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■オープニング本文 ● もふら牧場は今日ものんびりとした時間が流れていた。 体長五尺の淡藤色のもふら・磊々さまとそのお世話係の瓜介は、いつものように陽光の下で仕事に励んでいた――無論、励んでいるのは瓜介だけだが。 『はあ……ここのところは何事もなく、平和なものじゃのう』 「そうですねえ。開拓者の方々にお会いできないのが残念ですが、事件がないのはいいことだと思います」 磊々さまの呟きに瓜介は苦笑する。 と、そこへ小さいもふらさまたちが『ライライサマー』と呼びながら、ほてほて駆けてくる。 『なんじゃ、チビども』 磊々さまが寝そべったまま問えば、小さいもふらさまたちは口々に言った。 『あの黒いひとよー もふ』 『ライライサマにお手紙ー もふ』 『カワウソ殿か。手紙とな? お世話係よ、読んでたも』 手紙を受け取って、瓜介は開いてみた。 亥月の丶 お祝い奉る 月魄降臨奉り 瀑布を照らし 昏黒をはらいたもう 云々…… そして、しょっぱなから読めずに口ごもった。 「……磊々さま、申し訳ありません。何て書いてあるんでしょう?」 ひどく情けない顔をして手紙を差し出す。 磊々さまは、やれやれ、と紙面を覗き込んだ。 『がいげつのともしび、おいわいたてまつる。げっぱくこうりんたてまつり、ばくふをてらし、こんこくをはらいたもう…… ふむ。満月の日に九霄瀑泉で開かれる月精へ感謝を捧げる祭りに招待するとな。こたびは開拓者たちにも世話になった故、彼らにもということじゃが、条件がついておるの』 「条件、ですか? どんな……?」 『祭りに必要な供物を調達し、料理せよと書いてあるのう』 「……え……」 『団子、山菜料理、木の実、魚――これらを精霊たちとともに山川へ採りに行き、料理せよ、ということらしい』 「ええと……それは、私も、でしょうか」 『無論じゃ。……まあ、料理は『神』に捧げた後、自分たちが食すものじゃがの』 「ああ……ええと、ヒモロギ、と言うんでしたっけ」 『うむ。胙じゃ……それと、精霊たちはあの湖の上で舞を献上するようじゃ。開拓者も舞える者がおれば、九霄瀑泉の主と月魄――月精の御前で舞ってもらえぬか、ともある……さて……』 磊々さまは少し考えているようだったが、ひとつ頷いた。 『お世話係、開拓者ギルドへ行って参れ。わらわたちと面識ある者かどうかは問わぬ。まあ、精霊の祭りゆえ屋台も何もありはせぬがのう。人界でも月見の祭りは開かれておろうが、興味があればご招待申し上げる、とな』 「はい!」 |
■参加者一覧
水月(ia2566)
10歳・女・吟
燕 一華(ib0718)
16歳・男・志
宮鷺 カヅキ(ib4230)
21歳・女・シ
玖雀(ib6816)
29歳・男・シ
鍔樹(ib9058)
19歳・男・志
フィリア・M・ガレット(ib9607)
20歳・女・ジ
ジョハル(ib9784)
25歳・男・砂
大谷儀兵衛(ib9895)
30歳・男・志 |
