軟弱絵師と帝都案内〜食
マスター名：龍河流
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| ■オープニング本文 ジルベリア帝国の帝都ジェレゾの職人街。その通りの中に、一軒の絵画工房がある。 人物肖像画も承るが、店の看板、邸宅の装飾画、たまに壁画、書物の挿絵なども描く、かなり節操がない工房だ。職人の適性だけ見て仕事を請けるので、何でも屋になってしまったとは工房の親方の弁である。 そんな工房で、この日は朝から数冊の本を回し読みしていた。 「あ、おいしそ〜」 「そうじゃないだろ。この多色刷りの技術をだな」 「この本があれば、俺も天儀の街が歩けるぞ」 「土産物も説明があって、親切ですよ」 親方はじめほとんどの職人は、その本の内容や版画の多色刷りという凝った挿絵に見入っているが、一人だけ料理の絵を見て指を咥えている女性がいた。この工房の絵師の一人で、名前をクラーラという。 クラーラは一応看板絵師だが、細密画が得意で、結構な贔屓客もいる。才能は非凡と言っていいのだが、家事などの生活能力は皆無だった。ついでに体力もなく、一枚絵を描くと倒れるのが習慣のようになっている。 今日も、いかに朝晩が冷え込んできたとはいえ、早くも冬物の上着を羽織って工房に現れた。更にもこもこの上着の裾が上手に捌けず、徒歩五分かそこらの道で何度も転ぶ軟弱ぶりだ。その度に抱えていた荷物をぶちまけ、途中からは近所の製本工房の見習いに送られて来ている。 その、何度も地面にぶちまけられた気の毒な荷物が、皆が見入っている本だった。天儀にいるクラーラの両親が、娘宛の荷物と一緒に『工房の皆さんに』と送ってきた、天儀の大きな街の観光案内本だ。 「お花の本も、きれ〜」 「待て待て、それはこっちに寄越せ」 「クラーラは食べ物の本を見てろ」 「親方、僕も見たいです」 「この本は女子供が見るもんじゃない！」 本の種類は幾つかあって、ざっくりと街全体を案内するものを筆頭に、飲食店専門、豪華な多色刷り版画挿絵が素晴らしい高級衣料の案内本、土産物と扱い店の一覧に、商人同士でやり取りするらしい雑貨の絵と値段が載った本、ちょっと変わったところで花の絵と名前と値段がずらーっと書き連ねられた本まで、色々なものがあった。 絵画工房にはもちろん貴重な資料で、最初は技法や構図を見て唸っていたのだが、案内本に出ている飲食物や土産物が欲しくなった者が出てきた。日持ちがするものなら、クラーラの両親に手紙を出せば送ってくれるが、読んでいると直接行ってみたくなる。 「こういう本が出てるとは、便利な街だな」 「ジェレゾは案内地図はあるけど、あれじゃ美味い物を食べられる店はわからんしな」 「そこの製本工房に掛け合えば作ってくれそうですけど‥‥他所の国の人達が食って美味い物ってなんでしょね？」 「開拓者さんに訊けば〜？」 我が街ジェレゾにだって、こんな本があってもいいはずだ。挿絵はうちの工房で描けば、いい仕事になりそうだし。 他所にあるものなら、帝国にも作ってやる。そんな気概と欲との二人連れで盛り上がった絵画工房の人々は、すぐさま開拓者ギルドに駆け込んだのだった。 『ジェレゾの街で、貴方のお勧めの飲食店はどこですか？』 |
■参加者一覧
羅喉丸（ia0347）22歳・男・泰 
礼野 真夢紀（ia1144）10歳・女・巫 
利穏（ia9760）14歳・男・陰 
フラウ・ノート（ib0009）18歳・女・魔 
マテーリャ・オスキュラ（ib0070）16歳・男・魔 
十野間 月与（ib0343）22歳・女・サ 
ティア・ユスティース（ib0353）18歳・女・吟 
