|
■オープニング本文 穂邑(iz0002)が開拓者ギルドを訪れると、屋内は上へ下への大騒ぎだった。 無理もない。 多くの開拓者達が新大陸を目指して巨大なアヤカシ達と戦い、攻略を続けている今、彼らが直面する『試練』――これから開拓しようという新大陸に向かうための嵐の門を護る魔戦獣『牌紋』との対決までも、もう時間は無いだろう。にも拘らず此方が入手している情報と言ったら黒井父子が調査してきた文献によって語られている範囲止まりで、どれほどの戦闘力を持つとも知れない相手に力押し以外の策を講じられずにいるのだ。 上層部には「数で押し切れ」と言い放つ者も少なくないようだったが、数向かわされる事になる開拓者達と最も身近な距離で接しているギルド職員達の中にはそれを良しとしない者が多い。 どんな些細な情報でも良い。 開拓者達に一筋の光りを、ともう何日もろくに休んでいない職員が大勢いるのだ。 「‥‥こんな時に来るべきではなかったかもです‥‥」 穂邑は己の間の悪さに唇を噛み締める。自分の事に手いっぱいで、助け合うべき仲間の事にまで気持ちがついていっていなかった。 「あたしは‥‥」 俯き、拳を握る少女はそれきりギルドを立ち去ろうとした。今の自分ほど此処に相応しくない開拓者はいないと感じたからだ。――だが、そんな彼女を呼び止める声があった。顔馴染みの職員、高村伊織だ。 「穂邑ちゃんっ、良いところに来てくれたわ!」 「ぇ‥‥」 反応に戸惑う少女の両肩を掴んだ伊織は、語調荒く、一息に捲くし立てる。 「今ねっ、遭都から少し離れた森にある神威人の里‥‥ほら、天儀に暮らす神威人達の本拠地って言われてる! 穂邑ちゃんもそれは知っているわよねっ?」 「ぇ、ええ」 「その神威の里から使いの方が来てくれて!」 里の古い家屋から隠し扉が見つかり、そこには数百冊に及ぶ蔵書が保管されていた、と。もしかしたらその中に魔戦獣と対する際の有効手段が記されているかもしれないと伝えてくれた事を明かした。 開拓者の中には獣人も少なくない。 神威の里の者達も、魔戦獣との決戦によって多くの同胞達が傷付く事を良しとはしなかったのだろう。 「だからね穂邑ちゃん、これからお使いの人と一緒に彼らの里に出向いてもらえないかしら。ギルドから動けない私達の代わりに‥‥ううん、今も新大陸への航路で必死に戦っている彼らのためにも、隠し扉の向こうにあった蔵書を調べて来て欲しいの!!」 伊織の必死のお願いに、穂邑は最初こそ戸惑っていたものの最後には力強く頷いた。 「私で力になれるなら‥‥っ」 その強い思い一つで神威の里に赴く事を決め、また、自分一人で数百冊の蔵書を調べるのでは時間が無さ過ぎるから仲間を募った。 一人でも多くの仲間が無傷で帰路に着けるように。 新大陸への道を開けるように。 「私、行きます」 そう宣言する穂邑の瞳には、今までと明らかに異なる力強さがあった。 |
■参加者一覧
香椎 梓(ia0253)
19歳・男・志
玖堂 柚李葉(ia0859)
20歳・女・巫
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
煌夜(ia9065)
24歳・女・志
月代 憐慈(ia9157)
22歳・男・陰
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
アッピン(ib0840)
20歳・女・陰
小隠峰 烏夜(ib1031)
22歳・女・シ
蜜原 虎姫(ib2758)
17歳・女・騎
