|
■オープニング本文 ● 「あーづーいーーー」 甘味大好き姉妹と評判の姉、佐保 朱音(さほ あやね)が部屋の畳にごろりと転がりながら叫べば、妹の雪花(ゆきか)も卓に突っ伏して「あーづーいーーー」と唸った。 「もう八月も終わろうって言うのに‥‥っ」 うぎぎぎと青い空で元気いっぱいに熱を放ってくる太陽へ恨めしそうに呟いた。 と、玄関から物音が聞こえ、両親が帰宅した事に気付く。 「あー」 朱音はごろごろごろと横になったまま回転して居間と玄関を繋ぐ廊下まで移動し、雪花はのそりと動き、四つん這いの格好でのろのろ移動。 「おーかーえーりー‥‥」 「あらあら」 そんな姉妹に帰宅したばかりの両親は失笑。 座っているだけでも汗が滲んで来る暑さによほど参っているのだろうと知れた。 だが。 「これを見てもそんな状態でいるのかしら?」 「ほえ?」 母親に言われて顔を上げれば、その胸元に抱えられているのは大きなスイカ。手に提げているのは花火だ。更に父親が担いでいる巨大な氷。 「スイカ!!」 「氷!!」 「ふふ、今夜は庭で夕涼みしましょう?」 「するー!!」 姉妹、途端に元気いっぱい。 「そこでだ。さすがにこの大きなスイカや氷を家族だけで食い切る事は出来ないからな。世話になっているギルドの伊織さんや、開拓者仲間も誘って来い」 「はーい!!」 父親の提案にきりっと立ち上がった姉妹は我先にと外へ飛び出した。 ● 「だからね!」 「そうね。ええ、子供達や旦那と一緒にお邪魔させてもらおうかしら」 「是非〜だよ〜」 姉妹と伊織は早々に約束を交わし、一緒に夕涼みしようという事になる。 「あとは誘うお友達だけど‥‥」 伊織が誰にするのかと小首を傾げたところで、姉妹は立てた人差し指を左右に「ちちちっ」。 「まだまだ甘いよ、いおちゃん♪」 「こうするのですー」 朱音と雪花はくるりと体を回転させると、ギルドに集まっている開拓者達に声を掛ける。 「今夜うちで夕涼みしたい人、寄っといでぇ!」 「スイカに氷、花火もあるよー」 姉妹の誘い文句に、開拓者達は――。 |
■参加者一覧
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
礼野 真夢紀(ia1144)
10歳・女・巫
フェルル=グライフ(ia4572)
19歳・女・騎
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
フラウ・ノート(ib0009)
18歳・女・魔
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
燕 一華(ib0718)
16歳・男・志
ユリゼ(ib1147)
22歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ● 「あら♪」 姉妹の呼び込みを耳にして楽しげに微笑んだ御陰 桜(ib0271)はこっそりと少女達の背後に回る。 「さぁさぁ興味のある人は寄っといでぇ!」 「寄っといでぇ〜」 両腕をめいっぱい伸ばしている少女達の、隙だらけの脇腹にするりと腕を回し。 「わっ」 「おぉ!?」 「おひさ〜♪」 驚いた姉妹は、しかし相手が以前に自分達のお肉減量企画に協力してくれた桜だと気付いて笑顔になった。 「桜ちゃん!」 「お久し振りなのです〜」 「ふふ、元気そうね」 さりげなく指先を動かしながら姉妹の減量成果を確認しつつ、開拓者を呼び込んでいる理由を聞けば桜も興味を惹かれた。 