【初夢】遠足へ行こう!
マスター名:四月朔日さくら
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/01/08 19:09



■オープニング本文

※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


 ――それはどこかにある、小学校から大学まで網羅した『学園』であった。
 生徒たちは学校の理念と同様、自由奔放に学業と課外活動を行っている。
 これはそんな学園の、ある日の出来事である。


「では、今日は遠足です」
 学園長の声がスピーカーを通じて学園いっぱいに響く。
 そう、今日は遠足。
 目的地は「もふランド」。もふらさまという人気アニメのキャラクターを目玉にした、当代一のアミューズメントパークだ。
 一番人気はもふらの「もふ太郎」。恋人の「もふ美」とペアでショーなどに出演することの多い、もふランドの文字通りの顔だ。
 また、その友人の猫又「又兵衛」や、最近もふランドファミリーに仲間入りした提灯南瓜の「なんきん」なども人気。
 パークにはおおよそ遊園地と呼ばれる場所にあるタイプのアトラクションが揃っていて、それだけでも存分に楽しめる。
 さあ、どうやって遊ぼうか――?


■参加者一覧
/ 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 无(ib1198) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / フランヴェル・ギーベリ(ib5897) / エルレーン(ib7455) / ラグナ・グラウシード(ib8459) / 黒曜 焔(ib9754) / 紫ノ眼 恋(ic0281) / ジャミール・ライル(ic0451


■リプレイ本文

※このシナリオは、架空の出来事であることをあらかじめご了承ください。


 『――天儀という世界がある。』
 この冒頭フレーズが有名な大人気ロングヒットアニメ、『舵天照』。
 学園生にもそのファンは少なからずいて、じっさい非公認クラブの中にはいくつもファンクラブがあるというのがまことしやかな噂である。
 その中の人気マスコットキャラクター『もふら』をスピンオフしたアニメも大ヒット。更にそこから様々なメディア展開が生まれ、そしてとうとうもふらをメインキャラクターに据えたテーマパークまで誕生した――というのが、今回の遠足で訪れる『もふランド』の誕生までのおおまかなエピソードである。

「ここまでの説明はいいですか?」
 行き掛けのバスのなか。そう言ってにっこりと笑ったのは、現国教師にしてもふランド研究会顧問の黒曜 焔(ib9754)。その目の下には小さなくまが浮かんでいるが、それも仕方のない話である。彼の心のなかでは、年パス所持して休みごとに通い詰めているあのもふランドに、「遠足として、堂々と」遊びに行けるのだから、楽しみすぎて三日くらい前から眠れなかったのだ。いわゆるナチュラルハイというやつである。
 彼は今日のために作ってきた『もふランドを満喫するための遠足のしおり』を同じバスに乗っている生徒や教師仲間にも渡していく。
「ふむ……黒曜先生は真面目なのだな」
 そう頷いているのは新任の体育教師、紫ノ眼 恋(ic0281)。若さゆえだろうか、若干融通のきかない真面目なところもあるが、その脇でうとうとしている養護教諭・ジャミール・ライル(ic0451)のことを考えれば随分と焔の行動に好感を抱いたらしい。何しろジャミールは自称得意科目は保健。通常勤務中も、白衣こそ着てはいるが仕事はほとんど行わないという状態なので、女生徒のファンはいるものの苦手に思われがちな部分も多いのだ。そんなジャミールと腐れ縁な恋なので、彼のぶんもしっかり引率指導せねばと緊張気味である。まあもちろん、ジャミールのことを信頼している恋ではあるので、一層プレッシャーがかかっているのかもしれないが。
 一方、焔からしおりを受け取った生徒の中に、やはり目をキラキラと輝かせている少女がいた。こちらも昨夜は楽しみすぎて眠れなかったという高等部一年の柚乃(ia0638)である。そばにはやはりもふら好きの仲間である来風(iz0284)が座っている。
 学園には制服はあるものの、私服通学も可能というリベラルな校風。柚乃は上品ながらも活動的な格好で、いかにもお嬢様らしさを醸し出している。一方の来風は手元のノートやしおり、ガイドブックなどを広げながら入念に計画を立てていた。
「来風さんはどういう行動をする予定ですか?」
 前日までにリサーチばっちりプラス焔のしおりで準備万端の柚乃が、来風に問いかける。
「まだきちんとは決めていないけれど、楽しいといいかな、って」
 そんな来風の声もどこか浮つきがちで、表情もどこかふわふわと。やはり楽しみなのだろう。
「それなら……もし良かったら、一緒に見て回りません?」
 柚乃が提案する。来風はぱっと顔を輝かせて、こくこくと頷いた。


