初めての聖夜を君に
マスター名:鷹羽柊架
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/28 19:31



■オープニング本文

 理穴首都より一日歩いた所に三茶という大きい街がある。
 その街は大きな流通経路の通り道なのと、首都に近いという事でとても賑やかな街だ。
 華やかな街な分だけ治安が低くなる。治安の低下を防止する為、この街では任侠一家‥‥雪原一家が護っている。

 師走ともなると、街が慌しさに活気づき、色々と揉め事も多くなる。
「あれ、睦助? さっきまでいたんだがなぁ」
「どうかしましたか当代」
 頭をかきつつ、雪原一家当代緋束が睦助を探している。
 そんな当代に声を掛けたのは一家の中で最年少の赤垂だ。
「睦助を探してるんだが、見なかったか?」
「ボク、さっき見ましたよ。探してみましょう」
 赤垂の懐から出てきたのは一枚の符。赤垂が精神を集中すると、その札がちりちりと白く燃えてゆき、真っ白い羽に赤い瞳の小鳥が現れた。
 赤垂がそれを外に放つと、小鳥は空を飛んでいった。
 小鳥は雪原一家の屋敷を越え、外へと向かう。
 屋敷より少し離れた所にある飲み屋に入っていく睦助の姿を見た。
「あ。いました。一番近くの銭亀屋さんに入っていってます」
 意識を戻して赤垂が言うと、緋束は「でかした!」と赤垂を誉めて飲み屋、銭亀屋へと走っていった。
 その後、睦助は緋束にこき使われたとか。


 ある日、赤垂が買い物をいていると、小間物屋のお姉さんからジルベリアの本を貰った。
「表紙がちょっと破れて売り物にならなくなったの。良かったら貰って」
「ありがとう!」
 家に持ち帰り、寝る前にこっそり読むと、それはジルベリアの冬の絵本だ。
 ジルベリアのこの時期には緑色の木に飾り付けをして家族でご馳走を食べるという風習があるそうだ。
「クリスマスかぁ」
 家族を亡くしてもう、一年以上経つ。
 血の繋がった家族を亡くすという事は辛い事だが、今は血は繋がっていないが家族がいる。
 出てくるご馳走の中で聞いた事のあるお菓子もあった。
「ううーん、作ってみたいなぁ」
 だが、作るにしても材料が必要だ。
 赤垂は思い出したように自分の引き出しの中に入っているお小遣いを数える。
「ちょっと足りないな‥‥」
 その後、赤垂は知り合いの飯屋にこっそりお小遣い稼ぎに出かける。
 その理由をお店の人経由で知った緋束は困ったような顔をした。
「もう少し甘えてくれたらいいんだがなぁ」
 溜息混じりに緋束が呟く。
「当代の言う通りですが、赤垂君は本当にしっかりした子ですよ」
 飯屋の女将が笑い飛ばすと、緋束も困ったように笑う。
「ウチは赤垂君がいてくれるから繁盛してますよ」
 見た目も美少年といった赤垂なので、近くで働いている娘さんなんかが目の保養に食べに来てくれるとか。
「とりあえず、もそろそ目的額達成のようだし、先にギルドに手回ししてくるか」
 ふーっと、溜息をつきつつ、緋束がギルドへと向かう。


■参加者一覧
劉 天藍(ia0293
20歳・男・陰
御樹青嵐(ia1669
23歳・男・陰
和紗・彼方(ia9767
16歳・女・シ
劉 那蝣竪(ib0462
20歳・女・シ
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
叢雲 怜(ib5488
10歳・男・砲
緋那岐(ib5664
17歳・男・陰
セフィール・アズブラウ(ib6196
16歳・女・砲


