【武僧】新春紅白技祭
マスター名:高石英務
シナリオ形態: イベント
危険
難易度: 普通
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/02/01 19:41



■オープニング本文

●八咫烏を奉ずる
 年末――希儀の探索がひと段落つき、多勢の開拓者が天儀に戻り始めていた。
 彼ら開拓者の多くは神楽の都に住まいを確保しているが、一部の者は天儀各地それぞれの故郷や地元へと帰っていく。中でも、武僧らの多くは元々東房出身者で、属していた寺のこともあり、年末年始を寺で過ごさんと東房へ里帰りする者も少なくない。
 そうして彼らは天にその姿を見る。
「いつ見ても立派なものよ……」
 空に浮かぶ八咫烏。その雄大な姿は、古えより伝わる精霊の御魂を想起させ、仰ぎ見る者に自然と畏敬の念を抱かせる。そんな八咫烏も、今は管轄は東房より開拓者ギルドに移され、内部の整備が進められつつあった。

●新春
 そんな折、神楽の都は開拓者ギルドの一室。
「よい日和じゃのう」
 そうして茶をすすったのは東房より派遣されたという武僧の一人。暖かい炬燵と渋みのある落ち着く茶は、開拓者ギルドに彼が来ている意味を、一瞬忘れさせる。
 北戦と呼ばれるアヤカシの襲来と、その後の北面と東房を襲う困難。さらには八咫烏の事件、そして続く希儀の事件と、様々にごたごたしていた開拓者ギルド。そんななか難航しつつ進められていたのは、開拓者たちの力により開かれたともいえる東房の職、武僧への転職と、それに伴う修練教官の手配であった。
 希儀の事件も昨年の終わりにひと段落、そうして年明け、ついに武僧への転職手続きが進められることとなったのだが……。
「まあ、なんですよね。この件、よく知られていませんよね」
「これ、そんなところを突っ込むでない」
 炬燵の対面にて、目の前の修練収斂教官の一人として派遣されてきた師匠に対して、気の抜けた雰囲気もする言葉を投げかける弟子。バリバリとせんべいを食べるその弟子をたしなめる武僧の様子も、そう真剣ではないように見える。
「確かに八咫烏や希儀など、昨年は大きなことがあったからのう。だが年も明けた。故郷に帰っとる他の武僧たちが来れば、おのずと芯が入ることじゃろうて」
「……それまで、こう、くつろぐんですか?」
 弟子は振り返らずに呟いた。
 その背中にザクザクと視線が刺さる。
 年末年始も残って仕事をしていたギルド職員の視線が刺さる。
「……確かに、このままでもしょうがないのう」
 もう松の内も終わってるのに何言ってんだこのやろう、とさらに刺さる職員の視線を鉄の心で跳ね返し、武僧は立ち上がる。
「ということは」
「うむ、武僧についての修練の催しを行うことにしよう」
「……ですが、他の方々はまだ戻っておられませんよね」
「だから、こそじゃ」
 弟子の懸念など気にせぬように手のひらをひらひらとさせつつ、武僧は笑みを浮かべる。
「恩恵を受ける開拓者の皆に、手伝ってもらおうではないか。そのほうが、希望の内容となるであろうて」


■参加者一覧
/ 柚乃(ia0638) / 和奏(ia8807) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / わがし(ib8020) / 経(ib9752) / 八塚 小萩(ib9778) / 鴉乃宮 千理(ib9782) / アリエル・プレスコット(ib9825) / 桃原 朔樂(ic0008


