|
■オープニング本文 開拓者ギルドより3町ばかり離れた街角に「萌き屋」という茶屋がある。 店長兼厨房は着流しに身を包んだ細身で漆黒の長い髪を襟足で一つに止めた中性的な「青葉」。 フロアはたゆんと豊かな胸と太股ギリギリの丈の短いカスタム小袖に前掛け、くりりんとしたウェーブに猫耳、大きなピンクのフリルリボンをつけた天然系「恋に恋する万年少女」の「紅葉」。 太い黒ブチの眼鏡に二つに分けた三つ編みに赤いリボン。絣に紺袴に割烹着の優等生的美少女「若葉」、何故かうさ耳を着けた美童子「双葉」という四兄姉弟が店を切り盛りしていた。 揃いに揃って見事に店員全員が美形というだけではなく美味い安い早いと「萌き屋」は評判の店であったが、それが幸いしたのだろう。どこか近くのライバル店から恨みを買ったのだろう。 連日、店の前に残飯の山が置かれるようになった。 「だぁああああーーーーーーーーっ! 犯人をとっ捕まえて尻に残飯突っ込んでやりましょうっ!」 ウサ耳を揺らし乍ら「ガッテム!」と拳に青筋を立て怒るのは双葉。 「ふたばちゃん、そんなにプリプリおこるとぶ〜(不細工)になっちゃ、よ〜?」 ギッ! っと物凄い目つきで紅葉を睨む双葉。 「ふにゃ〜ぅ(涙目)わかばちゃん、ふたばちゃんがおこった〜ぁ」 若葉の胸で「お姉ちゃんなんだから泣いちゃ駄目ですよ」と宥められる紅葉。 「まあ、双葉君が怒髪天に来るのも判りますが、ここで騒ぎを大きくしては商店街の方や折角ついてくれた常連さんにも御迷惑が掛かりますね」 ふ〜む。と青葉が腕組をしていう。 誰に見せる訳でもないのに無駄にキラキラと1つ1つの仕種が美しい。 「ケッ! どうせ青葉に横恋慕したマダムか親父の嫌がらせだろうけどよ」 ピキっ! 静かに聞いていた青葉の表情がそのまま凍結した。 「その、汚い言葉を吐く口は、どの口です?」 ゴゴゴゴッ── 部屋の中に立ち篭める暗雲の幻影に恐怖の余り泣くのを止めビビりまくる紅葉。 青葉にこれ以上広げるのは無理、という最大Max状況まで両頬を引っ張られる双葉。 「ふぇふぉふをぅ!」 「何を言っているのか聞こえませんねぇ‥‥」 ふっ。と闇笑いを浮かべる青葉の後ろに巨大蛇(稲妻の幻影プラス)を見る。 「双葉ちゃんを虐めるのは時間の無駄ですよ。第一、青葉ちゃんが無駄に色気を振りまいているのは事実でしょう」 きっぱりスっきり斬り捨てる若葉。 さすが家族である、口が悪い。 「二人が喧嘩すると紅葉ちゃんが怖がるじゃないですかっ。紅葉ちゃんの笑顔は、ウチの大事なウリなんですからね」 「いや‥‥‥怯えた顔もなか──」 「そう言うドS発言は、却下です」 何時の間にか若葉の両手の指の間全てに金串が握られていた。 *** 「だからぁ〜あおばちゃんとふたばちゃんがプチっすると、もみじはちょブルになっちゃうの」 「?????」 受付台の上に大きな二つのメロンのよう置かれた紅葉の胸をなるべく見ないようにし乍ら依頼内容を書き留めていた担当者が怪訝な顔をする。 「つまり、アレです。うちに嫌がらせしている犯人を見つけて欲しいんです」 残飯が置かれるのは萌き屋が店を閉店し、周囲の店が閉まり人通りの無くなった深夜から早朝に掛けてからだという。 「もみじはおそうじすきだからゴミはへいきだけど〜ぉ。もふちゃんがこなくなったのはかなしいの」 へにょっと紅葉が何かを思い出して美眉が下がる。 「???」 「うちの店に夕方くらいになると時々もふらさまが来てくれてたんですよ」 「ああ、もふらさまは不浄が苦手ですからねぇ」 「わかばちゃん、ゴミがなくなったらもふちゃんもどってくれるかなぁ」 もふちゃんはだきゅっとするともふもふできもちいいの♪ 紅葉の大きく開いた合わせの間から「ぱるん♪」と胸がはみ出しそうになるのを慌てて押さえる若葉。 「見ての通り、姉の紅葉は他人に対して完全無警戒なので身元のしっかりした人御願いします」 ぺこりと頭を下げるしっかり者の若葉であった。 |