■リプレイ本文 ● もふら牧場へと集まった開拓者たちの一人、フィリア・M・ガレット(ib9607)は、磊々さまを見て感嘆の声をあげた。 「まぁ、大きなもふらさま……! 今日はよろしくお願いします。……あとでもふもふさせてもらってもいいのかしら?」 微笑んで一礼したフィリアは、磊々さまの柔らかそうな毛並みを見て呟くように言った。 『ほほほ。いくらでも』 磊々さまは鷹揚に頷く。 玖雀(ib6816)は、磊々さまへの土産だと言って『もふ殺し』を差し出した。 「今日はありがとな。土産だ」 『おお! これはこれは……招待の礼ならばカワウソ殿に申し上げるのじゃな。無論、玖雀殿の心遣いはこの磊々、無にはせぬぞ! ――これ、お世話係よ。玖雀殿から酒をもろうたぞ。名前を書いてたも!』 「はいはい。玖雀さん、どうもありがとうございます。皆さん、馬車の用意ができましたので、どうぞ。さ、磊々さまも」 『うむ』 玖雀にペコリと一礼し、『もふ殺し』の瓶に名札をつけながら言った瓜介と磊々さまを見ながら、鍔樹(ib9058)は首を傾げた。 (んあ? 淡藤色のでっかいもふらに、お世話係の坊主? ……どっかで聞いたような組み合わせだけども……誰からの話だっけ……ま、細けェことはいっか) 「お招きもらえたハレの行事だ、楽しむぜ!」 それへ、重々しく頷いたのは大谷儀兵衛(ib9895)である。 「まったくだ。旨いものと舞を楽しめると聞いて、黙ってはおれんだろう」 そう言って手をこすり合わせた。 馬車は山道を進み、ある渓谷に到着した。 黒いカワウソが既に待っており、馬車から降りた開拓者たちにかしこまって一礼した。 『ようこそお越しくだされた』 「ほんじつはおまねきいただき、ありがとうございます……なの。……精霊さんには日頃からお世話になってますし、今日はいっぱい喜んでもらえるよう頑張る、の」 そう言って、白銀の髪を揺らして挨拶した水月(ia2566)に、 『おお。それはそれは楽しみでございますな』 カワウソはぱかっと口をあけて笑うと、丁寧に返礼する。 それに続くようにして燕一華(ib0718)が元気よく言った。 「精霊さんたちの宴にご招待いただけるなんて、嬉しいですっ。滅多にない経験ですし、張り切って料理も舞も披露させていただきますねっ」 目を細めて『うむうむ』と頷いたカワウソは、次に現れた人物を見て『おや』と呟いた。 『貴殿はいつぞやの……』 ジョハル(ib9784)は微笑み、軽く首を傾ける。 「まさかカワウソ君に再会できるとは思わなかったなぁ」 (……この世の境にも、また来られるとは……) 続いた言葉は、彼の心で呟かれたものだが――。 ひととおりの挨拶を終えた後、カワウソの先導に従って歩きはじめる。 「お月見、か……もう秋になったのですね……」 朝日が昇り始めた空を見上げ、宮鷺カヅキ(ib4230)はぽつりと呟いた。 ● どこをどう通ってきたものか分からないうちに、開拓者たちの前には轟々と流れ落ちる大瀑布と、それをゆったりと抱える巨大な湖が広がっていた。 滝の上空はけぶって見えず、日の光にきらきらと虹が踊る。空には彩雲が流れ、濃い青から透明に色を変える湖と、深い木々の緑――。 初めてこの『境界』に足を踏み入れた開拓者たちは皆、圧倒されたようにその光景を見つめていた。 『では、ご案内申し上げました通り、供物の調理に取り掛かりまするが、分担は決められておりましょうか?』 カワウソの問いに、フィリアが笑った。 「ミヅキと果物を探さないとね」 水月がこくりと頷く。 「ん……わたしはガレットさんと一緒に果物や木の実を取りに行くの。一人じゃ心細いですけど……」 『ご安心くだされ。案内をつけますゆえ』 「魚釣りは暇人……いや、気の長い者に任せてもらおう」 言ったのは儀兵衛。 「俺は儀兵衛さんと一緒に川へ魚釣りだな。海と川とじゃ、勝手が違うだろうけどよ。こちとら曲がりなりにも漁師の息子だ。