リィムナ・ピサレット（ib5201）10歳・女・魔 
リーゼロッテ・ヴェルト（ib5386）14歳・女・陰 
ウルシュテッド（ib5445）27歳・男・シ |
| ■リプレイ本文 ジェレゾの一角、古ぼけた集合住宅の屋根裏部屋で、ティア・ユスティース（ib0353）が懸命に襲い来る頭痛と戦っていた。アヤカシとの戦いの経験も豊富な彼女だが、この戦いには毎回苦戦を強いられている。 「クラーラさん、出したものは元の位置にしまえば散らからないのですよ」 「は〜い」 天儀、泰国、アル＝カマルにまで、広く散っている親兄弟達が、現地の画材なども送ってくれる結果、常に物に溢れる部屋の中で、主のクラーラはティアの指摘に返事だけは優等生だった。返事だけ、は。 部屋の入口では、十野間 月与（ib0343）が同じ戦いに果敢に飛び込み、絵師の部屋が珍しくて覗きに来たリィムナ・ピサレット（ib5201）は、同年代の礼野 真夢紀（ia1144）の背後に隠れて、恐々と中の様子を窺っている。 すでに紹介する店を決め、あっさりと了解を得たティアは魔窟の清掃に向かうと言うので、それ以外の開拓者達はジェレゾの街中に散る事になった。目当ての店がある者も、まずは現在の様子を確かめつつ、案内本の話を通しておかねばならないし、ない者は自分の足と舌とで探し出さねばならないのだ。 と、探さねばならない者達が街路で進む方向を考えている頃。リーゼロッテ・ヴェルト（ib5386）は早くも目的地に辿り着いていた。 「あらまあ、お久し振りです。お変わりないようですね」 「そうねぇ。ジェレゾも久し振りだわ」 外見だけで比べれば、リーゼロッテの親の世代よりもう少しばかり年嵩の夫婦が、慣れた様子で店内に入ってきた少女に愛想ばかりではない笑顔を向けた。十代半ばの娘が一人で訪ねるには、少しばかり大人びた店だが、リーゼロッテは割と古くからの常連だ。 「今日は何があるのかしら？」 だから注文も手馴れたもので、銀色の飾り文字の品書きなど最初は見ない。広くはない店内に、新たに加わった硝子の花瓶などに目を留めつつ、店主夫婦との会話を楽しんでいた。紅茶とお菓子を供する喫茶店なら他にもあるが、店まるごと、喫茶の時間を満喫出来るようにと神経を使った店を、あいにくとリーゼロッテは他に知らない。 はっきり言って、他人に知らせるのは惜しい気持ちもあるのだが、あんまり流行らなくてなくなってしまうのはもっと勿体無い。それで今回、一応話を持っていこうと考えたのだが‥‥ 「別に断っても構わないわよ？」 彼女の勧めに、夫婦は思案顔だ。 馴染みの店は人に知られたくなかったりするが、出来ればこの機会に地元の人にも足を運んでもらいたいということもある。ウルシュテッド（ib5445）が選んだのは、そんなパン屋だった。 が。 「そんなもんは好かん」 「ま、失礼な。いいじゃありませんか、うちの味がよその国の方にも通用するかが分かりますよ」 大きな通りから二本は奥に入った路地裏に、いい匂いが漂う建物がある。一見すると一般家庭だが、実は片道一時間かけてもこの店に来るという常連もいるパン屋なのだ。なぜか看板がなく、よって店名もないので、客はよく『裏の店』と怪しげに呼んでいるが、内装は多くの同業者と大差ない。珍しいのは、二階で喫茶店のように飲食が楽しめることだ。頑固親父は迷惑そうだが、近隣の老人や家族連れの憩いの場、かつ奥様達の情報交換場所になっている。ウルシュテッドには少しばかり落ち着かないとも言えるが、最初にここを教えてくれた姪はさぞかし気に入っているのだろう。 だがなにしろ看板もないものだから、ここに店があるとはあまり知られておらず、親父と衝突していた息子が妻子と一緒に戻ってきたのに、経営は少しばかり心許ないとか。