■リプレイ本文

「ギルド職員さんよりお話を聞いたと思いますが、今回はボクにクリスマスを教えてください」
 ぺこりと頭を下げるのは赤垂だ。
 ごく僅かな依頼料で雇われたという設定の開拓者達がギルドに集まる。
「ただ本当の目的というのはどのあたりなのでしょうか」
 セフィール・アズブラウ(ib6196)が赤垂に言うと、当人は少し困惑してしまうが少しずつ言葉を口にする。
「‥‥雪原一家の皆は家族と別れたり、家族がいない人達ばっかりなんです。この時期、皆、忙しいから少しでも楽しんでほしいんです」
 ぎゅっと、こぶしを握り締めて言葉にする赤垂に緋神那蝣竪(ib0462)が感涙する。
「赤垂君たら、本当に健気ねっ」
 感極まり、那蝣竪が赤垂を抱きしめる。
「わ、わ!」
 驚く赤垂が微笑ましく、御樹青嵐(ia1669)が微笑む。
「分かりました。赤垂君の為、よき宴にいたしましょう」
「そうだな。クリスマスプディングの約束もあったし」
 同じく、オドゥノール(ib0479)も穏やかな表情で微笑む。
「とりあえずは纏めて清書をしよう。全て本式にする必要はないし、要は家族である一家と過ごしたいのが大事だからな」
「はい!」
 オドゥノールが言えば、赤垂が頷いた。

 クリスマスプティングとジンジャークッキーを作る
 食事はシチューと鳥の丸焼きと各種つまみ
 樅の木の幼木を買って飾りつけ(オーナメントは和紙なんかで代用)
 贈り物交換


 雪原一家に向かうがてら、買い物をしつつ、叢雲怜(ib5488)が赤垂にクリスマスの話をしている。
「ここだけの話、俺、サンタクロースはシノビの凄い人だと思うのだ」
「どうして?」
 似た年齢同士、気が合うのか、直に打ち解けていた。
「だって、いつの間にかお家の中に入って、誰にも気付かれずに枕元に贈り物を置いて帰っちゃうんだぜ!」
「すっごいね!」
 二人が目を輝かせながら前を歩く姿を見て、劉天藍(ia0293)が微笑む。
「ああ見ると本当にまだ十歳なんだよな」
「そうだな。いつも見せてくれる笑顔とは違うから新鮮だな」
 基本的には大人と一緒の赤垂であるが、同年代と一緒にいる姿はとても珍しい。
「どんどん頼もしくなるけど、やっぱり年齢通りなんだね」
 くすっと、和紗彼方(ia9767)が笑う。
「三田さん?」
 セフィールからクリスマスの話を聞いているのは緋那岐(ib5664)だ。
 クリスマスを実際はあまり分かってないので、セフィールから話を聞いている。
「発音が苗字みたいよ」
 くすくすと那蝣竪が笑う。
「えー、何か三田さんが苦労するのか」
「確かに、サンタクロースは子供達に贈り物をするのでとても骨が折れるかと」
 真面目に返すのはセフィールだ。間違いではない。
「そっか、腹も減るよな。ジンジャークッキーの作り方教えてくれよ」
「承知しました」
 うんうんと納得している緋那岐にセフィールが応える。

 さて、買い物は何とか買いつつ、雪原一家へ。
「先にクリスマスプティングを作ろうか。これは作り立てよりも日を置いた方がいい」
「はいっ」
 オドゥノールがプティングの作り方を丁寧に教える。
 幸い、三茶の大きな街では輸入雑貨の店が手広く品物を揃えており、何とか種実と干し果物を入手する事に成功した。
 干し果物を戻している間にナッツを刻む。
「赤垂、ろーすとちきんの仕込みしようぜ」
 緋那岐が言うと、赤垂が頷く。
「香草の匂いは天儀の方には馴染みが少ないので、ここは天儀に合ったものにいたしましょう」
 代案を出すセフィールに緋那岐と赤垂は首を傾げる。
「まずは塩を揉み込み、置いておきます」
 鍋に塩を擦り込んだ鶏肉を置き、上にサラシで埃避けにする。
「次はつけ汁です。これをすって下さい」
 緋那岐にたまねぎ、赤垂ににんにくが渡され、二人がせっせとすっている。
「鍋に油を入れます。そのすった物を焦がさないように入れて炒めます」
 ささっと、セフィールが鍋を手早くゆすりつつ炒めていく。
「たまねぎがこのような色になりましたら酒、塩、たまり醤油、蜂蜜を入れます」
 分量は覚えさせる為に赤垂にさせる。
「蜂蜜もか、結構贅沢だな」
「だから、御馳走なんだよ」
 むむっと唸る緋那岐に天藍が納得の言葉を返す。
「軽く混ぜ、ふつふつと泡が出てきたらつけ汁の完成です」
「いい匂いだな」
 天儀の人々に馴染みある香りはとてもいい匂いだ。食欲をそそられる。
「冷ましましたらこれを鶏肉につけます」
「セフィール、丸焼きならば中味も詰めたいが、オニオンバターよりオニオンと生姜で炒めた物をたまり醤油で軽く味付けした方がいいか」
 オドゥノールが言えば、セフィールも同意した。
 とりあえず、御飯を固めに炊く。


