【PM】緊急事態!
マスター名:鷹羽柊架
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/08 21:17



■オープニング本文

※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。

 鷹空祭

 三年に一度、奏高と隅高が合同で学校祭を行う祭りの事である。

 今年もまた、それぞれの学校が協力し合い、互いに競い合う事になる。
 今回の会場は奏高で行われる事になっており、隅高の生徒は奏高へと通うことになっている。
 その中のステージ予定の一つに、隅高手芸部主催のファッションショーが行われる事になっている。
 隅高の手芸部が自作の服で自身が着たり、モデルを引きずって着せたりしている。
 モデルとなる生徒もしくはOB、OGには必ずウォーキングを実習するという徹底ぶり。そのモデルの一人、隅高の市原緒水は手芸部部長の三京天南のお使いで奏高の廊下を歩いていた。階段を降りている時、踊り場で屯している男子生徒の後ろをすり抜けた。
「あれ、隅高の子?」
 ガラの悪そうな男子生徒四人に緒水が声をかけた。
「あ、はい‥‥」
「かっわいいねぇ、俺達と遊びに行かない?」
 ニヤニヤ笑いながら男子生徒が更に緒水に声をかける。
「私は用事があって‥‥」
 怯える緒水に男達は連れ出せると思ったようだ。
「何をしているのですか」
 階段の上から可愛らしい声が降ってくる。
「げ、風紀委員の‥‥」
「欅ちゃんっ」
 緒水が駆け出そうとしたが、男子生徒達によって掴まれる。意地悪そうな笑みを浮かべた男子生徒の一人が階段を上がり、欅の前に立つ。
「羽柴に言っておけ、この女が返してほしかったら、お前一人で第三用具室に来いってな」
 どんっと、欅が後ろに突き飛ばされて、リノリウムの床に尻餅をついてしまう。立ち上がった頃には男子生徒の姿はなく、階段を駆け下りてしまったようだ。
「お兄様に伝えなきゃ‥‥その前に‥‥」
 欅は隅高、奏高問わず、頼りになる友人達にメールをした。

件名:助けてください!
内容:隅高の緒水さんがガラの悪い男子生徒に連れて行かれました。
以前も悪さをしていた生徒なんですが、その際に麻貴お兄様に恥をかかされてとても恨んでいるようなんです。
お兄様一人で第三用具室に来いと言われましたが、お兄様一人は危険と思います。
どうか、力を貸してください!
このメールを受け取った方はどうか、風紀委員室へ来てください。
お兄様にもこのお話は伝えます。
お願いします。




 風紀委員室に行った欅は風紀委員室に行って、麻貴に事情を話した。
「ち、奴らめ、この間の事をまだ根に持っているのか」
 舌打ちをする麻貴に欅はおろおろするばかり。
「私一人で乗り込みたいが、私を心配してくれてありがとう」
 欅を気遣う麻貴が微笑むと、欅は顔を赤くする。
「麻貴、どうするつもりだ」
 ちろりと沙桐が言えば、麻貴はメール待ちとだけ言った。


■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167
17歳・男・陰
音有・兵真(ia0221
21歳・男・泰
鷹来 雪(ia0736
21歳・女・巫
紫雲雅人(ia5150
32歳・男・シ
珠々(ia5322
10歳・女・シ
輝血(ia5431
18歳・女・シ
溟霆(ib0504
24歳・男・シ
フレス(ib6696
11歳・女・ジ


■リプレイ本文

 メールの着信音がした。
 マナーモードにしてなかった事に薄目を開けた奏高三年音有兵真(ia0221)は面倒くさそうな表情をした。
「眠いんだよ‥‥」
 ぱったりとまた眠ってしまった。