■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074)
16歳・男・サ
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
蓮見 椿(ia0512)
32歳・女・陰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
憐華(ia1089)
12歳・男・巫
紫鈴(ia1139)
18歳・女・巫
瑠璃紫 陽花(ia1441)
21歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● 夜も明け切らない早朝。準備中の札が掛かる萌き屋に仲居斡旋業者に年若い女性が4人──もとい、男女4人が連れられてきた。 「萌き屋‥‥」 古い茶屋のたたずまいに獣耳というポップカルチャーと言うミスマッチ。 やっていけるのだろうか? と瑠璃紫 陽花(ia1441)が不安そうに看板を見上げる。 依頼を受けた開拓者の内、臨時アルバイトとして店に入り込む4人の内の1人である。 斡旋業者も勿論、彼らの仲間である。 偏に依頼者である店側の要望に沿っての偽装工作であるが「どうだろう?」的思いが強い。 オドオドしながら開店前の店内に入る。 「おはようございマウス〜っ♪ みんながきてくれて、ベリベリはっぴ〜ぃなの♪」 ネズミ耳をつけた紅葉が一行を出迎える。 どうやら獣耳は紅葉の標準装備らしい。 「中々酷い嫌がらせだな。早く何とかしないと掃除をしている紅葉の体調とか、ストレスで客に対して双葉が暴れないかとか‥色々心配だろう‥それにもふらさまも可哀想だし」 生ゴミの話を改めて聞いた紫鈴(ia1139)が言う。 「残したご飯で悪さなんて‥お米の神様の罰が当たります!」というのは、食べるの大好き少女、秋霜夜(ia0979)である。 「根本的にご飯を残す方が悪くない?」 アルバイト役の開拓者の面倒を見る事を仰せつかった双葉だが、年の近い夜と憐華(ia1089)には、しっかりタメ口である。 「ところで‥ホール担当は、紅葉さんみたいに育っていないと駄目?」 偶然にも女性3人は、紅葉に比べると慎ましい胸の持ち主であった。 『お色気』で商売していないので全く関係ない。という答えがすぐ返ってくる。 ここでふと、重要なことを思い出す秋霜夜。 「‥あたし、拳士の装備しか持っていない」 制服があるなら借りたいという一同に兄弟の箪笥から適当に服が選ばれ持ってこられた。 ハンガーに並んでいるのはは、キラキラとふわふわ、ヒラヒラ‥挙句、ショート丈の巻きスカートのような物迄ある。 「あの、おのこようのせいふくは、ありますか‥‥‥?」 「これ、俺の‥青葉の趣味なんだけどさ。‥ま‥普通そうだよな」 フッ。と自虐的な笑みを浮かべる双葉。 「そ、そんなつもりじゃあ‥‥あぅ‥‥いもうとには、ぜったいにみせられないですよぉ‥‥」 覚悟を決めて一番ヒラヒラが少なそうなブラウスを取る憐華。 一方、秋霜夜と顔を見合わせた陽花もオドオドと尋ねる。 「‥これしかないんですか?」 「若葉のじゃあ丈が長いし、紅葉のじゃ胸が余るし、サイズ的にはOKだろ?」 サイズは合うかもしれないが、男の子である双葉の服を借りるのはどうだろう? という事なのだが、どうやら双葉には伝わらなかったようである。 「まあ、どうしても。っていうのなら獣耳とエプロンか前掛けでいいから」 結構アバウトである。 ● 「所で嫌がらせが始まった前後におかしいことはなかったですか?」 店の窓の隙間から外を伺っていた三笠 三四郎(ia0163)が尋ねる。 