実りを祈って〜神無の綴〜
マスター名:四月朔日さくら
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/10/30 20:00



■オープニング本文


 ――十月。
 天儀各地では、豊穣を祝ったいわゆる収穫祭が執り行われる。
 各地で行われるとはいえ、規模や知名度は様々である。特に有名なものは朱藩でいえば『海産祭』であり、武天であれば『野趣祭』。また理穴なれば『豊穣感謝祭』となろうか。

 どこにおいても、会場では賑々しく露店が溢れ、旅芸人たちもそこらで芸を披露する。
 一年で一番、街がにぎわいを見せる季節なのだ――。


「わぁ!」
 来風(iz0284)は、理穴から届いたという家族からの小包を開けて、思わず顔をほころばせた。
 中には来風が大好きな栗や柿、それに母が仕立ててくれた服が一揃えなど、家族の愛情が伝わる品々が詰め込まれていたのだ。
(あとで返事の手紙も書かなくちゃね)
 来風はそう思いながら、一人暮らしにはちと量の多かった柿を幾つか、いつも世話になっているギルドへと差し入れることにした。

「へえ、田舎のおっかさんもいい人なんだな……ん、甘い」
 すっかり見慣れた顔のギルド職員は、早速むいた柿にかぶりつく。
「はい。いつもこの時期は父と母が奏生まで出かけて、秋の実りを売り買いしてくるんですけど……そうか、もうそんな時期なんですね」
「各地の祭りも、今年は暑さが早くひいたとかでかなりの賑わいらしいぞ。祭はいいな、やっぱり気分が明るくなる」
 ――それを聞いて、来風はピンときた。
「じゃあ、祭のお話も楽しかったりすることが多いんでしょうか?」
 瞳を輝かせて問うと、職員はちょっと唸ってから頷いた。
「そうだな。いろんな経験をしている人が多いからそればかりじゃないだろうが、まあどれも良い話を聞けるんじゃないか?」
「じゃあ、今月は決まりですね! 折角だから、みんなで栗ご飯のおにぎりを食べながらとか」
 近くに場所を用意しますから、今回は持ち寄りで。
 来風はにっこり笑って、依頼の文書を書き始めたのだった。


■参加者一覧
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
フェンリエッタ(ib0018
18歳・女・シ
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
ナキ=シャラーラ(ib7034
10歳・女・吟
桂樹 理桜(ib9708
10歳・女・魔
八塚 小萩(ib9778
10歳・女・武