アルマ・ムリフェイン(ib3629)
17歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ● 「ん‥‥っ、よく寝たわ」 目的の神威の里に到着し、次々と馬車から降り立った開拓者達の中、両腕を天高く伸ばして体を解す霧崎 灯華(ia1054)は、しばらくゆっくりと休む事もないだろう今回の役目に備えて移動中にしっかりと睡眠を取っていた。 無論、彼女だけでなく佐伯 柚李葉(ia0859)や香椎 梓(ia0253)も休息は充分に取っていたし、小隠峰 烏夜(ib1031)もシノビならではの技術を用い数日間に及ぶ徹夜を敢行する心積もり。寝ずに済むとは言え『寝る』という行為と同様の体力の回復が行なわれるわけではないため、少しでも体力を温存する必要があった。そんな彼女の事を気遣えば話し声で邪魔をするのも憚られるからと、自然、移動中の車内は終始静寂に包まれていたのだった。 こうなってしまうと全員が寝て来たかと思えば、寝るには気持ちが高揚し過ぎている者もゼロではなかった。 開拓者としての活動は噺家の魂をくすぐるという月代 憐慈(ia9157)や、月と精霊を信仰する神威人の秘されて来た文章というもの接するこの機会に胸を躍らせる煌夜(ia9065)、そして、今度こそ自分も開拓者としての役目を果たしたいと心に固く誓っている穂邑など、彼らの胸中もそれぞれ。 「‥‥虎姫は、まだ、戦いで、役立てる事‥少ない、もの。だから‥‥」 これは前線で戦う皆の為の後方支援。一緒に頑張ろうと励ます蜜原 虎姫(ib2758)に、先程からどこか思い詰めた表情をしていたアルマ・ムリフェイン(ib3629)が目を瞬かせた。もう何度も同じ依頼で協力し合って来た二人だから、しばし無言で視線を重ね合うだけでも相手の言いたい事が伝わる気がした。 アルマは、静かに頷く。 「必ず、何か。‥‥何か、見つける」 久方振りに帰る故郷。 もうこの場所にツテを期待出来るような身ではないけれど、それでも、やらなければ。 「さぁ皆さん、此方です」 此処まで開拓者達を案内して来た神威の民に促されて彼らは歩を進める。 「――新たな世界への扉を開く突破口、何としても手に入れよう」 ロック・J・グリフィス(ib0293)が高貴なる薔薇を胸に語る。 「書物の海に船出し、先人の知恵という宝を手に入れるのも悪くはあるまい」 「ふふ」 その言葉に同意を示すように、あるいは面白そうに笑んだのはアッピン(ib0840)。既に一度、開拓者達の前に立ちはだかる魔戦獣『牌紋』と対面――正確には殺されかけたわけだが――を果たしている彼女は、敵との再会を願わずにはいられない。 だから、こそ。 「楽しみですね」 おっとりと告げるアッピンに頷き返す者、驚く者。何れにせよ掴むべきは過去の真実。 灯華は微笑った。 「それじゃ始めましょうか?」 数百冊に及ぶ蔵書との、長い戦いを――。 ● 「流石に凄い状態だな‥‥格好など余り気にしていられんか」 愛用のスカーフで口元を覆ったロックが苦笑混じりに呟けば全員分の薄手の手袋を用意して来た梓も、その一つを彼に手渡しながら言う。 「まずはハタキや布巾で簡単に埃を落としていくところからですか」 「カビの臭いも酷いものね」 そういう煌夜の声も苦笑混じりだ。 部屋は大人が三人並べば本棚に邪魔されて腕が伸ばせなくなる狭さで、入り口以外の壁という壁の全てが、天井から床まで本棚になっており、そこに数百冊の書物が無造作に並び置かれていたのだ。埃で白くなっている背表紙や、棚。