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■オープニング本文 ● その家の夏 その日は初夏というよりも真夏の如き暑さで。 歳の差三つの開拓者姉妹、佐保朱音(さほ・あやね)と雪花(ゆきか)は年頃の少女とはとても思えない格好で縁側にごろりと横になっていた。 「あつー‥‥」 ぱたぱたと団扇を仰ぐ手も力弱いのは十七歳の姉、朱音。 「あっつー‥‥い」 額に水で濡らしたタオルを乗せ、顔を隠す代わりにお腹を出しているのが十四歳の妹、雪花。 「何かもう‥‥動く気もしなけりゃ、食べる気もしないわ‥‥」 「ほんとだよねー‥‥」 ぱたぱたぱた。 しばらくは庭の木で鳴くセミの声と、団扇を仰ぐ音だけが続き、不意に吹いた微風に軒先の鈴がチリリンと鳴った、その時だ。 「饅頭食べたい‥‥」 ぽつり呟いたのは姉の方。 「えー? こういう暑い日は大福でしょ!?」 妹が驚いて声を上げ、姉妹の大きな声は屋内の母親の耳にも届く。 「どっちもどっちよ。こういう暑い日に食べたくなるのは水羊羹が普通でしょうに、‥‥その食べるセンスはお父さん似かしら?」 いやいや、そういう母親のセンスも、‥‥まぁ、なんだ。 饅頭は小麦粉などを練って作った皮に小豆餡などの具を包んで蒸した菓子。 大福は小豆餡を餅で包んだ菓子。 対して砂糖と餡を寒天で固める羊羹の、水分量を多めにして柔らかく作り冷やしたものが水羊羹で、三つの共通点はどれも甘いということ。 つまりはこの家族、皆して甘党なわけで。 「あ」 「うみゃ?」 どかどかと聞こえて来る激しい足音に一家の大黒柱の帰りを知った娘達は飛び起きた。開拓者としての先輩でもある父親を、姉妹は心から尊敬しているからだ。 「お帰り、父ちゃん」 「お疲れ〜」 可愛い娘達に出迎えられれば「おうっ、今帰ったぞ!」と豪快に笑う父だが、今日はいつもと様子が違った。父親の手には開拓者ギルドから持って来たと見られる複数の依頼書が握られていて。 「朱音、雪花、大変だ! このままではいずれ菓子が食えなくなるぞ!?」 「! なんで!?」 聞き返す娘達に、父親は依頼書を見せる。 「――うわぁ‥‥」 「嘘でしょーっ?」 不運は重なる時には重なると言うけれど、こんな事まで続かなくて良いのにと雪花。 暑いから動きたくないなんて言ってられない、菓子が食べたきゃしっかり働け、天の神様からそんな事を言われているとしか思えない依頼内容は。 1)饅頭の原料である小麦畑に熊型のアヤカシが一頭出没、これを退治して欲しい 2)餅の原料であるもち米の水田に烏型のアヤカシが二十羽前後出没、これを退治して欲しい 3)水羊羹の原料になるさとうきび畑に植物型のアヤカシが三体出現、これを退治して欲しい 収穫時期はそれぞれ異なるが、このままアヤカシが出没し続ければ作物が無事に育つとは限らないし、収穫時期が来ても人々は安心して仕事が出来ない。 故に、今すぐアヤカシを退治して欲しいというのが各地域の依頼主からの言葉だった。 ● と、言うわけで 「はいはいはいはい!! 私は饅頭を守るためっ、熊型のアヤカシと戦いますっ!」 元気良く手を上げて、朱音。 「畑の詳しい広さとか被害状況とか教えてくださいっ」 「ちょっと待ってね」 言われたギルド職員の高村伊織は該当の依頼書を引っ張り出して詳細を説明する。 開拓者ギルドから徒歩で二時間程度の村にあり、畑の広さは、とにかく広い。 