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■オープニング本文 夏が、来た。 当たり前だが、暑い。 暑いったら、暑いったら、暑い。 それは、ジルベリアのどこか。 他所の儀から比べたら、断然涼しい気候の国だが、そこで生まれ育ったものにしたら夏は暑いのだ。 日陰に入ったら涼しいとか、風が吹いたら汗が引くとか、湿気が少なくて過ごし易いとか、そんなことはない。 このくらい暑くないようとか、言った奴は誰だ。 夜になったら涼しいから薄手の長袖でお出掛け、なんて判断力が低下しているだろう。 暑くないから夜もよく眠れて、元気が出るなんてことはありえない。 夏なんだから、暑いの。 暑いに決まっているのっ。 暑くないわけがないのっ! わーれーわーれーはー、 かーきーちょーーきーきゅーーぎょーーをー、 よーーきゅーーすーるー。 それは、ジルベリアのどこか。 暑さに疲れた朋友達が、主の都合もそっちのけで、避暑地を求めてさ迷っていた。 彼らの平安の地は、どこにあるのだろうか。 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
からす(ia6525)
13歳・女・弓
千代田清顕(ia9802)
28歳・男・シ
西光寺 百合(ib2997)
27歳・女・魔
御鏡 雫(ib3793)
25歳・女・サ
シータル・ラートリー(ib4533)
13歳・女・サ
マレシート(ib6124)
27歳・女・砲
トィミトイ(ib7096)
18歳・男・砂
正木 雪茂(ib9495)
19歳・女・サ
稲杜・空狐(ib9736)
12歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●やまにきた ジルベリアの山の中は、暑くて大変な街の中が嘘のように涼しい風が吹いていました。 天儀の一日中ねとーっと暑いのが、嘘のようです。 あぁ、別世界。素敵すぎます。 そんな山の下の方に、小さい何かがうろうろしています。 「やれやれ、まったくあの主様と来たら‥‥一体我をなんじゃと思っておるのかのぅ」 なんだか愚痴っぽいのは、管狐の白狐(ハクコ)さん。主様の稲杜・空狐(ib9736)さんと喧嘩でもしたのでしょうか? ぶーつぶつ、ぶーつぶつ、何か言っています。 だけども涼しい山の中に入ると、ちょっと気分が違うのです。そう、苛々なんかしていたらもったいないではありませんか。景色を見たり、木陰で休んだり、好き勝手に飛び回ったり、何をしたって怒られません。 「えーと、来た方向はあちらじゃな」 あ、帰り道の確認は大事ですね。迷子になっちゃうと大変です。 「よし、向こう側からじゃ」 えーと、白狐さん、そんなに帰り道が気になるのなら、一度戻った方が良くはないでしょうか。空狐さんと一緒に来ればいいのです。 が、白狐さんは帰りません。だって、空狐さんがわからんちんなんですから。 「あ、油揚げを置いてきてしもうたわ‥‥と、取りに帰らんのは、敷居が高い訳ではないんえ?」 白狐さん、一人で忘れ物の言い訳を始めましたよ。気にしているのは、油揚げだけなんでしょうか? 「えぇい、我は怖がってなぞないのじゃーっ!」 どこかの森の下の方、そんな叫び声が響いています。 山のどこかの林の中で、ころんと転がっているのは駿龍の涙(ルイ)さんです。 「あー、涼しくてほっとするぅ」 どうやら涙さんも、暑さが嫌になって街から飛び出してきたみたい。 ごろん、ごろろん、ころん。 こてんっ。 背中でも痒いのでしょうか。地面をごろごろしています。それから、足を投げ出してしまいました。 「‥‥もう、駄目」 おや、寝てしまいました。どうやら疲れているみたいです。 そりゃあ、暑すぎるとそれだけで疲れるのです。