【初夢】冷たく素直な恋
マスター名：鷹羽柊架
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| ■オープニング本文 ※このシナリオは初夢シナリオです。 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 この文明が発達した時代に、いまだに機械などに頼らない生活を送っている村がある。 それは一見のどかだが‥‥閉鎖的な生活を送っている村がある――この世界のどこかにある神楽村。 この村では、少々困ったことが起きていた。 「ああ、困ったなぁ‥‥」 そこで頭を抱えているのは、この村の長。よく光り輝く禿頭を押さえ、無い知恵を絞っている。 「もし。長、どうされました」 ちょうどそこへ、呼ばれてやってきた村の開拓者が長へ尋ねれば‥‥はっとしたように、皆へ向き直った。 「よう来た。まぁ座ってくれ。 早速だが、うちに伝わる『封具』の話は知っておるか」 「遠い遠い昔の話ではありますが‥‥大アヤカシを封じたものだと聞き及んでおります」 開拓者が頷けば、長は『いきなりなのだが、話を聞いてくれんか』と彼らをその場に座らせると勿体ぶりつつ口を開いた。 この神楽村は、遠い昔に大アヤカシと呼ばれる化け物どもに襲われ、 滅ぼされる寸前にまでなった過去があるという。 その大アヤカシと死闘を繰り広げたのが『開拓者』たちだ。 開拓者たちは『鏡』『剣』『勾玉』の力で、大アヤカシの力を弱めて滅ぼすことに成功した。 大アヤカシは、滅する直前、長の祖先に呪いのようなものをかけたようだが‥‥ アヤカシが何を願ったのか呪ったのかも分からず、今日まで長の血統は途絶えることなく受け継がれたのだが。 「‥‥うちの3人の子供たちに、その呪いのような災いが降りかかったのだよ‥‥」 がくりと肩を落とし、畳の目を見つめて今にも泣きそうな表情を浮かべている長。 「‥‥頼む、力を貸してくれ。開拓者の血筋なら、きっと何か方法を知っているだろう！？」 なんという無茶。なんという人任せ。 頼むと拝み倒されて断りきれなかった開拓者たちは、お子様方の様子をとりあえず見せてくださいと長に話をつけて、部屋に連れて行ってもらったのだ。 ●冷たく静かな君の為に 開拓者達は呪いにかかった子供の一人の部屋にむかった。応対してくれた乳母はほほえみを浮かべて迎え入れてくれた。 「あの、呪いにかかった方はどちらに？」 「こちらです」 開拓者の一人は乳母の様子を見て不思議に思う。 呪いにかかっているのにとても落ち着いているのだ。 「名前は折梅と申します。齢は本来は十八歳なのですが‥‥」 「本来は？」 首を傾げる開拓者に乳母はどう言っていいのか言葉に詰まっていた。 「百聞は一見にしかず。この目で確かめて下さい」 折梅の部屋に着くと、乳母が入ると声をかけた。 「いいわよ」 その声に開拓者達が一斉に顔を見合わせた。 声はどっから聞いても子供の声だ。 変声期を終えただろう十八歳には見えない。 「折梅様、開拓者の方々よ」 乳母がこちらですと、開拓者に手をさしのべた人物が折梅なのだろう。 だが、そこにいたのはどっから見ても八歳くらいの少女。 黒く細い髪はツヤがあり、髪も綺麗に切りそろえられている。ぱっちりした緑の瞳はとても澄んでいてじっと開拓者達を見つめている。 「折梅さんの妹さん？」 開拓者が現実から反らせようと声をかけるが、乳母は首を振った。 「しつれーね。わたし、妹なんかいないわよ。わたしが折梅よ」 八歳とは思えない落ち着きと声音で言った折梅らしき人物。 けれど、その物言いはクールだ。 「この方々が折梅様の呪いを解いて下さるそうよ」 「そう、がんばってね。体が大きくないとなにかと不便だし」 しかし、このサバサバした口調は可愛い気がないと感じる者もいた。 「あ、言おうと思ってたんだけど、昨日の煮物、少し味濃かったよ」 ここでズバっと言う折梅に「このタイミングでか！」と開拓者達が思ったが、次の瞬間、折梅がじっと、乳母を見つめる。 