【血叛】いつものこと
マスター名:月宵
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/08/16 00:51



■オープニング本文

 とある真っ昼間開拓者達は、一つの宿所に呼ばれた。多少古びてはいるが、依頼主と開拓者達が入るには全く問題ない広さの、二階建ての建築物だ。
 依頼主の男は、店側が出した酒を杯に酌みながら開拓者達に呑気にいい放つ。
「拙者最近狙われてるみたいなんだ。それで貴殿らに護衛を頼みたい」
 男の名は阿尾(iz0071)開拓者であれば一度はその名を聞いたことがあるだろう。シノビとしての腕はあったものの、忠誠心と言う言葉を持たずいつしか抜け忍となり、今や開拓者兼情報屋、と言う場所におさまっている男だ。
「拙者を狙うものは多い。それは昔のこともあるが、今のこともありき。敵は多いからな……」
 組織を抜けた為に命を狙われ、情報屋稼業と言うこともありまた命を狙われ、敵の多さに今更だなとぼやきつつ、阿尾を杯の縁に上唇を置いて傾ける。
 喉を鳴らし一息ついたところで、彼はまた口を開いた。

「それこそ、今回の叛こと、ガっ…っ、ぐ………ぅ!」
 彼の呻きと共に、杯は彼の手を離れて襟元を色濃く濡らした。体勢が崩れ口で手を多い、喉を片手で掴んだ。
「か…体が動かな、やられた……最初か、ら」
 突如隣の襖が開いた。そこに黒装束の男が一人。
「貰ったぁぁ!」
 銀色に煌めくそれが、阿尾を狙う。だが間一髪、身をそらし同時に懐に忍ばせた忍刀どうにか鞘から抜いて、力任せに深々とそいつの胸部を突き刺した。
「ヴがっ」
 飛び込んだ勢いのまま、男は倒れた。畳を何物でも濡らすこともなく、うつ伏せのまま動かなくなる。同時に阿尾もうつ伏せに倒れた。
 次に瞬きをする際には、部屋は黒い忍装束達で埋まっていた。
 襖で隔てた隣の部屋。二階の窓。階段を上って堂々と……
 入りかたは様々あれど今、阿尾と開拓者達が顔すべてを覆う頭巾のシノビらしき集団に八方を囲まれたと言う事実がそこにあった。
 皆が刀を手にし、背中の翼を毛羽立たせ奮わせる。そして一人が叫ぶ。

「ヤツは捕らえよ、後は皆消せ」

 この台詞を聞いて、シノビ達を敵と言わずになんと言う。阿尾は未だ俯せになり、畳をかきむしって粗い息をしていた。
 だが、シノビは待ってくれない。開拓者達を歯牙にかけんと、得物を振り上げた。


■参加者一覧
小野 咬竜(ia0038
24歳・男・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
孔雀(ia4056
31歳・男・陰
アルバルク(ib6635
38歳・男・砂
久郎丸(ic0368
23歳・男・武
結城 安希(ic1026
20歳・男・ジ