人がそうなら、龍だってたいして変わりません。体が大きいから、その分余計に大変なこともあるのです。 だというのに、ご主人様の御鏡 雫(ib3793)さんときたら、毎日毎日急病人の元へ駆けつけたり、薬草や医薬品を取りに行ったり、忙しいことこの上ありません。 しかもこの間は、アル=カマルとか言うところに行って、連日連夜の働き通し‥‥もう心底疲れてしまって、涙さんはここまで飛んできたのでした。 今頃、街の中では雫さんが涙さんの『しばらく捜さないでください』の書き置きだったはずの、壁の足跡を掃除するのに苦労しているかもしれませんが。そんなことすら思い付かないほど疲れているのでした。 「あ、ご主人様、この薬も運ぶのねー」 夢の中では、結局雫さんと働いているようですね。 そんな『こてんっ』の涙さんの姿を、林の外から見付けた駿龍さんがいます。お名前は青き風さんです。でも相棒のトィミトイ(ib7096)さんからは、風と呼ばれているようです。 で、その相棒さんはどうしたのか? 「うーん、ああやって休んでいる奴がいるのだから、自分も休んでいいのだろうか?」 風さんは、アル=カマル生まれです。天儀のじとじとした梅雨も、じめじめ暑い夏も、全然好きになれません。元気も出ません。 この間、トィミトイさんのお仕事でアル=カマルに戻りましたが、天儀と行き来していたら、とっても疲れて夜もゆっくり眠れなくなってしまいました。それでトィミトイさんが心配したのか、お休みに山まで連れて来てくれたのですが‥‥ 「でも、何か仕事が入っていたような? 一緒に行かなくて良かったのかな?」 元気が出ないのと、心配事があるのは別なのでした。なにしろトィミトイさんと来たら、駿龍の風さんが見ても筋金入りの『人付き合い下手』なのです。それが生まれた部族を離れて、遠い異国にやってきてお仕事だなんて、自分が付き添わなかったらどうなることか。 心配でたまらない風さんでしたが、ふと思い出しました。そういえば、最近からくりのお仲間が増えたのです。 「彼が同行したかな。口数が少ないから、人でなくても話が出来る奴がいていいんだけど、だけどさあっ」 すぐそこに、やっぱりお休みしているらしい龍がいるんだから、自分もゆっくりすればいいんですが‥‥風さんは、地面に爪で『の』の字を書いています。器用です。 ●くさっぱらにきた 草がいっぱいあって、地面がだいたい平ら。邪魔するものがないから、風もすいすい通っていきます。 あぁ、涼しくって爽やかで、やっぱり別世界。 そんな風に吹かれて、霊騎のいかづちさんが草をはもはもしていました。たまにちょっと固い葉っぱもあるけれど、風がすうすうするところでのご飯は、とっても美味しいのです。 はもはも、はむはむ、もぐもぐ、ごっくん。 じっくり良く噛んで、それからおもむろに飲み込みます。いかづちさんの鼻で選別した美味しい草ですから、自分だけで食べるのはもったいないくらい。 「しかし‥‥雪茂殿に勧めても、遠慮して一度も口にしたことはないしな。私の好意が通じていないのだろうか」 おやおやいかづちさん、いきなり生真面目に相棒の正木 雪茂(ib9495)さんの事を考え始めました。どうやら前に草をあげようとしたのに、断られてしまったことがあるのですね。あらまあ、残念。 だけどいかづちさん、口の端から草が落ちそうになってますよ。なぜだか汗も垂れそうですよ、口からだけど、汗が。 「もしや毎日の特訓も、重い装備も、依頼に必ず同道させるのも、信頼の証ではなくて‥‥」 それは相棒を扱き使っているだけ、なんて考えずに、信頼されているからだと思った方が幸せです。いかづちさん、口から草が落ちましたよ〜。 「うーん、しかしあの脳みそ筋肉と言えそうな雪茂殿が、意地の悪い真似が出来るとも思えず‥‥」 いかづちさんは、何かひどいことを言いながら、次の草を食べ始めました。 