■リプレイ本文

 処は、開拓者ギルド近くの広場の前。
 朝もやが晴れつつある中、わがし(ib8020)は静かに手にした琵琶を爪弾き、弦の張り、調子を確かめる。
 弦が空を振るわせる音色を聞き、そして弦の表面を確認すると、まだ強度は大丈夫との判断のもと、男は再び一度、音高く鳴らすように爪弾いた。
「精が出るねえ」
「僕の準備以外は、おおむね済みましたから」
 尋ねかける鴉乃宮 千理(ib9782)に、わがしは手元の螺鈿装飾の琵琶から視線は移さず、言葉を返す。
 間もなく始まる武僧についての説明、それを中心に置いた祭りは、開拓者の有志の手によって、ほぼ滞りなく準備が進められていた。
 武僧に関する講習の会場と、その後の模擬戦用の戦場の準備は終わり、あとは開会を待つだけである。
「しかしまあ、奉仕活動は善行じゃが、我なんかで、よいのかねぇ」
「それは……」
 開会式の前、ちらほらと参加者も見える時となった、会場隅の一角で、ふと女が漏らした言葉に、わがしは琵琶の調律に心を傾けながらも、答えを返していた。
「鴉乃宮さんがしたいのであれば、それでいいのでは、ないでしょうか」
「……そんなもんかねえ」
 楽器の手入れを優先し、あくまでマイペースに言葉を返す話相手に笑み、女は少々肩をすくめると、日はすでに高くなりつつあり、間もなく、武僧の会の開会の時を迎えようとしていた。

「しかし、晴れてよかったですね」
 冬の合間の小春日和、会場が開いたところ、和奏(ia8807)は受付にて、にこやかにつぶやいた。
「そうですね。無事に会が開けてよかったです」
「ええ。身体だけでなく、僧侶としての精神修養を積んだ方々の競演を、近くで拝見するのは、とっても為になりそうですし」
 入場の受付を済ませ会場に入った柚乃(ia0638)の言葉に、男は同意の応えを述べる。
「柚乃は、東房にもそれなりにご縁があったりして……精霊を良き隣人とする天輪宗の教え、共感するところもあるんですよ」
「なるほど。技の披露を楽しむだけでなく、自分に還元できるようしっかり見て、学ばせていただければ……」
「ええ。柚乃もいずれは、武僧に転職しようかとも考えてます。今回の会で、より知識を深めたいですね」
 こうして見学者や講師役の人々が集まりつつある中、会は滞りなく開会と相成る。
「はーい! 質問っ!」
「ほほう、何かな、お嬢ちゃん?」
 大きな声とともにリィムナ・ピサレット(ib5201)が元気よく手を上げると、開拓者ギルドの老武僧が彼女を指し示す。そして指名されたかどうかを確認するより早く、少女は矢継ぎ早に質問を繰り出した。