■リプレイ本文


 その日、集合場所となったギルドの一室には、美味しそうな甘い香りが漂いまくっていた。
 見れば、机の上には甘い甘いお菓子のたぐいが山のよう。
 勿論それだけではないのだけれど、「持ち寄り制」という今回のお話会の参加者が若い女性ばかりともなれば自然そうなるのもしかたがないのかもしれない。
 ケーキ、パイ、スコーンやマフィン。野趣あふれる木の実もあったりして、みんなの鼻とお腹を刺激する。
「みんなすごいですね……!」
 それを目を輝かせて見つめているのはこの依頼の仕掛け人たる来風(iz0284)。
 彼女自身が持ってきたのは旬の柿と、美味しいと評判の店で購入した豆大福。料理が得意でないのが一目でわかるとも言える。
 それに対し、
「来風さん、こんにちは。お気に召して頂ければ幸いなのですが」
 年頃の近い柚乃(ia0638)が用意したのは紅茶の香り漂う林檎ケーキや梨ジャムを添えたスコーン、葡萄のタルトなどなど。どうみても手が込んでいる。
「秋ですからね〜、おいしいものも多いですし〜。収穫祭とかのお話もいいかもしれませんね〜」
 笑顔を浮かべる大柄な女性――サーシャ(ia9980)は、のんびりとそんなことを言って、場を和ませた。相棒のアーマー「人狼」、アリストクラートは表で静かに控えている。
 サーシャの準備してきたのは栗をふんだんに使ったパウンドケーキやクレープ用にこしらえたマロンクリーム。これもぐるる、と来風の相棒・もふらのかすかの腹がなる。
「何やら見知った顔も多いのう……我はちょうど山籠りからの帰りでの、あけびや梨を持ってきた。沢山あるので、皆で食べようぞ」
 そのアリストクラートの横に己の相棒「赤城山五十號」を控えさせているいたずら好きの天狗娘、八塚 小萩(ib9778)はごろりと風呂敷から大ぶりの木の実を出してみせる。珍しい――といえるかどうかは微妙だが、旬の山の幸に誰もが声を上げた。
「美味しそう! あ、今回もよろし……わわっ、理桜ちゃんも?!」
 とリィムナ・ピサレット(ib5201)が歓声を上げれば、彼女を恩人として尊敬している――若干行き過ぎの感がなくもないが――桂樹 理桜(ib9708)も、瞳をキラキラさせて嬉しそうに応じた。
「本当ですね、リィムナさん! 今日もまたお会いできて……理桜はすごく感激ですっ! もちろん来風さんもよろしくお願いします!」
 そう言いながら、理桜は憧れのリィムナに抱きついて擦り寄る。
「あはは、光栄だね理桜ちゃん♪」
 リィムナもまんざらではないらしいが、それでもひとまずは落ち着かせて。リィムナが持ち込んだのはパンプキンパイにワッフル、それに姉と一緒に作ったという特大のマロンケーキ。
「これはすごいのじゃ……!」
 小萩も生唾を飲み込んでいる。一方理桜は
「あ、とりあえず皆さんにお茶をお入れしますね。あとワッフルに月餅に……」
 そしてこちらもどーんと出てきたのは見事なお重。
「お家で松茸ご飯を作ってきましたから、みなさん召し上がってください!」
 これには誰もが驚いたらしい。松茸といえば高級食材、それをたっぷり使った松茸ご飯にありつけるとは思っても見なかったのだろう。
「へーっ。あ、あたしはオータムクッキーと月餅持ってきたんだ! 一緒に食べようぜ!」
 ちょっと乱暴な言葉づかいのこちらも幼い少女。ナキ=シャラーラ(ib7034)と名乗った彼女は、アル=カマルの出身と言ってにんまり笑った。
「それにしても随分秋も深まってきて……いろんな方がいらっしゃって、いろんな食べ物が満喫できそうね」
 優しく微笑むのはフェンリエッタ(ib0018)。春も秋も短いぶん、祭の賑わいはひときわ華やいで見えるのだろうと頷いた。
「私はラズベリーパイを用意してきたの。このラズベリーは、故郷の森で採れたものを使っているのだけど……身内びいきを差し引いても、とても美味しいのよ」
 そう言ってフェンリエッタはラズベリーパイを切り分ける。ジルベリアの甘酸っぱいラズベリーパイに、皆が舌鼓をうった。
「美味いなー!」
「うむ、これは美味なのじゃ」
 ナキと小萩はたちまちのうちに一切れペロリ。理桜は「はい、あーん」とリィムナにフォークを差し出し、それを受けないというほどリィムナも情のない少女ではない。ありがたく食べさせてもらう。
「これは〜ほっぺたがおちそうですね〜」
 表情の見えにくい糸目をさらに細くさせて、サーシャも満足気に頷く。
「さて、ではそろそろ本題に入りますか?」
 ラズベリーパイを食べ終えて口元をそっと拭った柚乃が、小柄な忍犬の白房を膝の上に置いて微笑んだ。