くさっぱらの別の場所では、人妖の蓮華さんがぶちぶち草をむしっていました。何かに使うわけではないようです。何か思い出して、ぷんすかしちゃったので、草に八つ当たりでしょうか。 「ええい、涼しいところで療養するのはよいが、周りに何もないではないかっ」 蓮華さんのお弟子さんであるところの羅喉丸(ia0347)さんは、只今怪我人です。なんでもアル=カマルで後先考えないことしたばっかりに、痛い目を見た模様。 蓮華さんが、そんな風に言ってます。それで修行が出来ないから、お師匠さんの蓮華さんがお怒りなのかもしれません。 怪我人はお休みするのが大事ですから、蓮華さんと羅喉丸さんは涼しいジルベリアに来たのですが、羅喉丸さんのいるお宿の近くには、草原以外は人様のおうちもぽつんぽつんしかないのでした。 「せっかく、わらわが体にいいようものでも買うてやろうと思ったのに! 菓子も酒も、何にもないではないか!!」 ぶーちぶち、ぶーちぶち。蓮華さんが草をむしっている理由は、お買い物が出来ないからみたいです。だけど、怪我をしている人はお酒は飲まないほうがいいはずですよ? 「こんな場所だと分かっておれば、わらわの酒だけでもたくさん買うておいたのに‥‥」 あ、お酒は蓮華さんが飲むのですね。大きな瓢箪に、まだいっぱい中身はありそうですけれど、それでは足りないのでしょうか。 手近の葉っぱを上手に丸めて、それでぐいぐいっと飲み始めた蓮華さんには、足りないかもしれません。 えっほ、えっほ、えっほっほ。 邪魔するものがない平らな地面があるのなら、走らなくてはいけません。忍犬の忠司さんは、せっせと走っているところでした。 「あー、広くて、涼しくて、明るくて、気持ちがいいなー」 このところ、じめじめの洞窟の中とか、じりじり暑い砂ばっかりとか、走りにくくて楽しくない場所ばかり行っていたので、忠司さんはご機嫌です。ご主人のシータル・ラートリー(ib4533)さんが行っていいよと言ってくれたから、どこまでだって走りますとも! てってけ、てってけ、てってけてー。ぜいぜい。 だけど流石に、いっぱい走ったら疲れてしまいました。座ってお休みしようとしたら、おしりがひんやりして気持ちいいので、地面をごろごろしてみます。あぁ、なんだか楽しい。 そう思ったけど、うっかり草の汁まみれになってしまいました。あらあら、これはいけません。シータルさんは怒ったりしないけど、匂いが苦そうで嫌。 「どうしようかなー、あれー?」 お水に入るのは、わんこ族の気分として、そんなに好きではありません。だけど、これは洗った方がいいかなって考えたけど‥‥向こうに何か動いているものを見付けちゃったら、もうそんなの後回し。 「君、だれ?」 忠司さん、うっかり顔を出したモグラさんを追いかけて、必死に土を掘り出しましたよ。 ●みずうみにきた 湖といえば、水がいっぱいなのです。お日様が当たって、きらきらしています。 そんなところに風が吹いたら、それはもう涼しくて素晴らしい。 うっかりすると、別世界のように涼しすぎるのは‥‥気にしませんとも。 水着で湖にぽちゃん。 「お風呂でも毎度思うけど、この羽って取り外したり出来ませんかね」 羽妖精さんから羽を取ったら、人妖さんと見分けが付きません。だけどキリエさんは、真剣に考えているようです。そりゃあ、泳ぐ時にはちょっと邪魔‥‥いえ、すごーく邪魔なので、羽が外したくなるかもしれません。 ぽっちゃぱっちゃと、どうしても泳ぐのが不恰好になってしまうのが、キリエさんには気に入りません。だけど羽は外れないので、そのまま潜ってみたりします。とっても大変でした。 そしてなにより、ここの湖と来たら。 「ちょっと、なんで肌寒いのよ。夏なのにっ」 もしも、契約相手のからす(ia6525)さんが一緒だったら、ジルベリアの一部では真夏の水遊びや海水浴にも焚き火が付き物だって教えてくれたかもしれません。