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■オープニング本文 世の中では、クリスマスというものが近いらしい。 どういうものかはさておき、要するにお祭りだ。 いや、正確なところは違うかもしれないが、見たところお祭りなのである。 その証拠に、あなたの相棒もそわそわしているではないか。 よって、お祭りが近いのである。 それとは別に、年末年始も近い。 これもまた慌ただしく、まためでたいことでもある。 ただし条件があって、無事に借金やら困った人間関係やらなにやら清算して、無事に新年に辿り着いた場合は、だ。 でも細かいことはさておき、これもまたお祭りなのである。 お祭りと言えば、たまに警備のお仕事なんぞと無粋な話が出てくることもあるが、普通はお休み。 いっそ仕事は相棒だけが行って、お休みさせてくれればいい。 開拓者がいれば、自分達がいなくたって、お仕事は出来るはず。 そう! お祭りなんだから、お休み貰っていいよね!! 冬だから、まとめて冬休みってことで!!! だから、ただいま冬休み実行中。 |
■参加者一覧
皇・月瑠(ia0567)
46歳・男・志
玉櫛 狭霧(ia0932)
23歳・男・志
からす(ia6525)
13歳・女・弓
一心(ia8409)
20歳・男・弓
正木 雪茂(ib9495)
19歳・女・サ
宮坂義乃(ib9942)
23歳・女・志
ナザム・ティークリー(ic0378)
12歳・男・砂
ジャミール・ライル(ic0451)
24歳・男・ジ |
■リプレイ本文 とある年の瀬、とある街中。 なんとも渋い造りの建物、しかし女性好みの飾り付けが心憎い甘味処で、からくりの桜花はおしゃべりに花を咲かせていた。 「それでね、玄人様はね」 卓を挟んで彼女と同席しているのは、人妖の黒曜。小さい体なので、椅子の上に箱を置いて、そこに薄手のクッションを置いた上にちんまりと座っている。 二人は別に親しい友人ではない。たまたまこの甘味処で行き合い、相席になったのだ。単独で現れるからくりに慣れない店が扱いに困って、常連の黒曜に押し付けた感もある。 そんなことは気にせず、桜花はひたすらにしゃべり続け、元から無口な黒曜はたまにそれに頷いていた。 二人がいるのは、街でも大きな通りが覗ける窓際の席だった。 どでかい図体は単なる邪魔だと、仲間である他の相棒に往来に放り出されたのは駿龍の黒兎だった。主の皇・月瑠(ia0567)もどこかに出掛けたようで、その間に買い物くらい役に立てと追い出されたのだ。 「失礼しちゃうわね。ま、せっかくだから美味しいお酒を見つくろいましょ」 人語を解さない黒兎だが、酒の味は知っている。皇のご相伴で、良し悪しは勿論、自分や主の好みかどうかまで判断出来るほどに知っていた。 だから彼女は今日も、馴染みの酒屋に向かう。 騒がしいばかりの主と呼ぶのも抵抗があるジャミール・ライル(ic0451)がここしばらく帰らないでいる迅鷹のナジュムは、ばたばたいう音にうたた寝から引き戻された。残念ながら、誰かが世話をしに来てくれた訳ではないらしい。 「掃除か‥‥騒々しいな」 ジャミールが帰らないのは、はっきりきっぱりいつものこと。どうせまた、どこかの雌のところに転がり込んでいるのだろう。あんなのが相棒だとは、つくづく我が身の不運を嘆きたい。 不幸中の幸いで、今いる宿の女将はナジュムの世話が行き届いている。けれども、どうもこれから宿の掃除の時間らしい。彼は掃除の音が好きではなかった。 よって、うたた寝後ののんびり散歩に出掛けることにした。 今年も良く働いた。 そう感慨にふけっているのは、霊騎のいかづちだった。