【修羅】戯れから‥‥
マスター名:月宵
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/05 23:57



■オープニング本文

「影踏みしよう?」
 小さな子供の声が心地良く耳に入る。ちょうど休憩時間であった、大工の佐吉と三好は、その少女へ視線を下らせた。聞けばこの後街の子供、大人を集めて影踏みしようと彼女は八重歯を見せて笑顔で誘ってきたのだ。指定された時刻は、ちょうど二人は仕事が終わった時間帯。懐かしい遊びに自らが、まだこの少女と変わらない七、八歳の頃遊びが全てだったなと、三好は呟いた。だがそんな事を考えるのは、大人になってからだとも佐吉は煙管片手に返す。
「その刻限に、用事が無かったら顔を出すとするよ」
 その言葉に少女の顔が開花した向日葵の様に綻び、待ってるねと告げると踵を返し背を向けて、彼らから遠退いていった。
 そして二人の眺める他に、小さな背中を追うもの見た‥‥

「「え?」」

 其れは一瞬の時、黒猫の影から少女の影へと移る禍々しい虚を見た。音も無くその行為を必然と言う様に其れは彼女の影へと潜り込む。あんなモノは生物では有り得ない、ならばアレはアヤカシでは無いか。
「ま‥‥、待つんだ!」
 街中の喧騒の中、三好が少女に呼び掛けるが聞こえる筈もなく。そしてどうやらその事態に気付いたのは、三好と佐吉の二人だけらしい、ことを場違いな談笑。否、寧ろこの二人の狼狽こそが場違いかも知れない。
「三好!あんたはこの事をギルドに、オレはお嬢ちゃんを追う」
 考えている暇など無い。今は何よりも速く足を動かし、もう点に近いほど距離が空いた彼女を追跡する。佐吉は三好の言葉を待たず、駆けだした‥‥‥‥

●佐吉の見たもの
 少女は何事も無く歩く、佐吉は一定距離を保ち背後に着いた。幸い自分の存在は少女はおろか、周りの群衆にもバレてはいない。
 しかし我ながら無謀な行為だと思う、志体も無い自分がアヤカシかも知れない存在を追っているのだから‥‥
 やがて少女は広場へと出た、そこには佐吉が思っていたより沢山の人数の人が集まっていて。簡単に視線を場へ流しても八人以上、その中には良い歳した大人が懐かしさから参加してる。その他に、つい最近に交流が始まったと聞く修羅と言われる有角の子供もいた。  もし此処で自分が影に潜んだ、アヤカシの事を騒ぎたてれば不測の惨劇が起きる可能性も有る。
 動くに動けない、近付くには影踏みの仲間に入るべきかも知れない。影踏みの説明を少女が始め出す、どうやら彼女は最初の影踏みの鬼役の一人の様だ。
「‥‥から、建物に入るのは禁止だよ」
 彼女の言葉に佐吉は辺りを見回す、そう言えばこの辺りは今は使われていない倉庫があった。どうにかアレを上手く使えないものだろうか?
 ゆらゆらと揺れる少女の影法師から今か今かと、歯牙を尖らせ舌なめずりさせるアヤカシを思い描く。
 もうすぐ指定された時刻になる。何としても先ずは気付かれない様に、彼らをアヤカシから離さないと‥‥此方に駆けてくる、三好と彼か連れてきた開拓者達に、自分が見ていたものを伝えた‥‥


■参加者一覧
酒々井 統真(ia0893
19歳・男・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386
14歳・女・陰
ライ・ネック(ib5781
27歳・女・シ
熾弦(ib7860
17歳・女・巫
柏木 煉之丞(ib7974
25歳・男・志