が、熊が出てくるのは裏の山からで、今でこそ誰も怖くて利用していないが畑仕事の合間に休憩を取るための小屋がすぐ傍にあるらしい。 「最初の被害者は、この畑で働いていた農夫。このままじゃ仕事が出来ないって、畑の所有者が依頼を出しに来たの。アヤカシの大きさは三メートルくらい‥‥大柄だというし、大丈夫?」 「もちろん! 私だって一端の泰拳士なんだから。それに一人で戦うんじゃないしね」 戦いの場には必ず仲間がいてくれる。 だから大丈夫だと明るく笑う少女に伊織も微笑む。 「応援しているわ」 「うん、ありがとね!」 そうして朱音は、同じ依頼を受ける仲間達が集まる場所へ駆けていった――。 |
■参加者一覧
天青 晶(ia0657)
17歳・女・志
出水 真由良(ia0990)
24歳・女・陰
赤羽 シラハ(ia1071)
19歳・女・泰
アルティア・L・ナイン(ia1273)
28歳・男・ジ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
天川 真言(ia2884)
20歳・男・志 |
■リプレイ本文 ● 暑い時こそ甘味、とは世の中いろいろな人がいるものだと感心しきりの天川 真言(ia2884)。個人的には小麦粉被害で饅頭が不足するよりもそうめんが食べられなくなる方が問題だ。とはいえ、今はそれを声に出す勇気はない。何せ今回の依頼に集まった面々は揃いも揃って――。 「か、甘味が食べられなくなるなど‥‥由々しき事態、です」 天青 晶(ia0657)がぎゅっと両手を重ね合わせて呟く。 「饅頭のためにもここは頑張るとしよう」 腰に帯びた刀をシャキンと鳴らすアルティア・L・ナイン(ia1273)は、これが蕎麦畑なら見向きもしなかっただろうと言い切る程の甘味好き。 「大事な小麦畑と、農夫の方々を、脅かそう、などとは‥‥」 「許せないよね」 「許しません」 目と目でしっかりと頷きあう晶とアルティアの気持ちは一つ。 アヤカシを誘き出すための囮を二人で担当する事もあり、共有した思いは必ずや力になる。 一方、そんな二人と同じ甘味好きではあるものの「饅頭よりは‥‥」と別の菓子に想いを馳せるのは出水 真由良(ia0990)と滝月 玲(ia1409)。 「お饅頭も美味しいですが、これからの暑い時期となりますと、葛きりなどが好ましいですね」 「水菓子、いいですよね。同じ饅頭でも、水饅頭とか」 渋いお茶で甘味をより一層引き立てて‥‥ほわわん。 水饅頭の緑茶に組み合わせに‥‥どきどき。 「此度の依頼、気合が入り直りました」 「食いしん坊魂を見せてやろう!」 玲の握られた拳に、おっとり笑顔で拍手の真由良。 加えて美味しいものなら何でも来いの赤羽 シラハ(ia1071)が加われば、その覇気たるや熊の一頭や二頭、余裕でぶっ飛ばしそうな勢いだ。 「身体動かして美味しいもの食べられたら最高じゃない!? だから頑張るわ、あたし! 依頼成功したら饅頭オナカいっぱい‥‥至福、よねっ‥‥ッ!」 くー‥‥っと満面に幸せを滲ませたシラハに、うんうんと頷くのは饅頭大好きの朱音である。 「依頼達成した時点で腹いっぱい‥‥かどうかは判んないけど、ね?」 無事に熊を倒せばこれからも饅頭を食べられる事は確か。 絶対に成功させてやろうと決意も新たにした彼らの歩調をじょじょに速まり、最後尾についた真言はぽつり、一言。 「流しそうめん、いいですよね」 暑い日には、やはりさっぱりしたものが欲しくなるのも人の常――。 ● 件の小麦畑までは徒歩で二時間の道程。 彼らは様々な話をした。 