 一方、木を探しに来ている彼方、那蝣竪、怜はまずは植木屋へと向かった。
 雪原一家の木は大きな松の木が多く、しっかり手入れもしてある。元庭師の家人がいるらしく、その家人が教えてくれた店だ。
「奥に幼木が一つありますがちょっと売り物にならなくて。持って行ってくだせぇ」
 手ごろな幼木であったが、少々傷ついていたが、飾り付けをする分には問題なさそうだ。
「後は折紙で飾り付けかしらね」
 紙屋で折り紙を、小間物屋で綿を買ったりして材料を買っていく。
「上につけるお星様のも忘れちゃダメなんだぜ!」
「それは大事ね」
 力説する怜に那蝣竪が微笑む。
「ちっちゃな鈴もつけたら可愛いよね。あ、青ねぇ〜」
 向こうの通りに青嵐がいるのを見つけた彼方が手を振る。
「おや、飾り付けですか?」
「お目当てのものは見つかった?」
 青嵐が手にしている物に気付いた那蝣竪が悪戯っぽく目を瞑る。
「残念ながら、葡萄酒です」
「大丈夫よ、葡萄酒も鶏肉と合うと聞いたわ」
 苦笑する青嵐に那蝣竪がフォローを入れる。

 雪原一家の屋敷にきた四人の内、青嵐は台所へ。入れ違いに天藍が飾りつけ組に入る。
「しかし、幼木が手に入ってよかったな」
 ほっとする天藍が怜の方を向くと、怜が気難しい表情をして何かを作っていた。
「よし、できた!」
 満足そうに完成の声を上げる怜に天藍がああと納得する。
 ツリーの頭につける星を作っていたようだった。
「この星は赤垂に飾らせてやるんだ!」
「お、ありがとうな。大事な役目をウチの赤垂にさせてくれて」
「へへ、主役は一番星なんだぜ」
 緋束に礼を言われた怜は得意げに笑うと、赤垂を連れてくると言って、台所へと向かった。
「そういや、赤垂君、あの後の修行の成果はどうだったのかな?」
 思い出したように呟いく彼方に緋束が応えた。
 怠けて遊びに行く家人を上手い事追跡しているらしい。
「ほほー」
 じろりと天藍が睦助を見やると、ぎくりと肩を跳ねた睦助が怯えている。
「実用的に使えてよかったね」
 くすくすと可愛らしく彼方が笑う。
「そこまで出来るならば次の符を教えるべきだな」
「もう、十分ッスよぉ〜〜」
 悩む天藍に睦助が泣きつくが、天藍は聞こえない振り。
「わ、綺麗な飾り切り!」
 ぱっと、彼方が顔を明るくしているのは那蝣竪が切った雪の結晶に用に切った紙飾り。しかも、繋がっているのだ。
「ふふ、ありがと」
 笑顔全開の彼方に誉められてまんざらでもない那蝣竪が笑う。
「さって、私もジルベリアのお料理を習ってこようかな」
「あ、俺もシチューを仕上げなきゃな」
 立ち上がった那蝣竪に天藍も思い出したように立ち上がる。
「ジルベリアのお料理ね。教えて」
「わかったとは言いたいが、多分、セフィールさんかオドゥノールさんに教えてもらうんだけど。ホワイトソースっていうのを作らないとならないらしい」
 二人で台所に行かれて。家人達がちょっとだけ天藍が羨ましいと思ったとか思わなかったとか。


