未来を創る〜技能・壱
マスター名:龍河流
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/24 10:47



■オープニング本文

 ジルベリア帝国の版図からすれば、極小と言ってもよい地域ツナソー。
 土地は豊かで農業が盛んだが、この地域は以前から住人の扱いと徴税が過酷だった。土地ごとの政治は、余程のことがなければ土地の領主権限のうちだから、上位貴族の手出しも跳ね付けて、おそらく相当の蓄財を為していただろう。
 ところが、今年になってツナソー領主が上位貴族への叛乱を企てていたことが判明した。その咎で領主は身分を剥奪されて逃亡、現在は追われる身だ。
 そしてツナソーでは、統治はじめ様々な再編が為されている。その中には、領主共々反乱に加担して地位を追われた代官や荘園主の治めていた土地の、生活基盤の建て直しも含まれている。
 主不在の荘園ノーヴィもその一つで、普段は派遣されている五人の男女にノーヴィ出身の女医の六人が、相談しながら荘園内の生活運営を担っているのだが‥‥

「かろうじて服は縫うけど、着られればいいって感じね」
「服があるっていいでしょ?」
「ちゃんと身の丈に合ってて、丈夫で、子供だったら手直しで長く着られるような服を作ってほしいのよ、あたしは!」
「なにそれ、どういう服?」

 衣食住のいずれも不足した状態、食事は毎日麦粥を一食、冬も上着一枚満足になく、家は降雪で時々壊れるような、家畜より虐げられる抑圧生活が長かった住人はひどく自主性に乏しい。それ以上に、『豊かな生活』を知らないので、より良い生活を目指す気概もなかった。
 後者は長くノーヴィを離れていたはずの女医キーラにも共通し、どちらも現在の『一日二食の野菜入り麦粥に、家畜小屋転用の家屋、暖炉と毛布と上着がある生活』ですっかり幸せに浸っている。

 だが、主に都市部の生活が長い五人にしたら、そんな底辺生活から脱却する手立てを尽くすべきだとなる。特に農村なら、冬場は屋内で少しでも現金になるものを作るとか、何かするのが当然だろうに、以前の荘園主が住民に物を持たせることをしなかったので、そうした手仕事がほとんど伝わっていない。
 おかげで、以前は衣料品を扱う商人だった女性が悲鳴を上げているが、キーラには『着るものがあるだけ幸せ』と通じない。農業、畜産業以外に現金収入の道を探すべきだと訴えても、現金をほとんど触ったことがない住人はぽかんとするばかり。
 この調子では、人ならざる生活が人の最底辺の生活に変わったところで落ち着いてしまうと、五人は一様に感じていた。その最底辺も保てない地域や人が多数在ることも知ってはいるが、ノーヴィには改善のしようが幾らでもあるはずだ。

「皆がお金を稼げるようになれば、前に言っていた菓子もまた食べられるよ。それも誰かの顔色を窺わなくても、自分のお金で好きなだけ。そういう生活にはなりたくない?」
「でも、収穫して、税金納めて、一年食いつないだら、やっぱりぎりぎりでしょ。お菓子なんか買えないよ」
「だから、畑のない時期は、別の仕事してもらおうって話だ。菓子だって、作れる奴がいれば、うんと安く手に入るかもな」
「‥‥薬も自分で調合したら、買うより安いのと同じ?」

 ノーヴィの住人は、命令されたことなら実行する。けれども自発性もなく、当人の向き不向きも検討せず、やる気も掻き立てないのでは、何をさせても身に付くとは言えまい。
 それと、住人はキーラ以外は読み書きがほぼ出来ない。計算は多少出来るが、足し算引き算がせいぜいだ。この調子では、自分達で農作物を市場に売りに行くこともままならないので、そこもなんとかしなくてはならなかった。
 なによりの問題は、元商人二人、元石工、元船乗り、元港湾事務官が一人ずつの五人では、『皆に何か少しでも稼げる技術を身に付けさせたい』と思っても、教えられることの限界がそこに見えていることだ。多少なりと稼げるようにと思えば、専門性の高い人に教えてもらうのが一番だろう。
 それも出来るなら、多彩な技能の持ち主に。けれども色々片端から呼びつけるような金も権限も、彼らにはなかった。
 だから、多彩な技能を持っていそうな開拓者を頼ることにしたのだ。