手ぶらで帰りゃしねえぜ」 景気よく言った鍔樹はさっそく準備に取り掛かる。小さな人型の精霊が儀兵衛と鍔樹に釣り竿を差し出した。 ジョハルと一華が白い子狐と一緒に調理場の準備に取り掛かる。 「団子用の米は持ってきたぜ。鎖分銅で砕こうと思うんだが……」 『おお。ありがとうございまする。鎖分銅……それはかなりの重労働ですな。これ。そなた石臼へ化けよ』 カワウソは振り返り、狸に言う。 「えっ」 目を丸くした玖雀に、『冗談でございますよ』と笑って石臼を持ってくるよう言いつけた。 兎が後ろ足で立って、木通があると告げた。 少し高いところにあるそれは、フィリアが手を伸ばしても届かない。 「……ねぇミヅキ、肩車されてみないかい? 大丈夫。私は義足だけどそれなりの力は持っているからさ」 飛び上がろうとしていた水月は、ちょっと考えると嬉しそうにこくりと頷いた。 フィリアに肩車された水月は、手が届く範囲で木通を採る。 案内の兎は山葡萄や栗のある場所へ移動し、柿はさすがに肩車でも届かず、水月は『ナディエ』で実をもぎ取った。 「果物がたくさんとれてよかったね。ありがとう」 「私も、ありがとう、なの」 フィリアが水月の頭を撫で、水月はにっこりと笑った。 鍔樹はしなりのある小枝を集め円錐状の罠をつくりながら、脇で面白そうに眺めている精霊に説明などしている。 「魚が逃げない程度の隙間で、中は空洞に……んで、円錐の底の枝を内側に折って、漏斗っぽい形にする」 そうして川底に罠を沈め、流れないように固定した。 一方、石の下にいる虫を集めた儀兵衛は『心眼』を使用し、 「やはり、釣りはポイント探しが重要だな」 などと言いながら茣蓙を纏って釣り糸を垂れていた。 山菜を採ってきた瓜介は、料理を担当する一華へ手渡す。 「まずは茹でて……あっ。きのこがありますねっ! 汁物も用意しましょうかっ」 「はい。何かお手伝いします」 場がぱっと明るくなるような一華の笑顔につられて、瓜介も自然と笑みをこぼす。 「こっちの大鍋はそろそろ使えるよ」 ジョハルが煮立ちはじめた鍋を見ながら声をかけた。 薪用の小枝を集めたり、竈にするための石集めを手伝っていたカヅキは、以前、玖雀に贈った割烹着を彼が着用しているのを見て、くすりと笑った。 「……着てくださって嬉しいですねぇ……」 「あん時は、ど う も?」 苦笑しつつ、区切って言った割烹着姿の玖雀は――普段の彼とはまた違って楽しい――否、印象深い。 カヅキはくすくす笑いを収めると、丁寧に一礼した。 「さて。玖雀さん、よろしくご指導くださいませ。誰かに料理を教わるなんて、私にとって滅多にない機会ですから」 玖雀は米粉に熱湯を注ぎ、箸で混ぜると砂糖を少し加えた。 「よし、カヅキ。耳たぶくらいの柔らかさになるまで手で捏ねろ。そしたら、棒状に伸ばしてくれ」 「はい。……耳たぶ……?」 カヅキは腕まくりして、ふと自分の耳たぶをつまんでみた。 「よっしゃ、獲ったどォォォ!」 「わっ! おっ、おっ、とっ……」 大物を釣り上げ、大歓声を上げた鍔樹の声に居眠りしていたらしい儀兵衛は危うく竿を取り落しそうになった。ばさりと茣蓙が背後に落ちる――と、小さな精霊がしゃがんでじっと彼を見つめていた。 大きな魚の下拵えは鍔樹にまかせ、とりあえず小さな魚は揚げ物になった。 「味に期待するとえらい目にあうぞ」 儀兵衛は言いながら甘酢あんを作る。玖雀が味見にひと舐めして『醤油をもうちょい』などと言って去って行った。 「……丸くするって意外に難しいねえ……」 ジョハルは片手で団子を転がしながら呟く。 