仲居の斡旋業者として来店しているのでいつも腰に下げている剣は附帯していなかったが、仲間しかいないこの状況では、身分を隠す必要はない。 「そう、それに実行犯だけでなく、黒幕も仕置きしないとな」 若葉からお茶を受け取った雪ノ下・悪食丸(ia0074)が言う。 証拠揃えたりと裏を取らなければ黒幕が捕まえるのは、難しいと言う。 「そういうものなんですか?」 「しらばっくれて逆にこっちが悪者にされるし」 「‥そうだな。相手に地位があれば余計、こちらは若輩者。いい加減なことを言うと難癖をつけられるだろう」 「嫌がらせの黒幕になりそうな奴に、心当たりはないか教えてくれ?」 闇雲に調べればこちらの同行を黒幕に知られ状況が悪化したり、取り逃がす可能性がある。 そういわれて顔を見合わせる兄妹達。 元々他国に住んでいたのだが、家をアヤカシに襲われ、身寄りが兄弟達だけになったのをきっかけに都にやってきたのだという。 店を構えて1年。 ようやく兄弟が食べていくに困らない程度の売り上げになったばかりであるという。 「うちのように茶屋を営む店はこの周辺にも多数ありますが、うちの場合はメニューも周りと被らないようにしているのですが‥‥」 とりあえず店員が獣耳をつけているような店も心当たりがない。 大店が、萌き屋を買収したいという話も聞かないと言う青葉。 「個人的に援助を申し出てくれる方は何人かいますが‥まあ、裏があると困りますし、1人様だけですと角が立つので全てお断りしています」 「断られた相手を書き出してくれるか? 断られたのを逆恨みして──というのもあるだろう」 店が引けたら他の仲間を含めて再度集まる事を約束し、店の裏口から袖にされた人リストを手にこっそり出る悪食丸。 市場に買出しに行くという青葉と若葉には三四郎が仕入先から話を聞くとついていき、開店準備をする双葉と紅葉を4人が手伝う事になった。 「早くもふらさまが、また来てくれるようになるといいですね」 茶碗を運ぶ陽花が、ネズミから猫に獣耳を交換した紅葉を見かけて声をかける。 「うん♪」 無邪気な笑顔に少しやっていけそうだと安堵する陽花であった。 ● 「このお店の屋号って、なんて読むのかしら?」 常連客から情報集めをしようと思ってやってきた蓮見 椿(ia0512)が、ふと看板を目にして言う。 「これは『もえきや』って読むんだよ」 後ろからやってきた常連客らしい男が言う。 「ここのお店は初めてなんだけど、お席ご一緒しても、宜しいかしら?」と男に尋ねる。 どうせ、この時間は混んでいて相席になるから構わない。と男は答えた。 男の言うように朝だと言うのに店内は混んでいて、空いている卓がない。 場所柄というのもあるのだろうが、見れば飛脚や旅姿の者に混じって開拓者風の者や歌舞伎者も幾人かいる。 だからといって男ばかり。という訳でもなく女性客もそれなりにいた。 その間をいそいそと臨時アルバイトが飛び回っている。 普段、アルバイトを雇わない萌き屋が珍しいと常連客から色々話しかけられていたりする。 「君、可愛いね。BFとかいるの?」 「はぅ!? ボクは、おのこです〜!」 客に手を握られた憐華が涙目で答える。 普段、この手の客商売をした事がない紫鈴は、 「い、いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」 ひきつった笑顔でオーダーを取っていた。 それでもチラチラと店内に不審者がいないかチェックする。 厳ついサムライ風の男の前に粥を置く紅葉。 にっこりと無邪気な笑顔を向けられて男が赤くなる。 (「‥しかし、紅葉を見ている男の人は皆、視線が怪しいな」) 無防備な迄開いた胸元や裾丈の短い服がいけないのか。 にこにこしながら席の間を歩く紅葉の胸や尻をあからさまに見つめる者は少なくない。 (「全く男って言うのはこれだから‥‥‥‥‥はぁ」) 思わず己の胸に手をやった紫鈴の口から溜息が出た。 (「いや。私の方がしっかりしなくてはな」) 嫌がらせでストレスを感じているだろう兄弟達は、そんな事をおくびにも出さずニコニコとしながら対応をしている。 (「プロ根性か‥」) これはこれで良い経験なのかもしれない。と思う紫鈴であった。 席に通された椿と常連客も他の客と相席である。 座るとすぐに紅葉がお絞りとお茶、メニューを持ってきた。 「おきまりになりましたら、こえをおかけください」 にっこりと笑って席を離れていく。 「あの猫耳の方、なんだか元気がない様に見えるけど、どうしたのかしら?」 相席の男はチラリと紅葉を見た後、最近もふらさまが来なくなって気落ちしているらしい。と答えた。 ──どうやら噂話が好きらしい。 「こちらの人は、美男美女ばかりらしいですね。やはり、彼女たち目当てのお客さん等も居るんでしょうね」 男によれば、客の半数はソレ目当てだという。 椿が探りをいれた限りでは、敵対するような競合店や兄弟に恨みを持つような者はいないようである。 「がう! ろうざ きた! コンニチハ!」 元気よく暖簾をくぐってきたのは、ロウザ(ia1065)である。 ある意味、とても目立つ彼女である。 堂々と店に客にやってきたのだが、お茶とメニューを持ってきた双葉を見た途端、ニィ〜と笑う。 「ふたば うさぎ! ろうざ うさぎ すき!」 「残念乍ら今日のメニューにウサギは入っていません」 それより早くオーダー言えよ。と態度が悪い。 が、そんな双葉を見ていたロウザの口から涎がツーぅと垂れる。 「うさぎ‥ うまい!」 食われるのではないかと青くなる双葉。 「だめなの。ふたばちゃんはパクりんしちゃ。パクりんするなら、あおばちゃんのごはんなの」 泣きそうなへにょり顔でポカポカとロウザの背中を叩く紅葉。 (「可愛い(虐めたい)っ♪」) グッと見えないところで拳を握る椿。どうやら女王様のハートに火をつけてしまった様子である。 「あおば ごはん?」 「ちょベリ美味(うま)だよ♪」 先程まで忙しそうに給仕をしている双葉を目で追っていたロウザであったが、今は机一杯に並べられたお薦め料理をキラキラとした目で見つめている。 「ごはん! おいしそ! イタダキゥマス!」 山盛り白飯を前に手を合わせると一気にかっ込んでいく。 お櫃が1つ、2つと、空になり── 「ゴティォーサマ!」 パチンと両手を合わせるとゴロンと横になる。 「ろうざ おなか いっぱい! おひるね する!」 寝息を立てて寝入ってしまう。 「寝るな、起きろっ!!」 双葉が体を揺すっても一向に起きないロウザ。 「いいじゃないですか、双葉君。なんともまぁ‥幸せそうに寝る方だ」 白飯を炊き直す時間、店は臨時休業である。 ● 店が引けた後、全員が店に集まり、今日一日の結果を確認する。 「ラブレターやプレゼントを渡す人もいたましたが、お稚児さんとか恋人になって欲しいとか‥なんだかもう‥‥」 近くに住み日に何度も来る人もいたが、朝から晩までいたのはロウザだけであった。 「あたしも業者さんから気になる情報は聞けませんでした」 「周りの店からの評判もいいな」 「競合店の嫌がらせ説は、厳しいかな?」 「袖にされた方はどうです?」 「まだ、リストの半分だな。こればっかりは本人に尋ねるわけにはいかないからな」 こうなると実行犯から攻めていくしかないようである。 だが、敵にこちらの存在を気がつかれないようにするには、すばやく動くしかない。 「ろうざ みせ まもる! あおば もみじ わかば ふたば にこにこ えがお まもる!」 がぅ! とロウザが言う。 「しょうがない。実行犯をとっちめて白状させるか」 大事の時に眠らないように店の奥で仮眠を取る開拓者達であった。 ● 多くの店が引けてると一気に通りから人の姿が少なくなる。 