■参加者一覧
御剣・蓮(ia0928
24歳・女・巫
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
レートフェティ(ib0123
19歳・女・吟
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
十野間 空(ib0346
30歳・男・陰
ルヴェル・ノール(ib0363
30歳・男・魔
サブリナ・ナクア(ib0855
25歳・女・巫
三条院真尋(ib7824
28歳・男・砂


■リプレイ本文

 思わずといった体で、ルヴェル・ノール(ib0363)が失笑を漏らした。
「無理〜」
「人の命が関わるからね。無理でもやってもらうよ」
 そういう反応段階を超えた様子のサブリナ・ナクア(ib0855)は、逃げ腰のキーラの襟首を掴んで椅子に引き摺っている。
 それを目を丸くして見ている子供達に対しては、御剣・蓮(ia0928)が手を叩いて視線を向けさせた。
「皆さんは計算の練習を続けましょう。さっき書いた札は忘れないでくださいね」
 今回集められたのは、十人ほどの五から十歳前後の子供達だった。それぞれの手に、『芋』と書かれた札を持っている。上手いのも、かろうじて読める程度もあるが、とにかく芋だと分かる札だ。
「なんて書いたか、覚えているな?」
 ルヴェルも引率に加わって、芋が保管されている倉庫はどこだったかと会話しながら、子供達は芋の袋に札を付けに行った。そこで蓮とルヴェルが、今日は芋を使って足し算と引き算を教える予定だ。とにもかくにも収穫物の量を自分達でちゃんと把握出来るようになる必要が、早急にある。
 それでノーヴィの住人を少人数に分けて、年齢に合わせた時間、集中して教え込む方策を、サブリナも含めた三人で採っていたのだが‥‥ノーヴィ出身者では最大の知識人のはずの医者のキーラに手本を書かせてみたら、読解出来ない線の羅列が出てきたのだ。同じ医者として、サブリナが目を吊り上げたのも理由がないことではない。
「診療記録の束があったのは、まさか形だけじゃないわよね」
「自分では読める!」
 胸を張るキーラに、サブリナが雷を落としても、開拓者は誰も不思議に思わなかった。

