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■オープニング本文 魔の森は、普通なら焼いてもそのうち戻ってしまうといいます。 でも、このアル=カマルの魔の森では、大アヤカシだってもうすぐ倒されてしまいそうなのです。 そうしたら、魔の森だって焼き滅ぼせるに違いありません。 誰がそう言っていたかって? ええと、誰だったかな? まあまあ、ここまで来たら大アヤカシは退治しましょう。それしかありません。 大丈夫、神の巫女様の予言だって味方していますよ。 それは解釈違いだとか、難しい事は言ったらいけないのです! さて、気を取り直して、魔の森です。 中のアヤカシはまだまだたくさんで危ないのですが、油をまいたらぽっぽとよく燃えます。 やっぱり乾燥しているから、魔の森の変な植物もよく燃えるのでしょう。 たまに、ぼうぼう燃えたままで近付いてくる植物アヤカシもいるから要注意ですよ。 おっとぉ、要注意だって言ってる側から、追いかけられてしまいました。 うっかり奥に入りすぎちゃったかも? あれれ、前にもアヤカシがいますよ。 後ろにもいます。 右にも左にも、アヤカシがいるではありませんかっ! これってもしかして? やっぱり? かーこーまーれーてーるーよー!!! |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
尾鷲 アスマ(ia0892)
25歳・男・サ
フェンリエッタ(ib0018)
18歳・女・シ
門・銀姫(ib0465)
16歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●ただいまのぼくたち、わたしたち ここは魔の森の中。 「一体何をしにここまで来たのでしょうね」 そう、今思えば、どうしてこんなに奥深くまで来ちゃったのか。朝比奈 空(ia0086)さんが言うように、謎なのでした。 「ふむ。‥‥迂闊とはこの事だろうか。‥‥この暑い地で火に囲まれるとは‥‥困ったことだ。暑い。ふっ、ふふふふふふっ」 森の中はぼうぼう燃えていて、暑くて熱くて大変です。尾鷲 アスマ(ia0892)さんが笑っちゃってますが、あんまり熱々で普通になんかしていられません。 「うぅん‥‥こんな所で死んだら私、アヤカシになれそう」 「‥‥アヤカシの餌になる気は毛頭ありません。全員で無事に生還する為に‥‥ここで諦めるわけにはいかないのです」 絶対に生きて帰るのよと、フェンリエッタ(ib0018)さんと柚乃(ia0638)ちゃんが、固い握手を交わしています。ちょっと気合を入れないと、これから先は辛いのです。 「すすめー、すすめ〜♪ 魔の森蹂躙、畳み掛けアヤカシ殲滅、奥までレッツゴー〜♪ 火を付け、幾らでも燃やして根こそぎ灰にー、してしまえ〜♪ おっと、今は森の外までレッツゴー〜♪」 ぼうぼう燃えている森の中で、門・銀姫(ib0465)さんは元気に歌っていました。 この歌ですか? この歌に釣られて、うっかりここまで来ちゃったんですか? もしそうだとしても、皆で火をつけまくったから連帯責任でしょう。だってほら、火を付けるのだから、巻き込まれないように端っこからやればよかったのです。わざわざ中に入って、あっちもこっちも火付けしなくても大丈夫だったはず。無差別放火魔じゃないんですから、ちょびっと火付けすればよかったの。 ま、それは今更言ってもどうにもならないことなので、頑張ってアヤカシを退治して、必死に走って森の外に行きましょう。逃げるのではありません。戦略的だか、戦術的な撤退というやつです。 「よし、全員水は掛けたな?」 持ってきた荷物からお水を出して、お互いにばしゃばしゃ掛けまくります。これがオアシスの泉だったりしたら、さぞかし気持ちもいいでしょう。 が、燃えに燃えている森の中です。冷たいどころか、半分お湯みたいなぬくぬくしたお水で服を湿らせました。焦げないだけましだと思わねば、やっていられませんですよ。 「では、こちらに集まってください。