 風紀委員室に集まった七人は繋がりはありそうでない面子ばかり。
「ったく、麻貴なら幾らでも連れ去っていいのに。ヘタレどもが」
 どこをどう見ても不機嫌顔な奏高三年水城輝(ia5431)は開口一番そう毒づいた。
「ヘタレですから人質を使うのかと。麻貴さん、お節介が高じて敵も多いですし」
 くすっと、苦笑いを漏らしつつ、肩を竦めるのは奏高三年新聞部部長紫雲雅人(ia5150)。対して、苛つきを抑えるように眼鏡のブリッジを押さえるのは麻貴以上に中性的な美しい容姿で性別不明と有名な奏高二年風紀委員武藤御門(ia0167) 。
「全く‥‥頭の痛い限りですね。隅高との大事な交流の場にこのような恥を晒すとは」
「自分が何をしたかという事を骨身に沁みるまで教え込むべきです」
 別のストレスをぶつけたそうな奏高一年双海珠々(ia5322)は小柄なのにやたらと有無を言わせない迫力がある。
「女の人に酷い事をしようとだなんて絶対許せないんだよ! ね、珠姉様!」
 奏高一年ダンス部美崎芙麗(ib6696)も同様に怒りを可愛らしく顕にしている。ぴこんと立つ犬耳のカチューシャが似合う。姉様呼びされた珠々は硬直。
「緒水さんの事は心配ですが、欅さんに怪我はありませんか?」
 優しく欅に声をかけるのは隅高三年剣道部マネージャー白野威雪(ia0736)。
「大丈夫です」
 雪に声をかけられ、欅ははにかんで答える。
「しかし、君と欅がアドレスを交換するほど交流があったとは」
 意外そうに麻貴が声をかけたのは奏高二年バスケ部高坂溟(ib0504)。
「人との繋がりは意外な所にあるものだよ。通学時によく会ったりするからね」
「お兄様にも秘密なんですよ!」
「け、欅!?」
 はぐらかすように言う溟とどこかムキになって言う欅に麻貴は気になって仕方ないようだ。


 緒水の救出と話は一致し、動く事にする。
「じゃ、陽動宜しく。あいつら見たら何するか分からないし」
「りょーかいなんだよ! さっさととっちめなきゃ!」
「そうですね。こちらも調べる事はありませんし、手早く行きましょうか」
 さっと手を上げたのは輝で芙麗が敬礼をする。特に新しい情報はなかったのか、雅人も頷く。
「委員長、お供いたします」
 目礼した御門が言えば、麻貴は微笑んでありがとうと言った。
「‥‥雪ちゃん、こっそり楽しんでる?」
 こそっと、沙桐が言えば、雪はそんな事ないと思いっきり首を振るのがアヤシイ。
 ぱたぱたと風紀委員室から皆が出て行くと、廊下の外に視線を向けた溟があっと、目が合った。
「あの先生達なら大丈夫かな。大騒ぎを起こさない限りは」
 ぽつりと呟いて溟も前を歩く皆について行った。