「武僧って精霊を使役できるって話だけど、どんな感じで使役するの? たまたま近くにいた精霊を操っちゃったりとかぁ、『わしの精霊は108体いるぞ……!』とかやっちゃう人とかいるの? それに、有名な武僧さんは炎とか水とかの精霊を使うみたいだけど、例えば、その、花や死とかの精霊を使う人もいるかな?」
「おねしょとかのぅ」
「そう、おねしょの精霊とか……あ、た、ただの興味で、おねしょなんかしてないんだからね! 呼び出したら治し方教えてもらえるかも、なーんてこれっぽっちも……って小萩ーぃっ!」
「精霊はですね」
 突然口をはさんだ小萩をポカポカ殴りながら、1人七転八倒な雰囲気で慌てて繕う少女に笑みを浮かべつつ、弟子が静かに、説明を開始する。
「それは自然の運行や概念的な事象など、万物に宿っているものです。世界そのもの、と言ってもいいかもしれません」
 静かに説明が詠じられる後ろには、開拓者ギルドの古い資料としてあった……古すぎて眉唾な面もあろうが……様々な精霊の絵姿が描かれた図画が、講習の助けとして飾られていた。
「ゆえに、精霊そのものは千差万別に存在します。その中から、我々武僧はひとつの精霊と契約することになるのです」
「ひとつだけかー」
「ということは……」
 説明に記憶を探しながら、アリエル・プレスコット(ib9825)が思い起こしたように尋ねを返した。
「延石寺で資料を調べた時です。かつて、美しい少女の姿をした炎の精霊に恋焦がれるあまり、精霊と抱擁し……自らを焼いて果てた武僧がいらっしゃったと記述がありました。精霊というのは必ずしも、姿形は人に似ているというわけではないのですか? それとも、決まった形はないのでしょうか……?」
「その点に関しては、然り、じゃな」
 山羊のようなあごひげをしごきながら、老武僧はその質問にうなずき返す。
「精霊は様々な姿をしておる。からくりの起動とともに、過去なる遺跡より現れたクリカラノカミや、先ごろ発見された新たなる儀、希儀に古より座する神霊アルテナ。極論すれば、その辺で寝ておるもふらさまも精霊の一態といえる」
「そうなの!」
「うむ。その時々のありよう、そして精霊の司る力、その役目によって。姿を千差万別に変える、というわけじゃ」
「へえぇー」
「なるほど、では……」
 目を輝かせて驚くリィムナを、孫に対するように撫でる老武僧の答えに、アリエルは思考を巡らせた。
「延石寺のあの伝承については、何か、意味があったのでしょうか……」
「かもしれぬ。それこそ、精霊の御心のもとに、ではなかろうかのう。さて、そろそろ座学の時間は終わりじゃ」
 思案に入るアリエルの後、新たな質問が落ち着いた頃合を見計らって、老武僧はしつらえられた演舞場へと、皆を案内する。
「この次は、武僧の技、それについての実演を行うといたしましょう」