「へぇ、西瓜と氷と花火で夕涼みかぁ、イイわねぇ♪ あたしも混ぜて貰えるかしら?」 「もちろん!」 姉妹の大喜びの声がぴったり重なり。 同時に視界に入った桜の向こう、雪花の視界を過ぎったのは見覚えのある少年で、朱音が見つけたのは小柄な少女。 「一華君!」 「真夢紀ちゃん!」 燕 一華(ib0718)、礼野 真夢紀(ia1144)、二人ともやはり桜と同じく以前から面識のある開拓者だった。 夕涼みの企画を話せば二人とも笑顔で快諾。 「はーい、参加させて下さい!」 特に真夢紀はやる気満々の反応だった。 夕涼みに相応しい時間までそれぞれが自宅で準備をしたいということもあり、開始時間迄に現地(姉妹宅)集合として一度は別れた彼ら。そうして更に続けた姉妹の呼び込みにはこれまで面識の無かった、ユリア・ヴァル(ia9996)やフラウ・ノート(ib0009)、ユリゼ(ib1147)が集まってくれた。 そんな姉妹が、そろそろ自分達も準備のために帰ろうかという頃になってギルドの片隅で思案顔だったのは酒々井 統真(ia0893)だ。 (夕涼み、かぁ) あの姉妹とは縁もゆかりもないが、誘ってくれるならば邪魔してみるのも悪くない。それに、何より――。 「? 統真さん?」 ギルドの掲示板を見上げてみたフェルル=グライフ(ia4572)が彼の――大切な恋人である統真の視線に気付いて小首を傾げた。 そんな動作に合わせて揺れる金の髪。 「どうかしましたか?」 「いや‥‥」 すっかり元気になった彼女は、自分共々先日まで大勢の開拓者達が関わり数多の血を流した開拓史で負傷した身だ。その傷もようやく癒えての今日、夕涼みは気分転換になるかもしれない。 姉妹の呼び込みの話をし「どうかな」と尋ねればフェルルの返答は、笑顔。 二人は並んで佐保姉妹の元へ歩み寄った。 ● 「はーい、遊びに来たわよー」 手土産におはぎを持って約束の時間より少し早く到着したユリアを、廊下をドドドドッと勢い良く走る姉妹が出迎えた。 「いらっしゃいユリアちゃん!!」 「おはぎありがとう!!」 甘味に目が無い姉妹は早速そちらを受け取り、ユリアは「あらあら」と苦笑。そんな娘達を「こら」と叱ろうとしたのは父親だったが、顔を出した彼はユリアの姿を見て一瞬だが言葉を失った風だった。 「どうかしたかしら?」 悪戯っぽく笑いかけたユリアに、父親の頬が微かに赤く染まる。 「いや、まぁ‥‥なんだ」 「‥‥あ・な・た」 「ぐぎぎぎぎ」 言い淀んだ彼の耳を突如として引っ張り捻ったのは姉妹の母親であれ、彼の妻。 「いくら綺麗なお嬢さんだからって私の前で見惚れるだなんて」 「いだっ、だっ、す、すまんっ!!」 誤解だと言い訳もせず素直に謝る夫の耳を更に捻る妻。そんな夫妻の姿にユリアは。 「仲が良くて素敵ですわ」 くすくすと微笑う彼女に、姉妹もにやにや。 次に頬を染めるのは母親の方だった。 「もうっ。大人をからかわないの」と逃げるように夫を放して奥の台所に向かう背中に、姉妹が頬を緩ませた。 「うちの父ちゃんと母ちゃんはいっつもこんなだよー」 「ん。それに、ユリアちゃんすごく綺麗。父ちゃんが見惚れるのも判るよ!」 「あら、光栄だわ」 「や、だから‥‥! いや、うむ‥‥」 そうしてまた真っ赤になる親父。 今日のユリアは雨上がりの紫陽花をイメージした薄い青地に紅紫色の紫陽花が描かれた浴衣姿。