「鶏肉の味がでてて、私、あの味好きよ」 可愛らしく首を傾げてそっと微笑む折梅に乳母は「折梅様可愛いーーっ」と抱きついた。 開拓者達はこれはこれでいいのではないだろうかと思ったが‥‥事態はこの話では終わらなかった。 実は折梅の元の気性は気が強く、村の自警団の陰の取りまとめ役。 この村は何故か美形・美人度が高く、近隣の村のチンピラ紛いの連中が村の娘に悪さをしようとすると、いの一番に駆けつけては排除する。 彼女の呪いが「ただの素直クール」になった話だけがでるのは構わないが、「幼女化」が広まっては自警団の威信に関わるらしい。 「おにいちゃん、おねえちゃん、よろしくね 」 まだ初対面もあり、開拓者に対する折梅の様子はツン気味。 呪いを解くには彼女に恋心を持たせ、素直クールで留まらず、デレで落とさなければならない。 しかも幼女。 自警団の団長の戸次に話を聞けば、「慣れてくれば可愛いもんだが、確実に自警団の仕事に響く。頼む！」 パシッと手を合わせて拝まれる開拓者は「はぁ」とだけ呟いた。 そして、折梅が幼女化した話は近隣の村にきてしまっていたのだ。 近隣の村のチンピラの頭が狙っているのは村でも有名な医者志望の美人、葛。 こちらも意志のはっきりしている女性であり、何度もそのチンピラに絡まれてるがきっぱりと断っているし、無理に連れていこうとする度に自警団を引き連れた折梅に邪魔をされている。 自警団長の戸次はともかく、折梅はいるだけでも恐怖を感じるらしい。 今日こそが好機！ とばかりに気合いを入れている。 そう、今も大勢を引き連れて来ているのだ。 折梅は自分に起きている事はわかってても彼女も葛を守りたいと思っている。 ふと、一人の開拓者が気づいた。 「そう言えば、何で呪いにかかったんでしょうか」 「何か心当たりありますか？」 戸次と折梅は顔を見合わせて首を傾げる。 「この間、本気で連れ去ろうとしたから、うちにあった剣持ち出して振り回していたわ」 思い出した折梅が言えば、開拓者達が見せてくれと言ってきたので折梅はその剣がある場所に連れていった。 一見、何ともない宝珠付きの剣だが‥‥ 「‥‥中、ひび割れてません？」 「あー」 「割ったのは後で叱られてくるわ。チンピラの方、おねがいね」 しゅたっと、右手を挙げて折梅が開拓者に頼んだ。 ※だから、このシナリオは本来のＷＴＲＰＧとは関係ないから。 そこのところの線分けしておいてよ。 |
■参加者一覧
音有・兵真（ia0221）21歳・男・泰 
鷹来 雪（ia0736）21歳・女・巫 
輝血（ia5431）18歳・女・シ 
琥龍 蒼羅（ib0214）18歳・男・シ 
オドゥノール（ib0479）15歳・女・騎 
呂 倭文（ic0228）20歳・男・泰 |
| ■リプレイ本文 幼くなった折梅を見て心をときめかせたのは雪（ia0736）だ。 「なんと‥‥愛らしい姿‥‥」 初めて会うのにぎゅっと抱きついたら嫌な顔をするかもしれないと思い、雪は頑張って自制する。 「誉められるのは嬉しいよ」 少し照れつつも雪の言葉に首を傾げて答える折梅の可愛いらしさに雪はくらくらしてしまっているようだった。 「ソダ、何デ剣を使ったンダ？」 倭文（ic0228）が言えば折梅は葛を守る為だと答えた。真直ぐに見つめられた倭文はへぇと笑顔になる。 「カッコよくてイイナ」 笑いかける倭文に折梅はありがとうと言った。 膨れた腹に満足した鉄真（ia0221）は他の開拓者とは少し遅れて折梅の部屋に入っていた。 「食事、旨かった。ごちそうさま」 ぺこりと鉄真が乳母と折梅に頭を下げる。 「話はどうなった？」 鉄真が蒼羅（ib0214）に声をかけると、今、チンピラが暴れにくるから止めに行く話をしていた。 「なるほどな。じゃあ止めに行くか」 食った分は動く。きちんと恩をかえして。それが鉄真のモットーだ。 「私もいくわ」 はっとなった折梅が鉄真の後を追おうとするが、急に小さくなった身体に反射神経が追いついていないのか、折梅はつんのめってしまう。 「危なっかしいなぁ」 つまづいた折梅を抱きとめてため息混じりに言ったのは輝血（ia5431）だった。 