 第三用具室に連れて行かれた緒水は恐怖心と戦いながら自分を攫った人物達を見ていた。
 記憶が正しければ、度々他校と問題を起こしているフダつきの不良達。
 隅高とも諍いを行い、隅高まで乗り込んできたというのは記憶に新しい。
「誰かいるのか?」
 不良の一人が言えば、別の一人が問いかけた不良の口を塞ぐ。
「音有だって、あいつ寝起きわりぃから煩くするなよ」
 最後の忠告は緒水に対してだ。
「俺達は羽柴にやり返させりゃそれでいいんだよ。大人しくしてろよ」
 ぐっと、我慢する緒水は騒ぎを起こすべきか悩む。
 ガラガラと音を立てて麻貴が第三用具室に現れた。
「来てやったぞ。緒水ちゃんを放せ!」
 麻貴が叫ぶと、不良達と緒水の奥で何かが動いた。そっと、麻貴が目をすがめ、構えると、その影は近くの不良の一人をを殴り倒した。
 一発で不良を昏倒させたのは音有だった。
「寝ているのを起こすなよ‥‥」
 睡眠不足と過労で頭痛がしているのか、兵真が頭を抱えている。
「あ、音有」
 麻貴が驚くと、横から芙麗が現れて不良達に思いっきり指を差す。
「悪い事やってるのはちゅるっとお見通しなんだよ!」
「援軍呼びやがったか!」
「風紀委員の見回りですが何か」
 穏やかな笑顔を張り付かせながらも厳しい声音の御門が言えば、不良達が麻貴に殴りかかろうとする。麻貴が走り出すと、不良の一人に足をかけ、手で突き倒す。その後ろから素早く何かが二人を追い越してよろけた不良の一人にジャンピングアッパー、そして芙麗のドロップキックによって一人昏倒。
「フルでぼっこぼこにしてさしあげます。覚悟はよろしいですか?」
 立ち上がった珠々の姿に思わぬ伏兵に不良達が驚く。
「こっちに人質が居るのは分かってるんだろうな!」
 強力な武器を思い出し、緒水の髪を引っ張った不良の一人が叫ぶ。
「緒水、目を閉じな!」
「はいっ」
 輝の言葉に緒水がぎゅっと目を閉じた瞬間、緒水の髪を掴んでいる不良の肩を目掛け、ボールが飛んできた!
「うぉ!」
 あまりの痛みに不良が緒水の髪から手を離す。緒水に怖い所を見せまいと雪が飛び出して緒水を抱きしめる。
「輝君、今だよ」
 ボールを投げた溟が言うと、輝はしなやかで長い足で横腹を蹴り飛ばした。
 緒水の周囲に不良の目が削がれると、雪が輝に緒水を渡す。
「輝さん、早く」
「わかってる」
 雪の言葉に輝が頷き、緒水を外に出す。
「逃がすか!」
 緒水が逃げたのに気付き追おうとすると、御門の長い足に引っかかり、転んでしまう。
「逃がさないのはこちらです」
 きろりと、冷たい御門の視線が不良に突き刺さる。
「人質は奪還、後は何人残ってる?」
 さっと、雪の前に出た沙桐がにっこりと微笑むと、残った不良達は最後の悪あがきに出た。
「諦めたらいかがですか? 隅高への面子がなくなる前に」
「うるせぇ!」
 さっと、不良が殴りかかろうとする拳を避けた雅人は横から不良の腕を取り、そのまま投げ飛ばした。
「いい加減にしておいた方がいい、勝負は最後まで食いつきが大事だが、この場合は引き際を理解した方がいい」
 溟が言うと、不良達はその場に項垂れた。


 緒水を奪還できた皆は風紀委員室でジュースとお菓子で乾杯。
 まだ寝たりない音有は麻貴の口利きで保健室でぐっすり寝る事を許された。
 仕方ないわねと、保険医の未明先生が肩を竦めていたようだ。
 無事に戻ってきた緒水に特に怪我はなかったが、髪を引っ張られたという事を輝は随分根に持っているようだった。
「輝さん、私は大丈夫ですから」
「大丈夫って言っても問題を起こしているじゃない。ま、あたしが居るから大丈夫だけどね」
 緒水が輝に言い聞かせるが、輝がご尤もな話を返すが、やっぱり大丈夫です♪と緒水が笑う。
「なんだ、風紀委員室で宴会かー?」
「まぁ、学生だし、ハメを外したって多めに見てやるか」
 ぴたりと、生徒達が硬直したのは二人の教師の台詞。
「上原先生に遠藤先生‥‥」
 黒髪に短髪、少し長い前髪を横に流している上原柊真国語科教員に薄茶髪に長めの髪を後ろに流している遠藤火宵社会科教員。二人とも女子に人気ある若い教師達。
「さっき、目が合ったんだよね」
 さらっと、目をそらした溟が呟く。
「多分、未明先生が察して聞いたんだ」
 こそこそと麻貴が呟く。
「両校とも仲良く宜しい事ですね」
 鷹来折梅隅高校長が現れ、生徒達が黙る。
「ちょっと、珠々ちゃん。何抜け出しているのよ! ウォーキング間に合わないわよ!」
 更に緒水が現れ、珠々を連れて行く。
「にゃーーー!」
「私も一緒に行くんだよー♪」
 何だか楽しそうに見えた芙麗が一緒について行った。



