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■オープニング本文 ここはアル=カマルです。 そのどこかの砂漠の真ん中。 その日、開拓者の皆さんはお仕事を終えて、おうちに帰ろうと砂の上を歩いていました。 お天気はいい感じ。 砂はさらさらです。 ええ、歩きにくいったらありません。 お日様の光で周りはきらきら〜。 足元は砂が固まってなくて、歩くと崩れるのです。 これがお仕事に行くときだったら大変でしたが、帰り道だから張り切っちゃう。 早くおうちに帰って、美味しいものが食べたいです。 お風呂にゆっくり入るのもいいかもしれません。 お買い物に行っちゃったりしようかな? ごごごごごご‥‥ なんて思っていたら‥‥ なんだか変な音がしませんか? ごごごごごごごごごご‥‥ やっぱり、変な音がしますね? なんでしょう? ごごごごごごごごごごごごごごごご‥‥ 後ろの方からするみたいです。 見てみましょう。 こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛ あ、すごい風で砂が舞い上がってますよ。 こういうのって、砂嵐っていうんですよね。 って、すなあらし? た す け て ー ! す な が ー ! |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
水月(ia2566)
10歳・女・吟
和奏(ia8807)
17歳・男・志
レビィ・JS(ib2821)
22歳・女・泰
宮鷺 カヅキ(ib4230)
21歳・女・シ
ピアナ・スパイト(ib6608)
14歳・女・砂
羽紫 稚空(ib6914)
18歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●かえりみち お仕事は快調に終わり、いい気分での帰り道。 一番ご機嫌なのは、間違いなくレビィ・JS(ib2821)さんでしょう。とっても暑くて大変なのに、全然気にせず、ずーっとお話しています。 「ちょっと値は張ったけど‥‥万商店のものよりちょっと軽いし、取り回しやすい。いいものが手に入ったな。フフフ‥‥この猛暑も、砂漠も、新たな相棒との奇跡のような出会いの為の代価と思えば苦にはならないのさ」 「そうですか、それはよかったですね」 レビィさんは、とっても素敵なシャムシールを手に入れたので、ご機嫌さんなのです。行きもうきうきしていましたが、使ってみたらものすごーく使いやすかったので、うきうきキャッキャになっています。他の皆さんがお疲れ気味なのに、とってもお元気です。 そんなレビィさんのお話を、うんうんと聞いてあげているのは和奏(ia8807)さん。なんだか興奮のあまり、同じ事を繰り返しているレビィさんのお話に、にこにこ笑顔です。本当に楽しそうに聞いているのですが、その様子を眺めている葛切 カズラ(ia0725)さんが、なんとなく可哀想な人を見る目になっているのはどうしてでしょう? ま、それはそれとして。 砂がさらさらで歩きにくい砂漠は、もちろん砂漠なのでからからです。お肌がかぴかぴになりそうなカラカラ具合でしたが、宮鷺 カヅキ(ib4230)さんは天儀の蒸し蒸しじっとりの暑さよりはいいかなーと思っています。喉が渇くけれど、汗でべたべたするよりは気が楽かもしれません。 贅沢を言うなら、今より日差しが少し弱いともっと過ごしやすいのですが‥‥雲なんかカケラも見当たらないぴかぴかの青空では、どうにもならないのでした。 皆の後ろのほうをほてほて歩いている水月(ia2566)さんは、せめて明日にでも雨が降らないかしらと願っています。でもアル=カマルでは雨季でもほとんどの砂漠には雨など降らないのでした。 そんなお話を聞くとぐったりしてしまいますが、一番最後を歩いている羅喉丸(ia0347)さんは、かなりお元気に見えます。体が大きいので、水月さんより丈夫そうに見えるからでしょうか。どう考えても、この中では一番体力がありそうに見えますけどね。 でも、本当に一番元気なのは羽紫 稚空(ib6914)さんでしょう。最初は誰かお友だちと一緒に依頼に来るはずが駄目だったって落ち込んでいましたが、後は帰るばかりなので先頭をさくさく歩いています。 「早く帰って、まずは風呂でこの砂を落としたいな。まったく、すごい汚れてるんじゃないか?」 見た目はそんなでもありませんが、砂が服の中にも入り込んで、ざらざらして気持ちが悪いです。確かに羽紫さんの言うように、お風呂に入ってさっぱりしたいですね。 ちなみにアル=カマルでは、水が豊富な大きな街には、豪華なお風呂屋さんがあるそうですよ。寄ってみるのもいいかもしれませんね。 