「祭りといえば……柚乃はは『安須大祭』を思い出すかな……」
 それは石鏡で行われた大祭である。来風も、名前は勿論聞いたことがあった。
「とても賑やかで、もふらさまがたくさん溢れているんです。特に大もふ様っていう、とても大きなもふらさまがいらして……」
 そう言っている柚乃の顔は思い出したのだろう、うっとりとしていた。自他ともに認めるもふらさま好きなだけはある。今もきっと、もふもふとしたもふ毛が彼女の頭のなかで舞い踊っているに違いない。
「やっぱり、みんなで楽しめるものがいいかなって、そう思う柚乃です。笑顔の花が咲き溢れて、それが陽の氣となって辺りに満ち満ちていくような」
 そう、祭というのは笑顔を作り出す場だ。
「あと、屋台も楽しみですよね。おいしいものを食べると、やっぱり幸せな気分になりますから」
 ――そう、たとえば今のように。
 柚乃は微笑むと、月餅をそっとかじった。

「安須大祭かぁ……あたしの心に残ってるのも、同じだな」
 リィムナがこくりと頷いた。
 聞けば開拓者になりたての頃にあった大きな祭りだったのだという。それからも毎年、少しずつ規模は違えど行われているが、やはり印象に残っているのは初めてのものなのだとリィムナは説明した。
「あたしが参加したのは泥団子合戦と温泉とお泊り会! 泥団子では泥の中に身を伏せるようにして相手方を奇襲したり、温泉では男湯に侵入してイタズラしようとして止められたり。お泊り会ではね、建物の屋根に寝転んで花火を見物して……すっごく大きな花火が上がるのを見て思わず感極まっちゃって、ジルベリアにいる家族に涙声で呼びかけたりもしたな♪」
 祭を思い切り満喫しようとすれば、それだけ体力も精神力も使うといういい例だろう。
「……その頃はまだ家族と別れてひとりで天儀に来たばかりで、やっぱり寂しくてね。よく港に行って、チェン太の寝床に潜り込んで、抱きついて寝てたんだよね……今は家族皆が開拓者になって、一緒に暮らしてるけどね♪」
 経験を積んだ開拓者といえど、やはりまだ子ども。その辺りは普通の子どもと大差がない。炎龍のチェンタウロに目をやれば、当時のことを思い出したのだろうか、小さく鳴いた。


「私は〜地元のお祭りはいくつかありますけど〜印象深いのは冬送りのお祭りですね〜」
 サーシャがこっくりと頷く。マロンケーキを頬張りながら。
「冬送り?」
 比較的温暖なアル=カマル出身のナキには耳慣れない単語なのだろう、目をぱちくりとさせて尋ねる。
「ええ、冬送りのお祭り〜。細かいしきたりとかはいっぱいあるのだけれど〜、説明すると長くなってしまうから〜。さっくり言うと、木と麦わらで出来た人形をこしらえてリボンで飾って〜、それから七日間普通にお祭り騒ぎをして〜、最後に人形を燃やして送る〜、といった感じの素朴なお祭りなの〜」
 サーシャはそう言うと、手元のクレープを皆に差し出して微笑んだ。
「その時にね〜、みんなで食べる伝統的な食べ物が〜、こちらでいうクレープなの〜。本当はちょっと、違うんだけどね〜」
 だから今日はクレープを持参したのだと、サーシャは笑った。なるほど、そういう謂れのある食べ物ならば、確かにこのような場にはふさわしいだろう。
「おいしいものが伝統料理なんですね。こういうのは、やっぱり残していきたい伝統、っていうやつですね」
 来風も図書館で地方の風土などはときどき読んで調べている。けれど、百聞は一見にしかずというわけだなと頷いた。
「ほんとう、美味しいわね。ジルベリアと言っても地方によって随分違いはあるのだけれど……私が印象に残っているのは、やっぱり収穫祭ね」
 クレープをひとくち食べてから、フェンリエッタが言葉を続ける。傍らのからくり・ツァイスも頷いた。
「多分ジルベリアの多くはそうだと思うのだけど……あちらの冬は雪と寒さに閉ざされていて、特に地方の町や村は凍りついたかのように静かになるの。だから、冬を越すための元気を蓄えるみたいに、収穫祭はどこも賑わうわ」
 このラズベリーパイなどもそう言う時に出るの、とフェンリエッタ。
「母の実家が収める領地でももちろん、一際の賑わいを見せるわ。その辺りは森が多いから農業は細々としていて、目立った産業はないのだけど、そのかわりテイワズが多い土地柄を活かして人を耕しているの。日々をより良く丁寧に、楽しく過ごせるようにね。だから農耕の傍ら武芸に励んだり、冬は手工業に力を入れたり……収穫祭はそういった日々の労働や鍛錬、学習の成果を披露する場所になるから、気合も入っているわ」
 ふむふむと、周りの仲間達が頷いている。
「天儀と同じように市が立つのはもちろん、職人の作品や家畜の品評会があったり、あるいは引き取り手を探す退役軍馬も集まるから、方々から様々なお客さんが訪れるの。特に有名なのは剣や弓の腕比べかしら。祖父が現役の頃に始めた催しだから歴史は浅いけど、外の領地からも人が来るくらいに人気があって大賑わい。ただ腕前がいいだけでも駄目だし、志体持ちでなくても皆強くて、生憎私も優勝したことがないくらいよ」
 相当な経験を積んでいるはずのフェンリエッタですら優勝できないというのだから、余程のものなのだろう。誰もが「おお」と思わず声を漏らす。
「そういう祭りは楽しそうです! 実力だめしにもなるんですね!」
 開拓者となってまだ日の浅い方である理桜も目を輝かせていた。