ちなみにこうした情報は、周辺の皆様の世間話による。 そういう状態とは知らなかったウルシュテッドが持ち込んだ案内本の話は、親父から即座に断られた。気に入らないからとは、あまりに親父らしくて苦笑するしかないが‥‥ 「よその国の人って、中には飛空船の料理人なんかもいるわよね？」 「そういえば、今回の仕事には地元で店をしている人もいたかな」 真の実力者であり、各国料理を学ぶことに熱心な奥さんは乗り気らしい。 ちょくちょくジルベリアに来るわけでなくとも、開拓者ならばギルドの近くには自然と詳しくなる。まして依頼から戻った後に、ジェレゾの街中でもあまり歩かずに飲食宿泊が賄えれば、そこに人が集中するのは当然だ。 そんなわけで、羅喉丸（ia0347）が向かった『雲の門亭』は本日も盛況だった。この開拓者相手の食堂兼酒場は、宿も兼ねていて、疲れて戻ってきたり、初めての土地で不案内な者には最適だ。 なにより、各国出身者が日常的に出入りするので、あらゆる儀の料理が揃っている。料理人がどこの出身かは羅喉丸も知らないが、ほとんどの客がなかなか美味しいと言うのだから、腕がいいのは間違いなかろう。 ただし、場所柄と客層の問題で、ジェレゾの庶民を見ることはほとんどない。値段も手頃で、まさに庶民向けなのに勿体無い話だ。 「ここより高い値段で美味い料理を出す店は多くあるが、手頃な値段で、期待を裏切らない料理を楽しめるというのが魅力かな」 開拓者やギルド関係者以外は客として想定していないと言われると困ったところだが、雲の門亭の支配人は来るもの拒まずの態度だった。加えて、絵画工房の何人かも店の名前は知っていて、見に行くのについてきたので、羅喉丸もあれこれと説明をしたのだが‥‥ 「あ、説明は後で聞きますんで」 クラーラの兄弟子達は、今は食べるのに忙しくて、聞く耳がない。 店の心当たりがあればよいが、一から探すのは大変だ。けれども料理を趣味とするマテーリャ・オスキュラ（ib0070）には、秘策があった。 師匠から、『市場にはほぼ確実に食べ物屋がある』と教えを受けたのだ。市場で様々な食品を扱う人々を満足させるため、こうした店の料理人の腕は確かだと。それはジェレゾの市場でも間違いではなかったが。 「ジルベリアより泰国料理の味がするようです」 「そうなんだよ〜。向こうとの貿易船で覚えた料理でさ」 彼が腰を落ち着けたのは、昼時でどこも数人ずつ空席待ちの列がある飲食店が並ぶ通りで、一軒だけ空席ばかりの店だった。店構えは年季が入っているのだが、料理人は案外若い。聞けば倒れて療養に出掛けた父親の跡を息子が継いだが、父親とはまったく違う料理に常連の足が遠退いて苦労しているとか。 「大きな通りにも泰国料理の店はありましたが‥‥このお値段で食べられるのは、はっきり言って掘り出し物」 ついでに材料は新鮮で、旬のものが使われている。このまま埋もれさせるのは、マテーリャにはあまりに勿体無いと感じられた。 問題は、人が良さそうな青年店主相手でも、人見知りが激しいマテーリャは難しい話を切り出す機を掴めないでいるところ。 仕事で食い倒れが出来るなんて、素晴らしい。ちょっと勘違いしつつ、でもやる気十分でやってきた利穏（ia9760）は、とにかく歩いて歩いて、歩き回っていた。すでに彼の手帳には、食堂に甘味どころ、喫茶店まで多数の店の名前が書き連ねられている。 あいにくと年少者一人では入れないとか、当人の消極的な性格が禍して入店できなかったなんて店もあるが、そういうのもともかく記載。基準は二つ、大きな通りに近くて訪ねるのが便利な店と、知る人ぞ知る立地だけ場末の名店。