「今はちびっ子なんだから大人の状態と同じ調子でいたら怪我するよ」 折梅と目線で輝血が言えば彼女は寂しそうに俯いた。 「でも、心配なの」 「初めて会う者に全て託すのは大変なことだろうな、しかし、危険が伴う」 蒼羅が折梅を諭せば、折梅は悔しそうな顔をする。 「守ればイイ」 そう言ったのは倭文だ。 「そうだね、言っても無茶しそうだし、そばにいた方がいいよね」 こっくりと輝血が頷いた。 「そんなこと‥‥あるかも」 少しだけ拗ねた表情で折梅が答えた。自覚はあるようだ。 そんな様子をオドゥノール（ib0479）は静かに見つめていた。 葛はよく村の境目にある森でよく薬草を摘んでいた。 この辺には使える薬草が多々あるから。 「よう、葛」 ニヤニヤと現われたのは葛にちょっかいをかけている近隣の村の男だ。 「何、また来たの」 警戒心を露にして葛が摘んだ薬草を入れた籠を庇う。 「ああ、折梅がチビになったんだって？」 ぞろぞろと男の仲間が姿を現せる。どこからか、折梅が小さくなった話が出回っているようだ。 「貴方達には関係ないわ。また問題を起こすつもり？」 きつく葛が男達に言い放った。 「別に俺達は問題を起こそうとしてるわけじゃねーし、そもそも、折梅が大人しくしてりゃこっちだって問題なんか起こさねぇし」 「折梅ちゃんが怒っているのはあんた達がこの村で悪さをしようとしているからでしょ」 「葛、今日こそ連れて行くぜ」 「私は最低限の規律を守ろうとしない貴方が嫌いよ。そんな貴方に従う義理はないわ！」 凛として言い切った葛に男は彼女の言葉を無視して葛の手を取った瞬間、男の鼻先に鋭い羽根が横切った。 「うわっ！」 男が動転して後ろに重心をずらした所、バランスを崩してそのまま尻餅をついた。 「其の娘に用カイ？ 旦那方」 じろりと不機嫌に男達を睨みつけるのは倭文だ。 「こういう事は二度と起こさせないようにするべきだな」 一歩前に出たのは鉄真だ。無言で頷いたのは蒼羅。 「今回の事、彼女は従う気はないようだ。大人しく退くのであればよし」 「なんだお前等」 男が立ち上がりながら怒気を交えた声を上げる。 「未練たらしく脈ネェ娘に纏わり付くんじゃねーって言ってンダヨ」 倭文がずかずかと歩いて男と葛の間に入る。 「いきなり現われてごちゃごちゃうるせーんだよ！」 男が倭文を殴ろうと拳を振り上げると、倭文はきっちり男の拳の軌道を読みきって避ける。右腕に巻きつけた闘布越しに空気撃を腹筋に当てると男は意図も簡単に吹っ飛び、仲間ごと転んだ。 見事すぎる転びっぷりに倭文は最早呆れている。 「どうやら一般人のようだな」 ふむと、蒼羅が言う。 いいようにあしらわれた男達は一斉に立ち上がり、開拓者達へと暴力を持って叩きのめそうと駆け出した。 「暴力をもって制するか。短絡的だな」 溜息をついたのはオドゥノールだ。 「折梅様と葛様はお守りいたします！」 雪が葛と折梅を後ろの方に手を引っ張った。 「そうしてくれ」 溜息混じりに戸次も乱闘に参加する。 まず、一人が狙ったのは鉄真だ。 他の者達が怒気を放っている中、ぼーっとして眺めていたからだ。強そうとは思えず、簡単に倒せると思ったから。 「オラァ！」 拳を振り上げて男が鉄真に殴りかかるが、その拳はそのまま空ぶってしまった。男は思いきり体重をかけていたので、空を切った腕の勢いそのままに体制を崩して地に落ちる。 「まぐれだ！」 他の男がさらに殴りかかると、鉄真は軽く地を蹴って男の横をすり抜け、背に手刀を降ろす。男は痛みに耐えられずにそのまま気を失った。 「さ、次は」 鉄真の強さに気づいた男達は他の標的を見つけようとする。 雪を見つけた瞬間、立ちはだかったのは蒼羅だ。 「どこを見ている」 静かに蒼羅が彼らを見据える。 「一人だ、やっちまえ！」 「いや、一人ではない」 男達が叫ぶと、静かな水面に波紋が広がるように通る声が横からはいる。 「こんなチビ増えたところで問題ねぇ」 ピキリと、オドゥノールの柳眉があがる。 自分をチビ呼ばわりした男を投げ倒し、オドゥノールは投げ飛ばした男の顔を思いっきり片手で掴んでは指先に力を入れる。 