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■オープニング本文 ペット愛好者── 例え、世間様から失笑を食らうと判っていても、 愛する家族(決して愛好者に向かってペットとは言ってはいけない)を思う余り、 赤ちゃん言葉で喋り掛けたり、 食事代が己の食事代より高くなったり、 己の食事より愛する家族の食事を優先させてしまったり、 服を着せたり、高い装飾品を与えたり、 あまつさえ己の持ち物に肖像画を刺繍してもらったり、 2ショット絵を懐に忍ばせたり、 うっかり風邪を引いていしまった時は、心配の余り、風邪を引いた事にして仕事を早引けしてしまう。 変じゃない? いえいえ、愛です。 極端だと言われてしまっても無限に愛をペットに注いでしまう愛好者が存在するようにもふらさまを愛する人たちがいた。 元々は── 「もふらさまって可愛いよね〜」 「可愛いっていえば可愛いけど、よく見るとキモ系じゃない?」 「そのキモ可愛系だからいいのよ♪」 「そういえばさぁ、3丁目の辻にいるもふらさまって毛が青いんだよね」 「ええ? 嘘、マジ?」 そんな女子の10人の集まりから始まった趣味の愛好集団である。 いつしかふらさまの姿絵を描いたり、 どこどこにはこんなもふらさまがいる。 もふらさまが家に来た時のお世話方法やら もふらさまと一緒に野良仕事ができるスポット紹介 もふらさま小説が載るもふらさま情報を集めた同人誌「もふらびより」を発行するまでになっていた。 (ここで決して彼女らに「自己満足(?)」と言ってはいけない。逆上した彼女らにボコられるのがオチである) ──だが、ある時会員の一人がぽつりと言う。 「ねえ、最近内容がつまらなくない?」 「そうよね‥」 「やっぱり交代で書くとネタが尽きるのよね?」 そういえば、とある会員が言う。 「この前うちの近所にアヤカシが出て、開拓者が来たのよ。開拓者って各地を回っていたりするんでしょ?」 「人によったらそうなんじゃない?」 「だったら開拓者に頼んで『旅先でこんなもふらさまを見た』って話をして貰うのってどう?」 「いいアイデアかも。ついでに旅の話とかも聞けたら楽しいわよね♪」 かくして微妙な依頼がギルドに持ち込まれるのであった── |
■参加者一覧
星鈴(ia0087)
18歳・女・志
瑞姫(ia0121)
17歳・女・巫
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
四方山 連徳(ia1719)
17歳・女・陰 |
■リプレイ本文 受付においてある巨大もふらさまぬいぐるみに思わず抱きついてしまった瑞姫(ia0121)と秋霜夜(ia0979)。 「はぁ〜〜〜っ♪ もふもふ‥‥(はーと)」 「はふぅ〜癒されます〜」 目が合う2人。 思わず同時に頬を緩ませ、 「もふらさまって可愛いですよね〜」 「むふらさま‥‥可愛いですよね〜」 と声が揃ってしまう。 「もふらさまの可愛いさは、姿形じゃなく存在の可愛らしさでしょうか?」 「それもありますね〜」 後ろが支えていると促された2人は名札と一緒に「もふらびより」の最新号を一冊受け取って中に入っていく。 「もふもふ‥‥はぅう〜っ‥‥‥」 星鈴(ia0087)もまた巨大もふらさまぬいぐるみに癒される一人である。 もふらさまという謎の多い不思議生物の愛好家ならば他で聞けぬ魔の森の手がかりを聞けるかもしれないとやってきた輝夜(ia1150)にツンツンと脇を突っつかれて慌てて取り繕う。 (『大丈夫や。ちゃんと協力するから』) 今だけや〜。とスリスリしてしまう。 開拓者たちを出迎えたのは、手作りのもふらさまグッズにデコレーションされた部屋である。 「さすが『もふらさま愛好者』の集まりだな。もふらさま愛好家──さしずめ『もふりすと』だな」と喪越(ia1670)が感心したよういう。 一方、無料飯に釣られて依頼を受けることにした四方山 連徳(ia1719)や向井・智(ia1140)だが、この手の活動とは無縁の生活である。 「‥‥こういう活動って、実際に見るのは初めてなんですよね‥‥ちょっとドキドキです!」 「ん〜〜こういう時はまったりがいいのよ〜」 可愛い子も多いし、目福だわと葛切 カズラ(ia0725)がいう。 