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■オープニング本文 開拓者達は依頼を終えて神楽の都へ戻ってきた。 手強いアヤカシであったが、倒せてよかった。重傷者も特にいないのが幸運だった。 開拓者の一人が食事でもどうかと提案し、全員がその案に乗った。 どこの店で食べようかあれこれ提案し合う。 神楽の都はよいお店がとても多く、依頼帰りに皆で食事という話も無きにあらずなので、八人という大人数でも以外にすんなり入れたりするものだ。 「開拓者の方ですか!」 道行く開拓者の背後から可愛らしい声がかかる。 振り向けば、その姿がないので、下を向けば、五歳くらいの子供がジルベリアの服を着て開拓者達を見上げていた。 燕尾服に頭にはうさ耳。 とても可愛らしいのだが、その顔は見たことがある者もいる。 誰かがその名前を口にすると、そのうさ耳っ子はぱっと、顔を明るくさせた。 「はい! 麻貴です!」 確かに理穴監察方組員、羽柴麻貴そっくりな人物であるのだが、様子が違う。 そもそも、羽柴麻貴であるならば、年齢は二十二歳。五歳時の姿ではないだろう。 開拓者の一人がその姿の事を訪ねると、うさぎ麻貴は首を傾げる。 「私は私ですよ?」 いやまあ、そうなんですけどね。 言葉を変えて、別の開拓者が私達にどんな用なのか尋ねる。 「私の双子の沙桐を梅の女王様から取り戻してほしいのです!」 梅の女王様‥‥と言えば何かを思い出すが、そもそも沙桐は何をしたのだろう。 「女王様は沙桐が女王様のタルトを奪ったと言って、怒ったのです。本当は帽子屋がもっていったのに」 「帽子屋がとったの?」 「はい。メイドの未明が女王様そっくりのタルトを作っていて、未明は知らずに女王様のタルトと間違えて渡したのです」 「どうしてそれがわかったの?」 「女王さまのタルトはイチゴの砂糖煮が入ってたのですが、未明のタルトはマーマレードが入っていたのです」 「女王様のタルトじゃないとダメなのか?」 「いいえ、女王様はイチゴの砂糖煮のタルトをお客様に持成したかったのです」 「新しく作るのも手かしら?」 色々と方向性が出てくれば、うさぎ麻貴はちょっと我慢できなくなってきたようだ。 「今、沙桐は女王様の居城の軒先に荒縄で吊る下げられてます! 私の力ではどうにもできません。お願いします、助けてください!」 必死に懇願するうさぎ麻貴に開拓者は別にいいかとぐだぐだに流されようとする。 「ところで、梅の女王様のお名前はどんなお名前ですか?」 開拓者の一人がこれだけは明確にせねばと思い、声をかける。 「折梅といいます」 勝 て る の か コ レ ! |
■参加者一覧
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
鷹来 雪(ia0736)
21歳・女・巫
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
和紗・彼方(ia9767)
16歳・女・シ
フェンリエッタ(ib0018)
18歳・女・シ
リディエール(ib0241)
19歳・女・魔
劉 那蝣竪(ib0462)
20歳・女・シ
フレス(ib6696)
11歳・女・ジ |