フィリアは、白いもったりとした塊が棒状に伸ばされ、一口大にちぎったものを手渡されて興味深そうに眺めた。 「本当に米からできているのかしら……」 直後、団子を作るのに大苦戦を強いられる。しょんぼりしているところへ、耳のあたりを粉で白っぽくしたカヅキが助っ人に入った。 「カヅキが手伝ってくれたから多少マシな物になったわ!」 そう言って、歪ではあるものの及第点をもらった団子を誇らしげに見せた。 そして作られた個性的な団子たちは、ぐらぐらと煮立つ鍋の中に飛び込んでいった。 鍋の様子を見ていた玖雀は、さっと『精霊のおたま』を掲げた。そして、磊々さまに問う。 「一度試してみたかったんだよな……どう思う、磊々?」 『ほう。宝珠のついたおたまかや。しかし、それ以上料理上手になったら料理人の立つ瀬がないのう』 うっかり口を滑らせる磊々さま。 「……磊々。つまみ食いしただろ」 『つっ、つまみ食いとは人聞きの悪い。わらわは味見しただけじゃ』 玖雀に軽く睨まれた磊々さまは嘯くと、すすす、とその場から遠ざかっていった。 「磊々さま……」 一華の天ぷらの手伝いをしながら、瓜介がため息をついた。 ● 開拓者たちの料理と、玖雀や儀兵衛が持ってきた酒は、精霊たちがお膳に載せて神前――滝の『向こう』へと運ばれていった。 空は藍に染まりはじめ、いつの間にか煌々たる銀盤が上空に出現していた。 『酒宴は献上舞のあと――まずは精霊の舞をお楽しみくだされ』 カワウソは、運ばれていく酒を物寂しげに見送った男性陣に笑いながら言う。 やがて、どこからともなく雅楽が流れ始め、ぽっぽと狐火が提灯のように並び始める。 水面に反射した光がうすぼんやりとあたりを照らし、流れ落ちる瀑布の飛沫をきらきらと煌めかせた。 「まぁ!」 幽玄なさまに、フィリアが声をあげる。 水上の舞台に人の形をした光が数人浮かび上がり、光と楽とともに舞い始めた。 森の精霊たちが舞ったあと、水月が『水蜘蛛』と『バイラオーラ』を発動させて水面を渡っていく。 水上の精霊へ、そして瀑布の奥に坐しているであろう竜と月精へ一礼する。 りん、と鈴が澄んだ音を響かせた。 その唇から精霊の唄が紡がれる――精霊たちへの感謝と友愛の念と、この束の間の時に思いを込めて―― 水面にもう一つの月を現しましょう…… ゆったりと一礼した水月へ、仲間たちや精霊たちの喝采が贈られる。 「お見事!」 鍔樹の威勢の良い声が響く。 岸からするすると廊下が伸び、湖の真ん中に舞台が出現した。 「ジョハル、アル=カマルの楽しい歌をうたって?」 「いいよ」 フィリアはジョハルに声をかけ、舞台へとあがっていく。 アル=カマルの異国情緒あふれるジョハルの歌声にあわせ、『プレセンティ・トラシャンテ』を発動させたフィリアが軽快にステップを踏む。 深紅のリボンがくるくる回るたびに、ふんわりと流れる。 気づくと精霊たちも舞台に上がってきて踊りだした。 (ふれあいって、やっぱり楽しい!) 彼女は嬉しそうに笑った。 やんやの喝采が響く中、演武を披露する鍔樹と一華が長柄の得物を持って舞台へと上がっていく。 「お月サンへ、感謝を込めて。一手舞い差し上げる、ってな!」 鍔樹が言えば、一華が瀑布へ向かって一礼した。 「九霄瀑泉たる主、天より照らしたる月魄が無聊を慰め、ここに飛燕陽華が演武を捧げ、昏黒に華を咲かせましょうっ!」 一華は薙刀、鍔樹は槍――彼らは半身に構え、すっと気を静める。 気合と共に一華の薙刀が襲い掛かる、それを槍で制した鍔樹は柄を反転させて槍鋒を一華の胸元でピタリと止める。 