殺伐とした仕事を請ける事が多いカズラが、もふらさまと関わるような仕事はほとんどしていない。が、目をキラキラさせている少女達は目の保養である。 「今日は皆様のお話が聞けるのを楽しみにしていました」 会の代表だという少女がぺこりと頭を下げる。 「すまぬ。我は皆と同様、他の者から話を聞こうと思って同行したに過ぎぬ。我のようなもふらさま歴の短い初心者の意見も必要だとは思わぬか?」 会長が一瞬残念そうな顔をしたが、改めていう。 「そうですね。おっしゃるように同人誌がもっと多くの方に読んでいただくためには必要なことだと思います。ご教示よろしくお願いします」 開拓者たちに席を勧める会員達。 火鉢で湯が沸かされ、茶菓子が用意されている。 「あ、お茶の用意をいたしますね‥‥お茶菓子も用意いたしましたので‥‥」 そういって風呂敷に包まれた重箱を差し出す瑞姫。 用意された菓子と一緒に手土産も皿に手際よく並べていく。 星鈴が作ってきた「もふら巻き寿司」を取り出す。 「金太郎飴みたいにどこを切ってももふらさまの顔が出るんや」 そう言って太巻き寿司を切り分け、これも皿に並べていく。 「食べるのが勿体無いですね〜」 手作り間が溢れる会の準備は整っていく。 皆で動いても邪魔になるだろうと先に席に座った秋霜夜がちょこんと机の上に「もふらのぬいぐるみ」を乗せる。 「あ、これ。万商店で配っている奴ですよね?」 えへへ。とちょっと得意げに無料配布開始初日に当たったという秋霜夜。 「これも、もふらさまのお導きですねっ♪」 ぎゅっと抱きしめる秋霜夜を羨ましげに見る星鈴。 「‥‥ええなぁ‥。はっ、あ、なんでもあらへん、あらへんよ?」 「大丈夫ですよ、きっと。いつか当たりますよ」 こうして会は、簡単な自己紹介の後。 和やかな雰囲気の中でそれぞれが出会ったもふらさまの話し開始した── ●星鈴の話 「うちの出会ったもふらさまはなぁ、仕事中に出会ったんよ」 星鈴はその日、仲間と手分けしてあやかしの捜索を行っていた──。 茂みを押しのけ進んだ先に突然ぽっかりと開いた小さな広場。 『なんなん‥ここ?』 ──ガサっ 小さな物音に薙刀を手に振り向く星鈴ともふらさまの目がバチリと会った。 「お互い猫みたいに目まん丸にしてじーっと見詰め合ったまま動けず、しばらくいたんよ」 その後、懐にあったお菓子をあげ、手なずけたのだという。 「触ったら毛並みが綿飴みたいにモフモフしていて‥その虜になってしもうたんよ‥‥もふもふ‥‥」 その時の感触を思い出し、ほわ〜んと幸せそうに頬を緩ませる。 「その感動は判ります」 多くの者はふ〜ぅと触った時の感動を思い出して全員が同じ顔をしてエへらっと思わず笑ってしまった。 ●瑞姫の話 「あの‥よろしくお願いいたします」 ぺこりをお辞儀をしてから、 「あ、あたしのもふらさまの出会いは‥」と話し始める瑞姫。 「近所にもふらさまを飼っている方がいらっしゃいまして、そこに行っては遊んでもらっていましたね〜」 思わずメンバーから「羨ましい」という声が上がる。 「そのもふらさまは、非常に大人しくて優しかったですね〜」 だが気がついた時、いつの間にかそのもふらさまはいなくなってしまっていたという。 「とても悲しかったですが‥一体何処に行ってしまったんでしょうねぇ‥‥」 当時を思い出し、ちょっとうるっとしてしまう瑞姫。 「後は、この前向日葵畑に行った時なんですが──」 暑そうにしているもふらさまと出会い、水をあげたという。 「他はあたしじゃないんですが、知り合いが逃げたもふらさまを捕まえるという依頼を受けたのですが、大騒動していましたね〜」 そこにはいろいろな性格のもふらさまがいたといって瑞姫は話を終えた。 ●カズラの話 武天の片田舎のとある農村に行った時に発見したもふらさまの話だという。 「時期は少し前、ちょうど田植えの時期ね。そのもふらさまは、怖がりで食いしん坊で──」 突然、村近くの森を恐れるようになったもふらさまを不審がった村人達が開拓者を呼び寄せたのだが、その中にカズラがいたのだという。 「現地で調べたら大きな木があってね。これまた大きな洞があったのよ。そこで私達はあるものを発見して村に持ち帰ったんだけど──」 ソレを見た途端、もふらさまはもふもふと近づいてきて被り付いたのだと言う。 