統真は反転して着地する。 照日が、輝夜が加速して、大鬼の足をなぎ払う。 雅洛は残馬刀で受け止めたが、ザン――! と、残馬刀が砕け散って、輝夜と照日はそのままの勢いで大鬼の体を下から上に切り裂いた。 ザクッと大鬼の肉体が切れて、鮮血がほとばしった。 「な、何、だと‥‥!」 雅洛は口からごぼっと血を吐き出して崩れ落ちた。 「馬鹿な‥‥この俺様が‥‥開拓者などに‥‥この俺様が‥‥」 止めを差したのは輝夜。雅洛に歩み寄ると、大鬼の頭に槍を突き立てた。 がくりと、大鬼の動きが落ちて、見る間に黒い塊へと化していく。そして、大鬼雅洛は瘴気となって霧散した‥‥。 ‥‥戦いはその後も続いた。残る小鬼の討伐であるが。小鬼たちは見る間に討ち取られて逃げ出していく。 「追撃だ! 奴らを残らず討ち取って、森を焼き払うぞ!」 雷牙は傭兵たちを怒鳴りつけると、酒の入った容器に松明を詰め込んだ一種の火炎瓶を手に小鬼たちを追撃していく。 「もう遠慮する必要はないわね♪ 思い切り燃やしちゃお♪」 灯華は火炎瓶片手に森の追撃戦に参加した。 やがて森の各所で火の手が上がる。轟々と燃え盛る炎が、魔の森を焼き尽くして行く‥‥。 ‥‥かくして戦いは終結する。敵のボスを撃破、鬼たちには壊滅的な打撃を与えた。 地面にへたり込む朱璃。 「疲れました‥‥今日の晩御飯は作り置きのものでいいですよね、父様」 「あんたもよく頑張ったぁね。ま、今日はゆっくり休みなぁ‥‥」 犬神は朱璃の頭をぽんと叩いた。 「これが魔の森か‥‥いずれ根本から排除する方法を探さねばいかんの」 輝夜は炎に包まれて崩壊していく森を見つめていた。アヤカシが生まれるというこの森を放置しておくことは出来ない。 「あれ‥‥? 俺たち勝った? 照日の姉ちゃん」 「何とか勝ったぞ。ルオウもお疲れ様だったな」 照日は男だが女の子にも見える風貌であった。目を覚ましたルオウ相手に珍しく口調が普通であった。 戻ってきた雷牙は驚異的な強さを見せた開拓者たちの労を労い、別れ際に握手を交わした。 「また天儀のどこかで会うかも知れんなあ。今はまさしく俺たちの時代だからなあ」 豪快な笑声を残して、雷牙は傭兵を率いて去っていく。 「まだまだ、俺も修行が足りねえなあ‥‥強いアヤカシは幾らでもいるもんだ」 統真は頭の後ろで手を組んで空を見上げた。真夏の空はどこまでも蒼かった。 開拓者達の旅路は続く、これからも‥‥。 |