「へぇ! 朱音ちゃんは父ちゃんに憧れて開拓者になったのか!」 シラハの言葉に朱音は大きく頷く。 「うん、父さんの仕事とか間近で見て来て、自分もせっかく開拓者の素質を持って生まれて来たんだからって思えるようになってね」 「でしたら、私と、同じですね」 穏やかな口調で話す晶に「そうなの?」と真由良。 「ええ‥‥尤も私の父は既に他界していますけれど‥‥」 「あら‥‥」 真由良に並んで「悪い話題を振ったかな」と心配する朱音だったが、晶の様子は変わらない。 あくまでも穏やかに、静かに。 「とても優しく、強く、決して約束を違えない人で、‥‥あぁ、ですが、誕生日を一緒に迎えてもらえなかった事は、残念で‥‥」 「っ‥‥ぅ‥‥うぇええええ」 「!? な、なんだ?」 晶の言葉が続く内、号泣し出したシラハに驚いた玲。 「どうしたんですか」 真言が涙を拭くための布を差し出せば、シラハは素直に受け取りながら言う。 「あたしそういう話弱いんだよっ、えらいよあんた、お父ちゃん絶対喜んでるよ!」 「まぁ‥‥」 晶の声に。 ぶーーっと音が重なったのはシラハが鼻をかんだからで、もちろん紙代わりは真言が貸した布。 「おぉぅ、やると思ったけど!」 朱音が言う。 お約束といえばそれまでの展開は、しかし、しんみりし掛けていた場に明るい雰囲気を取り戻させた。 「‥‥ふっ」 「くっ‥‥くくく」 ゆっくりと広がる笑い声。 「シラハさんは優しい女性ですね」 他人のために泣ける彼女の心根をさらりとそのように表現した真言。 「とても素敵な方だと思います」 そうしてにこりと微笑む彼に、シラハは目をぱちくり。 「なに言ってンの!? そんな恥ずかしい事言っちゃったりなんかしたら惚れちゃうよあたし!」 「――恥ずかしい、ですか?」 騒ぐシラハに、小首傾げる真言。 「天然だ」 「天然だね」 アルティアと玲が一緒になって頷き、笑顔は更に広がり。 場が楽しくなればシラハの勢いも増す。 彼らの道中は、とても賑やかだった。 そうこうして辿り着いた村で、彼らは何よりもまず現場を知るのが大事として早々に下見に向かった。 視界いっぱいに広がる小麦畑は、甘味好きにとっての宝の山。 開拓者達の表情は移動中と一転、真面目な顔で農夫達に聞き込みを開始する。 「アヤカシは、いつもこの方向から、ですか?」 晶の問い掛けに二人の農夫が頷く。 「そうだ。いつもあっちから来よる」 「最初は休憩小屋から出たばあさんじゃった。その後は柵をこさえて何とかアヤカシから身を守ろうとしたんじゃが、それも一日もたんと」 「休憩小屋使わんようにしても畑にまで来られたらの」 「お仕事になりませんわよね」 お気の毒に‥‥と真由良にしっかりと手を握り締められた農夫達、一瞬にして赤面。ちょっと刺激が強過ぎたかもしれない。 「い、いやっ、じゃがそのおかげでお嬢ちゃんのような開拓者に会えたんじゃから‥‥っ」 「何を言っとんのじゃ貴様!」 べしっと身内同士のボケ、ツッコミ。 「あ! 見て見てあそこ!」 シラハが指差したのは、その休憩小屋の周りだ。一休みした後に仕事を再開するべく身支度を整えるための場所でもある其処は、決して広くはないが、アヤカシが来ると言われる山に面した平地だ。 「すまないが、あの場所に落とし穴を幾つか作っても良いだろうか? もちろん事が済めば埋め直す」 アルティアが尋ねれば農夫達は即答。 「ああ構わんよ、アヤカシ退治を頼んだのは此方だしの」 「遠慮は要らん」 「助かる」 「あと、すみません。