実際、この年末に埃まみれという姿なのだから、どれだけ働いたかが察せられようと言うものだ。しかし、主であるところの正木 雪茂(ib9495)は、まだ忙しく留守にしている。 つまり自分の世話をしてくれる者はいない。と、いかづちは冷静に判断した。 「よし、たまには良い心地になってみるのも悪くあるまい」 多分、雪茂が戻れば洗ってくれるとは思う。しかし、残念ながら彼女は何かと行動が荒い。力任せにゴリゴリやられても心安らかにはならないので、いかづちは自ら馬の扱いに慣れた専門家を訪ねるつもりになっていた。 ぽっくら、ぽっくら。 馬が単独で街中を歩いていたら、騒ぎになるか、悪党が我が物の振りで連れ去るかしそうだが、いかづちは霊騎。一見してただの馬ではないからこれといった危険に出会うこともなく、目的の店がある通りまで辿り着き、 「やあ、ご同輩。一緒にどうだね?」 通りの端の草をむしゃむしゃやっている駱駝に話し掛けられた。いや、駱駝ではあるが彼も霊騎のようだ。駱駝らしい特徴としてちょっと臭いがきついのが難点だが、まあ一応はご同輩。 せっかくのお誘いだが、いかづちの本日の希望は最高級品の飼い葉であった。 世は年末。年を越すのは祝い事だと、すでに祭り同然の活況を呈している場所もあった。見ようによっては、買い出しで多忙を極める人の群れだが、提灯南瓜のキャラメリゼの目には祭りにしか映らない。 「巡回アル、巡回」 既にどこかで買い込んだ菓子の入った袋を提げて、どう見ても巡回ではないキャラメリゼだが、当人は一応そのつもりで外に出てきた。相棒のからす(ia6525)はキャラメリゼに限らず、相棒全部に財布を持たせているから、買い物代金はそこから支払いだ。 名目は巡回、でも実際は多数のお菓子の品定めに忙しい彼だったが、 「そ、そこの者ー! 吾輩を甘味屋に案内するのである、早くせい!!」 楽しいひと時を邪魔する声は、なんと同族からのもの。別に甘味屋に案内するくらいはどうということもないけれど、どうにも気になるのはその周辺。 キャラメリゼもうろうろしていれば物珍しそうに見られるが、相手は子供十人近くに取り囲まれて、どう見てもおたおたしている真っ最中。 「あ、もういっこいたー」 しかも、なんだか自分も巻き込まれているような? 「どういうことアルか?」 「吾輩はカボ=カボーチャ男爵である。休暇中なのである! ぎぃやぁー、引っ張るな、である〜」 自称男爵が、相棒の玉櫛 狭霧(ia0932)の社会教育を逃れて、休暇と洒落込んでいたと分かるのは、子供達の追跡を振り切ってからだった。ちなみに、それは一時間の後。 「そ、そうアルか‥‥お菓子、食べるアル?」 「うむ、お主はよい奴である。次は吾輩が、お菓子をご馳走する、である」 お互いに埃っぽくなった体をはたき合い、二体の提灯南瓜は美味しいお菓子が食べられる店を探して、こわごわと移動を始めたのだった。 勢い付いた子供って、怖い。 「やれやれ、逃げれば追われるのは当然だろうに」 中空では、ナジュムが逃げる提灯南瓜達の姿を見て、獲物と狩人の関係性に一言加えていた。まあ、助けが必要そうな騒ぎでなし、子供達もひとしきり追いかけたら気が済むだろう。よって、ただ見送る。 彼はざわざわした街の雰囲気は嫌いではないが、掃除の音や子供の甲高い声に近付きたいとは思わないのだ。それに、今はいい風が吹いている。 桜花は相当な話好きだと、黒曜はしみじみと思っていた。自分と主の一心(ia8409)とはどちらも無口な質で、家でも静かに暮らしている。しかし、桜花の主の宮坂 玄人(ib9942)はどうだか知れないが、彼女の家はさだめし賑やかなことだろう。 