■リプレイ本文 「‥‥無理です」 即座に呟いたのは珠々(ia5322)。 子供ながら仕事に対して玄人意識は大人にも負けない珠々が言うのだ。 「シノビは勝てない戦はしません」 「珠々様が‥‥やはり、折梅様ですからね」 白野威雪(ia0736)が息を呑み、納得する。 「コイバナができないだけです。まずは帽子屋を‥‥!」 「シメに行くわけじゃないぞ」 勝てそうな方へ向かおうと意気込む珠々に劉天藍(ia0293)が冷静にツッコミを入れる。 「コイバナってどんな花ですか?」 きょとんとしているのはフェンリエッタ(ib0018)だ。 「コイバナとは恋のお話の略称なのですよ」 こそっと雪が教えると、フェンリエッタは恥ずかしそうに俯いた。 「そ・れ・よ・り・も!」 ずずいっと、和紗彼方(ia9767)に抱きつかれているうさぎ麻貴に詰め寄ったのは緋神那蝣竪(ib0462)だ。 「うさみみ麻貴ちゃん、お持ち帰りしても、いい?」 真顔で詰め寄る麻貴がぎょっとすると、那蝣竪の後ろからこっそりと雪が麻貴を見つめる。 「お持ち帰りの前にうさぎ麻貴様を抱きしめたいのですが」 更に増えた身の危険に麻貴がじりじりと後ずさりたいが、彼方に抱きしめられているので上手く動けない。。 「その辺の交渉はまた後で。私にも双子のように大事な姉がいるから気持ちは分かるよ」 苦笑しながらフェンリエッタが怯える麻貴を宥める。 「やぁね、冗談よぅ♪」 くすくすと両手を挙げて那蝣竪が笑う。 「でもでも、沙桐君と一緒に膝抱っこしたーぁい。ダメ? ダメ?」 おねだりで天然夜春で麻貴を口説き落とそうとする那蝣竪だが、麻貴はおろおろしている。 「でも、沙桐兄様もこんな感じなのかなー」 「早く助け出すんだよ!」 彼方が麻貴を抱きしめつつ、まだ見ぬうさぎ沙桐に思いを馳せると、フレス(ib6696)が勢い込む。 「この世界に来たからにはこうですね」 カチューシャのように青いリボンを結んで決めたのはリディエール(ib0241)。 今回の服装もエプロンドレス姿だったので、彼女に隙はなかった。 「勉強になります」 リディエールをじっと見つめる珠々であった。 ● お城に行くと、しくしくしくと啜り泣きが聞こえてくる。 「わぁ〜。沙桐兄様だぁ〜」 ぱっと顔を明るくするのは彼方。五歳位の姿でうさぎ耳に麻貴と色違いの服を着ていて、門の軒先に縄で縛られている。 フェンリエッタは「本当に吊るされている」と目を見張っている。 雪は泣き顔におろおろ半分、可愛らしさにときめき半分の様子。 「助けるから、もう少し待ってろよ」 天藍が言うと、こくこくとうさぎ沙桐が頷く。 「何を待つんだい?」 腹の据わった艶やかな声が上から降ってきた。 上を見上げると、妖艶な赤いドレスに身を纏った折梅‥‥もとい、梅の女王様が窓辺に立って見下ろしていた。 「折梅様、かっこいー‥‥」 「すっごい迫力だけど、何でも似合うのね」 彼方と那蝣竪が折梅を見上げる。珠々はラスボスの登場に絶句。 「沙桐兄様の容疑を晴らすんだよ!」 堂々と言い切るフレスの勇気に誰もが驚く。 「やれるものならやってみなさいな。この折梅の満足がいくようにね」 想像以上の高飛車振りに迫力がある。 「首を洗って楽しみに待ってるんだよ!」 フレスも折梅の言葉にノって来たようだ。 「さ、参りましょうか」 色々とヒートアップしたら収拾がつかないと判断したリディエールがフレスを回れ右をさせて連れて行く。 まずはメイドの未明の所へ。 「ああもう、本当にやっちまったよ。沙桐には悪い事をしたと思っているよ。梅の女王様は話を聞いてくれないほど怒り狂ってねぇ‥‥」 がっくりしているのはメイドの未明。 「やってしまったものは仕方ないさ、帽子屋の行方を教えてくれないか?」 天藍が言えば、未明は東の向こうでお茶会をしていると言った。 「とりあえず、タルトを作りましょう。