まずはこの囲みを突破しましょう」 本当は、森の外に繋がる方向とか、他の開拓者の人達の気配とか探ってから走り出したいところです。だけど、そんなことをしていたら、アヤカシが抱きついてきちゃいます。 そう、そこの今にも燃え落ちそうな植物アヤカシとか、確実にそれを狙ってますよ! 「今やりたいのは、火遊びじゃなくて、水浴びよーっ」 「土壇場からの反撃で、窮地からの脱出〜♪ 成し遂げたなら、素晴らしき英雄譚だよ〜 ♪」 水浴びも英雄譚も、外に出ないとどうにもなりません。 さあ、ブリザーストーム、どっかん!! おぉ、隙間が出来ましたよ、さあ、走れー! 「無事、神楽の都に帰ったら‥‥」 あ、柚乃ちゃんが何か言い始めました。そういうことって、言うと悪いことが起きるって信じてる人もいませんでしたっけ? ばりばりばりばりばりばりっ。 ほらやっぱり、横から燃えた大木が倒れてきました! どんがらがっしゃん!! 「いろいろ、もふるんだからーっ!!!!!」 大木ぼうぼうの向こう側から、なんだか元気な声が聞こえたから、皆さんお元気なようです。 とりあえず、今のところは。 ●アヤカシわらわら ここはまだ、魔の森の中。 五人の開拓者さんは、なんとか火がぼうぼうの火事現場から離れられました。風向きが変わったらどうなるか、すっごく怪しい感じですけれどもね。 なにはともあれ、アヤカシ襲撃もやっと途切れたので、ここで進むべき方角をきちんと探るのです。目標は、もちろん魔の森の外! ところが、ところがです。 「あー」 「えーと」 「あはははは〜♪」 フェンリエッタさん、柚乃ちゃん、銀姫さんの口から、妙な声が漏れました。おかげで空さんと尾鷲さんが、困ったお顔になってしまいました。 いえね、仕方がないのは分かるのです。瘴索結界や心眼や超越聴覚で、他の開拓者の人のいる場所や、アヤカシがいない場所、なにより魔の森の外に繋がる道を探してもらっていたのですが‥‥滅茶苦茶反応が多くて、音もうるさくて、さっぱり分からなくてもおかしいことはありません。 ‥‥すごーーーーーーーく、残念なだけです。 「来た方角はこちらだから、別の方向に行かねばな」 アヤカシを蹴倒し、突き倒し、刺し倒しながら、尾鷲さんは木の幹にせっせと傷を付けてきました。それがあったら通ったところなので、迷子に拍車が掛かっている証拠です。 森の中に入った時からやっていたら‥‥って、どうせ燃えちゃって、分かりませんね。これから頑張っていきましょう。 「まずは火を避けて行くとしまして‥‥奥はどちらになるのでしょうね」 空さんも、通ってきた場所を探すのは諦めちゃったようです。のんびりしているとアヤカシが追いかけてくるので、さくさく行かねばいけません。だけど奥に行っちゃうと危ないから、方向はよーく考えないと大変なのでした。 木の生え方。魔の森だから、全然普通と違います。方角が分かりません。 お空の様子。煙がもくもくで、よく見えません。 アヤカシのいる場所。見えないだけで、ぐるぐる周りにいっぱいです。 はてさて、森の外はどちらの方向? ちっともわかりませーん。 そうしていたらばっ。 「あ、向こうから足音ね〜♪」 「アヤカシですぅ!」 「数は‥‥無理、数えられない!」 銀姫さん、柚乃ちゃん、フェンリエッタさんの順番で、アヤカシがぞろぞろやってきているのを知らせてくれました。なんだかいっぱいで、せっせと走ってきているみたいです。 これってつまり、アヤカシの群れが襲ってきているってこと? 「こんな大量に出てくるなら、私達が来た方角からではありえないな。走れ!」 うわーい、よく見たら、アヤカシがぞろぞろ来る方向以外も地面がうねうねしちゃったりしていますよ。ちょっと立ち止まっただけなのに、どうしてアヤカシはこんなに寄って来ちゃうのでしょう? それはやっぱり、ここが魔の森だから!!! さあ、逃げ‥‥いやいや、撤退ですよ、撤退。 ●にげてないもん、たたかってるよ 先頭は、空さんです。ブリザーストーム、ざざざーぁん。 もちろんそれより先に、柚乃ちゃんの加護結界がびりびり効いてます。 なのに手前に残っちゃったアヤカシは、フェンリエッタさんが白梅香でずんばらりん。 