場所により、水に入ると後が寒いのです。 残念ながら、今日は一人で遊びに来たキリエさん、水から上がって違う遊びをする事にしました。大丈夫、からすさんがお弁当もお茶も、釣竿だって用意していてくれたのです。 「あれ、うそっ、餌が入ってない!」 元気に釣りを始めようとしたキリエさん、なんと餌がなんにもないなのに気付きました。お弁当にはおにぎりが入ってますけど、もったいないから使いません。それに、釣りの餌って虫とかお肉の欠片とかを使うんですよね? 荷物を良く見たら、シャベルが入っていたのは‥‥頑張れってことかしら? 砂漠というのは、びっくりするほど暑かったのです。暑いし、熱いしで、それはもう干物になっちゃいそうに大変でした。 「あー、お水がいっぱいって涼し〜い」 駿龍の烈さんが、湖にお風呂のように浸かってのんびりしています。横になったらもっと涼しいのでしょうけれど、顔が沈んでしまうから残念だけど座っています。 烈さんもアル=カマルのお仕事で、暑くて熱くて倒れそうな目にあったので、マレシート(ib6124)さんに黙ってお出掛けしてきました。大丈夫、すぐに帰るから。そのはず、だから‥‥ 「泳げたら、もっと涼しいかも?」 大丈夫、泳ぐ練習はちょっとだけですよ。だって全然泳げないから、いきなり上手に泳げるとは思えないし! あれ、でも今ちょっと浮いたかも? お水に顔をつけなくても、もしかして浮いてる? 「泳げるようになったら、もっと色んなところに行けるかもしれない」 駿龍さんが泳げても、行く先はお仕事より海水浴じゃないかな。だけど特技がいっぱいあるのはいいことです。しばらく練習してみましょう。 じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶ、いい調子です。 この調子で泳げるようになったら、だいたいは水が苦手な龍のお仲間に自慢が出来そうです。もうちょっと深いところまで行ってみましょう。 じゃぶじゃぶ、じゃぶごぼ、ごぼごぼごぼ‥‥ 頑張っていたのに、足がもつれたら沈んでしまいました。ああ、びっくりした、もう! ごぼごぼ、ぶくぶくぶく‥‥ 忍犬のモクレンさんとラミアさんの見ている前で、木の実は湖に沈んでいってしまいました。 「あれれ〜、冷やしたらおいしいと思ったのに」 「うーん、網がないといけないんじゃなかったかな‥‥」 忍犬さん達は、飼い主の千代田清顕(ia9802)さんと西光寺 百合(ib2997)さんが仲良しなので、やっぱり仲良しです。今日は一緒に湖に遊びに来て、いつも千代田さんが川で西瓜を冷やしている真似をしようとしたら、木の実を沈めてしまいました。 しばらく並んで眺めていたけど、思っていたより深かったみたいで、全然見えません。前足を突っ込んでみたけど、底まで届きません。 「仕方ないよ、木の実はどこかにあるかもしれないから、一休みしよう」 「仕方ないから、水浴びしようーっ」 ラミアさんは、せっかくだから風が気持ちいいところでうとうとしたかったのです。夏はお昼寝をすると、元気が出るのですから。 ところがモクレンさんは、遊びたかったのでした。だってこんなに大きな水たまり、なかなか見付からないではありませんか。飛び込まなくちゃ、ばしゃばしゃしなくちゃ。 「さかながいるよっ、もって帰ったら、きよあきとゆりがよろこぶから、ラミア、手伝ってよう!」 「‥‥そんなに暴れたら逃げる、って‥‥あーもーっ」 そりゃあ、ラミアさんだって百合さんが喜んでくれたら嬉しいに決まっています。だけど、魚採りって大変なんですよ。よっぽどいっぱいいるのでなければ、忍犬さんの前足で捕まえるのは難しい‥‥多分、きっと、間違いなく。 お水の掛け合いに夢中になっちゃったら、魚も何もあったもんじゃありませんけれどもねっ。