「ほぉ、顔が冷たいなぁ‥‥こうすれば温かいだろう」 壮絶な薄笑いを浮かべてオドゥノールが一人を拘束する。 オドゥノールの様子にドン引きした男達だが、葛に惚れている主犯格がせめて折梅を一発殴ろうと開拓者達をすりぬけた。 「止まりなさい！」 雪が白霊弾を売っても怯まなく突き進む。 ここまでコケにされて腹が立ったのだろう。輝血が即座に葛を守るが、男の目標は折梅だ。 輝血の前に風がよぎった。 まだ若い風。 「だれに手だしてんだ」 厳しい声音と共に倭文が蹴りこんで中を割った。 「一発殴らせろ！」 「女子を傷つけンナ」 そう言って倭文は男の鳩尾に空気を当てた。 「男ダロ、負けたらもう来ねェ。約束ダ」 厳しい言葉で倭文が言えば、男はがっくりと項垂れた。 そうこうしている内に男達は全員戸次や自警団に引き渡された。 「大丈夫か？」 気遣うオドゥノールに折梅はどこか戸惑ったようだった。 「うん、平気‥‥」 「そうか、よかった」 瞳を和ませるオドゥノールが見た折梅の様子はどこか落ち着かないようであった。 「どうかしたか？」 オドゥノールが尋ねると折梅ははっとなって彼の方を見やる。 「ちょっと、落ち着かないの」 自分でも驚いているのか、折梅は困ったように俯いた。 隙を見てどこかを見る折梅の視線にオドゥノールは気づいたようでもあった。 「そうか」 納得したように言うオドゥノールに折梅はその方向を見ていた。 「気になるのであれば行って確かめたらどうだ」 「‥‥そうね」 オドゥノールが提案すれば、折梅は頷いた。 自警団にチンピラどもを引き渡した蒼羅はどこか浮かない表情の折梅に気づいた。 「笛の音は好きか？」 折梅の気を紛らわす為に蒼羅が声をかける。 「ええ、好きよ」 こっくりと頷く折梅は開拓者達に心を砕いたのか、警戒心がなくなっていた。 屋敷に戻り、蒼羅が笛の音を奏でる。 静かで穏やかな笛の音は耳にとても心地よい。 蒼羅が折梅を見るとやはり心、ここにあらずと言ったようだった。 「お前の心はどこかにあるようだな」 穏やかな表情を見せた蒼羅が話しかければ折梅は頷いた。 「嘘はつかない。良いことだ」 「言っておくけど、中身は十八さいのままよ？」 言い切った折梅に蒼羅は行ってこいとだけ言い、彼女を見送った。 歩きだした折梅を見つけたのは雪だ。 「折梅様、大丈夫でしたか？」 先ほどの乱闘の事だろう。 「大丈夫よ。慣れっこだけど、この身体では初めてだからどうなるかわからなかったけど」 そう、少しは嫌な予感がしていたのだ。 葛が連れて行かれるのではないかと、身体の小さい自分を狙って殴られるのではとか‥‥ どこか心細そうに呟く折梅を見た雪はそっと目を細め、そっと折梅を抱きしめた。 優しくしっかり抱きしめると、小さな肩が震えていた。 「輝血様と白様が守って下さいましたからね。大丈夫でしたね」 「あなたもまもってくれたわ。ありがとう」 微笑んで折梅が礼を言えば、雪は笑顔となった。 「いってらっしゃいませ」 雪が言えば、折梅はまた駆けだした。 次に会ったのは鉄真だった。 「あ、あれ」 折梅がきょろきょろとしていると、彼はじっと動向を見つめている。 「さがしものか」 「そうなの」 視界に入る位置に捜しものは見あたらなかった。 「無茶をせずに済んでよかったな」 鉄真が言えば、折梅はこっくりと頷いた。 中身が十八歳とはいえ、見た目は八歳児。正直な話、あまり興味がわかないのが鉄真の感想。 しかし、今目の前にいる折梅はなんだか先ほどとはうって変わって落ち着きがない。 首を傾げる鉄真だが、なんとなく理解した。 「あいつなら、戸次と話しているぞ」 「わかったわ」 鉄真の言葉に折梅がはっと顔を上げる。 「折梅」 即座にきびすを返した折梅に鉄真が呼びかけると折梅が長い髪を翻して振り向いた。 「お前の行動は好きだ」 直球な鉄真の言葉に折梅が微笑んだ。 「ありがとう」 はっと、鉄真が目を瞬いたが、その後ろ姿はやはり八歳児。 一瞬、微笑んだ折梅が十八歳に見えたのだ。 輝血と葛は肩を並べて歩いていた。 