「さて、パークの中では基本自由行動です。でも、約束の時間にはこの場所に戻ってきてくださいね」
 引率担当の教師がそう言って解散を告げると、生徒たちはわあっと三々五々と散っていく。
 その中にはもちろん、教師も混じっているわけだけれど。
(引きこもってばかりでは行けないと連れだされてしまったわけだが……)
 大学院生で学園の図書館司書も兼任し、科学教諭の補助としても活動している无(ib1198)のような人物も混じっていた。ただ、彼はどうにもインドア派。普段は学内の図書館でヌシのような存在となっているくらいである。
 と、彼の相棒(と書いてペットと読む)である尾無狐が待ちきれないとばかりにピュイっと飛び出して行きそうになった。それを寒さよけも兼ねて首に巻きつけていたものだから、当然すっ転んでしまう。
「先生大丈夫ですか……?」
 心配そうな顔で駆け寄ってきたのは、剣術部ご一行様の中にいた小柄な少女、礼野 真夢紀(ia1144)。
「ああ。……ところでそちらはずいぶんな人数のようだな」
 无が指摘すると、真夢紀は苦笑した。
「お姉様は身体が強くないですし、幼い義弟は幼なじみの女の子によく振り回されてますし、そのお兄さんというのはちぃ姉様……下の姉の悪友たちと回るということですし、更にその弟さんは双子のような関係の親友と一緒……ということで、なんだかんだ言って結局みんな一緒に行動するんですよね。まあ、このくらいの大所帯だと、分割行動もやりやすいですし」
 なるほど、剣術部として行動する面々はかるく十人を超えている。これだけいればなにか不測の事態が起きてもなんとかなるだろう。
「先生はどうするんですか?」
 真夢紀に問われて、无は首をひねる。
「私はそもそも遊園地に来ること自体が殆どなかったのでね。適当に見て回ろうかとも思うけれど、なにぶん一人では不安なことも多くてなぁ」
 と、そこに現れたのはもふランドいちの人気キャラクター、もふらの『もふ太郎』。
「もふランドにようこそもふ!」
 そんなことを言って、やってきた生徒たちと握手を交わす。
 少年少女達はそのもっふもふな姿にたちまち心奪われ、さっそく記念撮影などを始めた。无はそんな光景を見て、
「……なるほど、こういうのも楽しみの一つなのか」
 と妙に感心している。ちなみにその横ではさっそくもふらさまの耳を模したふかふか帽子を装着した焔が、もふ太郎との濃厚なハグを交わし、そして取り出したカメラでベストショットを二、三枚収める。
「もふ太郎はこのアングルからのショットがたまらないのだよ」
 そんなことを解説しながら、嬉しそうに語る。その脇では同じくもふら大好きな柚乃と来風という少女二人がしっかりと参考にしてもふ太郎との記念写真をとってもらっていた。
「先生、その帽子はどこに売っているんですか?」
 すっかりもふランドの住人と化している焔に問いかける真夢紀。大勢で来ているぶん、みんなで揃いのアイテムなどを購入し、テーマパークのムードに浸ろうということなのだろう。
 そんなほのぼのした空気をひしひしと感じているなか、やはりどこかそわそわとした青年はここにもいた。
 ラグナ・グラウシード(ib8459)――。
 いつもうさぎの縫いぐるみを背負っていることで学内でも奇人として有名であり、また留年していることもあってついたあだ名が「ダブりのラグナさん」。普段から背負っている縫いぐるみのうさみたんに話しかけたりするくせのある彼だが、それは別の解釈をすればそれだけピュアであるということ。
 可愛らしく明るい、もふランドが持つテーマパーク特有の華やかな空気に、思わずワクワクしてしまっている。流石に前夜から眠れなかったということはないのだが、ガイドブック片手にその瞳はキラキラと輝いていた。
「わあい、もふランドだお! 楽しみだな、うさみたん!」
 ……若干発言が幼児退行しているような気がしなくもないが、きっと気にしたら負けだ。うん。
 特に楽しみにしているのがパレードで、到着早々早速パレードコースの場所取りに向かおうとしたのだが……
「ねえねえ、何してんのさぁ……そんなところにじっとしてたってつまんないよ?」
 後ろから聞き覚えのある声が。ゆっくりと振り向けば、そこにいたのはラグナの天敵、エルレーン(ib7455)である。腐れ縁の賜物か、ラグナが留年したことによってクラスメイトとなってしまった少女だ。
 しかし、それにしても。
 エルレーンはいつも、ラグナを適度にからかうことを忘れない。いや、適度以上か。何しろラグナの幻想を打ち砕かんばかりにプギャーと笑っていたのだから。ラグナをいびって遊ぶのがエルレーンの趣味のようなものなのだから、少々趣味がいいとはいえないが、今日ばかりはそんなエルレーンの攻撃も気にしない。目を輝かせ、純粋な顔でうさみたんとおしゃべりしているものだから、エルレーンもいつもより少しばかり沸点が下がる。
「……何さ、無視してるんじゃないよぅ!」
 ずるずるずる。
 エルレーン、半ば無理やりラグナを引っ張りだす。腐れ縁ということもあって、相手の性質を知り尽くしている同士。ラグナが特にビビリであることも、エルレーンはお見通しだ。
「さ、ローラーコースターにのってね! あたしはみてるから!」
 ……さすがにこれは厳しい。ビビリでダブりのラグナさん、目に涙を浮かべ、うさみたんを抱きしめてイヤイヤと首を振るがそんなことはお構いなしのエルレーン。ずるずるずるずるとローラーコースターに引っ張られていった。