「でも祭りかぁ……理桜はお父さんの商談についていくことが結構あるのですが、そこでたまたま立ち寄った村で行われていたお祭りが面白かったです」
 理桜がそのまま言葉を続ける。
「出店も人もいっぱいで賑やかな祭りだったんです。でも突然、天狗や翁の面をかぶって青竹を持った人達が現れて……集まった人たちのおしりを叩き始めたんです! 理桜も叩かれました……」
 そう聞いてリィムナは目を見開いた。
「ええっ? おしり叩かれるの?!」
 おそらく家族の影響だろう、少女は反射的に手を後ろに回す。
「……と言っても、女の人や子どもは軽く当てる程度なので痛くはなかったんですけどね。リィムナさん、心配してくれたんですか……?」
 理桜は嬉しそうに、またリィムナに擦り寄る。そうやって言葉をかけてくれるリィムナのことを尊敬していると同時に大好きなのだろう。
「あ、うん……でも痛くないんだ、良かったぁ」
 リィムナもほっとした様子。
「でも、大人の男の人は力いっぱい叩かれてましたし、子どもでも元気な男の子には結構力が入っていたかも。ときどきいってー、って叫んでる声が聞こえたし。でもそのお祭りって、そうやってお尻を叩かれることが魔除けになるんだそうです。大騒ぎになればなるほどいいんですって」
 来風はふむ、とそれを帳面に記していく。
「変わった祭りですね〜、でもそういうのって〜、伝統のあるお祭りっぽくて楽しそうですね〜」
 サーシャも微笑んだ。
「ふむ、郷土の祭りといえば、我の郷里では泥んこ祭りというのをやっておるぞ。代かきや神事を田の泥の中で行うのじゃが、最後は子供が皆泥の中に入って泥まみれになって遊ぶのじゃ」
 小萩があけびを齧りながら自分の話をする。「種は苦いからの」と言って、きちんと種を出しながら。
「我はの、その祭りで泥まみれになって遊ぶのが大好きなのじゃ。なにせ神事ゆえ、泥まみれになっても怒られんしの。服は来ておると洗うのが面倒になるゆえ、我は褌だけになって飛び込んだりしておる」
 子どもゆえの羞恥心のなさが、逆に微笑ましい。
「そんな風に楽しい祭りなので見物人も結構おってな。それもあってか、最近はより娯楽性の強い催しも行われるようになっての……案山子コンテストとか言うのもやっておる。手作り案山子の品評会、ではなくて、案山子の扮装をしたものが代わる代わる芸をするのじゃ。案山子というのは決まった姿形があるわけでもないので、ただ歌ったり踊ったり、それだけのために出るものも多いぞ」
 案山子の格好というと、たとえばわらを編んだ傘をかぶって絣の着物と軍手をした姿とかなのだろうか。誰もが少し不思議に思いながらも、小萩の話を聞く。
「酔っぱらいが飛び入り参加もすることもあるし、なんとも緩い感じの祭りじゃな。こういうのも面白かろ?」
 様々な郷土の祭りは、たしかに色々と興味深いものが多いようだ。