 足ることを知るのは、生きていく上で重要だ。けれども、最下層を足ると思い込むのはよろしくない。知らないがゆえに、満足してしまうのであれば、より満ち足りた生活、働き甲斐を感じられる事柄を叩き込んでいく。
 と、大上段に構えなくとも、煤けた板切れを自分が差し入れた鍋の蓋に替えている光景を目にした十野間 空(ib0346)は、こんなものまで不足していたかと思ったし、継ぎ接ぎだらけと言うより、端切れを寄せ集めた服を着ている子供を見た三条院真尋(ib7824)は、上品な仕草で眉間を手で押さえた。
 よって、フレイア(ib0257)の発言にいたく共感した。
「楽しい、美味しいということをちゃんと実感してもらうことで、生活向上への渇望を持っていただきたいと思うのです」
 魔術師と陰陽師と砂迅騎が寄り集まり、固い決意を浮かべて頷きあうのが荘園主の館のパン窯の前というのもおかしなものだが、目的には叶っている。そこに住人達が粥にしているのと同じ小麦粉と、荘園内で取れた果物を干したものを積み上げ、ツナソー全域で採用されている度量衡の計測道具を揃え、更に先程研ぎあげた鋏を複数添えた裁縫道具が山を為していた。
 三人がそれらの数や分量を確かめていると、石工に連れられて大工の青年はじめ数人がやってきた。以前に家の補修作業などを見ていたメグレズ・ファウンテン(ia9696)が、手先が器用だと認めた青年達だ。彼らには十野間が窯作りの指導を行うことになっていた。
「この図面の、これが今いる建物です。ここの倉庫を、共同の作業場にして、窯を作ります。この壁の穴に煙突を通しますから」
 青年達が担いできた薪を入れて窯を暖め始める前に、最初だけ十野間と石工が実践する形で窯と竈の大きさを計り始めた。まずは分かりやすいように同じ大きさの物を作って、煉瓦の積み方など細かい作業の腕をあげてもらうのが目的だ。
 彼らが家の修繕も頑張っていたのは認めるが、やはり技術的に拙いところが目立ち、大掛かりなものは後に回したほうがいいというのが十野間やメグレズの共通見解だった。窯もけして簡単ではないが、石工が地元で何度か作ったことがあると聞いて、自分達が不在の間も修繕の指導が可能だと踏んでの実行である。
 なにより、フレイアと三条院、それに現在住民の家の一軒を家捜し中のレートフェティ(ib0123)とが、『新年には美味しいものを食べて、もっといいものを着られるように』と強く主張していた。これに反対する理由はない。
「この縫い目は、衣料品商いなら泣いちゃうわよね。でもこの袋の縫い方、丈夫に縫う点では合格だわ」
 小麦が入っていた袋を裏返して縫い目を見ていた三条院も、本人が大好きな綺麗で可愛らしい服にはすぐ手が届かないことは到着した瞬間に悟っていた。まずは着られればいい、という感性を刺激するところから。毛織物も多いので、きちんとした手入れの仕方も教える必要がありそうだ。
 青年達がなんとか計測を終えて、十野間と一緒に移動していくのと入れ替わりで、今度は十代後半から三十代くらいの女性達が十五人ばかりやってきた。半分ずつ、パン作りや料理と裁縫とを練習する予定だ。
 三条院が伝手も辿って集めてきた裁縫道具は少しばかり古びていたが、研ぎ直した鋏で指を切断しそうになる女性が出たり、フレイアがパン生地を作る前にみっちりと計りや枡の使い方を説明しても間違えたりと、なかなか順調にはいかないが‥‥パンのほうは翌日には焼き上げられる算段が付いた。窯を暖めるにも、生地を発酵させるにも時間が掛かるから、一応予定通り。
 裁縫は、三条院が鍛冶場で作業中のメグレズのところに駆け込んでいた。住民達が今まで使っていた裁縫道具がぼろぼろすぎて、金属製ならいっそ鋳潰して作り直してもらいたいと考え、出来るかどうかを尋ねに行ったのだ。

 駆け込まれたメグレズは、鍛冶の心得がある住人にその子供達と一緒に、燻炭を作るための容器をこしらえているところだった。保存用の麦は必要量を順次製粉しているから、適宜籾殻が出る。それを貯めて、さして難しくはない作業で火を通すと、春の種蒔きで使える良い肥料が出来るのだ。
「他にも色々作れればいいのですが、私も金属加工は得意ではないので。木の細工なら、多少経験がありますが」
 実際は多少ではなさそうだと、聞いている側は思うのだが、そう指摘するほどノーヴィの住人達は大胆ではない。それにメグレズはあっさりと鉄板を曲げるが、他の者が同じようにするのは大変だ。あまり余裕もない。
 それでも、何度も顔を合わせているから、会話がないということはなく。
「こんな手の込んだことはしたことはないが、雪が溶けかかってきたら畑に灰を撒いてさ」
「そうなのですか? では、来年は新しいことを試せますよ」
 作業の合い間に、普段の畑仕事の様子などを聞く機会もある。時々前の荘園主のろくでもない話が混じるが、一般的な農村と同じ作業をちゃんとやっていることも多そうだ。そういう手順を乱していたのは、どう聞いても荘園主だし。
 中には、昔はあれもこれも作ったと言い始めた壮年の男性もいた。十年余り鍛冶場への出入りが制限されている間に腕前も随分鈍っているが、作業手順でもたつくことない。
「針と鋏が欲しいんだけど、なんとかならないかしら?」
「針はねぇ‥‥俺も目が利かなくなってて」
 三条院が、なんとかすべての家に裁縫道具を揃えられまいかとやってきたのには、細かいものを作るのは厳しいと困惑していたが、作業のコツを知る者がいるなら、メグレズが手本を他の者に見せて、後は練習してもらうことは出来るだろう。