「でも遠足で遊園地っていうのも嬉しいな♪ 今日はフランさんも一緒だし……」
 そう言ってちらりと脇にいる男装の麗人、フランヴェル・ギーベリ(ib5897)に目をやりながら、リィムナ・ピサレット(ib5201)は笑顔を浮かべる。
「……どうしたんだい、子猫ちゃん?」
 白い男性用学生服を隙なく着こなしたフランヴェルに問われれば、リィムナはたちまち顔を朱に染めた。同性とはいえ、憧れの人にそんなふうに尋ねられれば、顔を赤らめないほうがおかしいというものだ。
「あ、いえっ、その。と、とにかく、今日はいっぱい遊ぶぞー!」
 こういうあたりはやはり子ども、という感じで、リィムナはそれでもアトラクションが楽しみで、二重の意味で舞い上がっている様子だ。
「あっちにまわる万屋湯呑ってあるよ♪ あれ乗りたいなー! あ、あっちはアヤカシ屋敷だって! あれも面白そう♪」
 ピューッと、まるで風の様に一直線にアトラクションへ向かうリィムナ。そんな元気な姿に苦笑を浮かべながらも、
「子猫ちゃん、お手をどうぞ」
 そんなことを言ってエスコートを担当する。これもデートだから当然といった振る舞いで、慣れた態度にリィムナはまたもや顔を赤らめた。
 とは言えアトラクションに乗ってしまえばイニシアチブはリィムナのもの。これは純粋に楽しんでいるから、というところも大きい。
 回る湯呑ではものすごい勢いでハンドルを回してフランヴェルが顔を青ざめたり、アヤカシ屋敷ではフランヴェルがわざとリィムナを怖がらせようと屍人の面をかぶってみたら反対にリィムナから飛び蹴りを顎に食らってしまったり……
「フランさん、大丈夫……?」
 憧れの君の前で思わずはしゃぎすぎてしまったのを、ちょっぴり反省するリィムナ。それでもソフトクリームを一緒に食べ、相棒ゴーランドでリィムナを抱きかかえた姿で白い霊騎に乗れば、リィムナも照れくさいのかぽっと顔を赤らめた。
(まるで王子様みたい……)
 うっとりとフランヴェルを見つめ、そして頬を赤らめたまま微笑むのであった。