賑やかなのは、黒曜も別に構わない。が、時々桜花の言いたいことが理解出来ないで、黒曜は少しばかり首を傾げていた。 「ほらほら、今の南瓜さん達見ました? なんだか一生懸命で‥‥駆け落ちみたいっ、きゃ〜」 どう見ても、物珍しさから子供達に追い掛け回されていたのだが、そんな提灯南瓜が駆け落ちに見えるとはどうしてなのか。目が悪いわけではないようなので、判断に困るところ。 実は桜花の目には、人や相棒の関係が妙な風に見える鱗がぎっしり張り付いているのだが、黒曜はそうとは知らない。不思議だ、としみじみ思っていた。 しかし、一心が修行に出てなかなか帰ってこないし、縁がある村のことを考えても何か伝える術はなしで、多少時間を持て余したところもないではない。気の利いた返事が出来なくても気にせず話してくれる桜花は、滅多にない相手だった。 「ふふっ、黒曜様の何か思っているお顔、素敵ですわ。きっとご主人様へのあれやこれやの想いがあるのですね」 でも、こんなことを言いだされると、どうしていいか分からない。確実に自分の思考が誤解されていることだけは分かるのだが‥‥ 「あら、あの駿龍さんはどちらの相棒さんかしら。お一人でお買い物だなんて、ご主人への愛を感じますわ!」 桜花は周りのことなど気にせず、楽しそうだ。 主への愛がある、という言葉だけ聞けば、まったく異論はない黒兎は、いつもの酒屋で他のお客が買い物を済ますのを待っていた。ちゃんと注文書を持たされているが、自分が飲みたい酒はその日の気分で異なる。よって、他の客が途切れた隙に、店内にある酒を判別して頼むのだ。 「なかなかお客が引けないわねぇ。やっぱり年末は違うわ」 店員はおろか、常連客とも顔馴染みの彼女は、店先に行儀よく座っていた。先程は暇に飽かせて爪を磨いていたのだが、子供に泣かれたのでおとなしくしているのだ。 「弱ったわねぇ、今日は女子会なのに遅刻しそう」 仮に誰かがこの言葉を理解出来たら、一体誰と誰達の女子会かとわが耳を疑ったことだろう。ちなみに龍族を中心とした、どちらかといえば肉食女子の忘年会である。 そんな事とは知らない酒屋の店員が、ようやく手が空いたので注文書を取りに来た。これもいつものことなので、どちらも買い物慣れしている。 「ね、あたしの分も欲しいんだけど」 いつもよりたくさんお金を持っていると財布を鳴らした黒兎の主張は、上手く店員に伝わったようだ。 ごくごくごくごくごくごくごーくごく。 馬と駱駝の霊騎が連れだって訪ねてくるのは初めてだと、飼い葉屋の店主は面白がって手を打った。そうして馴染みのいかづちは、その姿を見た途端に綺麗に洗いましょうと請け負った。いかづちは、機嫌のよいいななきで了解の意を伝えている。 もう一頭、駱駝のジャザウ・カスワーウも、主人のナザム・ティークリー(ic0378)が一度ならず飼い葉の注文に寄っていたので、一緒にお世話されることになった。駱駝のお世話と言えば、とりあえず水を飲ませることから始まる。 「随分飲むな。腹が冷えないか?」 「ん? アル=カマルだとどこででも飲めるわけではないからな。こういう時に飲み貯めておかないといけない。あ、飲みたかったか?」 「いや、今はいい。埃を落とすのが先だな」 「馬は大変そうだ」 砂漠生まれで砂埃など気にしても仕方ないジャザウ・カスワーウは、いかづちが色々気に掛けるのがいささか珍しい。自分にはここの陽気はいささか涼しいので、水など掛けられたくもない。それもあって、なおのこと感心しながら、やはり水を飲む。水飲み場を独り占めとは、なかなか気分が良いものだ。 ジャザウ・カスワーウが彼の感覚でひとしきり、人の感覚で言えば小さめの酒樽一つ分くらいの水を飲んで満足した頃に、ちょうどいかづちも体を洗い終えていた。 