あの騒ぎの中、葛を放ってはおけなかったのだ。 「ありがとう、守ってくれて」 葛がお礼を言うと、輝血は首を振った。 「当たり前のことだよ」 そお？ とくすくす笑う葛に輝血はどこか眩しそうに微笑んだ。 葛が笑う口元を隠している白い手は人を助けるもの。血にまみれた自分とはまるで正反対だ。 輝血の視線に気づいた葛が手がどうかしたのかと自分の手をじっと見る。 「人を傷つけるあたしとは違うなって」 寂しそうに輝血が言えば葛は輝血の手を取る。はっとした輝血が身体をこわばらせると、見つめられる視線に気づく。 「でも、私を助けてくれた手よ。私、あなたの手、好きよ」 ふわりと葛が微笑み、輝血はえも言えない気持ちに捕らわれる。 「ずっと、見ていたいな」 「私を？」 ここに住みたい。そんな願いも叶えられないのに輝血は願う。 「私もあなたといたいと思うわ」 掛け値なしの笑顔で頷く葛に輝血はむずかゆい感覚にとらわれ、俯いた。 倭文は戸次と話して誤解を解かされていた。 「いや、あいつとはなにもない。恋愛感情なんか持てねぇよ」 戸次はないないと手を振っていた。必死に友達だと繰り返し聞かされていた。 「ソウカ」 ふむと、納得した倭文が考えると、戸次が折梅の姿に気付いた。折梅の視線がどこにあるのか気付いた戸次は倭文に声をかける。 「じゃ、俺は戻る」 そそくさと戸次がその場を去った。 「倭文」 折梅が声をかけると、倭文は笑顔を見せる。 小さい見かけの折梅は幼い弟、妹達を思い出させる。 「片しタヨ」 「ありがとう」 「どういたしまシテ。二人無事？」 葛の事も口にした倭文に折梅は「そうじゃない」と言うと、倭文は首を傾げる。 「んと、私の事を女の子扱いしてくれて、守ってくれてありがとう」 「女子ダロ？」 倭文にとって折梅は女の子なのだ。だが、折梅にとってはそうではなかった。勝気な性格もあって、あまり女子扱いされる事も守られる事もなかった。 だが、倭文はしっかり折梅に伝わるように女の子扱いされたのが嬉しかったのだ。 「ふふ、もういいわ。貴方そういう人っぽいし。嬉しかったからお礼を言いたかったの」 淡々と言っている折梅だが、その表情はとても柔らかい。 「ソダ、今回のコト、何点くれる？」 倭文が少しおねだりぶったように言えば、折梅の瞳が勝気な意志を見せた。 「七十点」 その点数に倭文はがっくりと肩を落とした。 「頑張ったノニ」 「だって、百点なんてもったいないわ。貴方を知りたいと思うから、きっと、積み重なって百点が出るのよ」 「ソウカ」 屁理屈のような事を言われて、倭文はあまり納得してないが、それも有ダナと思う。 「私、貴方が好きなったわ」 きっぱりと折梅が言えば、淡い光が折梅を纏っていく。 他の開拓者達も駆けつけてその光に気づいた。 「あれは‥‥っ」 蒼羅の呟きすら光に呑まれてしまう。全員がその眩しさに目を閉じてしまった。 光が止むと、そこにいたのは十八歳の折梅の姿。 服は先ほどの物とは違う着物姿。多分、呪いをかけられる前の服装だったのだろう。 「戻られたのですね」 雪が折梅に声をかけると彼女は自分の姿を確認してこっくりと頷いた。 「ほう、美人だな」 じっと折梅を見て鉄真が素直な感想を呟いた。 「ありがとう。皆、そして倭文」 目を細めて笑いかける折梅に開拓者達はそれぞれ応えた。 「戻っテ、良かっタ」 倭文が言えば折梅は笑顔となった。 ふむと考えているのはオドゥノールだ。視線の先にあるのは折梅が壊した剣。 「直らないのでしょうか‥‥折角綺麗な剣なのに‥‥」 残念そうに呟くのは雪だ。 「いや、このままにした方がいいだろう」 折角呪いが昇華されたのだからと鉄真が言う。 「推測するからに、折梅に振りかかった呪いがあの光で解き放たれたと思われる。そのままでいいんじゃないか」 「村長も呪いを心配していたので二次被害はないだろう」 蒼羅が言えばオドゥノールが頷く。 「まぁ、葛も折梅も元気でいいんじゃない？」 ちらりと輝血が葛を見やれば彼女もにっこりと微笑む。 剣の呪いは無事に解かれた。 鏡、勾玉の呪いの行方はまた別の話―― |