うっかり浅いところから外れると、頭まで沈んでげほげほしちゃうし。 「きゃっほー、ラミアも涼しくなったでしょ? 楽しい?」 「す、涼しくはなったが、別に楽しくは‥‥モクレンの世話をしてやっただけだからな」 「えー、そうなの? きよあきがね、いつもラミアのことしっかりものだって言ってたよ。モクレンもラミアみたいにしっかりしろって」 深いところでじたばたして、ラミアさんに助けてもらったモクレンさんは、溺れたことなんかすぐに忘れてしまいました。ラミアさんがうっかり夢中で遊んじゃったので、照れ隠しに意地悪を言ったのも気付きません。 気付いてくれないと、気まずいってば。だけどもう、向こう側に走って行っちゃたので、ラミアさんも反省とかしてる場合じゃないですよっ。 「こら、待てー。私は聞きたいことがあるんだーっ」 慌てて追いかけたラミアさん、『聞きたいことって何?』と急停止しちゃったモクレンさんに激突です。街から出ると、薬草を探して歩いちゃう百合さんが一緒でなくても、気が休まりませんよ、これは。 更に、更にです。 「きよあきとゆりはね、こいびとどうしなんだって」 あの二人、仲良いよねと聞いてみたら、モクレンさんにあっけらかんと返事をされて、ラミアさんはがっくり落ち込んでいます。恋人がいたら甘えられないから、ではないもんっ。 だけど、ラミアさんの元気がなくなってくると、段々周りが暗くなったような? ●もうかえる? どこかの山のうんと上の方で。 「なんで、雪?」 『なんでだ?』 『知らないよー』 白狐さんと風さんと涙さんは、夏なのに吹雪にまかれていました。 いえね、たまたま遊んでいたら一緒になったので、おなかがすいたし、何か探そうって話になったのです。でもだけど、駿龍さんがいたら、大抵の動物は隠れちゃって見付かりませんよね。 それでもぐるぐる上に登っていったのです。うーん、失敗した。だって、もう暑いどころか、寒いんですから。なんで今頃、雪なんでしょう? これはもう、皆で愚痴でも言いながら進まないと、寒くて凍えちゃいますよ。 言葉が通じるのかって? 相棒の愚痴なら、なんとなく分かる‥‥気がします。自慢は確実に分かります。 広々した草原の、たまたま生えてた木の下で。 「なんとも、急な大雨じゃな」 『やれやれ、せっかくの薬草が濡れてしまうところだった』 『いいなぁ、二人とも。お花がいっぱいで』 雨宿りで一緒になった蓮華さんといかづちさんと忠司さんは、仲良く並んでいました。 いかづちさんの下に忠司さんで、そのまた下に蓮華さんです。これだといかづちさん以外は濡れない? 代わりに、せっかく採ってきたお土産の薬草が濡れたら困るなーと忠司さんを見ました。忠司さんは蓮華さんを見ました。蓮華さんは、お土産で大きい花束を作っています。 花束が三つになるといいなあって、誰かが言っているようです。 大きな水たまりの近くで。 『すごいすごーい! 空がわれたよー』 『モクレンは雷が平気なのか。百合は苦手なんだ』 『雷は肝が冷えるよ。雨が追いかけて来るかもしれない』 「雨宿りするには良さそうな場所はないし‥‥忍犬も雷を見ると興奮するんだね」 わおんわおんと叫んでいるモクレンさんと、その隣でわふわふとお話ししているラミアさんに、ぐるぐる言っている烈さんが、雷雲を見上げています。キリエさんがいっぱい釣り上げた小魚を、全部食べ尽くしてお弁当まで平らげて元気いっぱいの忍犬さん達と駿龍さんは、雷を見てわくわくしているのかもしれません。モクレンさんは間違いなしです。 だけど、雷雲がどんどん近付いてきているから、きっともうすぐ雨が降ります。土砂降りかもしれません。 たっぷり遊んだし、ご飯も食べたし、涼しくなったし、そろそろ夕方だし。 さあ皆、そろそろ帰ろう? うん、そうしよう! |