 住人が元家畜小屋に移動した家で、レートフェティは土間を掘り返していた。
 彼女は今回、以前に潰した羊から採取した羊毛から糸を紡ぐ作業をするつもりでいた。フェルトに加工してもいいのだが、手袋などを作ろうと思ったら毛糸の方が便利だからだ。糸紡ぎの一番単純な道具は棒数本でも代用できるからいいが、他の方法も覚えれば衣類の幅も広がるし、次の羊の毛刈りの後には、ただ羊毛を売る以外の道が開拓できる。大抵の村でも糸紡ぎの道具や簡単な織機はあると思っていたが、ノーヴィは材料を荘園主が渡さないし、年中燃料に事欠く生活で、木製器具は薪代わりにされたものが多かったらしい。
「あった〜。部品も全部揃っているし、ちゃんと動くみたい。あぁ、良かった」
 たまたま一軒だけ、どうしても手放すのを惜しんだ老人がこっそり土間に埋めたと聞き及び掘り返した糸紡ぎ機は結構立派なものだった。問題は、これを使える人がすでに亡く、誰かに一から修得してもらわねばならないことだ。羊毛の脱脂も、十何年もやっていなかった人々は頑張ってはみた様だが、臭いが残っている。
 まあ、今回は真冬の準備を優先して、敷物作りが主になってもいい。よい糸が紡げても、一台きりでは量は作れない。先に紡ぎ機の数が揃えば、レートフェティと一緒に誰かに作業してもらうことが出来るから、なんとかならないかと行く先はメグレズのところだったが、もちろん自分が出来ることも始めておく。
 染料も欲しいから、近くで採取できる植物などで作ったことがないかを訊いて回るのだ。