■リプレイ本文

 それは唐突に始まった。一言で表すなら、奇襲。だからこそ開拓者達は出遅れた。本当に一瞬、しかし命のやり取りにおいてそれは、文字通り命取りであった……

●始まりは突然に
 漆黒達はほぼ同時に襲いかかった。得物の準備すらままならない開拓者達に、容赦なく攻撃を開始した。最初に狙われたのはアルバルク(ib6635)。脇腹を掠めるように刃を彼はやり過ごした。
「くうっっ……やるわねぇ…」
 相手は刀ならば間合いはまだ遠い、などと楽観視する事は出来なかった。無数の刀は振りかぶりと共に、幾度もの真空の刃が孔雀(ia4056)に集中し初回早々に彼は膝をつく結果になった。
「あんた、邪魔だから阿尾を隅に退けろ!」
 アルバルクは短銃を抜きながら、 窓際に向かいつつ小野 咬竜(ia0038)に言い放つ。咬竜は元よりそのつもりだと、シノビ達の風の術を受ける中で阿尾を背負った。その傍らに傷を負いながらも符を手に呪を結ぶ孔雀と、武僧 久郎丸(ic0368)が隅へと移動した。
「阿尾は任した!」
 開拓者達とて、奇襲をただ許すばかりではない。隼人を使いただ一人、ルオウ(ia2445)だけは階段へと駆ける。
 そこには階段をあがって来たと思われる、数人の刺客がいた。
「おい。あんまなめた事してんじゃねえぞ!」
 ルオウの全身から発する剣気と身を張り裂かん程の怒号に、敵は無言ながらも得物に伝わる硬直はその効果を示していた。
 彼はそのまま最初に刺客の胸ぐらをつかみあげイケると、そう腕にかかる負荷で理解すれば強力を使った体躯を利用してそのまま他の刺客達へと、投げ飛ばした。
 妨害されたシノビはどうにか指で印を結び、それを結城 安希(ic1026)へ発動。しかし彼の体に異常はない。一度全体を見回す安希。隅の方には、阿尾ならびに他数人。噂の情報屋である、阿尾の人となりを見たかった。そんな思いでうけた依頼だと言うのに、いきなりこんなことになってしまうとは……
「こんなのに狙われるんじゃ気苦労絶えなさそうだな、阿尾さんよ」
 と呟けば、阿尾は一人のシノビに狙いをつけた。それは先程ルオウが放り投げたあのシノビだ。素早く背後安希が近付く。幸い得物に心配していた毒は、見たところ塗られておらず、安心して懐に指を数本差し入れ抜く。
「って、初見の俺に突っ込み役させんじゃねぇよ」
 と理不尽な台詞と共に、喧嘩作法が炸裂。同時にライールの結果を手のひらに見て、肩を落とした。そこにあったのは、ただの折り畳まれた紙であった。
(「使うなら、持ってんじゃねぇかと思ったんだが解毒薬を」)
 安希の予想は肩透かしに終わってしまったようだ。
 一方窓も階段もない、部屋の隅に移動した咬竜達は得物を手に陣取った。
「うっ……」
 そして未だ俯く阿尾を、ゆっくりと畳に降ろし座らせた。
「まず………阿尾を…みよう」
 何よりも治療を優先にと久郎丸は考え、沈黙する情報屋のシノビに、駆け寄り、少しでも回復を促そうと術を唱えた後、その異変に気付き口を噤んだ。
「あなた…飲んでない、な……酒を」
 その言葉に咬竜と孔雀は、思わず阿尾へと振り向いた。すると今までの苦悶しかなかった表情に、笑みが浮かんだ。
「バレました?」
 阿尾は久郎丸の質問に、小さな声で応えた。そう全ては彼の演技であった。詳しく説明するとこうだ、先程の跡はつけられていた、という話は確かに真実だった。しかし、あまりに相手は慎重で此方に手を出す気配も、尻尾をつかませる気配も無かった。そこで阿尾は一芝居打つことにしたのだ。自分の護衛を依頼して悪目立ちして、相手へ襲わせる機会を作ったのだ。
「毒は匂いで察知できましたし」
「何というやつじゃ…」
「やるわねぇ、阿尾ちゃん。アタシたちまで騙すなんて…」
 阿尾の治療の必要が無いと知れば、直ぐ様孔雀の元に向かい念珠を手に真言を唱え始めた。数は多いものの傷は浅いためか、直ぐに彼自身の力でふさがり始めた。
「拙者はもう少し、倒れていますね」
 情報収集、阿尾はそのために倒れたフリをしていたのだ。そのためにだけに、刺客に計画がばれないようにと武装が先程の忍刀一本という、徹底振りだ。そしてまた、阿尾は苦しそうに呻き始めた。
 兎に角、これで予想外ではあったが、阿尾の体調という問題は解決出来た。
 しかし未だそんな事情は露とも知らないシノビは、次々と襲いかかって来た。迎撃をしなくてはならない状況は、全く変わっていない。
 無事回復した孔雀は符を翳し、幻影符を発動し装束の視界を奪う。
「何!?斯様な場所に霧?!!」
「これで少しは、楽できる筈よ」
 そう他の面子に言いつつも、孔雀は別のことを思案していた。自分へと向けられた攻撃。それは決して統率の揃っていない、寄せ集めのそれとは違った。
 幾つかの役割を数人で分けた、計画的なものだ。だからこそ最初のアレは何であったのか、疑問に残る。
「まぁもしもの時は、阿尾ちゃんを人質にしましょうか。あちらだって、生きている、彼が欲しいはずだもの」
「聞けば相当疎まれてもいる様子。なればいっそその命、天に差配を任せてしまうのが良かろう。ん」
 しかし自分達を騙してまで行う行動に、算段が無いわけも無いのだろうなと咬竜は一人心地るのであった。

