【四月】架茂のバカ殿様
マスター名:蘇芳 防斗
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/20 00:03



■オープニング本文

 何処かの惑星の何処かにある五行と言う国。
 そこには顔を白塗り、頬を紅く塗った知らない人はいない架茂と言う名のバカ殿様がいた。
『バカは架茂の為にある言葉だ』
 と誰か偉い人が言った位にバカだ、大バカだ、救い様のないバカだ、死んでも治らない程のバカだ。
 ‥‥と余り書き過ぎると黒子の集団に襲われそうな気がするのでそれはここまでにして、バカ殿が治める領地については側近の爺が主となってしっかり管理こそしていたが、肝心の当人はと言えば日々遊び呆けてばかりで‥‥とある今日とてまた、退屈を持て余しては家来達に無茶振りをするのだった。

「‥‥暇だ」
「はぁ、暇‥‥ですか」
「暇だ、誰でも良いから何かしろ」
 また何時もと変わらないバカ殿様に生返事を返す爺はやはり何時もと変わらず密かに溜息を漏らすがそれに気付く筈のない、口調と外見や態度のギャップが酷過ぎる人No.1として国内外問わず通っているバカ殿が架茂は偉そうにふんぞり返り、閉じた扇で肩を叩けば
「家来その1‥‥何でも構わん、面白い芸をやれ」
「熱湯にでも入りましょうか?」
「お前の太った体を見ても詰まらんし誘い受け自体、既に飽きたから没だ‥‥そんなお前には市中引き回しがお似合いだな」
 次いで、場に居合わせる多くの家来達が一人を閉じた扇で指すといい感じに腹が出た家来(その1)は即座に応じるが、何時ものと変わらないその内容を架茂はやらせるまでもなくばっさり切り捨てれば指を弾くと颯爽と参上する、架茂の身の回りの世話から汚い事まで一切合財を請け負う黒子集団は家来(その1)を拘束するも
「そっ、それならくるりん‥‥殿ぉー、是非とも最後まで!」
 それでも彼は懐から帽子を取り出し、泣きながらバカ殿に縋り付こうとする家来(その1)だったが、『詰まらないネタに与える温情はなし』をモットーとするバカ殿は彼の懇願を無視すれば、場が静かになってから暫く後。
「何か面白い事をやれ、家来その53」
『え、あの俺達は?』
「多分面白い事は言わないと思った故、飛ばした‥‥文句あるか」
 何事もなかったかの様に横柄な態度で別の家来を再び指せば、飛ばされた家来の悲鳴が上がる中で果たして爺が進言する。
「殿、暇潰しでしたらこの爺に一つ妙案がありますぞ」
 常日頃から何だかんだと愚痴を零しつつも、意外にこの手の話に一番乗り気なのが爺な訳で‥‥故に何時まで経っても架茂のバカは治らないのです。
「ほぅ、一体何だ? 但し、詰まらなければ爺とて‥‥」
「過去のば‥‥殿様が作るだけ作って放置したままの巨大双六を解放して適当に参加者を募り、適当な賞品で適当に競わせれば良いのでは?」
「そう言えばそんな物があったか‥‥すっかり忘れていたな」
 ともあれ、爺の進言に食いつくバカ殿へ彼は巨大双六にて興じてはと言うと、立ち上がる架茂ではあったが
「があれ、微かに残っている記憶通りなら‥‥今一つ盛り上がりに欠けたと思うが」
「ではその辺りもついで、参加者に案を出させれば? 改修自体も余り時間を掛けずに対応も出来ましょう」
 幼少の頃に遊んだそれを思い出し、余り楽しくなかったなとかマスにあるイベントの悉くが罰ゲームだったんじゃなかったかとかトラウマになったのもあるんだけど云々を思い出すが‥‥続く爺の提案を聞けばバカ殿は自身なりに精一杯思案すれば、やがて解を導く。
「ふむ‥‥暇なのよりは良いか。では金に糸目をつけず早速手筈を整えろ。すぐに出来ない奴は‥‥」
「ははぁっ!」
 すれば響いたバカ殿の命を受け、爺を筆頭に家来達は今日も架茂のバカ殿様が遊びに付き合うべく頭を垂れて後、動き出すのだった。


※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。


■参加者一覧
遠藤(ia0536
23歳・男・泰
安達 圭介(ia5082
27歳・男・巫
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
ガルフ・ガルグウォード(ia5417
20歳・男・シ
詐欺マン(ia6851
23歳・男・シ
瑠枷(ia8559
15歳・男・シ
アリス・ド・華御院(ib0694
17歳・女・吟
アーネスティン=W=F(ib0754
23歳・女・魔