未明さん教えて下さいね」 リディエールの言葉に未明が頷く。 ● 帽子屋の方へと向かった天藍、フレス、珠々の面々。 フレス、珠々は犬耳コンビだ。 「‥‥あれ、もしかして」 フレスが指差す方角に二人が頷く。猫も犬もカエルも亀も人間も入り乱れる盛大なティーパーティーの向こうで掲げられているタルト。 「梅の女王様のタルトかもしれません!」 観客をかきわけて三人が向かうと、天藍と珠々が固まる。 「か、火宵にキズナ‥‥!?」 呆然と呟く天藍が見たのは仕立ての良い礼服を着て、帽子を被っている火宵とシャツとスラックス、ベストを着てうさ耳のキズナがいた。 「誰だ。今タルトの競売中なんだが」 帽子屋なのにかッ と三人が心の中でツッコミを入れる。 「それは梅の女王様のタルトなんだよ! 未明姉様からもらったのはマーマレードのタルトでしょ!」 「んまぁ、どっちでも美味いし、競売が面白くなれば別にいいし」 さらっと言う帽子屋だが、そうも行かない。 「とにかく、マーマレードのタルトと変えてもらいます」 珠々がずいっと、未明から預かったマーマレードのタルトを差し出す。 いきなりの飛び込みに会場は騒然。周囲の様子を見ていた火宵はにやりと笑う。 「ここにティーカップ、雫型のクッキー、茶葉、角砂糖のどれかを使ってハートを作れ」 そうしたらタルトは交換してやると帽子屋が言う。 「じゃぁ、俺から」 天藍が一歩前に出る。二つのティーカップの持ち手を意識して置き換えて持ち手の部分でハートにする。 茶葉でお茶を淹れ出した。 「次は私が」 珠々がクッキーを2枚取り出して、一枚皿の上に置く。 「涙ふたつが寄り添って、ハートをひとつ」 確かにクッキーがハートになった。 「お題は良くわかんないけど‥‥」 最後はフレスだ。困惑顔であったが、天藍が淹れた紅茶が注がれているティーカップを持って、帽子屋とうさぎに渡す。その可愛らしい仕草と笑顔は周囲を魅了し、目からハートマークが出そうだった。 「美味いな」 紅茶の味に素直に答える帽子屋。 「何故、『涙二つでハート』になるんだ?」 帽子屋が珠々を見やると、珠々は少し言いよどんでしまう。 「まぁいいだろう。きちんと意味があったからな。ハートになるってのは奇跡なんだぞ」 くつくつ笑う帽子屋に珠々は少し負けた気分となったがイチゴのタルトが戻った。 戻る前に、フレスが一緒にお茶会に来ないかと誘ったが、帽子屋は競売が終わったらとだけ帰した。 その間、天藍はうとうとしているうさぎキズナが気になって仕方ない。 「‥‥キズナ、幸せか?」 聞かずにいられない心残り。 うさぎは眠そうだが、心から笑った。 「うん」 それだけで少し、目が熱くなりそうだった。 那蝣竪と彼方、リディエールは未明と一緒にタルト作りをしていた。 「季節はずれなものなのに色々とあるわね」 感心しているのは那蝣竪だ。本来この時期にはない果物が多々あった。 「イチゴに洋ナシに、女王様のお名前にちなんでプラムもいいですね」 てきぱきとタルトに適した果物を取っていく。 「ボク、マドレーヌ作りたい。それならボクにも作れるから」 彼方が挙手すると、リディエールが頷く。 「他のお菓子もあったほうがいいでしょう。お願いしますね」 にっこり微笑むリディエールに彼方がはしゃぐ。 まずは果物の砂糖煮を作る所から。 「かき混ぜるのはお願いしますね」 「はーい」 果物の砂糖煮を煮詰めでリディエールが彼方に木べらを渡す。 「おいしくなーれ、おいしくなーれ♪」 美味しくなる呪文を唱えつつ、彼方が木べらで鍋の中身をかき混ぜる。 