 鷹空祭当日も不良達は大人しく特に問題はなかったが、そこそこに問題はあるが、その辺は麻貴や御門達といった両校の風紀委員が穏便に収めていた。
「溟先輩っ」
 クラスの出し物の休憩時間になった溟に後ろから声をかけられる。
「欅君、どうしたんだい?」
「あの、お昼まだだったら、私に奢らせて下さい。いつも、電車内でお世話になってますし‥‥」
 顔を赤くしている欅はどうやら、痴漢撃退に守ってくれている溟にお礼がしたいようだった。
「欅君と見て回れるのは嬉しいね。奢る必要はないよ。可愛い子と一緒に通学できるのは嬉しい事だからね」
 にこりと微笑む溟に欅は可愛いと誉められてはにかむ。

「読売屋、スナップか」
「ええ、麻貴さんはファッションショーに出られるんですか?」
 デジカメ片手に色々と撮っていたり、出店で買った物を食べていた雅人に麻貴が声をかけた。一番人気の空手部のたこ焼きだと雅人が勧めてくれたので、一つ食べる。
「まぁな、そろそろ行かないと輝に文句言われるな。読売屋も来るのか?」
「ええ、写真は写真部に任せますけどね」
「うまく逃げやがって」
 ぼそりと、麻貴が呟くと、雅人はくすくす笑う。
「目立つのは苦手なんですよ」
 ごちそうさまとだけ言って麻貴は講堂の方へと向かった。

 沙桐と一緒に文化祭を楽しんでいるのは雪だ。
 イチゴ飴を沙桐に買って貰い、肩を並べて歩いている。
「ファッションショーの用意、そろそろですね」
「そうだね」
 時計を見た沙桐が確認して頷いている。
「天南さんに沙桐さんと麻貴さんの衣装を見せて貰ったんですよ。凄く素敵でした」
 嬉しそうに言う雪に沙桐はちらっと、見下ろす。
「あー、うん」
 ちょっと上の空の沙桐に雪は首を傾げる。
「沙桐さん?」
「雪ちゃんも一緒に歩けたらいいのになーって」
 そっぽむく沙桐に雪は驚いたように眼を見開く。
「わ、私が出たら緊張して転ぶかもしれませんしっ。麻貴さんと歩くんですよね、仲良しはいいと思いますっ」
 慌てる雪の様子が可愛らしく、沙桐はくすくすと笑う。

 とある教室で土台のトラブルが起きていて、たまたま通りすがった兵真がてきぱきと直していた。
「こんなもんだな」
 汗を拭う音有に女子生徒達が涙目で感動していた。
「音有先輩、ありがとうございます!」
 普段の素行で遠巻きに見られがちな兵真ではあるが、中身は面倒見のいい兄貴肌なので、困っている所は見逃せない性質でもある。
「何かお礼します。食べたい物とかありますか?」
「じゃぁ、焼きそばとお好み焼き」
 さらっと、注文を出す兵真に女子達は喜んで買いに行く。
 こういう事があるので、学園祭中はよく食べている気がする。
「学園祭終わったら空手部にでも出て練習参加しようか」
 差し入れてくれたお茶を飲みつつ、兵真が呟く。