「やはり専門は違う。雪茂殿にも見習って欲しいものだ」 たいそう満足気ないかづちが、ちゃっかりと最高級の飼い葉を食べ始めたので、ジャザウ・カスワーウもご相伴に。店先のものを勝手に食べはしないが、くれると言うなら、もちろん食べるのだ。後で請求がどこぞに行くかもしれないが、まあそれはそれ。 「この後は馬具の店に行こう」 本日のいかづちは、色々やりたいことがあるのだろう。格別予定のないジャザウ・カスワーウは、のんびりついていくことにした。 子供に追い掛け回され、美味しいお菓子探しのはずがひどい目に遭ってしまったキャラメリゼとカボ=カボーチャ男爵の二体は、ようやくいつもの調子を取り戻していた。堂々としていれば、子供達も追い掛け回しては来ない。そう、堂々としていればいいのだ。 が、良く知らない街の中、どこに美味しいお菓子が売っているのかはさっぱり分からなかった。 「地図があれば、なんでも分かるのである。地図の用意はないのか!」 「ううむ、地図を用意すればよかったアル。さっきの店は、どこアルか?」 巡回のはずが迷子、悪い奴を捕まえるどころか、自分の居場所も分からなくなったキャラメリゼが唸っているが、持っていないものはどうしようもない。カボ=カボーチャ男爵は大分気弱になって、地図が欲しいと嘆いているが、提灯南瓜の顔色や表情が読めない一般の皆様は掛け合い漫才でも見ているつもりで笑っていた。 二体がこのままおなかが空いても美味しいお菓子にも料理にも巡り会えないのかと、ずぅんと落ち込み始めていた時、ふいに強い風が吹いた。その時、どちらも気付いたことがある。 「焼き菓子の匂い! である」 「それも干し果物入りアル!!」 提灯南瓜の鼻が特別なのか、それともこの時の二体が特に鋭敏だったか。風に運ばれたかすかな香りに反応して、ものすごい勢いで移動し始めた。 まさか行く先にろくでもない騒動が待ち構えているとは、予想もしなかったろう。 その通りでは、なんともとんでもない騒ぎになっていた。 「なんで叱られるのかしら、こいつが悪いのに」 「その足で踏んだら、それは騒ぎになるだろうな」 だって放したら逃げちゃうなどと、前足でしっかりと一人の男を地面に縫い留めているのは黒兎だった。その肩に、そいつの頭を突きまわして転ばせたナジュムがいる。周囲では、男を離す気がない彼女と彼を取り囲み、人が集まって騒ぎ立てているのだが、何しろ相互の会話が通じないので意思疎通もままならない。 実は黒兎が捕まえたのは、通りの店の裏口を破って出てきた盗人なのだが、事情を知らない人が見たら龍がいきなり人を襲った図。顔馴染みの酒屋の店員が、暴れる龍ではないと庇ってくれているのだが、離せと言われても聞かないものだから騒ぎは大きくなる一方だ。 一応、ナジュムが羽で被害に遭った店を指したりしているのだが、なかなか通じてくれる人がいない。と思っていたら、彼らには見慣れた存在が現れた。 「おかしいですよ。一人でお使いに出るような龍が、人を襲うなんて」 「‥‥?」 龍が暴れたら困るので、ちょっと手を貸してくれとしつこく頼まれた桜花と黒曜が、甘味処の店主に案内されて来たのだ。どちらもあからさまに『それはない』と言いたげで、黒曜はナジュムがしきりと羽ばたくのに目を留めた。 ナジュムもせっせと合図を送っている間、桜花は黒兎にあれこれ話しかけている。どちらも、この出来事には何か特別な理由があるのだとは理解してくれたようだ。しかし、盗人だとばっちり分かってもらうのは、なかなかに難しい。 挙句に捕まっている男は、いかにも被害者ぶって助けを求めていた。