彼方の呪文に答えるように鍋の砂糖煮がつやつやになっていく。 楽しい様子に那蝣竪、リディエール、未明から笑みが零れる。 「パイ生地がまだあって助かったわ」 「何かと入用だからね。予備は多くあるのさ」 ほっとする那蝣竪に未明が説明した。 ちなみに那蝣竪が作っているのは柚子の砂糖煮。 「柚子かい。珍しいね」 「ちょっとね」 ふふっと、笑みを浮かべつつ、那蝣竪が鍋の中身をかき混ぜている。 「彼方さん、中の様子がもういいので、マドレーヌを作っても大丈夫ですよ」 「うん!」 彼方が鍋をリディエールに任せてマドレーヌ作りを始める。 「未明さん、マドレーヌに合うブランデーってある?」 「それならこれがいいよ」 未明が渡してきたのは瀟洒なビンのブランデー。 「梅の女王様がブランデー入りのお菓子を作るときは必ず入れている」 「いいの?」 何だか高そうだと彼方が遠慮すると未明が笑う。 「普段は優しい人だからね。機嫌が直れば喜ぶよ」 「そっか、いつもの折梅様と同じなんだね」 ほっとする彼方は手順を進めていった。 リディエールや未明の手ほどきもあり、生地が出来上がった。 タルトやクッキーも後は焼き上がりを待つだけなので、複数のオーブンで焼きあげる事になった。 その間にリディエールがお茶を用意する。 「甘いお菓子にはふわりと薔薇の花が香る紅茶をね」 さぁ、そろそろ焼きあがります。 少し時間を巻き戻し、フェンリエッタと雪は梅の女王様に謁見を頼むと、衛兵達は即座に二人を通した。 ご機嫌斜めの女王様は本当に怖いので、あまり関わりたくないらしい。 謁見の間には玉座に座り、煙管をふかしていた。 「あら、疑いを晴らしに来たのかい?」 梅の女王がキセルを振ると、衛兵達が窓を開け、煙草の煙を外に逃がした。 「さぁて、どう説明してくれるんだい?」 にんまり笑う梅の女王様にフェンリエッタが前に出る。 「まず、タルトが子供一人で食べきれるかどうかです。タルトワンホールの型を未明さんに見せて頂きましたが、とても大きな型で子供が一人でその場で食べきれるわけがありません」 「誰かと分けた可能性だってあるじゃないさ」 一つ目の疑問点は折梅はあっさり答える。 「持って行ったとしたらどこへですか? 梅の女王様の所に連れて来られた時には何も持っていなかったのではないでしょうか?」 雪が言えば、梅の女王様はちろりと衛兵達の方を向く。 「探しに行った衛兵は?」 少しご機嫌が傾いた時、衛兵達が謁見の間に入ってきた。 「梅の女王様! タルトはありませんでした!」 疲労困憊というのが即座にわかるくらい疲れた衛兵達の言葉に梅の女王様は興味をなくしたようだ。 「何だか女王様がお気持ちがここになさそうなので、お話を一つしましょうか」 微笑むフェンリエッタに梅の女王様の視線だけが向けられる。 「始まりは冬の戦から」 彼女から紡がれた恋は待雪草のように可憐な話だ。 騎士であった少女は女である事による自分の非力さに悔しがって世の男性に嫉妬していた。 男と女の力は違う。少女であるならばなおの事。 だが、ある日それを覆す運命の人に会えた。 しかし、相手は十も年上、志も立派でそれでいてとても優しい人だった。 彼の距離は遠すぎた。 身分も心も。 想いは止められず、惹かれてしまう。 合う事自体容易ではない。 想いだけは消えないのだ。 胸を締め付けられる苦しい片想いは時に愛する喜びを忘れそうになるが、彼を思えばそのときめく想いは色褪せず、涙をこぼしそうになりそうになりながら口元は綻ぶのだ。 その愛を胸に生涯ただ一人だけ愛し願う。 報われずとも春を希い懸命に咲き続ける花があってもいい。 