■リプレイ本文

●準
 広場に続々と人が集まってきた。少女はその中で先程影踏みに誘った佐吉が姿を見せたことに、微笑み高々と手を挙げる。なるべく悟られない様と苦心する、佐吉の笑顔はどことなく固い。
「俺。志体持ちだが、大丈夫ちゃんと手加減はするよ」
 子供達から一斉に視線を注がれていたのは、酒々井 統真(ia0893)だ。彼の行動には思惑があった、未だ少女の影に潜む者への牽制。志体を持つ者がいる、この情報がアヤカシにどれだけ理解しうるかは謎だが。少しでも行動に慎重になれば。と、群がる子供達の本当に?攻撃を去なして影踏みの参加に臨む。
「あっ、お姉ちゃん。まだ始まってないのに、影の中いちゃダメ〜!」
「す、すみません」
 同じく影踏みに参加する、ライ・ネック(ib5781)は材木を立て影を作っていた。ライは子供からの指摘を、わざとらしく肩を跳ねさせてから頭を下げ、謝る。ダメだからね!と念を押す子供の背を見送りながら、目的となる倉庫へ目を移した。
 思っていた以上に距離が空いている。何とか誘導しやすい様と影は作った。
 影踏みと言うものは、普通のオニごっことは異なる規定がある。其の一つが、影に入ればオニは相手の影を踏むことは出来ない、だ。
 コレで後は上手く、アヤカシを誘導出来る様に自分は動く。足の素早さではシノビであるが故、俊敏だ。後はただ始まりを、待つのみだった‥‥
「建物は使わないって、言ってたし。予定通り倉庫で仲間と会いましょうか」
 影踏みに参加する面子のいる、朽ちた大木の裏側で熾弦(ib7860)は独り言を呟き、その場を離れた。側にいたオニ役の少女は不思議そうに首を傾げる。‥‥それで良い、彼女もまた自らを餌にアヤカシを誘導する為一芝居打っているのだ。
 そんな熾弦の目線を通り過ぎる少年がいた。その人影に思わず歩を止め振り向いた。自らと同じ修羅、その頭には確かに角が生えている。
 せっかく揚州と朝廷の道が開けてきたと言うのに、‥‥先程の開拓者達との話し合いの際。こんな推察があった、この場の惨劇を全て修羅の子に被せる気なのでは?
 隠れる場所は十二分。我が子を亡くした者の恨みは根深いものへと繋がる。そんなことにはさせない、と倉庫へと向かい彼女は駆けていく。

 やがて時は過ぎ、聞こえてくるのだ。オニが今か今かと追う足を早める。子供達の秒読みの声が‥‥

●待
 声が聞こえてくる。随分と楽しそうだ。漸く始まったのかと、天窓の光が刺す倉庫の入り口でリーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)が待ち構える。
 このアヤカシとの戦闘も慣れてしまったものだと、苦笑いをする。相変わらず面倒な敵。彼女にとってこれが一番の認識だ。探知には引っ掛からない、影に潜まれると尚厄介。今回は簡単に影に撃ち込んで、とは行かないだろう。しかし、と倉庫を見渡す。高さも広さも充分、燃える心配は無い。リーゼロッテは嬉しそうに魔剣を目を細めて眺めていた。
 倉庫の外で、様子を見守るのは柏木 煉之丞(ib7974)。遊技に勤しむ人間と修羅達を微笑ましげに青の瞳で追っていた。腕を組みだらりと壁にもたれるも、羽織りの内では刀身が光る。隣では三好が、心配そうに視線を右往左往させる。ここからでは、影までは細かく確認は出来ない。
「影鬼は‥‥鬼の風貌かな」
 煉之丞の抑揚のない、誰に宛てられたか、わからない呟きは笑声に、かき消えた‥‥