「ろうざ みはる! しごと しゅうちゅう」 三四郎とロウザ店の屋根に、それぞれが物陰から萌き屋の店先を見張る。 クンクンと空気の匂いを嗅いでいたロウザの動きがピタリと止まる。 「におい かわった‥ ろうざ かりの じかん」 オオォーン──空に向かって遠吠えをするロウザ。 (「来たか──」) ロウザの遠吠えから間もなくガラガラと残飯を積んだ台車を引く男が3人現れた。 萌き屋の店先で台車が壊れたふりをして人影がなくなるのを待つ男達。 (「まだまだ、だ‥」) ゴミを撒き始めるのを見計らって男達の後ろから忍び寄る。 「ちょっと、着物が汚れちゃったじゃない。どうしてくれるの?」 驚く男達。 「何んだ、てめ──」 急所を椿に蹴り上げられ男は言葉を続けることを出来ずに蹲る。 それに当身を食らわせる悪食丸。 「一丁上がりっと‥なる程、武芸者や開拓者崩れではないのだな」 「にがしませんよっ」 逃げようとする男に通せん坊をする秋霜夜と憐華、陽花。 小柄の3人を突き飛ばし逃げようとする男の顔に紫鈴のお手玉が当たる。 一斉に飛び掛り、男を押し倒し、こちょこちょと全身をくすぐる。 「ぎゃ、は、はっ‥‥ひーっ、や、やめっ‥うひゃひゃひゃっ!!」 残る1人が懐に手をやるが、その手を掴む三四郎。 「それを抜けばこっちも本気にならざるを得ません。覚悟があるなら抜け──」 正面に立つロウザが鬼のような顔をして睨んでいる。 男は、覚悟を決めて大人しく懐から手を抜いた。 ──斯くして実行犯3人を取り押さえた開拓者達。 「どうやらこの3人だけのようだ」 周囲を見て回って店に戻って紫鈴がそう報告する。 「面倒ごとはごめんね。当事者同士で何とかして頂戴」 仕事は終わりだとその場を立ち去る椿。 「確かに私達が出来るのは、ここ迄ですね」 力ずくで実行犯の口を割らせることは出来ない。 黒幕を含めてお上に訴えるかを含めて、どうするかは兄弟たちが決める事だという。 「ボクたちがうかがうと、ししょうが出るかもしれませんから、おねがいしてよろしいですか?」 「判りました。この後は私達でなんとかします。皆さんはお引取り頂いて結構です」 青葉が厳しい顔で言う。 「ろうざ のこる! ろうざ うそ わかる! しっているか? うそつく あせ でる! ろうざ におい わかる!」 獣のようにグルグルと実行犯達の周りを回るロウザ。 「あたしも残ります。皆さんだけでは危険ですから」 「黒幕が穏便に済ませるつもりがなかった場合には、サムライも必要だろう」 「ありがとうございます」 そう頭を下げる兄弟であった。 実行犯が白状した黒幕の名前は、リストにもあった双葉にしつこく迫っていた近所の金持ち親父であった。 ちっともなびかない双葉が可愛くも憎らしくもあり、また、年端の行かぬ双葉に入れあげる姿に周囲の目も気になって、思い誤り、事に至ったのだと言う。 「双葉君の泣き顔が見たという欲望がつい、ムラムラと‥」 「じゃカマしい。この、変態親父っ!!」 双葉に鉄拳を食らい鼻血を出す親父であったが、幸せそうである。 店への出入り禁止やお上へ訴えない代わりに二度と嫌がらせをしないように約束させ、親父の家を出る。 「一時はどうなることかと思ったが、これにて一件落着かな?」 「いっけんらくちゃく‥みんな、こないのかぁ〜ざんねんなの」 そういう紅葉に元気よく手を上げ宣言する秋霜夜。 「人手が必要な時は何時でもお手伝いにきますねっ♪」 「今度は女の子用の服を用意しておきますよ」 明るい笑声が清々しい朝日の中、響くのであった──。 ──後日、萌き屋で飯を食べていた悪食丸が茶を注ぎに来た若葉に、親父はどうなったかと尋ねる。 それによれば、ふっ切れた親父は、ミーハーなおば様たちに混じって堂々と双葉へのプレゼント攻撃をしているのだと言う。 「野良猫を魚で手懐けたいとかに近いのかな?」 「まあ‥スカートじゃなければ」 そう笑う若葉だった。 |