■リプレイ本文

●悲喜交々
 架茂様が住む大きなお城に招かれたのは八人の勇者達。
 爺が頑張って誰彼問わず城下町にお触れまで出して、これだけしか集まらなかったのは過去にバカ殿があれやるこれやる度に人々を召集しまくり、散々な目に遭ったその経験があるからこそ。
 むしろ、八人も集まったのは僥倖とも言えよう。
「これはまた、大きな双六ですね」
 その、城を初めて訪れた八人はと言えば眼前に広がる巨大双六を前にただ唖然とするもアリス・ド・華御院(ib0694)が思ったままを率直に言葉にする中で一行へ視線を注いでバカ殿様、凄い偉そうにふんぞり返って皆を労う。
「爺に何と言われて此処まで来たか分からんが、まぁご苦労だな」
「折角の機会だ。殿様にご挨拶しなければと思いっ!」
「家来にお菓子で釣られ着いてき‥‥ごふん、ではなく話を聞き面白そうだったからな!」
「賞品には興味無いが、こう言う稀有な体験はしておくに限る。目一杯楽しませて貰おうと」
 すればその態度を前にしても遠藤(ia0536)とガルフ・ガルグウォード(ia5417)、アーネスティン=W=F(ib0754)が立て続けに己の意思持って此処まで足を運んだ事告げれば、興味なさげに鼻だけ鳴らして応じるバカ殿ではあったが
「麿の名は詐欺マン。『愛と正義と真実の使者』でおじゃる。故に殿様でもぶん殴ってみせるでおじゃるよ」
「黒子‥‥」
「嘘でおじゃる。そして、飛行機だけは勘弁でおじゃる!」
「分かった、チャーターしておこう」
 一人、堂々と前に進み出て断言する詐欺マン(ia6851)には視線を投げて後、敵対行動と認知して指を弾こうとするが、前言撤回されれば指は引っ込めながらも彼の要望通り飛行機の手配は即座取る様、爺へ促せば早速絶叫を木霊させる詐欺マン。
「拝啓姉さん、何だか大変なことになりました‥‥実は今日、寝坊で遅刻しました。春って怖いですね」
 そんな光景を傍らに安達 圭介(ia5082)は一人ブツブツと、手元に持つ文へ視線を落とし何やら認めていた。
「確かにそれは申し訳ないと思うんです。その罰は甘んじて受けます‥‥ですが、その罰がこれとは如何でしょうか」
 何処のホテルマンだとか突っ込んではいけません。現実逃避したくなる時だってあるんだから、人間だもの。
「なあなあ、そう言えばゴールの景品ってどんなもんなんだ?」
「それは最初に明かしても面白くあるまい、故に秘密だ」
「ちぇー」
 と一行のアイデアを必死に巨大双六に組み込んでいる黒子を眺めつつ、瑠枷(ia8559)が響かせた問い掛けにはしかし、バカ殿の癖に納得の行く答えを提示すると残念がる彼だったが
「良く分かりませんが、一番にゴールしてご褒美を頂きますよ‥‥ペケ、頑張ります!」
 むしろペケ(ia5365)がやる気を燃やした、丁度その時‥‥架茂のバカ殿様が元へ一人の黒子が駆け寄れば、その耳元に一言だけ囁く。
「準備、整いました‥‥」
 すれば他の黒子達、全員を振り出しの位置に移動させるとバカ殿の第一声を持って遂に巨大双六は解き放たれた!
「それでは‥‥始めて貰おうか」

●人間双六、スタァーット!
 と言う事で先ず決められる、サイコロを振るその順番‥‥仲良く平等に、と言う事でじゃんけんと言うベタな手法を取って決めればその一番手がアーネスティンはサイコロを振ると‥‥出た目は『恋のお話』。
「略してー、コイバナー! ってちっがーう! サイコロからしてちっがーう!」
「突っ込めなかったら即退場、と思っていたが‥‥その程度はやるか」
「‥‥まぁ、それなりに」
 そして思わずノリ突込みを披露するアーネスティンへ架茂、微動もせずにそれだけ言えば今更恥ずかしくなってか、ごにょごにょと言って後に爺から差し出された正規のサイコロを放ると‥‥出た目は『6』。
 そのマスまで進み彼女、特に目立って何かある訳でなく爺へ次の指示を尋ねる。
「それで、此処に何かあるのか?」
「そのマスの上にある座布団を捲って貰えますか?」
「紙が一枚あるが?」
「何と書かれているか、読み上げて貰えますか?」
「『は』、と書いてある」
 マスの上に敷かれている座布団を言われた通りに捲れば一枚の紙片を見付け、やはり指示の通りに書かれていた文字を読み上げれば‥‥来た時にはなかった大仰なパネル式の電光掲示板が『は』のパネルを開く爺。
「何時の間に!」
「これ位、バカ殿の財力を持ってすれば朝飯前どころか前日の夕餉前ですな」
「爺、お前も混ざれ。命令だ」
「で、『は』って何だ?」
 余計な一言も言ったので爺も皆の輪の中に止むを得ず加わる中でアーネスティンの疑問へ、架茂は薄ら笑いを浮かべ彼女へ応じる。
「次のお前の手番までオカマに熱い抱擁を、か‥‥何ならベーゼもつけるが?」
「いらねーっ!」
「そう遠慮するな、中々ない経験だろう」
「うきゃーーー!」
「さっさと次へ行くぞ、悪くない光景だが色々と都合もあってな」
 都合については察して貰うとして、その光景に恐怖しつつも二番手の瑠枷がサイコロを振れば‥‥出た目は『3』。
「‥‥何か露骨に仕込みのあるマスだな」
 オカマに抱擁されているアーネスティンより手前のマスは既にその形状が酷く大きく、彼でなくとも容易に察する事が出来るが進まなければ双六は成立せず、已む無くそのマスへ歩を進めて瑠枷はマスをめくるとそこには、湯気を立てている液体で満たされた湯船の様な物が埋め込まれていた。
「これって、もしかして温泉‥‥?」
「あぁ、温泉だな。暫く休んでいればいい」
「ぎゃーっ、はずかしーっ!」
 それを見て尋ねる瑠枷に架茂が素っ気無く応じれば、彼は顔面を紅潮させる。