「……それにしても、さっき連れて行かれたのはラグナ君だったな。大丈夫だろうか」
 无はそんなことをつぶやいた。……いつの間にやら無理矢理乗せられた、ローラーコースターの台車の中で。
 実は高いところと絶叫マシン系は苦手な无なのだが、あまり遊園地で遊んだことがないことが他の参加者たちに判明した途端、それならせっかくだし思い切り満喫しましょうと連れまわされる羽目になったのだ。幸か不幸か、ローラーコースターがいかなるマシンであるか、彼は実体験がほとんどなかったために安請け合いしてしまったのである。がくんと動き出したコースターで、気がつけば情けない悲鳴を上げながらぐおんぐおんと揺れ動いていた。戻ってきた時には若干の吐き気をもよおしていたが、これはまあ仕方がない。
 そんな様子を、ジャミールと恋はのんびりと眺めていた。
 とは言っても恋は、引率をさっそくサボってナンパしそうになっていたジャミールの首根っこをひっ捕まえ、そのままお目付け役として生徒の引率も兼ねるというなかなかの苦行をしていたのだが。
 根っからの真面目なたちで遊園地に行った経験がほとんどない恋は実のところ非常にワクワクしてはいたのだが、ジャミールや生徒が無理無茶をしないように監督する役目も果たさなければならない。案外こういうところでは生徒たちのほうがきっちりしていたりして、結局はジャミールと一緒にいる時間のほうが長くなりがちだったが。
「ほらー、だからいったでしょ? 皆俺がいなくても大丈夫な良い子ちゃんだって」
 恋に怒られてちょっぴりしょんもりしつつも、ジャミールはすぐに立ち直る。
(結局これって、口にはしないけどデートじゃん?)
 テーマパークで一緒にポップコーンを摘んだり、アトラクションには乗らずとも一緒に見て回ったりすれば、それはまったくデートに見えるだろう。
 そう見えること、それがきっと大事なのだ。
 と、ジャミールは高台にある観覧車を仰ぎ見た。この遊園地で、一番見晴らしの良い場所。
「あ、あれ乗る? 先生だって一個くらい遊んどかなきゃね」
 無邪気に笑って、恋を誘う。恋だって、ジャミールのことが憎いわけではない。どちらかと言うと、信頼しているからこその態度なわけで。
「む……あれくらいなら、乗ってもいいか」
 恋も、頷く。あれならば、生徒が楽しんでいる様子を上空から眺めることも可能だろう。
 とはいえ、まだなれない引率業務に気が張っていたらしい恋が観覧車の中でまどろんでしまうのも無理の無い話、なのかもしれない。そして、そんな恋の様子を微笑ましく見つめるジャミールであった。


 ――ところで。
 一番引率していそうなしていなさそうな、焔はと言うと。
 『他の先生のぶんまで引率を頑張るのだ』と息巻きつつも、じっさい一番満喫しているという、ある種お定まりのコースになっていた。
 もちろん食事もいわゆるシーズンごとにおまけが変わるプレートを丁寧に食べ、
「今回のおまけはマグカップか……これなら学校でも使えるな」
 等と言いながらおまけを持ち帰る気満々の様子。
「ちなみにこのシーズンやイベントごとにおまけが変わるというのはテストにでます」
 といつもの口調で言うものだから、なかなかどうして怖い。
 何しろ普段の授業も似たようなペースで進めている焔である、冗談に聞こえないのだ。
「黒曜先生、パレードの場所取りなんですが」
 柚乃と来風はすっかり焔のもふら好きが伝染っているらしい。お揃いのもふら帽子をかぶり、もふ太郎縫いぐるみを抱えて、クレープをもぐもぐしている。焔の指導(?)もあって、時間の有効活用もバッチリだったようだ。
「ああ、そろそろ行かないとね」
 パレードの時間まであと二時間以上ある。しかし、絶好のビューポイントで待ち構えるにはもう場所取りをはじめなければならないのだ。
「なんだかワクワクしてきました」
 来風は無邪気に笑った。