青銀の長い髪をすっきりと纏めて結わえたユリアの、露になった首筋はとても艶やかだったのだ。 それから続々と集合する参加者達。 「ども♪ 初めましてね。あたしフラウよ、よろしく!!」 紺色の地に白色の竹が描かれた浴衣に、髪型はポニーテール。普段愛用している帽子も今日ばかりは外してすっかり和服美人のフラウだ。 「お招きありがと〜♪ コレはオミヤゲ」 途中で購入した練乳を差し出す桜色の浴衣は、勿論、桜。 薄い青色に小花を散らした浴衣姿で統真にエスコートされたフェルルも、夏蜜柑の中身をくり貫いて寒天を詰めて冷やしたものや、練乳、苺、カキ氷を彩る食材を持参した。 そして少女だが少年ぽい衣装で中性的な清らかさ醸し出すユリゼは持参した桃を手渡しながら佐保家の面々に礼儀正しく一礼する。 「今日はありがとうございます、天儀の涼を堪能しに来ました。良い思い出になりますよう、どうぞよろしくお願いします」 「あぁいや、これはご丁寧に‥‥こちらこそよろしく」 日頃、大雑把な生活をしている佐保家の面々は緊張した面持ちで頭を下げ返す。さすがの姉妹も些か固くなっていた。 そんな少女達に気付いてふわりと微笑むユリゼ。 「ギルドでの、お二人の夕涼みに呼び込む姿を拝見しましたが、見ていてとても気持ちが良かったもの。朱音さんも、雪花さんも、元気そうで可愛いお嬢さんだわ。よろしくね」 「‥‥っ」 真っ直ぐに見つめられて言われた台詞に顔を真っ赤にしたのは朱音。 「ユリゼちゃん王子様みたい〜」 雪花がカラカラと楽しそうに笑うと、ユリゼも「そう?」と楽しげに笑い返した。 またしばらくして大荷物を台車で運んで来たのは一華。途中で見かけた真夢紀が重たそうにしているのを見て手伝ってくれたのだと言う。 何をこんなに‥‥と驚く朱音に、真夢紀。 「竹筒には甘酒と梅酒、西瓜や夏蜜柑の果汁に、葡萄酒と栗の甘露煮の汁ですの。カキ氷に掛けて食べたら美味しいと思って」 その他にも湯飲みや茶碗蒸しの容器に入った洋菓子はつい先日習った物で、蒸して作ったそれには里芋も入っていると言う。他にも彼女の故郷の姉から送られて来た無花果、おはぎと心太は夕食の残り。お鍋には白玉入りのお汁粉。 「わぁ、そんな重いものまで積んであったんですかっ」 台車を引っ張って来た一華が目を瞬かせる。これを女の子一人で引っ張って来ようとしていたのだから驚きだ。 「帰ってからすぐ作って持って来たので道中冷やしながらでもまだ温くって‥‥、お水、貸していただけませんか? 桶に水を張って鍋を浸して、周りに氷を浮かべて冷やすんです」 「なら、西瓜を冷やしている桶に一緒に入れて貰えるかな。もう一つの大きな桶は足を冷やすのに使うからね」 「はーい!」 真夢紀が元気な返事をすると、玄関の方からは幼い子供達の賑やかな声が聞こえてくる。ギルド職員の伊織が家族と共にやって来たのだ。 「せっかくお誘い頂いた夕涼み、皆さんで思いっきり楽しんじゃいましょうっ♪」 一華のその言葉が楽しい夕涼みの始まり。 チリー‥‥ンと縁側の風鈴が夕暮れの風に揺られて鳴り響いた。 ● 赤く染まる空の下。 金魚すくいや風鈴の絵付けなど、やりたい事は諸々あったが、金魚や風鈴、画材等の準備が佐保家にはなく、特に金魚は夕涼みが終わった後の事もあるため今回は見送る事になった。 その代わりとでも言うように佐保家の家長ががりがり氷を削り、統真が庭から聞こえてくる虫の声を頼りに秋の虫達を探して回る。 その間、少女達は用意した水桶に足を浸したり、西瓜を食べたり。 