黒兎やナジュムがもうちょっと攻撃的な性格だったら、今頃流血の惨事になっていたに違いない。 そこに、お菓子の匂いにつられて飛び込んできたのは、提灯南瓜の二人。どこを通ってきたものだか、路地から姿を現した。で、目の前には人間を捕まえている駿龍が一頭。 「捕り物アルよ!」 「うむ。貴様、悪党であるな!!」 やってきたキャラメリゼとカボ=カボーチャ男爵は、なんのてらいもなく断言した。一目見た途端の宣言に、周囲はあっけにとられ、男はこれまた濡れ衣だと大騒ぎ。 けれどもこの頃には、ようやく黒兎とナジュムの訴えが大体理解出来た桜花と黒曜が、指し示された店の人々にかくかくしかじかの説明中。ただし、黒兎も流石に街の官憲に囲まれて、渋々ながらに男を離していた。その周りでは、まだカボ=カボーチャ男爵とキャラメリゼが『絶対にこいつは悪人』とぶちまけている。 挙句に、寄ってたかって何か盗んだものがあるだろうとか、懐を探る始末。多分、どちらも先程追い掛け回された憂さを、ここで晴らしているのだろう。自覚しているかどうかは別として。 おかげで男は服を引っぺがされかけ、なぜか財布を三つも取り落した。一人で三つの財布はおかしいと、助け起こしていた官憲が腕を掴む手に力を入れるより先に、男は彼らを振り払って走り出す。 「そんなわけで、雪茂殿は自分の武芸について悩んでいるのだ。それで馬具を新調して乗り心地が良くなれば、考えもまとまりやすかろうと思うが‥‥」 「砂迅騎など、毛布一枚あれば我らに乗って疲れるとは言わないが、そんな具合の悪い鞍では、乗せる方も辛そうだな」 ぽっくらぽっくら。 盗人が逃げる方向には、散々美味しいものを食べた後、今度は馬具を新調したいとのたまういかづちと、自分も口輪が随分くたびれて来たから物だけでも見ようと思い立ったジャザウ・カスワーウが歩いていた。霊騎とはいえ、馬と駱駝なのにしっかりしまくっている。 そんな生き物の背後に不用意に走り寄れば当然、そうでなくても馬に背後から近寄れば大抵の人がそうなるように、盗人はいかづちの後ろ蹴りを食らう羽目になった。 「あ、当てないようにしたはずなのに」 「残念。飛び込んできたからな」 普通の馬には出来ない手加減された蹴り故、吹き飛ぶようなことはなかった盗人だが、流石に蹴倒されてすぐには起き上がれない。追いすがったナジュムにまた突きまわされ、とっとこ追ってきた黒兎には唸られ、キャラメリゼとカボ=カボーチャ男爵にぺしぺし叩かれて、倒れたまま縮こまっている。 「これに懲りたら、二度と悪いことはしないことですわ。せっかくのお休みを邪魔されるのは嫌ですし」 追いついた桜花はお茶の時間を邪魔されたとふてくされながら、男を官憲に引き渡した。その時も文句たらたらだったものの、視線があちこちの相棒間を行き交ってキラキラしていたのを、黒曜はしっかりと見ている。見ていただけだが、なにしろ煌めく理由が分からない。 「ねえねえ、あなた達。これから女子会なんだけど、お手柄話が聞けたらみんな喜ぶと思うから、一緒に来ない?」 悪党を退治してすっきりした黒兎が、酒屋に戻りながら皆にも声を掛けた。肉食大型相棒に誘われる女子会。男子にはちょっと参加を躊躇いたくなるような雰囲気が漂うが、 「広い場所だから、騒いでも大丈夫よ〜」 美味しいものもたくさん用意しちゃうと、黒兎が酒屋以外にもなにやら鳴いている様子に心惹かれた者は少なくない。行かないからと言って、文句も言われそうにはないけれど。 この日、街外れの海が臨める広い草原では、夜遅くまで大量の相棒達が集って楽しそうに騒いでいた。 翌日には相棒が持ち出した財布がやたら軽くなっていたことや、各所から届いた請求書に溜息を吐いた開拓者がいたとか、いないとか。 |