 キーラの悪筆はさっぱり直る気配がないが、若年層を中心に字が読める者は少し増えた。なんでも読みこなすとはいかないが、日常で使う農作物や家畜の名前、荘園内の設備の名称に自分と家族の名前が読めれば、まあ頑張ったほうだろう。
「計算がさっぱりですねぇ」
 芋やら小麦の入った袋やら、はては羊の頭数まで使って足し算引き算を教え込んだはずの蓮は、数字関係の飲み込みの悪さにほとほと困り果てていた。
「時間が掛かるのは当たり前だが、言葉自体はちゃんと知っている。後は世界をもっと広げて、興味を持ったことなら覚えも良くなるさ」
 板に植物の絵を描いて、名前を書き添える作業をしているルヴェルの横では、一人の少年が彼の真似をして字を書いていた。元々はキーラが少年の祖母に神経痛の温湿布を施していたのを見て覚えたと知って、サブリナが特別に引っ張ってきたのだ。キーラもまだ若いが、医療の心得がある者は何人いてもいいし、薬草を覚えさせれば栽培にも繋がるかも知れない。幸い、当人も医術に興味を示したので、ルヴェルが字の書き方を集中講義中だ。
 そうかと思えば、同年代の少女達は蓮が頭を悩ませて、計算説明用に丸い石を拾い詰め、色を塗って作った一式を、地面に書いた丸や三角に投じる遊びに興じていた。投じた場所と色で点数があるとかで、時々計算に悩み、それを書くのにも困りしつつ、楽しそうに遊んでいる。
「フダホロウの遊びかい? 結構点数がややこしいね」
「高級妓楼の座敷遊びですよ。投げるのは妓女で、計算は客にさせて、頭がいいと誉めそやすそうで」
 そんなとこで遊んでたのかと、仲間の女性達に白い目を向けられたのは、元商人の男の方。サブリナは以前の依頼で面識があったアレクセイという男で、健康状態に問題があったのは大分改善しているようだ。
「どうも一桁繰り上がる計算を間違えますねぇ」
 蓮は遊びの出所には拘らず、計算が合わないことにまだ頭を悩ませている。
 話を振ったサブリナは納得して頷くと、難しい顔で糸紡ぎ機を分解するかどうか悩んでいるメグレズとの作業に戻った。
「作りは簡単なので、どういう部品が必要かは図面を描くことも出来ますが‥‥組み立てまでそれで説明は無理があります。大きさを合わせるのも一仕事ですから、これはこのままで形だけなぞらせましょうか」
 色々覚束ないながらも、荘園内の林の管理は年配者達がおおまかに心得ているのを確認したメグレズは、本格的な木の育成や伐採時期の見極めなどはもう少し適性を見定めてからにすることにしていた。
 それから細かい道具類にも詳しいサブリナと、レートフェティが見付けて来た糸紡ぎ機を複製出来るかとあちこち計って、今回の依頼期間では時間が足りないと結論付けている。
「残念ねぇ。細い糸が取れたら、レース編みなんか、すぐにお金になりそうだと思ったんだけど」
 もう一つ残念なのは、脱脂し直した羊毛を打ってフェルトにする作業は順調だが、まったく色が付けられないこと。三条院もしきりに残念がっていたが、生活物資にも時折不足がある中で、染料などない。
 それでも、二人ともに鍛冶場でなんとか作ってくれた毛糸用の太い針を使い、フェルトを筒に縫って靴下にしている。二人の指導で女性陣も、帽子などに挑戦していた。
「厚みが合わない? そんなのは神経質にならないのよ」
 最初のうちは、男性なのに誰より華やかな女装姿で獣人の三条院に腰が引けていた女性陣も、段々慣れてきて色々と尋ねていた。
 皆が揃っているのには、もちろん理由があって。
「お待たせしました。場所を開けてくださいな」
 フレイアはじめ、女性十人ほどが籠を持ってきた。後ろには、十野間は一人で、青年達が二人で一つの鍋を持って続いている。家畜小屋転用の作業小屋の中外に集まったのは、作業している他は各家庭から一人ずつ。こちらもそれぞれ袋や小鍋を持参している。
「一杯やりたくなるねぇ。誰か付き合わないか?」
「あまり飲んだことがない方に勧めると、倒れるかもしれませんよ」
 その昔は荘園でも麦酒を作っていたというが、贅沢だと禁じられてから住人は飲酒をしていない。ルヴェルが持参の酒の封を切ると言えば、十野間が泥酔者の心配をしたが、大喜びですっ飛んできたのはキーラだ。
「お酒を飲ま‥‥相当お好きですか?」
 勝手に栓を開ける姿に、フレイアが苦笑気味に声を掛けつつ、瓶に口を付けて飲もうとしたのは、実力行使で止める。
「美味しいものをご用意したのに、先に酔っ払うのは困りますよ」
 籠の中には、ここ数日に焼いたパン。鍋の中身は乾燥野菜と干し肉を戻して芋を加え、ルヴェル提供の香辛料を少し入れた煮物だ。煮物はレートフェティと三条院も加わって、干し肉の切り方から教えて作った。
 これを家ごとの人数に応じて分け、下手にいつまでも節約して食べないように言い含める。最初に少年少女が、弾むような足取りで家に戻っていった。大人は礼を言ったりして、でも急ぎ足だ。
 数人残ったのは、一人暮らしかようやく組み上げた窯の使い方を習う者だけだが、開拓者の一行にアレクセイ達が入って、臨時の食卓は賑やかだった。
 一段落したところで、レートフェティと蓮が楽器を出してきて、演奏と歌を始めた。三条院が踊りなら出来ると、狭い場所にで器用に踊り出す。青年達は目を丸くしていたが、何曲目かで知っている歌だと言い出した。何度か蓮とレートフェティが繰り返すと、一緒について歌える様になってくる。
「知っている歌なら、歌詞を書こうか」
「壁に書いたらどうでしょう? 収穫の歌ですしね」
 ルヴェルが筆記用具を取り出そうとしたら、十野間が作業場の壁を指した。それはいいと動き出したルヴェルを止めたのはサブリナで、青年達に声を掛けたのはフレイアだ。
 さあ頑張ってと、主に女性陣の笑顔に押された青年達は困惑の面持ちで必死に文字を書き連ねている。