「お風呂‥‥素敵です」 「髪のお手入れなんかもしたいわよねぇ」 水月さんとカズラさんも、お風呂の一言で元気が沸いたのでしょう。よいしょよいしょと頑張って歩いています。水月さんが転びそうになったので、羅喉丸さんが支えてあげました。助け合う、いい光景です。 ごごごごごごごごご ところで、なんだか変な音がしませんか? こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛ 今回の依頼に行く前、ピアナ・スパイト(ib6608)さんは依頼人さんから天儀のお茶をご馳走になりました。色は緑色で綺麗だけど、味が渋くて、『えー?』って思ったことは内緒です。 その時に、依頼人さんは『茶柱が立ってる。幸運が訪れる印ですぞ』って言っていたのに‥‥ 「なんでだよー!」 砂嵐に出会うのって、絶対に幸運ではありません。 しかもこの砂嵐、特大ですよ! ●すなあらしさんのきもち 今日はいい天気。そしてすっげーいい風。 こんな日は、気合を入れて砂をびしばし飛ばしてやりたいもんだ。 何もかも吹き飛ぶくらいの勢いで! 目の前が真っ暗になるくらいの砂を! あっちの地平線から! こっちの地平線まで! やるぜ、俺様はやってやるぜぇ、ひゃっほい! その時の砂嵐さんは、もしかしたらそんなことを考えていたのかもしれません。 ●だーだん、だーだん、だーだん、きしゃー! 依頼というのは、ギルドに戻って『終わったよ』と報告するまでが依頼なのです。だから、出来るだけ早く戻って報告したほうがいいに決まっています。もちろん、皆が元気で帰ることが一番! 羅喉丸さんはそう思っていたので、最後を歩いて遅れる人が出ないように気配りしちゃったりしていたのですが、流石に砂嵐にはすぐには気付けませんでした。そもそも砂嵐を見たのは、今回が初めてですよ。 でも、色々考えました。 結論。 「天地と比べれば何とちっぽけなことか、だからこそこの心だけは強くあろう」 なんだか、何かを悟りましたよ。役に立つことだといいですね。 「これが噂に聞く砂嵐ですかー」 近くでは、うっかり眼鏡を忘れてきちゃったカヅキさんが、目を細くしながら砂嵐を見ています。なかなかちゃんと見えないみたいで、首を右や左に傾けて、ようやく納得したみたいです。 そうしている間に、もちろん砂嵐は近付いてきましたとも! 眼鏡は要らないカズラさんは、すでにとっとこ逃げ出しました。 羽紫さんは、素早く砂嵐が届かない方角を探しています。 ずんずん迫り来る砂嵐を、びっくりしてぼーっと眺めているのは水月さんと和奏さん。 ピアナさんは、素早く上着を取り出して、被ると地面に伏せましたよ。砂がお顔に当たると痛いので、しっかり避けないといけません。 「はぁ、いい輝きだ‥‥」 レヴィさん、後ろ、後ろー! ●すなあらし なう 砂嵐がずんずんやってきた時、カヅキさんと水月さんは偶然同じことを思い出していました。冬のある日、二人は別の依頼の帰り道に、雪崩に巻き込まれたのです。 「色が違うから、今度は安心‥‥?」 水月さん、頭の回転が停止気味です。ほらほら、砂が当たると痛いですよ。 カヅキさん、遅ればせながら走り出し‥‥こけました。あらあら、砂の上をころころ転がっていますね。 その横を、水月さんがもっと激しい勢いで飛ばされていきました。おぉ、なんて速いんでしょう! 先を行くカズラさんと羽紫さんに、ごろごろしながら追いつきましたよ。 「だ、大丈夫か!」 すっごい砂嵐の中でもちゃんと立っていた羅喉丸さんですが、お仲間が転げていくのを眺めているわけには行きません。思わず叫んじゃったら、まあ、お口の中に砂がせっせと飛び込んできます。 げほげほ、これは苦しいですよ。もっと踏ん張らないと、皆と一緒にころころ行ってしまいそう。 でも、地平線まで届いちゃってるような気がする砂嵐の中で、一人で踏ん張っていても‥‥ねぇ? 羅喉丸さん、またまた何か悟ったようです。 そう、こんなに強い風が吹いていて、仲間達が飛ばされていく中、自分だって一緒に飛ばされてもいいかもしれません。 「我開眼せり。激流に身を任せて同化する」 砂の上を転がっていく人が、一人増えました。 一緒に転がっていった布包みは、どうやらピアナさんのようですね。悲鳴がします、悲鳴が続きます、あ、消えました。 「あいたたた、水だけは‥‥いてて」 しっかりと地面に伏せるようにして、お水を抱えているのは和奏さんでした。なかなか冷静です。転がっていきそうもありません。 だんだん、砂に埋もれていってますが‥‥気付いてないみたい? 羽紫さんとカズラさんは、まだ頑張って走ってますよ。 後ろから砂嵐が追いかけていきます。 ●おはなばたけがみえる 自分一人の力で空を飛ぶ。