「アヤカシって、影鬼だよね?」
 熾弦と一緒に倉庫の隣の物陰に隠れ、リィムナ・ピサレット(ib5201)は囁く。リィムナは開拓者に配られた情報を、こめかみを指で押して思い出す。
 閃光弾を用いての目潰し、その隙に別の影へ潜る。自分は対処の術を持たない、その為索敵が出来る、熾弦についてきているのだ。しゃがみつつ、熾弦は頷く。影に潜ると言う特性は影鬼しか聞いたことがない。 知らない間に、寝首をかかれる何てことは自分にも、他の誰であってもごめんだ。何とかして、食い止めないと、と熾弦の決心を余所にリィムナは影踏みの様子を眺めていた。本人は気付いていないのか知らないが、身体が振り子の様に揺れている。
 実は参加したいのではないか、リィムナという少女の分かり易い思惑に、口角が上がってしまう熾弦なのであった‥‥

●遊
 影踏みに参加した統真は、始まって早々に追い込まれていた。背拳にて少女の影を探りつつ、他の参加者を遠ざけていたがもう一人のオニ役がコロコロ変わり。しかも殆どが自分目掛けて追い掛けて来る。
「待て待てっ!」
 正直、影踏みに舐めてかかっていた。大人がオニ役の時はまだ良い、多少空気は読んでくれて別の子供を追い掛ける。
 だが子供は容赦が無い。志体持ち、そしてこの童顔のせいか狙われ易い。やっと逃げたと思えば、直ぐ近くの子共の影を踏み。その子に代わる。今も少女の気配は遠退きながらも、追っているがそろそろライの方も動くと見て、統真は物陰で休憩していた。
「散々だな」
 隣に来たのは佐吉であった。先程までの怒濤の攻撃を見ているからか、口元には苦笑いを刻む。
「暢気だよなぁ、知らねぇからだが」
 今でも絶えない笑い声に呟き、加え統真は佐吉に顔を向ける。もし彼等がアヤカシに気付かなければ、今頃この辺りは叫喚が支配していた筈。心の中で礼を言い、拳を強く握り締めて、アヤカシに贈る一撃を思い浮かべていた時‥‥
「影ふーんだ!!」
 いつの間にか黒い影が、死角から覗く。佐吉の影に小さな足が踏み込まれ、小さな影と交差され、二人は冷や汗と共に影の主へ一斉に眼を向ける。
「‥‥‥‥あっ」
「‥‥フゥ」
 其れは少女と別のオニ役の子、お兄ちゃんがオニだよと逃げる様に走り去る。退いた体温が一気に戻るのを、感じ二人は顔を見合わせる。顔は引きつり気味に、笑う。それほど迄に自分達は脅威と見ていたようだと‥‥
「で、統真くんよ?オレ、オニだから行動しないと不自然なんだがな」
「‥‥‥‥」
 少し本気を出して、佐吉から離れた統真であった。

 一方ライは、統真が相手をしていた参加者を離しつつ、未だ追い掛けられていた。先程自らが立て掛けた、材木の影も近い位置にある。後は自分がオニにやる様に仕向けるだけだったのだが。少女が踏んだのは、ライの影では無く。着物服の大人の女性であった。  ズッ‥‥、女性と少女の影が合わさったところで、何かが動く。ライはまばたきもせず、影を見張った、そして数秒後女性の影へ潜り、後には影はあれどカタチは無くなる。ライは悩む、大人では自分をオニにしてくれる確率は低いだろう。大人にとっては、子供と遊ぶが目的。ならばやはり楽しませるべきは子供の方。
 その予想はやはり当たり、女性は草履で器用に子供に近付けば、数歩逃げ出すのを待ちまた動く。それを繰り返していた。
 このままだと、痺れをきらしてアヤカシが影から出て来てしまうかも知れない。そうなってしまえば‥‥
「ほらほら、キミがオニさ」
 ライが考えを纏めてる内に事態は起きた、オニ役の女性が誰かをオニにしたのだ。方向を向く、それは少年が一人場違いでは無いかと、オロオロとしている。そう、一番狙われている修羅の少年であった。
(あの子が危ない!)
 女性はその場から微笑して離れる、彼女からして見ればそれは善行であったのであろう。自分だけ違う為と遠慮がちな少年を、オニ役にして子供達と遊ばせようとする気遣い。
 彼女を攻めるのはお門違い、今はそれよりもあの修羅の少年の側へ行き。自らに影にアヤカシを入れる事が先決だ。
「オニさん此方、手の鳴る方へー」
 影へ移るかどうかを、見逃してしまっていたが。修羅の子供を狙っていたならば、移らない筈はない。なるべく、声を楽しげに揺らし手を叩いて、彼を追わせる。少年の早さは、人間の子供それと対して変わりはない。蛇行を繰り返して、疲れを感じさせない程度に、走る。やがてライの目の前には影が、それは先程彼女が材木で作った影。
 好機だ、あの影に逃げ込む様にして影を踏まれれば不自然ではない。 ライは早さを調節しつつ、影の元へ向かった。今までと違う動きに、少年も気付いたのか追い掛けてくる。
「え‥‥‥えいっ」
 彼から見て斜めに伸びたライの影、とうとう修羅の少年は足を踏み入れたのだ。
ズズッ
 やった!笑顔で影を確認する為に、下に向けた顔をあげようとする少年に其れは移っていた。
 ライの影を蝕む様に潜る何か、に声を失って止まった。今のナニ!?そう声をかけようと、顔を上げればライはもう其処には居なかった‥‥

