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■オープニング本文 ここはジルベリア帝国です。 そのどこかの山の中。 その日、開拓者の皆さんはお仕事を終えて、おうちに帰ろうと山道を歩いていました。 お天気はいい感じ。 雪はふかふか新雪です。 ええ、歩きにくいったらありません。 お日様の光で周りはきらきら〜。 足元は雪が固まってなくて、かき分けて歩くのです。 これがお仕事に行くときだったら大変でしたが、帰り道だから張り切っちゃう。 早くおうちに帰って、美味しいものが食べたいです。 お風呂にゆっくり入るのもいいかもしれません。 お買い物に行っちゃったりしようかな? ごごごごごご‥‥ なんて思っていたら‥‥ なんだか変な音がしませんか? ごごごごごごごごごご‥‥ やっぱり、変な音がしますね? なんでしょう? ごごごごごごごごごごごごごごごご‥‥ 山の上の方からするみたいです。 見てみましょう。 こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛こ゛ あ、雪が崩れて来てますよ。 こういうのって、雪崩っていうんですよね。 って、なだれ? た す け て ー ! |
■参加者一覧
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
睡蓮(ia1156)
22歳・女・サ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
ラヴィ・ダリエ(ia9738)
15歳・女・巫
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
ケロリーナ(ib2037)
15歳・女・巫
宮鷺 カヅキ(ib4230)
21歳・女・シ
カメリア(ib5405)
31歳・女・砲
猪 雷梅(ib5411)
25歳・女・砲
ヴィオラッテ・桜葉(ib6041)
15歳・女・巫 |
■リプレイ本文 お空は晴れ渡っています。 「うぅ、さっびぃ」 猪 雷梅(ib5411)さんが、きらきらお日様の光の中で、文句垂れ垂れです。ほんとに寒いので、誰もおかしいとは思いません。 でも、水月(ia2566)さんはちょっと違います。まるごとひつじさんが素敵に暖かいので、お目々がきらきらしていますよ。 「なに、もう少ししたら麓です。いっそこのベイルで滑り降りたら早いかも知れませんねぇ」 あっはっはっと、とってもご機嫌なのはエルディン・バウアー(ib0066)さん。今にも盾のベイルで滑り出しそうですが、もちろんそんなことはしませんとも。だって、女の人達だけ残していったら悪いですよね。エルディンさんは、男の人なので、せっせと先頭を歩くのです。 へこたれてなんかいませんよ。だって、皆さんがありがとうって顔で見てくれるのですもの。 「滑りたいですよね。私も滑りたいなぁって、そりを作ってきたのです!」 斑鳩(ia1002)さんも、うきうきとそりを出しました。お鍋の蓋を繋いで作ってあるみたい? これで滑っても、途中で壊れてしまいそうですが‥‥お仕事帰りですから、別に役に立たなくてもいいのです。 そう、面白ければすべてよし! 「楽しそうですの〜。きらきらの雪の中を滑ったら、楽しいと思いますのよ」 他の人が雪かきしてくれた後を歩いているケロリーナ(ib2037)さんが、かえるさんぬいぐるみを抱っこして、日傘でお日様のきらきら過ぎをよけながら、きゃっきゃっと笑い出しました。確かにそり遊びは楽しそうですが、途中の木に引っ掛かったりしたら危ないので、もうちょっと麓に近づいてからの方がいいかもしれません。 「本当に雪が輝いてますわ〜。雪が絨毯みたい」 「ええ、眩しいですけれど、お天気がよくてよかったですね。でもこういう時って」 前からお友達のラヴィ(ia9738)さんとカメリア(ib5405)さんも、うきうききゃっきゃっとお話していましたが、途中でカメリアさんがむーっというお顔になりました。何か難しいことを考え付いたのかもしれません。 でも、誰もその難しいことを聞くことは出来ません。なぜって? 「何か音がしま、あ?」 今回が初めての依頼で、無事に終わってほっと一安心。よいしょよいしょと一生懸命歩いていたヴィオラッテ・桜葉(ib6041)さんが、きょろきょろと回りを見回しました。何か音がしたような気がしたからです。 「あ?」 