歩けば床の塵が問答無用で舞い上がり彼らの衣服を汚す。 部屋の中央に小さな卓が一つ置かれており、ランタンが卓上で淡い光りを放っていた。あとは手持の蝋燭が室内の明かりの全て。火の取り扱いにも充分に注意しようという話は既に彼らの間で共有されている。 「凄いのです‥‥」 穂邑が力ない声で呟くと、側では案内人の神威人が恐縮そうに「すみません」と詫びる。 「これでも掃除をしようと努力はしたんですが‥‥何というか、僕達には余りにも強烈過ぎる臭いで‥‥」 神威の民は犬の耳を動かしながら言い、開拓者達は「なるほど」と納得せざるを得なかった。 一方、そんな彼女達とは違い室内をまじまじと見て周り、躊躇無く一冊を手に取ったのは憐慈だ。 (いやはや、いかにも何かありそうじゃないか‥‥これに興味を持つなって方が無理ってもんだよなぁ) 本の表紙を掌で拭き、ぱらぱらと捲る。 (俺には正に宝の山‥‥徹夜出来ないこの身が憎いねぇ‥‥っと、解読にも時間が必要、か) 憐慈は途中で手を止め、頁の文章に目を走らせるが文字そのものが既に意味不明。さすがは神威人の古代史と感心したところで、扉の向こうから複数の人の気配が近付いてくる。 「解読を手伝ってくれる人達だよ」と、アルマに促されて部屋に入って来たのは五名の神威人。 「此処にある書物は確かに古代語らしいけど、今の言語の基礎になっているものだから神威人なら大半が解読出来るんだって」 「‥‥じゃあ、アルマさんも‥‥?」 「うん」 虎姫の確認にアルマは頷く。その表情は心なしか嬉しそうだった。そうして彼らは魔戦獣との戦いに際し必要な情報を優先的にこの数百冊の書物の中から見つけ出すため、関連しそうな単語を神威の文字で書き記してもらい、その字面を覚えて全員で探し始めるという手順を確認し合う。 「覚えておきたい単語は‥‥魔戦獣、牌紋、アルステラ‥‥」 精霊、封印、門、嵐――広く「神」や「魔」と言った単語も念のために頭に入れ、‥‥いよいよ捜索の開始となった。 ● 開拓者達はその部屋にあった書物を片っ端から読み漁った。読む、という表現には語弊があるかもしれないが、手にとった書物から、まずは丁寧に誇りを払い、状態を確認し、間違っても破損させないよう細心の注意を払いながら一頁ずつゆっくりと捲り、先に予め覚えておいた文字を文章の中から探し出す。 此処に「魔戦獣」の文字があった、そこに「嵐の門」の文字があった‥‥そういった頁には虎姫の案で付箋代わりの紙切れが挟まれていき、付箋の付いた書物は隣の部屋に運び出され、協力を快諾してくれた神威人達によって解読、其方担当となった開拓者達の手で天儀の言葉に書き直されていった。 蝋燭の火も数が揃えばそれなりの明るさを保つもので、相変わらず火元の注意は怠れないが、それでも作業は思った以上に順調に進んでいた。 そして忘れてはならないのが休憩だ。 何時間もずっと書物を相手にしていれば肩が凝るといった症状以外にも頭痛や目眩、吐き気、睡眠不足による悪影響もただでは済まないからだ。 共に休憩を取る事になった梓と柚李葉は、柚李葉の術で作り出した氷を用いて冷たい飲み物やおしぼりを用意、疲労の色が見え始めた仲間達に配った。 「冷たいおしぼりを目や首筋に当てると少しすっきりしますよ。熱い布がよければそちらも準備しますから遠慮無く言ってくださいね」 「急がば回れ、根を詰めすぎない事が逆に効率に繋がるかと」 梓はそう言い、穂邑におしぼりを手渡す、‥‥と同時に眉根を寄せる。穂邑は小首を傾げた。 「どうかしましたか?」 