 幾つもの斬撃を浴びせる中で、アルバルクは一つの疑問に感じていた。それは孔雀同様に、最初の襲撃者についてのこと。畳に沈んだ際に、あのシノビは一切血を流していない。理由は阿尾が上手く胸部に刃を入れた。帷子などを着けていたために、刃が通ってなかった。
 そして、シノビ達は血を流さない輩という可能性も有り得る。
(「としても、撃つことにかわりねぇか」)
 すれ違いざまにファクタ・カトラスをシャムシールで浴びせ、その背中にほぼゼロ距離で鉛玉を撃ち込む。
「ガァアァァァ……」
 発射の衝撃に揺らされた彼の視線に舞い散る黒い羽根が入り、断末魔が聴こえる。しかしそれも一瞬、虚空に溶けて残るものは忍装束と忍刀がひとふり。
 疑問は確信となり、彼の声が飛ぶ。
「コイツらただのシノビじゃねぇ、アヤカシだ!!」
 あからさまなシノビの舌打ち、そして次の言葉。
「露見したか、急ぎ殲滅だ」

 アルバルクの声にいち早く反応したのは、ルオウであった。それならば、手加減は不要かと名一杯武器を弾こうと籠手で殴りつける。だが、シノビ否、アヤカシも簡単に得物を手放さない。アヤカシとあれど、武器の扱いに長けたものもいる。その逆を言えば、得物を奪えば良いという解になる。
 ならばと、籠手を刃へと押し当て、部屋の中央で押し合った。こうすれば、遠距離を放つことを妨害できるだろう。