睡蓮(ia1156)さんが、釣られてあっちこっちを見て、それから山の上の方を見ました。 雷梅さんも、エルディンさんも、斑鳩さんも、ケロリーナさんも、ラヴィさんも、カメリアさんも上を見ました。 水月さんは一瞬上を見て、 「めえ〜〜〜〜〜〜っ!!」 一声叫んで、ものすごい勢いで走り出しましたよ! 逃げる兎よりよっぽど速いあれは、きっと何かの技なのです。吟遊詩人さんなのに、足まで速いんですね。 「‥‥なだれだ」 正反対に、とってもお声が落ち着いているのは宮鷺 カヅキ(ib4230)さん。頭の中では、こんなことを考えていました。 雪崩とは(中略)破壊的な威力を持つ。雪の塊の落下速度は(中略)飲み込まれたら、助かる見込みはほとんどない。 カヅキさん、物知りさんですね。 そして、きゃーとかうわーとか大変だーとか言っている間に、雪崩は開拓者さん達のところにやってきてしまったのでした。 いや〜ん、大変。どうしよう? 「たーすーけーてー」 あぁ、誰かが助けを求めています。 「さむい なう」 呟いている人もいますよ。 水月さんは、頑張って走っていました。だって雪崩に巻き込まれたら大変なのです。怖いのです。せっかくのまるごとひつじさんもびしょびしょになってしまいます。いえいえ、それよりも死んじゃうかも? 死んじゃうかも。し ん じゃ う か も ?! 「めえ〜〜〜〜〜っ」 気持ちは生贄のひつじさんになって、泣きながら走っている水月さんです。 でも、周りは雪なのです。走るのは大変です。一生懸命走っているけど、実は水月さんはあんまり進んでいなかったりします。 ああ、もうすぐ後ろに雪崩が! 「めえっ!」 ひつじさんは華麗に飛び上がりましたが‥‥ 「うぎゃあっ」 あらら、誰かにぶつかってしまったようですよ。 ごっつんこ。 雪崩の上の方に巻き込まれて、一緒にずるずる落ちていっているのは睡蓮さんです。 「さむい なう」 雪の中だから、当たり前ですね。 いきなりの雪崩です。びっくりなのです。 あんまりびっくりしたので、ヴィオラッテさんは身動きも出来ないうちに、雪崩に巻き込まれてしまいました。だって、初めての依頼で疲れていたのです。他の人みたいに、素早く回避なんか出来ません。 っていうか、雪崩に負けずに動く他の人の方がおかしくないですか? まあ、ヴィオラッテさんには、そんなことまで考える余裕はありゃしません。 (あぁ、こんなところにお花畑。あそこにいるのはお母さん) あっという間に雪に埋もれて、もみくちゃ、ぐるぐる流されつつ、なんだか別の世界を覗き見ているようです。途中で、上から何かが降ってきたけど、もうなんだか分かりません。とりあえず、頭突きだけしちゃった。 今、ヴィオラッテさんは川岸のお花畑の中に立っていて、川の向こうでは小さい頃に死んでしまったお母さんが手を振っているのでした。なんて素敵な光景でしょう。 ほんとは、雪の中でご〜ろごろ。 「おなすへった なう」 いやいや、そんなことを言っている場合ではありませんってば。 雪崩に負けていない人は、実は結構いました。開拓者さんは普通ではない人が多いのです。 「〜〜〜〜〜〜!!!!!」 なにか人には聞こえない悲鳴を発しながら、ケロリーナさんが雪崩の上を転がってきます。ちんまいケロリーナさん、持っていた傘とカエルさんと自分で丸くなって、うまい具合に雪崩と一緒に転がっているようです。 普通の人には出来ませんが、流石は開拓者さん。こんな雪崩の避け方もあるのですね。 まだ何か聞こえる気がしますが、あれはきっと嬉しい悲鳴。 その後を、エルディンさんがベイルに乗って滑っていきます。 「ははは、そう簡単には巻き込まれませんよ。私には神の加護がありますから」 爽やかに笑っているエルディンさん、後ろの雪がきらきらして、まるで本人まで輝いているようです。もちろん錯覚ですけれども。 「てめえ、なにへらへらしてやがる! 俺の方に来るから、雪崩が追いかけてくるんだ!」 錯覚に騙されていないのは、雷梅さん。こちらは必死に雪を蹴散らしています。火事場の馬鹿力とかいうやつで、速いこと速いこと。口もくるくる回って、エルディンさんに文句びしばし。 その後ろにはちゃっかりと、カヅキさんがくっついて走っています。 「‥‥まだ死にたくないです」 それはもちろん。せっかく依頼が終わって、帰ったら貰ったお金でおいしいものが食べられるのです。ここは一つ、温かいものが欲しいところ。 カヅキさんは思います。ここから帰れたら、今までちょっと買うのを迷っちゃっていた、あのお茶を、どんと一袋買って飲もうって。