横から来る奴は、銀姫さんの重力の爆撃がどんっ。 後ろから追いかけ来るアヤカシには、尾鷲さんの焙烙玉がどっかーん。 「はーしーれー!」 アヤカシがいない方向に、ずんずん走って進むのです。 邪魔するアヤカシは、どんがん退治しちゃうもんねっ。 「‥‥‥‥変な音?」 なんか、途中で大きいモノが動いているような音が聞こえましたよ。 いや、空耳だから。 聞こえなかったから。 気のせいだから。 なんだかでっかいモノが見えた気もするけど、なんにもないない。 大アヤカシなんて、知りませんよー! 邪魔するアヤカシは、とにかく倒すのです。せっせ、せっせと倒しまくりです。 ●もう、おひるはとっくにすぎてしまいました ここは、まだまだ魔の森の中。 「あ〜、甘露だねぇ〜♪」 やっぱりぬるいまんまのお水ですが、銀姫さんがおいしそうに飲んでいます。 「まったくだ。たいした怪我もなくてなにより。抱えていく手もないからな」 尾鷲さんもお水を飲みながら、ほっと一息。さっきアヤカシにかじられていた傷は、どうなったんでしょう? 今は痛くなさそうだから、聞かなくても大丈夫? 「さすがにちょっと、おなかすいたかも。でも食べたら動きが鈍りそうよね」 森から出たら、何か甘いものでも食べたいねと、フェンリエッタさんが言いました。 そうしたら、柚乃ちゃんが荷物をがさごそし始めましたよ。 「お餅やクッキーは喉に詰まると大変なので‥‥これなら、元気が出ますよ!」 荷物から出てきたのは樹糖でした。これなら元気が出そうです。 でも大変、四つしかありません。 「削って分ければいいでしょう。では」 空さんが、すぱんと削って分けてくれました。何で? 刃物の一つや二つ、開拓者の皆さんは持っているものです。細かいことは気にしちゃいけません。 樹糖は、たいそうおいしゅうございます。 さあ、もうちょっと頑張りましょう! ●だれかがいるよ それから、五人の開拓者さん達は、またアヤカシがわーっと来たり、風で火が飛んできたり、ぼうぼう燃えてるアヤカシが暴れていたりするところを、走り続けました。 とっとことっとこ。 痛い思いもしましたとも。もー、アヤカシなんか大嫌いがもっと嫌いになりました。 足だって、とっても疲れちゃいました。止まったら襲われちゃうから、もみもみするのはまだ後です。 てってけてってけ。 だけど、さっきお空を見たら、龍が飛んでいくのが見えましたよ。誰かが乗っていたから、きっと他の開拓者さんか王宮軍の人達か遊牧民の誰かさんです。 ということは、戻っていった方向に進めば、森の外に出られるはず! 「お、前の方から人の声がする〜♪」 とうとう銀姫さんが素敵な音を聞きつけてくれました。 「たくさんいらっしゃいます?」 柚乃ちゃんの質問に、うんうんと銀姫さんが頷きました。これは期待できますよ。 「ようやっと、外に出られそうですね」 二度とこんな少人数では動かないと、空さんもちょっと嬉しそうです。 「油断するなよ、どこからアヤカシが出てくるか分からないからな」 ずっと後ろを走っていた尾鷲さんが、厳しいことを言いました。せっかく外に出られそうなのに、怪我をしたら大変ですからね。 「水がなくならないうちでよかったです」 フェンリエッタさんも、もう残り一本のお水しかなかったから、安心しながら気合を入れています。器用です。 なにはともあれ、もうちょっとで他の人達と合流できますよー。 ●がんばれ、ぼくたち、わたしたち とっとことっとこ、てってけてってけ、てってけてー。 「援軍だぁ!」 走って、走って、うっかり転びそうになりながら、他の人達がいるところに辿り着いた開拓者の皆さんは、とっても嬉しそうな人達に出会いました。 あれれ、どうして嬉しそう? 今、援軍って言ってたかしら? 「すまん、手を貸してくれ。アヤカシの群れが!」 そこにいたのは、いっぱいの人達ともっといっぱいのアヤカシ達。 「「「えー、なんでー」」」 さあ、まだまだ頑張らなきゃ! 「アヤカシなんか、大っ嫌いよーっ」 「魔の森殲滅ー!」 外に出るまで、泣かないもん!! |