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■オープニング本文 石鏡の商業都市、陽天は多くの人で賑わっているが‥‥そうでないところも。 はずれにある『ほうらい』という商店は、今にも閉店の危機にある小さな店だ。 若き女店主、舞夢はある商品を売り出そうと一人張り切っていた。 「これどや? 可愛いやろ。売れると思わへん?」 そう言って店員達に見せたのは、もふらさまを模した招き猫。 大きなくりくりの瞳、陶器だがもふもふそうな毛並み、愛らしい表情はどこから見ても『もふらさま』そのもの。 従来の白いものあれば、青、赤、黒のものも。 「青は学業向上、赤と黒は魔除け、桃色は恋愛成就や。コレをぎょうさん売ればごっつ儲かるで〜♪」 本当に儲かるのか? と疑いの眼差しの店員が。 「何や? その目は。こないなモン売れるんか言うとる目やな? やってみな、わからへんやろ」 売る前から弱気でどないすんねん! と舞夢は店員達に檄を飛ばす。 「何事も挑戦や。それが商人(あきんど)根性いうもんやで。っちゅうことで、皆で頑張ってコレ売ろな?」 嫌とは言わさへんで? と睨みつけるあたりが怖い。 「右手を挙げりゃ金運招き、左手を挙げりゃ客招く。両手を挙げれば千客万来、商売繁盛間違い無しや!」 招きもふらさま売ってガッポガッポ儲けて、ゆくゆくは陽天に普及させるで! と意気込むが‥‥それは商売繁盛の神次第かも? そのためには、大々的な宣伝が必要である。 「うちの店、人手が少なくて困っとるんや。誰か手伝ってくれへん? 報酬はうちが出すさかい」 困った時の神、もとい、開拓者頼みや、と他力本願な舞夢であった。 |
■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)
18歳・女・泰
八重・桜(ia0656)
21歳・女・巫
花流(ia1849)
21歳・女・陰
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
金津(ia5115)
17歳・男・陰
千羽夜(ia7831)
17歳・女・シ
天ヶ瀬 焔騎(ia8250)
25歳・男・志
澤村 葵(ia9732)
18歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●どのように宣伝しましょうか 招きもふらさまを大々的に宣伝すべく張り切っている依頼人、舞夢が待つ『ほうらい』に集まったのは新しい挑戦を応援する性質の天ヶ瀬 焔騎(ia8250)含む開拓者。 「やってやれないことは無いが信条の志士、天ヶ瀬だ! 完売上等! 『解消屋』の俺は、引き受けた依頼は可能な限り達成する」 「舞夢さんは本当に『ほうらい』が大好きで頑張ってるのね。尊敬しちゃうわ」 もふらさま好きとして全力でお手伝いに来た千羽夜(ia7831)にそう言われ「お、おおきに‥‥」と照れる舞夢。 「色取り取りのもふらさまで皆が幸せになりますように♪ と頑張るわ」 「自分もです。招きもふら、可愛らしいです」 友人の焔騎、千羽夜と共に参加した花流(ia1849)は、頬を染め「桃色の招きもふらとか」とボソリ。 「もふら人気で不景気知らずってか。おもろいやないか」 大声で笑う斉藤晃(ia3071)と紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)は乗り気だ。 「招きもふらですか‥‥面白そうですね♪ あたしは『もふら饅頭』を作って販売しましょうかね〜?」 もふら饅頭とは、皮を赤、ピンク、黄色、黒、緑に着色した小さい肉饅頭だ。餡が入った饅頭にはもふらさま柄を付けて販売する。 「本当は、緑じゃ無くって青を作りたかったですけどね〜。赤は梅酢、黄色は鬱金、黒はイカスミ、緑はホウレンソウの煮汁ですね」 なんで黄色あんねん? という舞夢の問いに「あたしのパートナー、もふ龍ちゃんの色だからです♪」と満面の笑みで答えた。 「本来は招きもふらを売ることですので、あたしの方はあくまでも客寄せです。