「私は‥‥そう、信じているのだけれど‥‥」 そっと、フェンリエッタの瞳が伏せて睫が揺れた。 「その喜びはね。すぐにどっか行ってしまう。そうなると女は狂った楽器のようにみっともなくなる。その喜びを持ち続けるには覚悟が必要だよ」 梅の女王様の言葉にフェンリエッタは打たれたように顔を上げる。 「その喜びを保つ事ができる女は最高にいい女だよ」 余裕たっぷりの梅の女王様の笑顔と言葉にフェンリエッタは困ったようにだが、意志を持ってしっかり頷いた。 「さって、タルトは沙桐がいそうな場所にはなかったか」 「‥‥梅の女王様は、うさぎ沙桐様がタルトを奪うような子だと思っていらっしゃいますか」 雪が思いつめたように言うと、梅の女王様は雪の方を見やる。 「沙桐様はそんな方ではありません。誰よりも折梅様を想う方です」 言い切る雪を見て、折梅が興味深く微笑む。 「お前さん、恋をしてるね」 肩を竦める雪に折梅はくすくす笑う。 「仕方ないねぇ‥‥そういや、あの犬耳っこはまだ戻ってこないのかね」 思い出したように折梅があたりをめぐらす。 「持ってきたんだよ!」 フレスが扉を開くと、そこには天藍と珠々がいて、珠々の手にはイチゴジャムタルトがあった。 「本当に持ってきたんだね」 目を見張る梅の女王様の視界に入ってきたのは新しいタルトを作ってきたリディエール達。 「早かったのですね」 リディエールの言葉にフレスが笑顔全開で頷く。 「梅の女王様、新しいタルトを焼いてきました。どうか、お怒りを鎮めてください」 那蝣竪が焼きたてのイチゴジャムタルトを梅の女王様に差し出す。 「仕方ない。無罪放免だよ、沙桐を降ろしておやり」 梅の女王様が衛兵達に言いつけると、開拓者達がわっと喜ぶ。そんな開拓者を見て、女王様がふと笑う。 「沙桐の為に色々とやってくれた事に感謝するよ」 その笑顔は知っているものなら誰もが知る折梅の笑顔だ。 暫くすると、うさぎ沙桐が泣きそうな顔になりながら謁見の間に入ってきた。 「沙桐!」 「麻貴!」 ひしっと、抱き合う双子にきゅんとしているのは那蝣竪だけではない。 「お、思わず抱きしめたくなっちゃいます‥‥」 雪も理性を抑えているようだった。 「やっぱり、姉弟は一緒が一番ね」 微笑むフェンリエッタに双子が頷く。 「沙桐さんも無罪放免ですし、ティーパーティーにいたしましょう」 リディエールの言葉と同時にお客様の報告が伝えられた。 お客様も気がよい方だったので、飛び込みのお客がいてもなんら気にせず、開拓者を受け入れてくれた。 そう、それはとてもとても楽しいお茶会だった。 「来てくれてありがとうね」 梅の女王様と双子うさぎ、帽子屋、メイド、うさぎに見送られて彼らは元の世界へ戻る扉をくぐった‥‥ 「皆様、何をしているのですか?」 首を傾げたのは開拓者ギルド受付嬢の北花真魚。 「何って、うさぎさんを助けに‥‥」 きょとんとするリディエール。 「そうだったのですか、今日、知り合いの方からジルベリアのお菓子を沢山頂いたのです。私一人じゃ食べきれないから、一緒にいかがですか?」 真魚が持っていた籠の中にあったのは、タルトだ。 イチゴ、梨、プラムそして柚子。マドレーヌやクッキーもだ。 それはあの世界で作った物だ。 「また食べられるなんて嬉しいわ♪ 食べさせてあげたいわ」 片目を瞑って那蝣竪が天藍を向くと、当人は顔を赤くして断る。 「珠々ちゃん、人参のクッキーが‥‥」 「人参はいりません! うさぎの好物なら小松菜にしてください!」 神楽の都の裏路地で珠々が叫ぶ。 さぁ、再びティーパーティーだ。 |