 阿尾を庇いながら、迎撃にあたる三人。実のところ数さえ減らせれば逃げるのも、こちら側へ押し込むのも容易なのだが安希他二名はまだ、事情を知らないし近づけないため、知らせることも出来ない状態であった。
 彼らにとっては、不足の事態ゆえ当たり前なのだが。
「翼…や、やはり天狗か…ハァッ!」
 久郎丸の槍による烈風撃は外れはしたものの、その衝撃波はアヤカシを吹き飛ばす。覆面が外れ、獣人には決してない鳥の顔が、そこには存在した。もはや彼らが、アヤカシである事実は覆らない。
「な……きさま、われらが仲間ではないのか!?」
「……違う」
 もしや、今まで自分が攻撃を受けなかったのはと、あまりに嬉しくない可能性を考えて久郎丸は落ち込む。
 が、勿論アヤカシは待ってくれない。同時にもう一匹の天狗が刃を手に、咆哮をあげる咬竜に釣られて刃を向ける。
「イギァァァァア」
 幾つのも巨大な針型の式が、天狗の黒い身体を穿つ。地縛霊、孔雀が仕掛けておいた陰陽術が今になって力を発揮したのだ。
「やるのう」
「ダァァァ!」
 斬撃を、水平構えた斬竜刀で受け、形だけでも阿尾に切っ先が当たらない様に配慮する。不動で耐えの姿勢を取ってはいるものの、衝撃は確実に彼を蝕む。
「なぜ……阿尾を…狙う?」
 久郎丸は思い切って、天狗へと問いをぶつけてみた。シノビの掟狂いの類、その可能性のなくなった今、襲撃理由を気にするのは当然のことだ。
「その男が繋がっている。そう考えたからだ」
「繋がる?って勘で襲ったと言うのか?浅はかじゃな」
 相手に自分へと意識を向けさせるように、わざと癪にさわるように言葉を繋げた。
「では問う。ただの抜け忍風情が何故、何事もなく十数年平穏であったと?」
「知らぬわ」
 それがかえって事をそうした。さして興味を持たない、そんな口調に天狗は苛立ちと共に言葉をぶつけて来たのだ。
「わからないか人間。その男が陰殻の頭の物なのだ」
 陰殻の頭、しかもアヤカシ勢にすら名を知られている人物と言えば一人しかいない。
「慕容…王……?」
 確かにもし阿尾の裏に慕容王がいたとすれば、彼がこれまで何度と命を狙われても、生き続けてきた理由であってもおかしくはないかも知れない。
「なれば知る筈だ、いつらめの居場所を!」
 捲し立てる様に、自ら目的を高々にいい放つアヤカシ。自分達が負けてしまうなど、全く思っていないのだろう。それこそ、冥土の土産とでも言うほどに……

「漸く合点がいきました。大方卍衆辺りの襲撃に見せ掛けて、引っ掻き回そうと言うことですかね」

 背後から聞こえた声に、天狗達と、アルバルク、ルオウ、安希は言葉を失った。
「しかし真っ昼間から、黒い忍装束など目立ち過ぎ。ツメがあまい」
 声の主は、まごうかたなく阿尾であった。しかも、何事もなかった様に暢気に手を振ってきた。
「貴様!アレほどの薬で……な、ぜ」
「もう治った、にしちゃピンピンし過ぎだよなぁ」
 その中で最初に勘付いたアルバルクが、察したように短銃を肩に置きながら呟く。
「つまり、演技であったということじゃ」
「知ってたのかよ、咬竜!?」
「アタシたちはさっき聞いたのよお」
 驚きの声をあげるルオウ。それとは対照で安希は事情が未ださっぱりで、これは阿尾を助ける依頼では無かったのかと、唐突なことで理解に苦しんで、ただ視線を向けるばかりであった。
 阿尾は最初から、罠に誘い込まれたことすら計略のうちだと言えば、覆面で隠れては言えど動揺は声に乗せられる。 
「勘づかれたら、台無しですから」
 それに護衛が必要であったのは、事実ですと笑顔で語った。
「っ……嵌められたのは、ワレラ!?」

 しかしこっちはまだ十数人いるのだ、数字の上での不利は変わらない。そう天狗達は踏んでいたが、それについても阿尾の方が一枚上手であった。
「この場所で襲撃されると理解していて、拙者が何も準備がないとでも?」
「まさか」
「はい、仲間へ連絡済みですよ」
 そう窓へと静かに視線を移してから語る、まるで蜘蛛の糸のそれの様に天狗の胸中を乱した……