鍔樹が中段から繰り出した攻撃を、一華は上段から制すとくるりと反転させ、腹部すれすれに薙いだ。 彼らの演武は型を決めず、呼吸と視線の即興で行われた。二人とも、演じることに主眼を置いているため、実戦に比べて動きを大きく見せている。 そして、最後の一手が終わった時、二人は間合いをとり、一礼した。 それまで息を詰めて見つめていた観客が、わっと手を叩く。 気づいた時には、すでに目の前に膳が並べられていた。 人と精霊たちが入り混じっての酒宴が始まった。 「ありがとな、一華」 「こちらこそですっ」 鍔樹がにやりと笑って礼を言う。一華もにこっと笑い返した。 「これ……すっごい美味しい! 舞とやらもダンスとは違って魅力があるわ!」 フィリアが料理に舌鼓を打ちながら、水月に言う。彼女はうふふ、と笑った。 「ダンスも、たのしそう、なの」 『やや、宮鷺殿も扇子をお持ちではないか! ささ、ひとさし、ひとさし!』 カヅキの傍にいた狐が目ざとく彼女の扇子を見つけて、舞台へ引っ張っていく。 「え……」 『一緒に一緒に』 カヅキは精霊たちに囲まれ戸惑っていたようだったが、やがて雅楽に合わせて彼らと舞い始めた。 「あっ、じゃあ、ボクも一緒に踊りますよ、カヅキ姉ぇ!」 そこへ一華が飛び込んだ。 宴が最高潮に盛り上がるころ、密かに片づけを終えた儀兵衛は茣蓙の上に寝っころがってちびりちびりやっている。そして持ち込んだ七輪で燗した酒を磊々さまと仲間たちにふるまった。 『おお、大谷殿。五体に染み渡る熱い酒もよいものじゃのう。馳走になった』 磊々さまはそう言って儀兵衛の頭へぽふっと前足をのせた。次に月を眺めながら酒を飲んでいる玖雀に目をとめる。 『おっ、玖雀殿も飲んでおるかや? ……おや。なんぞ物思いに耽っておったか』 彼は軽く手をあげると、杯に酒を注いで磊々さまに差し出した。旨そうにぺろりと飲み干した磊々さまの頭を撫でる。 「そういえばカワウソ君って名前はあるのかい?」 ジョハルは傍で料理を旨そうに食べるカワウソへ声をかける。すると、かれは少し声を落として言った。 『ございます。が、名は体を表すもの、とも申しましょう。内緒でございます――ジョハル殿がそうであるように』 それに、ジョハルは苦笑した。そして、瀑布に目をやり呟く。 「……いつかあの滝の向こう側に俺が行く時には、案内してくれる? ……この首飾りの持ち主のところへ。俺の事、恨んでいてもいいから、覚えていてくれると、いいな……」 『……先ほどの唄は届いておると思いまするが……』 カワウソが不思議な色を目に浮かべて言いかけた、そのとき。 瀑布の流れが静止した。 天空から銀の光が降り注ぐ。 『主様!』 カワウソが滝へ平伏す。 そこには恐ろしく巨大な竜が現れていた。 竜のまなざしと銀の光が彼らを照らし、風が吹いた――と思ったとき、開拓者たちの手の中にきらきらと光る三尺ばかりの、銀粉を含んだような鱗が落ちてきた。 ある者は白、ある者は赤――おそらくは、それぞれに縁あるであろう『色』を纏った鱗――。 竜と銀の光は消えていた。 『お祝い申し上げる。月魄と主様よりの寿ぎなれば、お納めくださりませ』 カワウソはそう言って、深々と一礼した。 九霄瀑泉を出ると、飲み干したはずの酒がそのままあるのに驚いたが、カワウソは笑うだけだった。 しらじらと明ける空の下、帰っていく開拓者たちをカワウソたち精霊が見送った。 願わくば、末永く我ら精霊とともにあられんことを―― |