出入りする人の話にもこっそり耳を傾け、気になる店は名前を確認だ。 場所も忘れないように手帳に覚え書きをして、彼はふと思った。 「‥‥疲れました」 ひたすら歩き回れば、開拓者といえども疲れて当然。もちろん、よさげなお店を見付けて、そこで休憩できれば一番だが、利穏には一つ気になる存在があった。 「珈琲は喫茶店でいいのかな？」 酒ではないから、酒場ではないはず。そんな思案を巡らせて、ぜひとも未知の味と遭遇したいと考える利穏は、珈琲を扱う店を探し始めた。人に訊くのも躊躇いがちだと、それはもう時間が掛かって余計に疲れるが、小一時間ほどして。 「ちょっと違う」 珈琲を輸入して商っている商店に辿り着いてしまった利穏は、困惑して佇んでいる。 美味しい店なら、地元の人に訊くのが一番。フラウ・ノート（ib0009）は絵画工房の人々にあっさりそう宣言して、まずは彼らから情報収集を始めていた。自分達が使うような店は、案内本に載せるほど珍しくないと絵師達は思っているようだが、ジルベリアでも地方出身のフラウの考えはまるで違う。 「まったくもうっ。天儀で修行していた人がいるお店なんて、まさにばっちりじゃないの」 色々訊きまくった店を訪ねるついでに、大通りから住宅地に繋がる小道まで、歩ける限りを歩き回った彼女は、工房がある職人街からすぐの通りの店『福扇』に腰を据えていた。一応聞いた情報から、天儀風の食材を使う店を選りすぐったが、ここの料理人は天儀で実際に修行していたという。 その頃の経験だろうか、店の奥には天儀風の座敷がしつらえてあり、足を投げ出して談笑している人々がいる。料理はジルベリア風と天儀風が仲良く卓上に同居中。 「天儀って、美味しいけど時々味が薄いのよね。このくらい塩が利いてるのもいいかも」 若い娘が一人で、食べたものを一々分析している様子は実は注目の的だったが、店主がフラウの側にやってきたのは食事が終わる頃合だった。 「初めて見る顔だが、どこかの工房に入ったのかな？」 食材に詳しそうだねと話しかけられたフラウは、すぐさま実はと切り出している。 多くが真剣に歩き回ったり、料理や味についての考察を巡らせている中、月与と真夢紀の二人組はのんびり、ほっこりとお茶を楽しんでいた。 「これはお酒がたっぷりのケーキで、こちらは塩味なのです。どちらもちょっと固いのですが、日持ちがするのでお土産にも向いてます」 「ほんとね。これは帰る前に買いに行こうかしら」 二人ともジェレゾのそぞろ歩きは初めてではなく、以前から贔屓にしている店があるので、勧めるところもそこにする予定だ。どうせならお勧めしたい現物があれば話が早かろうと、まずは真夢紀のお勧めのお菓子屋で多種多様な商品を買い込んできた。お土産だとちょっと代金が上乗せだが、薄紙に包んでくれるから持ち運びも楽。日持ちがして、種類が多彩と来れば、それこそ旅行者向けだろう。ついでに開拓者にも好まれそう。 そうして買い込んだものを抱えて、二人がいるのは月与がお勧めの喫茶店だった。店主が調合する香草茶が美味しいのだが、もちろん軽食だって負けていない。二人分には多すぎる種類を頼んで、半分は持ち帰るつもりだった。ただお茶は軽いが、嵩張るのはちょっと難点。 なんて検討はまったくせず、二人はあれがこれがそれがと話を連ねている。そのまま延々と続きそうなおしゃべりが止んだのは、注文を受けた喫茶店の老夫婦が品物を仕上げて卓まで届けたことと、もう一つ。 「皆さん、どんなお店を見付けて来たかしら」 「楽しみですねぇ」 この期待感のためだが‥‥こちらの二人は、店の人に根回しすることはすっかりと忘れ去っていた。 