 その後天狗達は動揺により、総崩れを起こした。置き土産に安希に拘束術をかけて、羽音を激しく室内で羽ばたかせ戦い。半数を過ぎた所で、天狗と思わしきアヤカシ達は逃走をした。先の異常を感じなかった術は呪詛のようで、今はしっかりと彼の足を畳が縫い止めている。
 ただ一人最初に襲いかかった、あのアヤカシだけは未だ倒れていた。死んでいないのは、滅したアヤカシなら瘴気に還るためとうに知れている。
「恐らく、死んだふりで油断させてとでも考えていたのでしょう」
 阿尾は背から生える羽を踏み潰し、磔るように風切羽に忍刀を畳ごと突き刺した。
「っがぁ゛ぁ……」
「さて、では吐いてもらいましょうか」
 もちろん拷…尋問である。先程と変わらぬ表情で見たくないなら他の開拓者達に退くように、阿尾はそう説明する。
 殺気も纏わず吐く台詞に、久郎丸はたじろぎ後ずさる。それは他の開拓者も似た反応だ。
「阿尾ちゃん。無粋な連中は放っておいて、アタシたちでしっぽり楽しみましょ」
 ただ一人茶会にでも出るが如く、折檻を楽しみにしている孔雀を除いて。
「オイ!俺動けねーんだけど!?」
「良いじゃないの、見学してれば」
「情報は生き物ですから、早急に収集しなくては」
 安希の動揺に含み笑いで孔雀が答える一方、安希をどうにも出来ないために、他の面子は階段を降りていた。
「ちくしょー!騙されたぁぁ!」
「いいじゃねーか。俺は金さえ貰えれば、文句はねーよ」
「すっかり、煙草が冷めてしまったのじゃ」
 ルオウが愚痴り、それをアルバルクが諭す。
 そして彼らが宿屋を出た辺りで、悲鳴が聞こえたアヤカシ………と安希の悲鳴も。

●新たな陰殻
 彼らは宿屋を出て、尋問を行った二人に話を聞いた。因みにさっきの、阿尾の助けが来ると言うのはハッタリであった。阿尾曰く、そんな仲間が待ち伏せていたら、警戒されるので。ということらしい。
「あいつらは天荒黒蝕の部下で、どうやら阿尾ちゃんが慕容王と接触すると思ってたみたいねぇ」
 なんとも清々しい顔で孔雀は語った。その手には、先程ライールで安希が掠め取った用紙であった。どうやらそれに今の情報があったようだ。
「えげつねぇ悲鳴聞こえたぜ?」
「そんな大したことはしてませんが、実際拙者がされたことある程度の方法でしたし」
「素敵だったわぁ、特に嘴をミシィって割るところとか」
「シノビ、コワい。孔雀コワイ…」
 が、お手柄である安希本人は、既に心を抉られてそれどころでは無さそうだが。
「しかし真じゃろうか?おまえと慕容王に関係があるなど」
「ええ、昔に少し。それだけです」
 阿尾は自らへと送られた烏の文に目を通しながら、咬竜の言葉に頷いた。その様子に久郎丸は訝しげに問う。
「……終わったらしいですね、叛が」
 嘲笑と侮蔑がこもっている阿尾の言葉は、今までの彼の台詞の中で一番心があったように思える。いよいよ動くか、そんな呟きを久郎丸は同時に聞いていた。

「本当の叛は未だ完了至らず、ですが」
 そう不可思議な言葉を残せば、落ちかけた日を眺めながら煙管を取り出し、自分の中でこの件を終わらせていた。
「なあ、一つ聞きてぇんだけど」
「如何しましたルオウ殿?」
「俺達があいつらに勝てなきゃどうしたんだよ?阿尾も危なかったろ?」
 そう今回の作戦は開拓者達の勝利、最低でも引き分けくらいの力が無ければ成り立たなかった。だからこその腕利きによる、護衛依頼かもしれないが。
「ばっくれました」
「へ?」
「不利であれば、一人で逃げます」
 いつものことなので、と変わらず語る阿尾に冗談か本心かも確認できず、ルオウは言葉が出なかった。
 
(「こんな命狙われてまで、何をしたいのかが気になるね」 )
 安希は俯いていた顔を阿尾に向けてこう心に思った。噂の情報屋、この男はきっと信じてはいけない部類の開拓者なのだ……と。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。拙者は阿尾、ただのしがない情報屋です。以後お見知りおきを」