場合によっては組み合わせて販売と言うこともしようかと思いますが、これによる儲けはあまり出さないつもりですので‥‥」 「舞夢さん、モフモフなもふらさま着ぐるみはある?」 忘年会で着ぐるみを着ていた人がいたなと、澤村 葵(ia9732)はもふら着ぐるみで招きもふらの販売を知らせながら町を練り歩くことに。 「いるやろと思たから用意してあるで。色は何や?」 「学業向上の青を宣伝したいんで、青を」 宣伝効果あらば販売する気が感じられる。 金津(ia5115)の宣伝案は、何件かの飲食店、開拓者御用達など頼みを聞いてくれそうなところに招きもふらのビラを置いてもらうというもの。 「町でビラと握手会のチケットを配りますよっ。『ほうらい』でボクと握手っ! な戦隊物ショーをやりましょう。男性は着ぐるみ、女性はもふ耳とかつけて」 子供には着ぐるみ、大きなお友達には女性が対応で上手く商品を買わせつつ握手をする狙いやな? と舞夢は一発でわかったようだ。 「商品に握手券とかをつけるのも良いですねっ」 「おもろそうやけど、戦隊名はどないすんねん」 「戦隊名やけど、『らっきー☆もふっと5(う゛ぁいぶ)』っちゅうんはどや?」 「ボクは『幸運招隊もふらんジャー』、もしくは『フレッシュもふきゅあ』です」 晃と金津が提案する。 「福を呼ぶ戦隊、ちゅうことで金津はんの『幸運招隊もふらんジャー』がええな」 戦隊名が決まったので、次は配役を決めることに。 「依頼やからの、なんでもこいや!」 晃は悪役、不幸怪人フンダリケッターリを演じることに。 千羽夜はもふブルー役を志願。 「舞夢さん、ヒロインのもふピンクをやってみる?」 え、遠慮するわ‥‥と苦笑いして断る舞夢。理由はピンクが苦手だから、というのは内緒。 「赤もふらの着ぐるみか。今回は仕方ない、ちょっと恥ずかしいが‥‥」 その辺は恥じて掛かるべきではなく、微塵の不安も躊躇もなく招きもふらを売り込んでいくことにした焔騎。 「あ、ボクは男の娘なのでぬいぐるま〜志望ですよっ? 決して女装はしませんよ? 色は白でっ」 赤、白、青は決まったが、どうもしっくりこない。 「人数が足りないようですね〜。あたしの代わりにもふ龍ちゃんを参加させようかと思いますがいかがでしょうか?」 紗耶香のパートナー、もふ龍はもふらなので宣伝にはもってこいだ。 「もふらかぁ、丁度ええな。皆、もふ龍にも手伝ってもらうけどかまへん?」 異議無し、と賛成する一同。 「もふ龍、演技と言っても平和に楽しそうに遊んでいたもふらさまが、悪役の方に苛められるという感じなので普通に遊んでいればいいのよ?」 わかったもふ♪ と言っているかのように見えたもふ龍。 残りの一人は、会場整備等の裏方に回るつもりだった花流が演じることに。 「これで決まりやな。ほな、準備しよか。ビラはうちが作るさかい、皆は戦隊物の衣装とか作ってぇな」 ●宣伝活動開始 千羽夜と共に桃色もふらの宣伝をしている花流は、人の目を惹くことが肝心、と恥を忍んでもふら耳でも付け、弁当売りのように、首からぶら下げた箱に小さな招きもふらさまを乗せて陽天を歩いている。 そんな花流に興味を示した人がいたので『ほうらい』の地図と宣伝文句が書かれたビラを手渡した。 八重・桜(ia0656)は「『ほうらい』というお店にある招きもふらさまはすごいです」と、いろいろな所で噂を広め、商品が気になるように仕向けていた。 その噂を聞いた人々は、どんなものだろうかと『ほうらい』に向かった。 「作戦成功です」 もふらのような笑みで、桜はその様子を見て仲間に後を任せてもふらを探しに行った。 青もふら着ぐるみ姿の葵のターゲットは、受験生がいると思われる親。 「商人の目にはわかりますよ、親御さん。受験生いるでしょう? このもふら、のんびり屋さんでもここぞと言う時には力を発揮するし神様の使いですからね。『ほうらい』って店で招きもふらさまってのを売ってるよ。学力向上のためにどうですか?」 そう勧めつつ、近くを通りがかった小さな子供に戦隊物はあるよ、という宣伝も忘れない。 