他の皆さんにご馳走してあげてもいいのです。ええ、生きて帰れれば! そんな決意を聞いたら、雷梅さんは『酒だ酒!』と叫んだでしょうが、今はゆっくりお話している場合ではありません。お酒派とお茶派の戦いは、きっと後日繰り広げられるのです。‥‥繰り広げられたらいいな。 そうこうしているうちに、雷梅さんもカヅキさん疲れて来ました。もう走れないかもしれません。となれば、エルディンさんに掴まるしか! あ、なんだか誰かが雪の中から転げ出してきたから、抱えて一緒に! という騒ぎとはまったく別に、斑鳩さんの鍋蓋そりは、頑張っていました。ええ、ぽろぽろ端の方から外れて行きますが、まだ滑っていたのです。 「こ、こんなじわじわと責められるようなことになるなんて‥‥」 斑鳩さんは、そりの上で真っ青です。今更降りられませんし? 雪崩の外に滑りたくても操縦出来ませんし? もう、今にも壊れそうだし! あ、壊れました。 壊れたそりと共に、斑鳩さんがぽーんとお空に飛び出します。 エルディンさんが、雪崩の波に乗って華麗な飛び技を決めようとします。 カヅキさんと雷梅さんが、片手にヴィオラッテさんとこひつじさんを掴み、もう一方の手でベイルを掴もうとして。 悲鳴が、いっぱい聞こえましたね。 (お母さんが‥‥) (こたつが‥‥) 「ゆきのなか なう」 それは、皆さん一緒なのです。 開拓者の皆さんは、雪崩に巻き込まれてしまいました。まあ、大変。誰かが助けに来てくれるでしょうか? (ああ、このまま帰らなかったら妹にとっても怒られる‥‥) (帰りが遅れたら、旦那様がギルドに捜索依頼を出しちゃうかも‥‥) あっという間に雪崩に巻き込まれてもみくちゃにされていたカメリアさんとラヴィさんは、そんなことを思い出して目が覚めました。お空は何にもなかったようにきらきら、周りも真っ白です。 いえいえ、良く見るとお二人が肩まで雪に埋もれている他にも、あちらになにやらにょっきり棒が二本も生えています。その向こうにも丸いものが四つくらい見えますが、眩しくてなんだかよく分かりません。 もっと向こうに、白くてもこもこしたものが転がっていたり、うんと下のほうで丸いものがぺしゃんと潰れかけていたりするのなんか、とてもとても見えません。 「どうして、こうなりましたか なう」 上の方の呟きなんか、もっと聞こえないんだから! けっきょく、お二人はお二人だけの世界に突入したのです。だって、他の人は見当たらないし、雪の中から出られないし、誰も助けに来てくれないし‥‥ だったら、おしゃべりでもするしかないじゃありませんか。ねえ? なにしろお二人は昔々からのお友達。幾らでもお話しすることはあるのです、お話は尽きません。ここで困っちゃうことと言ったら、 「これでお茶とお菓子があったら最高でしたのにね?」 「こう寒いと、クォーツさんが懐かしいですねぇ」 クォーツさんは、カメリアさんちのお犬様らしいです。 クォーツさん、もふもふしたい〜とお二人はうっとりしていましたが、あっと思いました。 「大変、早く脱出しないと!」 「旦那様のところに帰らなきゃ!」 カメリアさんとラヴィさんは頑張り始めました。いけませんよ、埋めとけなんて思っては。 じたばた、じたばた、じたばた‥‥ 誰かの心の声のせいなのか、脱出は、なかなか難しいようです。 「大福王国 なう?」 周りにあるのは雪です。大福ではありません。 た べ た ら し ぬ ぞ ー 雪の中からじたばた脱出を頑張る人達は、いっぱいです。何人かは、うまく抜け出したようですよ。 「暖かい暖炉が見えます‥‥」 「こたつ〜」 「雪山の馬鹿〜」 「二度と雪国なんか来ねぇ‥‥」 ヴィオラッテさんとカヅキさん、斑鳩さん、雷梅さんは『火種』を囲んでぶつぶつ。付けては消し、付けては消しで忙しそうです。 「めえ〜〜〜〜」 その近くでは、一頭のこひつじさんが迷っています。何に迷っているのは、分かりません。 「カメリアさま〜」 「ラヴィさん、もうちょっと〜」 こちらのお二人は、もうちょっと頑張り中。 「ねむい なう」 睡蓮さん、寝てはいけませんっ。寝たら死んじゃいますよー! そして。 「けろりーなは、みなさまを救助しながら、ばたんきゅ〜のさまを絵日記に残すことにするですの☆」 傘がぺしゃんこになってしまったケロリーナさんが、うんと下のほうで決心しているのでした。 頑張って、ケロリーナさん! でも残念、皆さん雪の中からは脱出しているから、ばたんきゅ〜は描けませんね。 ん? 描けません、よね? 「棒、二本 なう」 |