 影に入ったアヤカシが垣間見えれば、ライは出来うる限り足を踏み込み駆け抜ける。今までと違う体感速度に、確実にアヤカシは感づいたであろう。だが他の場所への移動を許さない程、脱兎の如く倉庫への距離を詰める。

●戦
 来る‥‥っ!倉庫へ足音が近付くのを、熾弦が気付く。得物を取る、ライが自分を横切った、倉庫の手前で扇子を手に取り、空間を舞う。所作に共鳴したかの様影に向かって空間が、影がひしゃげる。

グガァ゛ァァァァァァ

 おどろおどろしげな、轟音が鼓膜と倉庫を響かせる。同時にライの影より、其奴は出現した。大きさにして一丈と二尺(3メートル強)、緑色の体躯は未だ、痛みに身を強ばらせて角をいきり立てる。
 その姿を確かめ、倉庫へは他の開拓者達も各武具を手に入って来る。
「ひっ?!」
 倉庫の外、三好はその姿に震えと悲鳴をあげる。自分達が見たモノはこんなに恐ろしい存在だったのかと、瞳に強く教えた。ライはその声に叫ぶ、まだ近くに修羅の子供がいる。その子を連れ、そして統真に教えに行って‥‥と。
「は、はい。後は頼みました。開拓者さま!」
 その震える声にリーゼロッテは、小気味良く笑い声を向けて見送る。
(志体も無いくせに、無茶するわ‥‥まぁ可愛いものじゃない。嫌いじゃないわよ)
 三好の影が潰えるのを眺めれば、アヤカシ――影鬼へ向き直った。

「何今の音?」
 その時の影鬼の声は、遠くの統真にまで聞こえた。そして、此方へ駆けてくる。三好と、戸惑う修羅の子供が手を繋ぎ走って来るのが確認出来た。
 いよいよ、出たか。
「何か事故があったのかもな、助けになるなら行ってくる」
 次いで、此処を動くなよと念を押して倉庫へと走る。後は開拓者に任せて、自分達は参加者達を見ていよう、三好と佐吉はただ祈る様に統真を見送った。