そんな人類の夢を、今まさに叶えているのです。砂嵐だから、ちょっと、ううんかなり、砂が当たって痛いけど。 「た、たすっ、助けてー! やだー! みんな待ってー!」 砂嵐ってどんなのか、一度見てみたいとは思いました。こんな大変だとは思いもしませんでした。もう砂漠は十分堪能したので、天儀に帰りたいです。 「うわあああん! 師匠ー! ヒダマリー!」 事ここにいったっては、砂嵐に翻弄され、空を飛ぶ経験をただ楽しむことにしよう。暴風に抗おうと地に踏ん張ると、体が軋みを上げるし。 水月さんと和奏さんと羅喉丸さんは、砂の上を転がったあと、いまは埋もれています。あぁ、あるはずのないお花畑が見えた気が‥‥あの綺麗なお花の名前はなぁに? その上を、悲鳴を上げるレヴィさんが転がっていきました。 茶柱が立ったから、きっといいことがあるはず。そのはず! だって依頼人さんがそう言ってたもん。 でも今のピアナさんは、上着に包まってころころ砂漠を転がっています。砂嵐のくせに、アル=カマル人を翻弄するなんて生意気な! ごっつん。 「雪崩の次は砂嵐なんて‥‥っ」 何か聞こえました。足を掴まれた気がします。カヅキさんの声に似ていましたよ。でもそんなはずはありません。 だって茶柱が立ったピアナさんには、助けが現われることはあっても、足首掴んで一緒にもっと激しく砂嵐にもみくちゃにされちゃうことなんてあるはずはないのです。そんな困ったちゃんのカヅキさんはいないはず。 あぁ、あるはずのないオアシスが見えるのはどうしてでしょう? ●すなあらしさんの き も ち ひい、ふう、みい‥‥うんうん、八人か。 ちょいと少ないが、いた奴全部を転がしてやったぜ。 珍しくしぶとく逃げた奴らがいたけど、俺様の素早さに叶うもんか。 たまに骨のある奴に出会えて、俺様は大満足だ! いえ〜い、俺様、サイコー!! 砂嵐さんがおしゃべりできたら、こんなことを言っていたかもしれません。 ●あれない、これない、やってられない! 砂嵐が、開拓者さん達をもみくちゃにして、意気揚々とどこかに行きました。ぶいぶい? ざあざあ、ごうごう言ってます。 とっととどこへでも行ってしまえ! そう叫びたいけど、砂漠にこてんと倒れている和奏さんの呟きは『おうちに帰りたい』でした。別のところの水月さんは『水浴びしたい』です。 そして、砂漠のどこかでは、カズラさんがいきなり飛んできたシャムシールをげしげし蹴り飛ばしているところでした。せっかく砂嵐から逃げていたのに、途中で巻きこまれちゃって、でもいったん飛び出してやったねで、また巻き込まれて大回転ぐぅるぐるで死ぬかと思ったけど、顔の横にこれが飛んできたのが一番危なかったのです。 ぽいしてやりましょう、ぽい。 「はぁ、呑まなきゃやってられないわ」 風で飛びかけてぱっくり裂けちゃった天幕で何とか日除けを作れたので、さあ酒盛りを始めましょう。そうしなきゃ、ここまで必死に抱えていたお酒が可哀想ってものです。 うまい具合に? 目の前には一緒に砂嵐から逃げようとして逃げ切れなくて、砂の中をくんずほぐれず、ごろごろした仲の羽紫さんがいるではありませんか。お気に入りのターバン、カズラさんの推理では誰かからの贈り物、がなくなってしまったと、羽紫さんは元気がありません。 本当は探しに行きたいけど、とりあえずお水を飲んでからとカズラさんが言うので、今はじっと我慢。 「呑め、さあ呑め!」 「酒なんか呑んでる場合かーっ!」 そんな場合ではありませんとも。ええ、羽紫さんにとっては。 お酒なんか呑みたくないので、とっととターバンを探しにいこうとしたのです。そうしたらば‥‥ 「女の口説き方は、女に聞くのが一番よねぇ」 羽紫さん、どき。それって聞きたいかも? でもでもだけど、今はそれどころではないような。 カズラさんが、うふふと笑いました。 「お姉さんが教えてあ・げ・る」 あーー、羽紫さん、羽紫さ〜〜〜〜〜〜ん‥‥‥‥ ところで。 そんなところからかなりはなれちゃった場所では、レヴィさんがしくしく泣いていました。 「ないよぅ‥‥」 せっかくのシャムシールが、どうしても見当たらないのです。 もっと離れたところでは。 「うーん、誰も来ないな」 狼煙銃を撃ったのに、一人も寄ってこないものですから、羅喉丸さんが皆を探しに行くことにしていました。あんなにひどい砂嵐だったのです。きっと疲れて動けないに違いありません。 ちょうどお手頃な布を拾ったので、靴をなくした人がいたら、これで足を包んであげることにしましょう。砂漠を裸足で歩くのは辛すぎますからね。 きっと元の持ち主さんも、人助けのためなら許してくれるに違いありません。多分、きっと、ね? どこの誰だか分からないけれど、ありがとう、元の持ち主さん。 さぁて、いつになったら帰れるのでしょう? |