「チシャのお浸し。ボク大好きです」
 嬉しそうに赤垂が青嵐に笑う。
「薄く短冊切りにした人参と一緒に湯がいて生姜醤油で合えますよ」
「はい」
 赤垂の様子は至って楽しそうな様子だ。
「赤垂君、雪原一家の一員となってから一年以上が過ぎましたが、今、一家の皆さんは赤垂君にとってどんな人たちですか?」
 青嵐が言えば、赤垂はくすくすと笑い出す。
「はじめは怖かったけど、だんだん、ボクと変わんない気がしてきたんです。当代は本当に尊敬してますし、ボクにとって大事な家族です」
 きっぱり言い切る赤垂に青嵐は迷いがない事を悟り微笑む。
「そうですか、よい家族を持ちましたね」
「はい」
 赤垂が返事をすると、向こうでちょっとしたトラブルが。
「オーブン、どうしよう。土に埋めて上から火をつけるか」
 流石のオドゥノールもこれには参った。
 プティングならオーブンは必要ないが、チキンとクッキーには必要だ。
 オーブンが分からない赤垂はセフィールからオーブンを教えて貰うなり、セフィールがふと思い出すと、赤垂に伝えて彼は物置小屋へと向かう。
 持ってきたのは大きな鉄板。
「これを綺麗に洗って、釜の中に鶏肉を入れて鉄板で蓋をし、その上に焼き石をおきましょう」
 セフィールの提案に全員が「あっ」となる。釜の蓋は木製であるが、それを鉄板に変える事によって蓋が燃える事無く熱源を確保できる。
 オドゥノールが物置小屋から焼き石用の石を持ってきて竈の火で注意深く石を焼く。
「俺がやってやるよ」
 緋那岐が井戸の方でごしごしと鉄板を洗いだした。
 鶏肉は釜の中へと入れられ、綺麗に水分を拭取った鉄板に蓋をされる。
 その上から焼き石を置いて暫し焼く。
「これで暫く大丈夫だな」
 ふーっと、オドゥノールが汗を拭う。
「赤垂ーーーっ」
 怜が台所へ走ってくる。
「なぁ、赤垂連れてっていいか?」
 怜が皆に言うと、あたりを確認した青嵐が頷く。
「後は焼き待ちですから大丈夫ですよ」
「じゃ、行こ!」
「え、え?!」
 バタバタと二人が部屋の方へを走り出した。
「廊下は走ってはいけませんよ!」
「叱る様も母親のようだな」
 ぽつりと呟くオドゥノールに青嵐が「もう慣れました」とだけ言った。
 入れ違いに天藍と那蝣竪がシチューを教わりに台所へ入ってきた。

「わー! 飾り付けすごーい!」
 顔をキラキラ輝かせて赤垂が声を上げる。
「皆でやったんだよ」
「赤垂は主役だからな。これを天辺に付けるんだぜ」
 彼方が笑いかけると、怜が自分が作った星の飾りを赤垂に渡す。
「そら、赤垂」
 当代に抱きかかえられる赤垂は驚きと戸惑いつつ、飾りを天辺に付ける。
「飾りつけはこれで完成だよ☆」
「後は料理が出来るのを待つだけなんだぜ!」
 彼方と怜が言えば、赤垂は嬉しそうに頷く。