「もふらんジャーっていう戦隊物の催しがあるから、是非『ほうらい』に来てね」 晃は、戦隊物が始まるまではもふら着ぐるみを着て招きもふらの宣伝活動を。 「『ほうらい』から新しく出る招きもふらさまだよ! 本物を一度見ていかないと損だよ!」 道行く色々な人に声をかけつつ、面白おかしい話を交えて客引きをしている。 「ここにおるもふらさま、売り物ちゃうで」 舞夢がボケたので「なんでやねん!」とツッコミを忘れない。 花流作の『招きもふらさまのお店』と書かれたのぼり旗が立っている『ほうらい』前では、紗耶香がもふら饅頭を作り販売している。 「美味しい『もふら饅頭』はいかがですか〜? 赤、ピンク、黄色、黒、緑のもふらがありますよ〜♪」 もふら饅頭が湯気を立て、美味しそうな匂いを漂わせている。 匂いと見た目に釣られ、客の一人がお買い上げ。 「ありがとうございます〜♪ 『ほうらい』にある招きもふらさまもどうぞ〜」 どれどれ‥‥と、招きもふらさまに興味を示す客。 その頃、『ほうらい』店内では『幸運招隊もふらんジャー』の準備中。宣伝していた晃は抜け出し、不幸怪人フンダリケッターリの衣装に着替えた。 着ぐるみのもふもふ感に負け、着替え前に赤もふらの着ぐるみを着ようとする焔騎に抱きつく千羽夜だった。 「焔さん、もふもふっ♪」 「しょうがないな‥‥」 焔騎が頭を撫でると、千羽夜は大人しくなった。 「じゃれあうんはええけど、はよ準備し。あんたらだけやで、まだ着替えてへんの」 裏方全般を引き受けた舞夢は大忙しだったが、招きもふらさまのためとありテキパキと動いていた。 ●もふらんジャーショー開催 ビラを見た、噂を聞いたという人々が『ほうらい』前に集まったのを見計らった舞夢は「これから戦隊物の出し物やるでー!」と呼び込みを始めた。 観客は、興味を示した子供とヒロイン目当ての大きなお友達が多かった。 (ぎょうさん人が集まっとるな。いっちょやったるか!) 晃演じる不幸怪人フンダリケッターリは、張り切って『ほうらい』前に現れると大暴れ。 「がははぁぁ! わしの力で皆を不幸のずんどこ、やなかった、どん底に陥れてくれるわ!」 このままでは『ほうらい』がフンダリケッターリに破壊されてしまう! 「あかん! 店が壊されてまう! 誰かーっ!」 舞夢が慌てたその時! 「待ていっ!」 現れたのは五色のもふら戦士達。 「もふホワイト、お金と家族のために頑張りますっ! 行くよ、アントニー君。平和とお金を守るんだっ!」 人魂で呼び出した使い魔リス『アントニー君』を肩に乗せ、愛らしいポージングをする金津。 「私はもふブルー! この世の全てのもふもふを愛する戦士よっ!」 カッコ良くポーズを決めようとしたが、もふブルーはよろめいてしまった。 「‥‥ととととっ。ま、負けないわよっ!」 ドジっ子な一面に、大きなお友達は喜んでいる。 「も‥‥もふレッドっ!」 ビシッ! とポーズを決めるが少し恥ずかしがっている焔騎。 帳尻合わせで参加した花流、もふ龍もビシッ! と決めポーズ。 『幸運招隊もふらんジャー、参上っ!』 「くらいなさい! 必殺、もふもふローリングアタック!」 真っ先に攻撃を仕掛けたのはもふブルー。 駒の如く高速回転をしながら敵に強烈な体当たり‥‥のはずが、フンダリケッターリにたどり着く前に転倒。仰向けで倒れたまま起き上がれず。 (せ、せめて最後の決め台詞とポーズはしっかりと‥‥!) 戦隊ヒロイン魂に火がついたのか、即座に起き上がり決めポーズ。 「ぐははぁ! 不幸パワァが集まっとるで!」 容赦無いフンダリケッターリの反撃か、と思われたが 「悪党め、子供達には手を出させないぞ!」 葵が招きもふらを守るべく乱入! 大きなお友達の心くすぐるシークレットを餌にしつつ。 「学業? 魔除け? 僕には‥‥って思ってる? 実はシークレットのもふらさまは心願成就。可愛いだけじゃあないんですよ?」 シークレットもふらの宣伝を終えると「お邪魔しましたっ!」と退散。 「な、何やったんやアレは。まぁええわ。もふブルー! 覚悟しぃや!」 もふブルー、フンダリケッターリにやられるか!? というところでもふレッドが反撃。 「そこまでだ! 幸福・招拳‥‥受けて見ろ、焔獄の爆ぜ鬼を!」 