 ファッションショー控え室では輝が自分の腕試しとばかりに自前のメイクボックスを持参してモデル達のメイクに当たっている。
 緒水はスタンドカラーの縁にレースを合わせたの赤ブラウスに青地に白や薄紅の小花を散らした片まで襟ぐりを開けた床につく位の長い裾のドレスを纏い、左前に合わせたスカートの合わせ部分はふんだんに白レースを幾重にも合わせており、可憐な和洋折衷の装いとなっている。
 それに合わせて輝のメイクは付け睫で更にボリュームをつけて、目尻の睫の長さを更に出す人形のような雰囲気で仕上げている。
「輝さんとお揃いの感じにしてもらって嬉しいです」
「天南が死んでるけどね」
 嬉しそうに笑う緒水に輝がチラッと見た先には殆ど睡眠時間がなかっただろう天南が突っ伏して寝ている。
 あの後、輝も舞台に立つ事になり、緒水と似た感じの洋中折衷なドレスを作る事を決めた天南は突貫作業でやっていたらしい。
 ちなみに輝血の衣装は白オーガンジーのスタンドカラーの縁に青のレースを合わせたインナーにハートシェイプラインのシルクサテンのチャイナ風ドレス。スカート部分はマーメイドラインとなっており、それに総レースのストールを羽織る予定。
「ほら、珠々、やるよー」
 衣装だけ着て待っているのは珠々だ。
 紫地に白レースと黒レースがストライプ状に入っているドレスで袖は薄紫のオーガンジーでベルスリーブとなっている。ハイウエストで黒のベロアのリボンで締めている。スカートはトップスの地を表面とし、薄紫のチュールを何枚も重ね合わせてボリュームを出してショートラインにしている。
 慣れないエナメルの黒ヒールを履かされているが、特訓でもう怖くない。
「輝姉様のお化粧楽しみなんだよ♪ ね、珠姉様♪」
 一緒に出る事になった芙麗が珠々に話しかけると、やっぱり挙動不審。芙麗はオレンジ地に胸に大きな花の飾りをあしらったビスチェ風、パニエでふわふわにボリュームを出した可愛らしいドレスを着ている。
「そろそろ慣れてはいかがですか?」
 苦笑しているのは巻き込まれた御門。シャンパンゴールド一色のパコダスリーブのエンパイヤドレス。近くには顔を隠す為のヴェールがかけられている。
「わー、御門先輩、女神様のようです」
 キラキラと憧れのまなざしを向ける芙麗に御門は苦笑しつつ微笑む。
「何にせよ、誉められるのは嬉しい事ですね」
 そうこうしている内に麻貴と沙桐が現れる。
 全員の用意が終わったが、一人、不満を言っている。
「天南、何で女装なんだ?」
「しっつれーねー。トルコ系の民族衣装をロココ調にして、メイクは舞台メイク仕様の中性風でしょ。輝ちゃんに感謝しなさいよ!」
 ファッション史に造詣が深くない沙桐にしてはそんなものだろう。ちなみに麻貴も似た様な感じであり、どっちがどっちかわからないくらいだ。
「あたしのメイクに文句ある? どっちか分からないように気を使ったんだからね。感謝しなさいよ」
 衣装に着替えた輝が言えば、沙桐は少々の葛藤の後、折れて「ありがとうございます」とかっくりと頭を下げた。確かに傍目からにはどっちかは分からないレベルではある。

 時間が近づき、客が入る。
 かなり盛況のようであり、客入りは上々。
 二階から客入りを確認しているのは雅人だ。
「おお、人が入っているな」
 ひょっこり兵真が入ってくると、溟と欅、雪が振り返る。
「皆さんのお衣装が凄く楽しみです!」
 わくわくしている雪に溟が微笑む。
「沙桐君の雄姿が一番じゃないのかな?」
「え、そ、そんな事はありませんよっ」
 恥ずかしそうに否定する雪の頬は赤い。
 ブザーが鳴ると、ざわめきは静まり、軽快な音楽が流れ、眩いばかりの光が溢れ、音に合わせて色とりどりの衣装に身を包んだモデル達が舞台より現れた。
 華やかに艶やかなモデル達は観客を魅了した。