 御前試合の行われるいつもの舞台。その上で、千里は教範に従い、錫杖を振るいながら静かに気合を込める。
 その後、精霊の力が錫杖に集うのを感じると、一閃、裂帛の気合で女は一撃を振り放つ。
 放たれた一撃が空を切り裂いた後。演舞場に立てられた巻き藁と竹が音もなく切り落ちると、残心、鴉乃宮は息を吐いた。
「これが、霊戟破。精霊の力を集めて、威力を高める技、というところさね」
「なるほど……」
 吟遊詩人の謡との相性を確かめようと、観覧の席より舞台に上がっていたわがしは、今の一撃の切り口を、しげしげと眺める。
「今の技でこの切れ味ですか。この能力の強化の伸びしろ、どのくらいまで伸ばせるものでしょう」
「伸びしろ、とな」
 物理的な、刃の切り口とは異なるその断面を見ての詩人の質問に、老武僧はあごひげをしごいて唸った。
「はい。能力の底上げを行った場合、どれだけの効果が見込めるのかと、気になりまして」
「なるほど。術により能力を伸ばす場合、同じ効果を伸ばすものであれば、どちらか効果の高い方のみが出るというのが、わしの経験則じゃな」
「……それでは?」
 老武僧の見解に眉根を寄せつつ問い返せば、老爺が軽くうなずき返す。
「効果が重なったり、倍加するようなことは普通はないとされる。使用時は気を付けなければならぬ所じゃな」
「本日は、よろしくお願いいたします」
「は〜い、おね〜さんたちが〜教えてあげるわよ〜。これが、武僧の技〜」
 柔らかな甘い声とともに薙刀を構える桃原 朔樂(ic0008)の前、経(ib9752)は礼を取り、続けて構えた。
 初撃、宝蔵院の構えから薙刀を振るう桃原に合わせ、わがしは曲を爪弾き、吟遊詩人の戦の歌を歌いかければ、しかして経への一撃の威力は、増えたようには見えなかった。
「効果が重ならないとは、こういうわけか」
「? まぁいいけど〜。薙刀の基本的な扱いはぁ、こんなかんじよ〜」
 男の得心のつぶやきにいぶかしげな表情をしながらも、薙刀を構えなおして、桃原は次の一手の準備をする。
「おね〜さんの個人的な感想だけど〜武僧なら文武、やっぱり両方できないとね〜。と、いうわけで、さっきのが宝蔵院で〜、そしてこっちが、荒童子〜」
 説明とともに女が薙刀を掲げれば、空に一瞬映るは、精霊の現身。そのまま振り下ろせば、精霊の一撃の届く先には、印を結び精霊をまとわせる経がいる。
「え〜いっ!」
「……!」
 掛け声とともにふり払われた精霊の一撃、それが女に届く瞬間。影をまとった経は押し込まれながらも、風に流れる柳のごとく、一撃を受け流した。
「ほう、雨絲煙柳……武僧の技の中でも、修得に経験が必要なれば、よくぞ、修めなされたというところかの」
 傷を負うものの息を乱さぬ経に向けて、老武僧が感嘆の声を上げて解説する。
「かの技は、武僧の守り技。その名のごとく、精霊の加護とともに相手の攻撃を受け流す技じゃ。なまなかな精進では、簡単に修得はできまい」
「いえ、私はまだ修得したばかりです。より、修練を積み重ねます」
 よく修練を積んでおるとの老武僧の色よい言葉に、居住まいを正ししながら経は静かに、慎んで礼をした。
「では我は、伽藍門じゃ……むん!」
 気合の声とともに霊剣を掲げるのは八塚 小萩(ib9778)。そのまま不動の構え、じっとその動きを止める。
 伽藍門は武僧の技の中でも早くに修得可能な内の一つであり、防御の効果を高める一方、移動することができなくなる技である。
 いや、移動できなくなる、ではなく、移動させることができない、というべきであろうか。
「これで、効果が切れるまでは、我を動かすことはできぬぞ……」
 そんな技を発動して仁王立ちする八塚の後ろに、ちょこちょこと影が見えていた。
「小萩ー! 後ろ、後ろー!」
「……?」
 そんなリィムナの叫びに、小萩が怪訝な表情を浮かべた瞬間。
「……本当に、動かないのかな。そうだ……えいっ☆」
 と、突然アリエルが抱き着くと、八塚の体中を遠慮会釈なく、くすぐった。
 動かない。
 すごい小荻は動かない。
 だが。
「うひゃひゃひゃひゃ! これ、アリエル、やめぬかーっ!」
 顔と悲鳴はやはり、くすぐられた感触を心に伝えていることを示しており、非常に苦しそうだとしか見えなかった。
「ど、どうじゃ、動かなかったで、あろうが……」
 十数秒後、術の効果が切れたのち、息荒くつぶやく小萩。よくもったと、周囲からは感嘆の視線が飛び交っている。
「わぁ、大丈夫なんだ。すごいね……」
「だ、大丈夫なわけ、あるかー!」
「あっ……」
 小首を傾げながら感心する友人に大声を上げ、地面に押し倒すと3倍返しと、八塚は全身をくすぐりまわす。
「 そうれ仕返しじゃ!」
「あははははは! く、くすぐったいぃ!」
 そんな二人のじゃれあいを見守っていた観客の中から、つと、明るい笑い声が漏れる。