「さて問題? 森にあったものは何でしょう??」 いきなり振られて思わず「おにぎり」と答えてしまう会員番号6番。 「残念。正解は『蜂の巣』でした」 どうやらこのもふらさまは、蜂蜜欲しさに巣に突っ込み。 蜂の返り討ちにあってしまったのだという。 「村に逃げ帰ってからも蜂が怖かった模様、ゆえに森を恐れていたのね〜〜」と笑う。 「仕事以外には、柿を取ろうとして木に登ったら途中で下を見てしまったもふらさまが登る事も降りる事もできなくなって涙目になってた子を見たことがあるわね〜〜」 ちなみにそのもふらさまは、しばらくした後、開き直り、近くの枝に生る柿を取ろうとして枝ごと落ちて、無事に地面に降りられてのだという。 もふらさまらしいエピソードだと笑う一同であった。 ●秋霜夜の話 「そうですね‥あたしの会ったもふらさまも、優しい方ばかりでした」 初仕事で出会ったもふらさまは揺り籠を背負い、子守をするもふらさまだったという。 「ただ、好奇心が強くて──」 赤ちゃんを背負ったまま何か珍しいモノを見かけて追いかけて迷子になってしまったのだという。 「勿論、赤ちゃんももふらさまも無事保護しました」とにっこり笑う。 「もう一人は──『もふたろ』さんと名づけられたもふらさまです」 村人達が禁忌としている森の奥に何故か行きたがるのだという。 「あたし達開拓者が付いていき判明したのですが、森の奥に逸れてしまったもふたろさんの弟さんがいたのです。もふらさまって人にも同属にも愛情深い存在だなって感じています〜」 ほのぼのと聞いていた会員達だったが、突然大きな声を上げる。 「え、弟ですか?!」 にじり寄る会員たちの迫力に何かマズい事を言ったのだろうか? とビビる秋霜夜。 「えっと‥小さいもふらさまです。もふたろさんの弟みたいな感じで‥」 「そうですか‥」とあからさまにがっかりする会員達。 「あの‥?」 もふらさまに血縁による兄弟関係が成立することが確認されたら大発見だったと言われてびっくりする秋霜夜だった。 ●喪越の話 「もふらさまの話? それを俺に聞くか‥‥フッフッフ‥‥」 怪しい丸めがねを光らせた喪越。 「アミーガス──君は知っているのか!? 開拓者の間でまことしやかに流れる四匹のもふらさまの噂を」 「遺跡や森で迷っている人の前に現れ、鼻歌交じりに出口にまで案内してくれる青いもふらさま──人呼んで『風読みの青龍』! 悩みを抱えている人がある竹林に行くと、静かに瞑想に耽る漆黒のもふらさまが現れ、ひたすら愚痴に付き合ってくれたお陰で悩みが解消する──人呼んで『林の中の像の玄武』! 獣を狩るために追い掛けていると、いきなり横に並んでスピード勝負を挑んでくるという赤いほうき星──人呼んで『火遁の朱雀』! 雪山で遭難した人がいると、そっともふもふな身体で包んで温めてくれる純白の天使──人呼んで『泰山の白虎』! これぞ、風林火山。もふらさま四天王!!」<ドドーン!(全員が一瞬、謎の効果音を聞く)> 「一匹でも大変有難い上に、全てのもふらさまに出会うと、その開拓者は必ず成功するという──」 おお〜っ! と参加者達から声が上がる。 「──という訳で俺のプレゼン終わり。こんな感じで、もふらさまについてまわる都市伝説を集めたページを作ってみても面白いんじゃねぇかと」という喪越に「なに?」と全員の視線が集まる。 「今回は俺が原稿を書いても良いぜ」 四歩六で六、俺ね。と笑う。 簀巻きにされて放り出されそうになった喪越に「面白そうだ」という会長。 「根も葉もない都市伝説ですよ?」 「道案内と雪山遭難救助の話は、もふらさまならありえるかなって‥」 全員の話を聞き終わった後、新刊の企画についていい案があれば教えてほしいというツルの一声で一命(?)をとり止めるのであった。 ●連徳の話 「うむ、拙者の豊富な人生経験から色々あることないことをお聞かせするでござるよ」 円卓を囲む一同の顔を真面目に見回し、嘘をつく時は相手の目を見て話すという連徳が口を開く。 「うむ、あれは何年前のことでござったか‥‥今はアヤカシの跋扈する魔の森に埋もれてしまった、地図から消えてしまった集落でござる」 理穴の東にある小さな集落で出会ったもふらさまの話だという。 