さて、一人を除いて街中に散った開拓者達が、集合場所に指定された店に戻ると、 「ふふふ、この料金で、なんと料理が食べ放題なんだよ！ いろんなお肉を調理したのは、店員さんが目の前まで持ってきて、切り分けてくれるの。付け合せは自分で取りに行って、好きなだけ持って来られるし、果物の焼いたのもほんっとに美味しかったぁ」 一足先に戻って来ていたリィムナが、絵師達相手に熱弁を振るっているのを見る事になった。どうやら彼女はアーマー工房近くで、そこの職人相手の一風変わった食堂を満喫してきたものらしい。工房の休み時間、昼と夕方以降しか営業していないのが難点だが、余程小食でなければたまの贅沢に出向いてもいい値段である。大食漢なら大喜びだろう。 ただし、飲み物代は別。浴びるように呑んでしまう人には向かない。この点、どう見ても酒は売ってもらえないリィムナには気にならないことだが、酒好きのクラーラが唸って、ティアにたしなめられている。 「ところで、店名は？」 「‥‥なんだったっけ？」 そして、その店の味にやられたリィムナは名前を忘れていたが、場所は分かっていて幸い。 とはいえ、集合したのはティア推薦の食堂。壁にはクラーラが描いた各国料理が踊り、小脇に値段まで書かれている。こんなところで別の店をべた褒めすると怒られそうだが、店主の小父さんも興味津々で話に加わり、皆の報告を聞いた後に、絵画工房の絵師達が分担を決め始めた。流石に一人で全店を回るわけではないらしい。 人目を気にしなさ過ぎるクラーラには、ティアや月与が世話やきに回りそうだ。そもそも目的地に辿り着く前に道に迷って倒れるような絵師だから、もっと付いて行ってもいいかもしれない。屋外での作業があるから、どうしても防寒対策で荷物が増えるし。まあ画材は自分で持てる絵師だって、素描用に頼んだ料理を一人で全部平らげるのは辛いから、そのためだけにでも誰か付き添ってくれたほうがありがたい。 それならば、その店を推薦した者が一緒に行くのが当然だけれども。 「地理に不案内な人が相手ですし、お勧めの巡り方もあるといいと思います。僕が最後に見付けたお店は、卸問屋の裏のご隠居の趣味の店で分かりにくいから、細かい地図も欲しいし」 最後の最後で素敵なお店を見付けた利穏は、自分ではうまく説明出来ないから、他の者の意見が聞きたいと言い。 もっとあけすけに、リーゼロッテがこう断言した。 「紹介には複数の意見が必要よ。だから、推薦者以外が行くべきね。それが楽しみで来たし」 「ははっ、確かに。俺のお勧めは、実は女将さんの手料理の昼飯が食えるよ」 「あたしのお菓子屋さんは、生菓子もいっぱいです」 「福扇はお酒も豊富。アル＝カマル産も近日入荷らしいわ」 「このお店、今の時期は果物を搾った飲み物もあるんですって」 ウルシュテッド、真夢紀、フラウ、月与が、明らかに他の者に勧める口調で更なる情報提供をして、絵師達より先に自分が行く店を選び出した。 「ひゃー、どこに行こうか、迷っちゃうね」 「僕、ここ」 迷うリィムナの腕の下から、さりげなくマテーリャが希望する店の名前を指している。 「クラーラさん、それは皆さんで分けるものです」 開拓者と絵師の大半がわいわい賑やかにしている最中、ティアはクラーラが皆のお土産を黙々と食べ進めているのを見て、また頭痛と戦う羽目に。 「それだけ食べて、どうして体力がないんだ」 羅喉丸の疑問には、クラーラ本人が首を傾げていた。 幸いにして、全般に荷物が多く、ちょっと非力な傾向はあったが、他の絵師達はクラーラほど手が掛かることはなく‥‥その付き添いの開拓者は、それぞれの店のお勧め料理に舌鼓を打っていたという。 |