穴を掘るための農具もお借り出来ますか?」 「いま持ってこよう」 「ありがとうございます」 農具の貸与も快く承諾してくれた農夫達に玲が丁寧に頭を下げ、そこに慌てて言葉を重ねるのは真言。 「呼子もお借り出来るでしょうか? 出来れば人数分」 「あいよ」 これにも応じてくれた農夫達に感謝の言葉を繰り返し、開拓者達は顔を見合わせる。これで下準備は完了、あとは‥‥穴掘りだ。 ● 大型のアヤカシ相手に真正面からぶつかるのは、確かに得策ではない。 少しでも敵の行動を阻害出来るよう、なるべく深い穴を掘る。 「甘味の天敵熊公め、いまに見てろよ。甘味のためならえ〜んやこ〜ら!」 勢い良く土を掘り進める玲に応援を惜しまない真由良。手伝いたい気持ちはあるものの力仕事に向かない己は自覚しているため、主に汗拭きや、村人達が用意してくれた水を皆に配って歩いていた。 穴掘りが終われば鳴子も張ろうと考えているのはアルティアだ。出来れば穴掘りは仲間に任せて自分はこちらを作り始めるのも一案なのだろうが。 「何個くらい掘ろうか! あたしはまだまだいけるっす!」 三つ掘っても息一つ切らさずに元気なシラハ、女性の細腕でそれだけ頑張れるのならと、男衆がやる気にならないわけがなく。 「少し休んでいて下さい、後は僕たちが」 真言が腕を捲って言えばシラハは感動。 「そんな気を使ってくれなくても大丈夫! あんた優しいっすね!」 「いや‥‥」 そういうつもりではないのだが、彼女には言葉そのままに取られたらしい。そんな遣り取りにくすくすと笑う朱音はと言えば、晶が準備してくれたとれたてみったんジュースをごくり。 「わぁ、美味しい!」 「ええ、本当に」 こちらは穴を一つ掘り終えた時点で息を切らし、この後の戦闘に備えた休憩に入っていたのだ。 「‥‥ですが、他にも、甘いものがあればいいな‥‥なんて」 「ん?」 「ぉ、思ってません」 朱音に聞き返された晶は、慌てて否定。 「思ってませんよ」 「ん??」 ひょいっと顔を覗きこまれて僅かに後退り。 「ほ、本当です‥‥」 「本当に?」 「‥‥‥‥本当は、少し‥‥思いました‥‥」 ほんのりと頬を赤くして俯いた晶に「可愛い‥‥っ」と拳を握ったのは朱音と、シラハ。彼女の意識が他を向いている内に男達は穴掘りえんやこら、だ。 ――ただ、彼等は大事な点を見落としていた。 農夫が熊型のアヤカシに襲われて数日、自ら襲われたい民などいるわけがなければ農夫達の畑仕事はストップしたままで、アヤカシは人を食らっていないのだ。そのせいで腹を空かした熊の領域に、人が現れたら、どうだろう。 アヤカシには開拓者達が自分を嵌めるための罠を作っているなど知る由も無ければ穴掘りが終わるまで待つ理由もない。餌場に餌が現れた、それだけの認識だ。 「!」 背後から迫り来る殺気に、真っ先に気付いたのは玲。 振り替えるや否や、四足で大地を駆る大きな獣の姿に目を見開いた。 「後ろだ!!」 「!?」 全員が気付く。 しかしそれより早く振りあがった、鋭い爪先を持った獣の手。 「晶!!」 「っ」 休憩中だった彼女の頭上から振り下ろされる腕を。 「疾風脚!!」 スキル発動、熊の懐目掛けて飛び込んだのはシラハ! 「はあああああっ!!」 「ヴォオオオオオオ!!」 拳の一撃。 獣の咆哮。 標的は晶から、シラハへ。 彼女の攻撃に耐えた熊は腕を振り上げ、叩き付ける! 「くっ」 「伏せろ!」 声を上げたのは二刀流のアルティア。自慢の足で地を蹴り、斬り掛かる直前、シラハは身を屈めて仲間の軌道を確保。 