 煉之丞とライを前に、熾弦、リィムナ、リーゼロッテを後ろにし。皆、倉庫の出口を背に敵を狙う。未だ罠に影鬼は困惑するのか、二の足を踏むばかり。最初に撃って出たのは煉之丞、片目で視覚の範囲を阻めつつも、その足運びに迷い無く敵に向かう。そして、左足に蒼い刀身を垂直に突き刺す。
 これだけでは恐らく損傷は微々たるものだろう、それでも痛みは有るのか影鬼は後ろへ後退する。この行動に反応したのは、熾弦。急ぎ、瘴策結界を発動させると自らを煌々とさせ、倉庫内に結界を張った。
 影鬼は予め咥内に忍ばせた、閃光弾を取り出す‥‥「来るよっ!」
 リィムナも合図と共に、片目を閉じ、詠唱を始める。
 影鬼は造作も無いと言いたげに、自らの手に収まるほどの閃光弾を握り潰すっ。庫内は一瞬にして白光に包まれた、膨大な光という情報が開拓者達の瞳を灼く。
 だがその中ライだけは、瞬間に施した暗視により確実に影鬼の行方を追っていた。 天窓の側、空き箱の影の一つ。確かに潜り込んだのが今見える、ライは側まで近寄り影縛りを行おうと、自ら影を操り空き箱の影にを絡め取ろうと、伸ばす‥‥‥‥が。
(効かない!?)
 手応えは眼に見えてない、それ所か影鬼は交わったライの影に移り、手だけ伸ばし接近する。今からでは術を解くことも出来ない、身動きの取れない自分の、末路まで予想までがつきそうだった。
「辰の方角、今よ!」
「ホーリーアロー!」
 だが影鬼のカイナより早く、到達するものがあった。幾多もの矢が全てに降り注ぐ、だがライに当たっても効果はほぼ無く。しかしアヤカシである影鬼には、強い効果がある。途端に影から飛び出した。光る矢が刺さり、悶え苦しむ姿があった。
 何が起きたか、ライが方向を見れば熾弦が眼を瞑り場所を指示、その方向にリィムナが術を放ったのであった。
「ありがとう御座います」
 礼を述べる間に復活した影鬼は、標的を未だ詠唱途中のリーゼロッテに変える。反応が遅れたのか、未だ定まらぬ視点。だがそれでも自分に振り下ろされる拳は見える。
 「っが‥‥、術の邪魔をするのは無粋だろう、鬼よ」
 だがその拳を受けたのは、彼女では無かった。影鬼が視線を切り替えると、防盾術により鎧を強化し受け止めた煉之丞の姿があった。だが受け止めたとはいえ、強靱過ぎた影鬼の力は鎧の内、彼の肉体にまで打撃を与え、膝をつく。

「うぉりゃぁぁぁぁ!」
 同時に倉庫に飛び込んで来たのは、前もって破軍は行っている統真。初めて確認した影鬼にも関わらず、拳に気を込めれば強く飛び上がり、衝撃波すら生む一撃を腹にたたき込んだ。
グッァ゛‥‥ガガァ

 その一撃に吹っ飛ばされ、床に上半身を叩きつけられ嘶くほども出来ない程に、体内を荒らされる。そして‥‥、リーゼロッテの術が完成し高々と短剣を掲げた。
「いつもの何割増しかの炎よ、遠慮せず。ど・う・ぞ」
 逃げる間すら与えてはくれない、陣が影鬼の頭上を描けば火焔が幕の様に巻きながら降り、完膚なきまでに焼き尽くす。その炎は最後迄断末魔を許さず、炭へと影鬼を変貌させた。

 炎の消えた後には、煤しか確認は出来なかった‥‥

●望
 倉庫から帰ってみると、また影踏みは続行されていた。この笑い声を守れた、煉之丞は大木に座り込み、身体を落ち着かせる様に安堵した。其処へ、佐吉と三好が駆けてくる。どうでした、大丈夫か?互いに煉之丞に顔を見合わせては聞く、鬼は始末出来た。そう言えば、二人の顔も明るくなった。
「神流殿、臣野殿。お陰さまだ、ありがとう‥‥」
 お礼を言うのは此方だと、佐吉は言い張った。幾ら気付いていても、自分達だけでは何も出来なかった。
 互いの協力があればこその今回、そして其処には修羅や志体持ちの違いなど無かったのだ。

「あたしも、影踏みいーれーて!」

 戦闘を終え、楽しそうにリィムナが子供達の元へ走っている。その様子を見ながら一同はこの眺めを何時の世でも見ていたいものだ、と笑った。