「西瓜は真ん中が一番美味しいって聞いたけど本当?」 ユリゼの質問に、彼女が持って来た桃と西瓜を貰ってフラッペを作っていたフラウや、佐保家の家長が削った氷を次々と器に盛る姉妹からそれを受け取り、持参した食材で味付けしていく真夢紀やフェルルが「そうかも」と頷けば、ユリアは改めて西瓜を見つめる。 「種を全部取ってから食べるのが大変そうだけど、赤くて綺麗な中身ね」 「そりゃあお父ちゃんが選んだ西瓜だもん!」 朱音が胸を張って言い、美味しい西瓜は叩けば判る等、選ぶときのコツの話題で盛り上がる。 「カキ氷は頭がキーンとするのがお約束なんでしょ?」 「そうね。じゃあ早食い競争でもしてみる?」 楽しげなユリゼに、ユリアの提案。 「早食いなら、やっぱり苺や桃の果汁で味を付けるのが良いかもです」 「本気でやるの?」 真夢紀の提案にフラウが聞き返し。 「やるなら負けられませんねっ」と笑顔でやる気を見せる一華。 「でも、せっかく美味しいかき氷ですからゆっくりと皆さんで味わうのも‥‥」 フェルルが言いかけたところで秋の虫を探していた統真が戻ってくる。 「? どうした、食わないのか? せっかく親父さんが削ってくれてるのに溶けるぞ?」 これから早食いをやるか否かの相談が行なわれていたとは知る由もない統真が言う。 「フェルル、俺にも一つくれるか?」 「はい」 喜んで、と新しい器を手に取り掛けたフェルルはそこで一度動きを止めた。 「?」 皆の視線が集めながらフェルルが取った行動は――。 「えっと、その‥‥あーんっ」 「えっ‥‥」 匙で掬った氷を統真の口元に運ぶフェルル。 固まる統真。 「やっぱり、みるくたっぷりかけると美味しいわねぇ♪」 何気ない桜の言葉にハッとした面々はそれぞれに二人から視線を外し。 「っ、っと‥‥」 わざとらしく皆から視線を外された統真は、顔を真っ赤にしながらフェルルが掬ってくれた氷を飲み込んだ。 ● 空がすっかり暗くなれば花火の時間だ。 一人一人に手持の花火が配られて、縁側に設けた蝋燭の灯で火を点ける。 寄り添いながら花火を楽しむフェルルと統真の姿に、周りの面々からは微笑ましい笑みが零れた。 「仲良いんだから♪」 二人の遣り取りを眺めていたフラウがそんな事を呟けば、ユリアが楽しげに笑う。 「あら、私はフーちゃんの馴れ初めとか聞きたいわ♪」 「え、えっと‥‥っ」 ユリアの問い掛けにフラウは慌てて周囲を確認した。皆、花火で盛り上がっていて此方の話に聞き耳を立てている様子はない。 大丈夫、と自分に言い聞かせるように深呼吸を一つすると、‥‥それでも心臓の音がうるさいから誤魔化すように両手の指をもじもじさせながら口を切った。 「ぅ、うん‥‥良いヤツよ。外見は強面の上に眼光が鋭いから近寄り難い感じだけどね」 「そう」 微笑ましいと言いたげな笑みで相槌を打つユリアに、フラウは続ける。 「あたしにも気遣いしてくれるし、間違ってるときちんと言ってくれるし、そんなに暴そ‥‥」 不意にフラウの言葉が途切れ。 「どうしたの?」 ユリアの聞き返しに突如ぶるるっと頭を左右に振るフラウ。 「な、なんでもないわ」 咳払いを一つ。赤くなった頬をユリアの視界から遠ざけるように顔を背けた。 「と、とにかく。一緒に居て楽しいし気持ち良いから、悪くはないわね♪」 そっぽを向きつつも大切な相手の事を語れば無意識に口調が弾むのは仕方が無い。彼の事を話すという事は、その心に彼を思い浮べるという事。 