「穂邑さん‥‥そのお顔、どうしたんですか?」 「顔?」 「いえ‥‥いいえ、言わない方が良かったかな‥‥」 「えっ、えっ」 口元を押さえ顔を背けながらそんな事を呟く梓に穂邑は慌てて身を乗り出す。 「どうしたんですかっ、あたしの顔が何か‥‥っ、何かおかしいですか虎姫さんっ」 隣で作業をしていた虎姫に問い掛ければ、少女は沈黙。しばらくして「‥‥黒い」と短く応じた。 これには穂邑も顔を青くする。 「黒いですかっ、黒いって何がですかっ、黒井さんなら存じてますが‥‥っ!!」 「――」 ちーん、と空気が固まった。 穂邑撃沈。 「馬鹿っぽいわ‥‥」 そんな灯華の一言がようやく辺りの空気を緩和させる。梓は苦笑した。 「黒いのは目の下がですよ」 「目の下って事は、‥‥それって単なるクマ、ですよね?」 穂邑が力なく応じれば、虎姫。 「クマ、どうして、目の下、に、出来る‥‥?」 「それは寝てないから‥‥」 言いかけた穂邑は自らの言葉を押し止めるように手で口元を覆うも、時既に遅し。梓は穏やかに微笑いかけ、虎姫も得たりと言いたげに頷く。 「次の休憩の時には、少しでもちゃんと寝てください」 「休む、とても大事‥‥ね?」 「で、でも‥‥」 穂邑が反論し掛けたところで「大丈夫よ」と割って入って来たのは穂邑と組んでいるアッピン。 「次の休憩はわたくしがしっかりと穂邑さんと一緒に休ませてもらいますからね〜」 「ぇ、で、でも‥‥」 「美しいお嬢さんの添い寝付き休憩とは、穂邑嬢もやってくれる」 「ぇえ!?」 ロックにもからかわれて動揺を露にする穂邑へ、次第に広がる笑いの波。 良い感じに緊張が解れたかな、と。顔の下半分を書物で隠した憐慈がくすりと微笑んだ。 そんな開拓者達を、神威の人々は見守る。 灯華が「迷惑を掛けると思うけどよろしく」と寄越した酒は有り難かったが、そんな彼らの姿を見ていると別の場所で宴を催す気にもなれず、‥‥ならば自分達も手伝えば良いのではないかという考えに至るまで、そう時間は掛からなかった。 協力者は増え、秘密の部屋から運び出される書物も増え、天儀の文字に書き直された文章は山になる。 内容が重複するものも少なくなかった。 だが、それは同時に真実が近づいて来る証でもあったろう。 「あぁそっか魔戦『獣』って呼ばれているのはあくまで何体も存在する門の番人の総称の事か」 アルマは翻訳を続ける中で己の疑問の答えを見つけていた。牌紋と呼ばれる今回の相手が獣に乗った女性だったため、魔戦獣と呼ばれるからには彼女が騎乗している獣の方が本体なのかと懸念していたのだが、騎獣はあくまで騎獣。本体はやはり女性を象ったそれの方なのだろう。更に、獣人と呼ばれる神威の民と魔戦獣、獣と呼ばれるもの同士の関連も危惧していたが、こちらは杞憂だった。紐解く歴史は疑問の一つ一つを解消し、アルマの筆を握る手を軽くしていく。 作業は進む。 「残念ながら祖国ジルベリアの神教会の知識ではお役に立てないようですね‥‥」 四分の三を調べ終えた頃にアッピンが呟く。神教会に関しての情報量は自負していたが、こと魔戦獣に関しては神威の民が残したのだろう書物の数々を巡ってみてもこれという答えには辿り着けない。神教会には、魔戦獣に関する情報がほとんど無いというのが結論だった。 「数百冊なら一人数十冊。調べるのに集中するだけなら何とかなるし、何とかするわよ」 「ああ」 煌夜の励ましに仲間達が呼応する。 烏夜のシノビの目で部屋に暗号や更なる隠し部屋が存在しない事も確認済みだ。近付く調査の終わりに、――誰かが、息を飲んだ。 ● 「開門の宝珠‥‥!!」 四つの宝珠という綴りに思わず声を上げたのは、その回収に関った経験のあるロックだった。 「そっか、四つの宝珠って例の‥‥」 アルマも膨大な翻訳後の書面一枚一枚を繋ぎ合わせ、断片的な情報に一本の糸を通して行く。 如何せん、皆が探し出した書物の中には牌紋以外の魔戦獣に関する情報が九割方を占めており、どれがどの魔戦獣に関連するのか整理するには時間が足りなく、牌紋に関るものだけを抜き出そうとすれば情報が不足する。恐らくはどの魔戦獣にも共通する文章や道具が、牌紋の名前抜きで記述されていたりするのだろう。全てが同じ方法で打開出来れば楽なのに、どうやらそうもいかないらしい。 隠し部屋の本全てを調べ終えた後は神威の人々によって翻訳されたそれを全員で再調査しながら、開拓者達は試行錯誤した。 そうして知り得たのは開門の宝珠を用いる方法。 牌紋が守護する門には、その周辺四隅に巨大な水晶が存在しているという。この四つの水晶に開門の宝珠を接触させる事で門は開く、と。 「でも‥‥、その門、を、開く、為には、やっぱり、魔戦獣、と、戦わなくては、です?」 「うん‥‥宝珠を水晶に接触させるための隙は作らなきゃだろうけど、でも、魔戦獣を封印する事は出来るみたいだよ」 虎姫の不安げな問い掛けにアルマは応じ、卓の上を片付けて必要な書面だけを並べていった。仲間達は身を乗り出して其処を覗き込む。 彼らが知り得た方法はあくまで牌紋を含む数体にのみ有効な手段だったが、それに必要なのは一つの『短刀』だ。詳細を見つける事は出来なかったが――この量だ、ましてや検索語句に『短刀』を含んでいなかったのだから見落としている可能性は大いにある――短刀を見つければ、あるいは方法も知る事が出来るのかもしれない。 ただ。 「その短刀が何処にあるのかが謎なのであります」 そろそろ完全徹夜の日々に溜まった疲労も限界なのか、青白い顔で烏夜が言う。そう、その所在が問題だった。 皆が揃って頭を悩ませていた時、不意に穂邑の脳裏に思い浮かんだ一つの顔。 「そういえば一三成さんが‥‥きっと、牌紋とはこれ以上戦わなくても済むというような事を仰ってた気が‥‥」 「!」 開拓者達は驚く。 「それって、つまり短刀を持っているって事かしら」 灯華の推測は、皆の推測。 「時間がない、急ごう!」 そうであるならば一刻も早く一三成と会う必要があった。慌しく動き出す開拓者達の中、部屋を見渡してある事に気付いたのは柚李葉。 「部屋から持ち出した書物、片付けていかないのは心苦しいんですけど‥‥」 少女が言い掛けた言葉を神威の人々は左右に首を振る事で遮った。 「良いのです、行って下さい」 「皆さんの御武運を祈っていますよ」 「魔戦獣との戦が終わったら、改めて遊びにいらして下さい。その時には一緒に酒を飲み交わしましょう」 灯華から贈られた酒を見せて言う神威の人々に開拓者達は笑顔を返し、行く。 「それにしても神威の人達の伝承ってすごいわね」 煌夜が馬車に乗り込みながら呟いた。 「どうしてあんなに魔戦獣の伝承を豊富に残して‥‥隠し部屋の向こうになんて隠していたのかしら」 あの情報があれば新大陸の開拓も次々と進むだろうに‥‥と、そこまで思案して一つの推測が思い浮かぶが、それはあえて今出すべき答えではなく。 「まぁ、また機会があれば遊びに来させてもらおう。俺もまだまだ読み足りない」 憐慈が言う。アルマが頷く。 そうこうしている内に馬車は走り出した。 決戦はもう間近。 開拓者達が、天儀の地で一三成と会う事は出来ぬまま――。 |