元・泰拳士の拳でツッコミと称した攻撃を炎魂縛武付加で行うもふレッド。 「ぐはぁぁぁ! わしは滅びない! 不幸な人がいる限りっ!」 爆発退場する辺りが派手な演出である。 「お、おおきにもふらんジャー。あんたらともふらさまのおかげで、店は守られたわ」 礼を述べながらも、手近にあった招きもふらさまを手にして宣伝する舞夢だった。 「握手、抱きつき大歓迎よ♪」 自腹で購入した桃色の招きもふらさまを見せつつファンサービスする千羽夜に喜んだ大きなお友達は、ダッシュで彼女に向かい握手と抱きつきを求めた。中にはいきなり抱きつき、という困り者もいたが。 「ありがとう。招きもふらさま、買ってね♪」 握手、抱きつきの後、大きなお友達数名が招きもふらさま購入。 盛り上がっているその頃の店内。 「あたた‥‥」 最後の爆発で少し負傷した晃は、桜に治療してもらっていた。 「八重、心配いらへん。最後の爆発で怪我しただけや」 「では、わたくしはのんびりともふらさま招きをするです」 ●販売開始 ショーも全力だが、販売がメインの千羽夜は大事に運んできた招きもふらさまを元気良く販売。 「私のおススメは、大小の桃もふらさま。あなたの恋を実らせてくれるわ♪」 ね、花流さん? と突然話題を振られた花流は視線をそらした。 「出会い待ちの人も、今から恋愛準備を整えましょ♪ 小さなもふらを持ち歩き、大きなもふらを床の間に飾れば効果倍増! 恋の季節の春は目前! 早い者勝ちよっ♪ このお店で売っているわよ」 そこのお兄さん、お姉さん、渋い旦那! と客を上手く褒めながら釣り上げている焔騎は、ここだけの話と前振ってから「全色揃えると、もふらさまからのご利益も増すんだぞ」とこっそり耳打った。 相手の目線と心理を上手く読み取り誘導し、購入後をイメージさせるのがコツだとか。 売り込むのは、魔除けの赤と黒。背後霊のプレッシャーをかけつつ、それを無くして安心感を与える作戦に。 「あんた、それ『霊感商法』やない?」 舞夢のツッコミに「え? ナニソレ?」と誤魔化す。 葵も販売促進に加わったが、小さい子達にモフモフさせてあげたり、肩車をしてあげたりとファンサービス旺盛。 時折悪戯されたが、商売のためならと我慢した。 白招きもふらさま担当の金津は、戦隊物にちなんだ商品を作成中。 「それ、もふらんジャーみたいやな。五点セットってとこかいな?」 覗きこんだ舞夢に「はい、そうです」と笑顔で応えるが、内心は心願成就と見せつつ、実はに〜と神という意気込みが。 「本当は他の色より右手、左手の効果が強いとかでしょうけど‥‥個人的に金運の右手上げを多くしたいな」 この商品は、舞夢により『幸運招隊もふらさま』と名付けられた。売れるかどうかは別の話になるが。 ●お疲れ様でした 閉店までの招きもふらさまの宣伝は成功。商品は売り切れというほどではなかったが多く売れた。 「皆が頑張って宣伝してくれたおかげで、うち考案の招きもふらさまの評判はごっつええわ。おおきに」 舞夢と女性店員が腕によりをかけて作ったご馳走に舌鼓を打ちながら、役に立てて良かったと思いながら打ち上げを楽しむ開拓者達。 「成功した依頼の後の酒は、やっぱ最高や!」 豪快に笑いながら飲む晃に「もっと飲んでぇや」と酒を勧める舞夢。 打ち上げ終了後、晃は招きもふらさまを一つ買った。 「これ、縁起ものなんやろ? わしにひとつくれや」 「買うてくれるんか? おおきに」 皆も、機会があれば買うてなと舞夢は宣伝。 就寝前、舞夢は会計作業を。 招きもふらさまの売り上げは予想以上だったが、戦隊物の衣装やセット、宣伝用ビラ、のぼり旗作成費用が思っていたよりも多かった。 それに加え、戦隊ショーの最中に店先が若干破損したので修理費もかかった。 実質の収入は、多くもなく少なくもなくといったところ。 「招きもふらさまをバンバン売って、儲け増やせばええんや。頑張ってくれた皆のために、うちがもっと普及させな」 よっしゃ! やったるでー! と張り切る舞夢だったが、くれぐれも無理しないでほしい。 招きもふらさまが陽天、いずれは石鏡名物になるかは、舞夢の努力次第である。 |