 一方、シチューをセフィールに教わっている那蝣竪。
 料理が出来る人ともあり、スムーズに事が運んでいる。
「段々固まってきたけど大丈夫?」
「大丈夫です。後ほど、野菜や肉を煮たものとあわせるので、程よいとろみとなります」
 ホワイトソースを練っている那蝣竪が心配そうに言えば、セフィールがきちんと答えてくれるので、安心してホワイトソース作りに専念できる。
 一方、魚を捌いて刺身やら寿司を握る天藍と青嵐が今後の赤垂の符術教室の話をしている。
「ほう、それほど進んでいるなら次に移った方がいいですね」
「瘴気回収にするか、斬撃符にするか‥‥あまり斬撃符は使わせたくないが‥‥」
「いっそ、砕魚符とかは」
「変態と戦わせるのか?」
「それもちょっと‥‥」
 二人の先輩陰陽師の会話を聞きつつ、子育てをしている夫婦のようだと緋那岐は思ったが、口には出さなかった。
 出来上がったホワイトソースを煮込んだ野菜と肉と合わせて混ぜていくと、丁度良くとろみも出てきて美味しそうだ。
 そこからかき混ぜながら温めていくと、覗き見の家人達が。
「睦助、もう少しで出来上がるから待ってろ」
 天藍が言うと、睦助は笑って誤魔化す。
「あら、ちょうど良いじゃない。ちょっと味見をしてみて」
 那蝣竪が声をかけると、睦助達が「喜んでー!」と入ってくる。
 天藍や青嵐の呆れた視線を受けつつ、家人達がシチューの味見をする。
「これがジルベリアの料理っすか」
「甘いんだな」
「とけたジャガイモが好きだからうめぇ」
 中々好評のようで、那蝣竪が安心する。
「お嫁さんになれるかしら」
 お茶目に那蝣竪言うと、家人達が「勿論勿論!」と勢い込む。
「お前らうるさい」
 緋束が家人を軽々と台所から出す。
「悪かったな。邪魔をした」
 呆れたように緋束も出て行ったが、那蝣竪の声かけで緋束も味見をすると、「文化の違う俺達にも味が合っている。それが出来る気配りはいい嫁の必須条件だ」とだけ言ってくれた。


 料理が出来上がり、宴の運びとなる。
 メインであるチキンは見事に焼けており、家人達がとても喜んでいた。
 葡萄酒に関しては梅酒みたいなものという事で意外にも受け入れてくれた。
 ある程度お腹が膨れたらやるのは唯一つ。
「プレゼント交換よー♪」
 那蝣竪が言えば、開拓者達が贈り物を用意する。
 交換が終わると中を見る。
「わ、簪だ」
 あっと驚く彼方に緋束が笑う。
 赤垂に渡ったのはもふらのような形をした巾着。
「相談したらそれだって言われた」
「ボク、これでお使い行くね」
 嬉しそうな赤垂を見て、緋那岐が相談相手にいい報告が出来そうと思った。
 林檎の甘煮のサンドクッキーを手にした怜がきょろきょろしているのは自分が交換したプレゼントが誰に行ったかだ。
「あ、よかった。綺麗な形だから、ねえちゃんにいってほしいなって思ってたんだ」
「素敵なブローチです。ありがとうございます」
 渡ったのはセフィールだった。
「雪の根付けか‥‥『雪が根付く』か。いいお守りになりそうだな」
 微笑む緋束に那蝣竪もこっそり微笑む。
 青嵐は別として赤垂に包丁を贈った。良いものを食べさせてほしいという願いをこめて。
「赤垂、赤と緑、どっちがいい?」
 天藍の両手それぞれに乗っている赤と緑の箱。
「えっと、うんと‥‥これ!」
 びしっと、赤垂が箱を指したその中味にまた皆がわっと沸く。


「眠ってしまったか」
 口元を緩ませるのはオドゥノールだ。視線の下に赤垂と怜が眠っている。
 はしゃいで疲れたのだろう。
「寝かせてくる」
 緋束が立ち上がろうとするのを彼方が止める。
「緋束さんはサンタになるんだよ」
 きょとんとした緋束だが、思い出して首を振る。
「尚更俺が寝かせないと」
「どうして?」
 首を傾げる彼方に教えてくれたのは睦助だ。
「家族がサンタクロースと分かっちゃ夢がねぇ、開拓者の皆さんになってくだせぇ。皆さんはサンタクロースのような方々ですから」
「じゃぁ、行ってこようか」
 オドゥノールが立ち上がる。その手には包みがあった。
 彼方、那蝣竪の手配でオドゥノールはそっとそっと部屋で眠る赤垂の枕元に包みを置いた。
 赤垂の寝返りに冷や汗をかいたが、何とか脱出できた。
「良い子達にメリークリスマス」
 優しい言葉がそっと赤垂と怜にかけられる。

 次の日、毛皮の手袋を手にし、喜ぶ赤垂の姿があった。