心の一番深くて近い場所に彼を抱き締めるという事。 「ふふ」 ユリアは微笑む。すぐに真っ赤になってしまうフラウの素直さが可愛くて、愛しい。そんな幼馴染の視線に気付いたのか、些か居た堪れなくなって来たフラウは「そういうユリアんこそどうなのよ」と切り返す。 聞かれたユリアは目を瞬かせた後で「私? ‥‥そうねぇ」と思案顔。 そうして返す言葉は。 「いま、逃亡計画を立てている最中なのよ」 「え?」 意味が判らずに聞き返せばユリアは意味深に微笑み、その視線を仲間達が楽しむ花火に移した。 淡く、激しく、ほんの一瞬の輝きで人々を魅了する花火の儚さ。 「自由きままな私じゃダメなのよ。だから、誰よりもあいつの幸せを祈るわ」 「ユリアん‥‥?」 フラウの呼び掛けにユリアが応える事はなかったけれど、その横顔には花火に勝るとも劣らない美しさと、儚さが見える。 (‥‥どうして判らないのかしら、あの大馬鹿) 胸中に呟いたつもりの言葉は、果たして外界に音となって零れ落ちたのだろうか。 ぽふり、と。 不意に頭を撫でられて少なからず驚く。見ればフラウが心配そうな顔でユリアの頭を撫でていた。 なでなでと言葉もなく、その瞳に想いを込めて触れられればユリアの気持ちも温かくなる。 「ありがとう。私達も花火、混ぜてもらいましょう」 「ん♪」 そうして二人、立ち上がった。 「イイわねぇ、若いって」 「ああ、まったくだ」 花火を楽しむ若人達の姿に伊織が呟き、それに応じて盃を煽った佐保家の家長が満面の笑み。 「もう一杯イっとく?」 「ああ、これはありがたい」 桜の酌を受けながらすっかりほろ酔い気分。その内に花火は手元から空に場所を移り、大規模なそれとは違って輝きは一瞬、高さも垣根の上くらいまでしか届かなかったが、一際派手な花火が彼らの目を楽しませた。 「た〜まや〜♪」 桜が言えば伊織の子供達が真似をする。 「さぁ、もう一つ!!」 統真が火をつけた花火が打ちあがる。 夏の夜空に浮かぶ火の花。 一瞬の煌き。 手持のハーブを浮かべた水桶に足を浸しながら「楽しい」と微笑むユリゼ。 「夏はもう終わっちゃいますけど、今度は天高く馬肥ゆる秋が待ってますよっ。お月見や収穫祭もあるでしょうし、まだまだ楽しい事はいっぱいですよねっ♪」 「いっぱいだよね!!」 一華が言えば食べる事には目が無い姉妹が瞬時の反応。これにはどっと笑いが起こる。 「楽しかったわ♪ また、一緒に遊びましょうね♪」 「うん、もっちろんだよ!!」 桜の言葉に姉妹が大きく頷く。 夏の夜の夕涼み。 耳を澄ませば虫の声。 それは、夏の終わりの楽しい思い出になった。 ● 夕涼みを終えての帰り道。 賑やかな一行と別れて二人、静かな夜道を歩く統真とフェルルは近くを流れる川に向かっていた。 水辺を歩きたいという恋人の願いを統真が叶えないと思ったからだ。 夏の盛りであれば蛍の光りが足元を照らしてくれたかもしれない場所は、今は真っ暗。それでも二人、手を繋げば互いの姿を見失う事もない。 「虫の声‥‥お庭で聞くのとはまた全然違って‥‥、秋、ですね」 「日中はまだ暑いのにな」 まだまだ暑くても。 カキ氷が美味しくても、季節は確かに移ろい世界は色を変えようとしている、‥‥けれど。 夏は終わっても、自分達の時間はこれからも続いていく。急がなくていい。互いを見失わないようにこうして手を繋ぎ、ゆっくりと歩いていこう。 傍に君の温もりを感じながら、一つ一つ、新しい季節を――。 |