「祭りか……アル=カマルにいた頃は、気の緩んだ間抜けの懐からお財布を頂戴するかきいれどきって認識だったからなあ」
 ナキがそんなことをサラリと言うので、一瞬場の空気が凍りついた。それに気づいて、ナキは慌ててフォローを入れる。
「あ、もちろん今はしてねぇぞ? いやマジだって。天儀に来てからは、むしろ色々な祭りに参加する側になってるんだ。ほら、あたしは浪士組の隊士だろ? そちらへの要請で警備なんかをやってる関係でさ、空いた時間とかに参加させてもらってる、ってわけさ」
 浪士組と聞いて誰もが一瞬安堵の溜息を漏らしたのは、気のせいではないのかもしれない。それにしてもいつものことだが、自分よりも幼い少女でもここでは立派な開拓者なのだなと来風はしみじみ思う。
「……んで、天儀の祭りで一番好きなのは……ちょっと待ってな、近藤もこいっ」
 傍らでフワフワしていた鬼火玉の近藤・ル・マンを連れて部屋の影にはいると、ゴソゴソと着替えているようだ。
 そしてややすると、
「じゃーん!」
 飛び出してきたナキの姿は、あらかじめ用意してあったのだろう、半被と白褌。胸元はさらしを巻き、半被の前は腹のところできちんと縛って留めてある。
「天儀の祭りといえばやっぱり神輿担ぎだな! こういう格好でさ、ワッショイワッショイ、ってみんなでやるのがすっげえ楽しいんだ!」
 ナキはまるでおいしいものを食べたかのような満面の笑みを浮かべている。傍の近藤も、おそろいの半被を着てフワフワと嬉しそう。
「そうだ……せっかくここ、庭もあるんだし、今からお神輿やらねえ? 理桜のグライダーに来風を乗せて神輿にして、それに棒二本を縄で結びつければ一丁上がりだろ? それをみんなで担ぐんだよ、面白そうだろ?」
 ナキの提案は一瞬目を丸くさせたが、少女たちはそれに目をキラキラさせて飛びついた。
「それ、何だか素敵! 棒も、荒縄もありますよ♪」
「うむ、面白そうじゃのう」
「来風さんも、ほらほらっ!」
 理桜と小萩、そしてリィムナがまっさきに飛びついた。あれよあれよのうちに理桜の滑空艇「ファイアーフォックス」にちょんとのせられた来風は、そのまま子どもたちにされるがまま、それを神輿として担がれてしまった。
「あらあら、たのしそうですね〜」
 サーシャのおっとりした声に、
「子どもは元気が一番だね」
 そんなことを言うフェンリエッタ。柚乃は目をパチクリさせながら、それでも足元の白房が楽しそうに鳴いている。
「わっしょいわっしょい!」
「わっしょいわっしょい!」
 子どもたちの無邪気な声が、都の片隅で響き渡った。ついにはフェンリエッタたちも吹き出してしまい、何だか誰もが愉快な気分になっていた――。


 ――神無月ニ記ス。
 ――祭事ノ章。
 ――楽シムコトガ、何ヨリノ楽シミ。