そのもふらさまは、大層鼻の利く‥というよりも色々と鋭い感覚を持ったもふらさまがいたのだという。 「『ここ掘れもふもふ』といった感じでござろうか?」 もふらさまが示した場所を掘れば、必ず何かしら出てきたという。 「人骨、珍しいキノコなど、色々あり申した」 ただ1回だけ、どうみても子供の頭位の石コロにしか見えない物が出てきたのだという。 「今思えば、もしかすると何か宝石のような物だったかもしれませんな?」 そんな感じで、珍しい物を見つけてくれる事が多かったもふらさまは、珍しい物を見つけるもふらさま‥略して『珍しさま』と呼ばれていたでござるよーという連徳に、「汝は、その場所を今でも覚えているか?」と輝夜が尽かさず尋ねる。 「えー、いやぁ‥拙者もあちらこちらを旅しておるし、何年も前の話でござるので‥まあ、いずれ思い出したら話すかもしれないでござるよー」 色々突っ込みたい輝夜であったが、「空気読めない」奴だと思われるのは困るために大人しく座った。 ●智の話 ガツガツと参加者達の話を聞きながら食べていた智だったが、自分の番が回ってきたので手を止める。 「私の旅の経験が少しでも役に立てばよいのですが‥‥」 智の出会ったのは、アヤカシに襲われた荷馬車の荷物回収の時であるという。 アヤカシ退治の傍らで出会ったもふらさまは、ちいちゃくて藍色の目をしていたのだという。 「抱きしめて撫でてあげると気持ちよさそうに目を細めてくれました! 本当にもふもふしているんですよね、もふらさま」 はにゃ〜んと触った時の感動を思い出して全員が同じ顔をしてエへらっと笑ってしまう。 「とっても人懐っこくて良い子でしたよ!」 うんうん。と皆で頷く。 2つ目は、智が故郷の森で出会ったももふらさまの話である。 「あれは野生のもふらさまだったのでしょう、たぶん」 出会ったのはちょっと大きめの白いもふらさまだという。 「子供の頃の、良い友達でした」 背中に乗せてもらったりしたというと「羨ましい」とあちこちで声が上がる。 こうして、多少の波乱を含み語り聞かせは終了した──。 ●企画会議 様々なアイデアが出され、それを丁寧にメモをする会員達。 『しんこ細工』はイラストをつけるのは楽しそうだが自分たちで作らず職人を頼む分、コスト高になるので難しいといわれた秋霜夜が別の提案をしてみる。 「もふらさまの魚拓ならぬ足拓を頂戴して、それを掲載したらどうです?」 「あ、それ可愛いです♪」 ぷにぷにの肉球を想像し、笑みを浮かべてしまう一同。 「もふらさまはいつになったら飼えるようになるんですかね〜? 早く飼ってみたいですね〜」と瑞姫が溜息を吐く。 「もふらさま、なぁ。あの子って犬‥なんかな?」と星鈴。 「そういえば、この同好会じゃもふらさまを飼っていねぇのか? せっかくなんだしマスコットを兼ねて飼ってみたらどうかなぁ」 成長記録だけでも魅力的なネタになるだろうし。と喪越がいう。 「確かに観察記録は、皆様がおっしゃるようにもふらさまの生態を知るのにやってみたい企画なんですが‥」と会員達が顔を見合わせ、 「私達の支持する説によれば、もふらさまは土地神様や精霊に近い存在となります」 捕まえて飼育するのではなく来訪を待つ形になるので中々難しいです。と会長が続けた。 「アヤカシともふらさま。瘴気と精霊力という全く正反対のものなのに、どちらも死んだら死体を残さず消滅するなど類似点があるしな」 調べてみたいと思わないか? と輝夜が尋ねる。 「そうですね‥自分達だけでは確認できない事も多いですから、その内またギルドにお願いするかもしれません」 とりあえずはもふらさまを見かけたらマスコットとして来て貰えないか、交渉してみると会長は笑い、今日はとても為になったと開拓者達に礼をいった。 こうして会はお開きになった── が、愛好者の少女達より先にもふらさまに遭遇した者がいた。 土産に貰った饅頭でもふらさまを釣ろうとする喪越。 饅頭を食べているもふらさま手を伸ばす。 「よーしよしよしよしよし」 野郎に馴れ馴れしくされるのが嫌いなのか。それとも飯の邪魔をされるのが嫌なふらさまであったのだろうか? ──ガブリ! 「●@☆∴#▼≦%■$↓⊇♂♀←∀!!」 声にならない悲鳴を上げる喪越であった。 |