 そんなこんなで昼を回り、日も傾きはじめようかというころ。
 模擬戦の戦場に指定された区画を経は天狗のごとく駆け、区切りの縄や戦場の用意の最終確認をしていた。
「最後の確認とは、ご精が出ますね」
「何か、危ないことがあってからでは、大変ですから」
 観客と、今仕事を終えた経にお茶とお菓子を配りながら、柚乃がにこやかに微笑むと、その場に鳴り響くのは太鼓の音。
 開始前の配置につくようにとの合図に、開拓者の面々が何名か、陣地の東西に散って行く。
「さぁてっ、護りは任せなさーいっ!」
「がんばってくださいー」
 両陣営、それぞれの配置についた後、一際大きな太鼓の乱打。それを開始の合図として、東紅組のリィムナと西白組のアリエルは、それぞれストーンウォールを展開し、旗の周囲の防備を固める。
「さぁて、いいとこ見せちゃうぞ〜」
「そう簡単には、行かせないよ」
 観客席のまだ見ぬいい男を探しながら張り切る桃原が、一振り、薙刀を持って東の紅の陣地より迫れば、戦場を南北に分ける狭間の橋を渡った先、西の岸にて鴉乃宮が待ち構えていた。
 千里が構えた朱藩銃の銃撃をかすめさせながらも駆け寄り、橋を揺らして近づくと、鴉乃宮と桃原、女二人は数合打ち合い、間合いの合間に軽く距離を取る。
「そのまま、押さえていてくれよ!」
「がんばります〜」
 紅組の一人の開拓者が、二人の戦場を避け橋に近づこうとすると。
「イメージにはまってる、ってとこかい?」
「ぐっ……はっ!?」
 橋を渡りきろうとしたその瞬間、鴉乃宮が地面に潜めておいた草結びの罠に、開拓者たちが足を取られて次々に倒れる。
「ま〜、罠なんてひどぉい……」
「ま、そういう性分で、ね!」
 後ろでどんどんと倒れる開拓者の様子を見ながらも、前の敵の様々な圧力に慎重に相対しながら、千里は錫杖で受け、時折手にした短銃で朔樂に牽制、何合か、打ち合いを重ねた。
 わがしが精霊の祝福による歌を歌い、仲間の知覚を高めるものの、だがそれは罠を発見するための注意力を強化するというわけではない。
「よーし、隙ありじゃ!」
「抜けましたよ! 気をつけて!」
 二人の戦いの奥、罠で倒れ伏せる紅組の面々を越えて、一気に突撃する八塚を見て、わがしが警告を発するものの、だがそれを止められる者はいない。
 戦場ゆえに使えぬ天狗駆がなくとも、小柄を生かしちょこちょこ走り回りながら、相手の懐に素早く潜り込み、女はそのまま東の陣地に迫る。
「いつもは仲良しだけど、今日は手加減はしないよ!」
「良い気概じゃ、隊長!」
 追いついた、あるいは護衛で残っていた開拓者たちと数合打ち合いながら八塚は防衛陣をすり抜けると、石壁の立てられた陣地に取りつき、前にて護るリィムナと相対する。
 攻める西側白組の面々と、護る東側紅組の面々の間で小競り合いが開始され、膠着するのを感じながら、八塚は剣と鞭の握りを確かめた。
「勝負は一瞬……ここじゃ!」
 魔術の蔦で白組の開拓者を数名、絡め取ったリィムナは、鋭い気迫とともに迫る友人の攻撃に備え、態勢を整える。
 実力の差はある。だが八塚の一撃が振るわれた瞬間。
「!」
 少女はとっさに歩みのバランスを変えると、リィムナへの攻撃を行わず、鋭角的に少女の脇をすり抜けた。
 そして。
「隊長! 丸見えじゃぞー!」
「えっ」
 虚を突かれて態勢が崩れた瞬間、八塚の振るった鞭の先に見えたのは、リィムナの袴の裾だった。
 突然の大声と鞭の先端に反射的に武器をとり落とすと、高速でリィムナは裾を抑え込む。
「ふ、ふわぁぇぇえ!? 見てない!? 見てないよね!?」
 少女が涙目で振り返れば、だがそこにあるのは戦場の喧騒。あと周囲で蔦に絡まれもがいている開拓者たち。
「え、ちょ……小萩ーぃ! だーましたなぁー!」
「ふっふっふ、残念だったのぅ!」
 少女の混乱の間にも速度を緩めなかった八塚は霊剣に念を込めると、荒童子の効果で筋肉質の精霊が浮かび上がる。
「これで、勝利じゃーっ!」
 そして拳の連打にも見える一撃が目の前の石壁を砕いた瞬間、滑り込み、旗をむしり取りながら、小萩が勝利の雄たけびを上げた。

 かくして、東西紅白戦は西側白組の勝利と相成り、すべての日程は無事終了した。
 これまでにない大盛況とは行かなかったものの、開拓者ギルドにすでに参加していた武僧や、武僧に興味を持つ開拓者たちがそろったことは、これからの武僧への転職準備の大きな展望ともなろう。
 そうして、新たな年、新たな仲間と技術が導入される中、精霊に関わる次なる問題が浮かび上がってきたのであった……。