 真夢紀と剣術部の仲間たちも、場所取りは万全。人海戦術という言葉があるが、真夢紀の下の姉の友人とその恋人とで場所取りをしてもらっている間に、他のメンバーで食事を済ませたり土産物を見繕ったりという風に役割分担を決めておいてあったのだ。
「場所取りしてもらってる方にも、ご飯差し入れしなくちゃ」
 ペットボトルの紅茶とハンバーガーを用意して、一行は合流した。

 生徒に連れ回されるままにバーガーを食べ、バギーカートでぶっ飛ばしたあと。
 慣れない場所での行動で无はふらふら歩いていると、休憩という名の場所取りを頼まれた。この辺りはうまく丸め込まれた気がしなくもないが、たしかにじっと座っていることが常の无にとってはある意味こちらのほうが楽なのかもしれない。
「それにしても、パレード……か」
 このもふランドについては名前くらいしか知らなかった。どちらかと言うと引きこもりの性質である无にとって、見るもの何もが目新しいテーマパーク。
 疲れてはいるが、どことなくその疲れも心地よい気がしていた。

「うわ、パレードめっちゃ混んでる〜!」
 パレード開始時刻とほぼ同時にパレードルートにぶつかったリィムナは思わず声を上げた。
 見たくてきたのだけれど、やはり来るのが一足遅かったのだろう。目の前は黒山の人だかりだ。と、
「これだけ混んでると大変だね。リィムナ、肩車してあげよう。そうすればある程度はパレードも見えるはずだ」
 フランヴェルはにこりと微笑む。そしてリィムナの体は軽々と肩車されていた。
 ちょうどタイミングよく、目の前をもふら型の山車が通っていく。
「うわぁ……なんだか感動しちゃう……」
 パレードの華やかさもさておき、慕っているフランヴェルの紳士的な振る舞いにも感動していたのだ。
「よく見えるなら良かった。君が楽しんでくれたなら、ボクも嬉しいよ」
 フランヴェルはまたも微笑む。
「うん。フランさん、今日は本当にありがとう。すっごく楽しかった、よ……」
 さすがに一気に疲れがでたのだろう、リィムナはそのまま肩の上で小さな寝息を立て始めた。これにはフランヴェルのほんのり苦笑い。
「……疲れて眠っちゃったんだね。では帰りましょうか、お姫様」
 そう言うと、リィムナをそっとお姫様抱っこして、男装の麗人は集合場所へと戻っていった。

 ――そういえば。
 ラグナとエルレーンは、といえば。
 みんながパレードに夢中になっている間、ラグナは滂沱の涙を流していた。
「うさみたん……私もパレードが見たかったよ……」
 そう、エルレーンの策略(詳細は秘す)によって彼は何故か今、バギーカートに乗っていたのである。
「ラグナのビビリ〜」
 しかもエルレーンは隣のカートから激しくチェイス。涙目のラグナを見てエルレーンとしては胸がすく気分だ。
「ほらほら、もっとスピードださないとぶつかるよぉ?」
 いや、スピードの出しすぎも危険ではあるのだが。そして今日何度目かの涙が、ラグナの目尻からこぼれた。


 やがてパレードも終わり、集合時刻。
 たっぷりの土産物をもった少年少女達が、ニコニコと笑いながら集まっている。
 しかし一番嬉しそうに笑っているのはやはりなんといっても焔であろう。
「はい、家に帰るまでが遠足です! でもみなさん楽しんだようで、私は満足です!」
 もふら帽子を外さずに、にこやかに微笑む。
 しかし、帰りのバスではまどろみ始めるものも少なくなかった。
 文字通り、夢のように楽しい一日。
(……たまには、外もいいのか……)
 疲労困憊になりつつも、无がそう思う。
 そう、それくらい、幸せな一日であったのだろう。
 ――きっと。