同時。 「晶こっち!」 「っ」 朱音に腕を引かれ獣の射程を逃れれば、彼女も開拓者。即座に体勢を立て直した。 「グルルルルルァァアア!」 アヤカシは腕を斬られ、それでも切断には至らなかった四肢で開拓者達に挑む。 だが、急襲に一度は陣形を崩した彼等も深呼吸一つ、気持ちを落ち着ければ慌てる必要もない。 「さぁて、農夫さんが一生懸命に育てた畑を荒らした罰を受けてもらうぜ」 刀を構えて、玲。 「甘味を脅かす悪に、容赦は、しません」 晶も珠刀「阿見」の刃を切り返し、アヤカシに対峙する。 視線を逸らすことなく移動する開拓者達は次第に敵を囲うように陣形を組み、合図の代わりにスキルを発動したのは真由良。 「おいたは程々に、ですね」 にっこりと微笑みながら印を組む、その先に現れたるは彼女の式。 「ヴォ‥‥」 ぐらっ‥‥とその体勢が崩れたのは呪縛符が効いたからだ。 「いまですよ」 「そういうわけですから、覚悟してもらいましょう」 攻撃を仕掛ける真言に唸るアヤカシ。地を蹴った彼に対しよろけながらも腕を掲げ振り下ろす、が。 「っく!」 その腕に刀をぶつけ制御したのは晶。アヤカシの身体と腕、開いた隙間に切り込む真言。 「炎魂縛武!!」 「ヴォオオオオオオ!!」 炎を纏った剣が腕を切り離す。 大地に転がったそれが。 「こうなった僕はもっと速い――腕一つじゃ済まさないよ!」 泰練気胞壱。 自身の能力を極限状態にまで高め放つアルティアの一刃は真っ直ぐにアヤカシの逆腕を切り落とし。 「っ‥‥」 着地したと同時、激しい体力の消耗からよろけた彼を庇った朱音。 そして、シラハ。 「往生せいやーッ!」 「グホァ‥‥!」 両腕を失ったアヤカシの眉間に命中したシラハの膝蹴りは、アルティアと同じく泰練気胞壱によって能力を高められた一撃。 これには巨体も為す術無く背中から地面に倒れ込んだ。 「っはぁ‥‥」 「仲間は傷つけさせません」 疲労から膝を付いたシラハを背に庇った晶。 治癒符を発動する真由良。 「これで」 「終わりだよ!」 真言と玲、二人が握る刀は炎を纏った武器はアヤカシの胸部と腹部を刺し貫く。 「――‥‥‥‥!!」 声にならぬ悲鳴が大気を震わせ、それきり。 今まで熊の姿を象っていたアヤカシは塵と化し消えていく。 「‥‥終わりました、ね」 晶が呟いた時。 その場には仲間達と共に、幾つもの落とし穴だけが残っていた。 ● アヤカシ退治が終了して、皆は力を合わせて穴埋め開始。 これもきちんと片付けて行くのが農夫達との約束だ。 だが、力仕事をしていれば腹が空くのは致し方なく。 「なんだかお饅頭が、食べたくなってきました」 「賛成!」 晶の言葉に朱音が勢い良く手を上げた。 「私は、特にみたらし団子が、好きなのですが‥‥やっぱり今日は‥‥どこか美味しいお饅頭を‥‥ご存知ですか?」 「あるあるっ、花園って甘味屋さん! 私達親子の一番好きな甘味屋さん!」 「行く! そこ行く、絶対行く!!」 即座の挙手はもちろんシラハ。 彼女も戦って腹が減った。 「依頼も無事終わったし、打ち上げも良いですね」 おっとりと言う真由良に玲やアルティアも異論は無い。 「僕は饅頭だろうと羊羹だろうと、何でも好きだし」 「‥‥では、僕も今日は暑い日のお饅頭を試してみましょうかね」 くすくすと楽しげな笑いと共に真言が言えば、打ち上げ決定。 「よぉっし、さっさと穴埋め終わらせよう!!」 両手の拳を高々と上げ、シラハは気合一発。 美味しい甘味を目指してもうひと頑張りだ――‥‥。 |