 彼が頬を赤らめた、その理由を説明しよう!
 この温泉は一定ターンが休みとなる代わり、あるターンになると適当なマスまで前進出来るのだが、その発案者は瑠枷本人だったりするから何と言う運命の悪戯!

 でもしょうがないから温泉に浸かる他にない彼は顔の半分までを湯船に埋め、照れ隠し。
「ふっ、随分詰まらないマスに止まったな瑠枷‥‥だが俺は違う、良く見ていろよ!」
 そんな醜態を晒している彼を見て、一方的なネタ対抗心で脳内の殆どを占めているガルフが高らかに告げればサイコロを投げると、瑠枷より大きな『5』の目を出せば行くべき先にある座布団に辿り着き、それを捲ってその文字を告げる。
「『ご』だってよ」
「黒子」
「ぶるぺぱぁっ!」
 そして直後、開いたパネルを見るや架茂は指を鳴らすと彼目掛け全力で金だらいを投げつける黒子‥‥しかも縁の方を向けて投げる辺り、最早お笑いではない気がする。
「‥‥金だらいの扱い方が違うと思うのですが」
「普通に降らせても詰まらんだろう」
 その光景に即座、突っ込んでみるアリスではあったが返ってきた答えを聞けばもんどりうつガルフ以外の全員は掌を合わせる。
「どうやら思った程の事はなさそうでおじゃるな、それならば‥‥」
 さて、それでも今までの光景は想像の域を極端に出た物はなく詐欺マンは果たしてサイコロを優美な振る舞いにて放れば‥‥出た目は『1』。
「『じ』でおじゃる」
「どれ」
 件のマスに着いて後、捲って出てきた紙片に書かれている文字を言えば開いた4枚目のパネルに書かれている内容を見て王は近くに転がっていた何かを握り、そして押す。
 ずぼむ!
「‥‥ごほ」
 そして直後、そのマスのみピンポイントで爆発すれば黒煙が晴れて後‥‥現れた詐欺マンは正しく真っ黒で、咳払いと同時に黒い吐息出せば感心するバカ殿。
「ほぉ、良く無事だったな。架茂式97型お笑い用炸裂火薬『発破くん伍号』を喰らってその程度で済むとは」
「その程度‥‥?」
「本来ならあられもない姿になった上、パンチパーマになる筈なのだが‥‥焦げただけとは。詰まらん、増設するか」
「‥‥是非にでおじゃるよー!」
「「「「ちょっと待てぇー!」」」」
 その発言を前、首を傾げる詐欺マンへ仕掛けてあった火薬の性能を言えば早くも己を弾けさせる詐欺マンの同意にその他全員の制止をバカ殿は右から左へ受け流し、とっとと黒子へ火薬の増設を行なわせるのだった。

 しかし、これはほんの序章でしかない事をまだ皆は知らない‥‥本当のお笑い地獄はこれからだ?


 果たしてそれから、どれだけの時間が経っただろうか。
 まぁともかく気付けば日が沈み掛けている頃合になってもまだ、巨大双六との雌雄は決していなかった‥‥最初から中々に厳しい戦いも順を追えば追う程に激しく、また色々な意味で描写も出来ないので割愛させて頂きますすいません。
 だがしかし、上がりのマスもいよいよ目前に迫ってきた今。
「じ、爺は此処まででござる‥‥お帰りなさいませ‥‥ご主人、様‥‥バタ」
 何処かのマスでミニスカメイド服に加え、無駄に長い褌まで強制的に着用させられた爺はその志半ばで主人を歓迎する台詞を最後に吐き、遂に倒れ伏す‥‥そりゃ一般人だし年も年だから無理は出来ませんよね。
「爺、爺ーっ!」
「あらあら」
「お前の死、無駄にはしないぞ‥‥」
 果たしてバカ殿とお揃いの白粉に染め上げられた瑠枷が己のいたマスを飛び出し老体の身をがっくんがっくん激しく揺さぶると、穏やかな笑み浮かべて眺めるアリスの傍らでアーネスティンは拳を固めて必ずや巨大双六を制覇してみせると誓うが
「早くそれぞれのマスに戻らなければ、失格とみなして『押すなよ!』と言っても押してくれない熱湯風呂へ招待するが‥‥」
「まぁまぁ」
「くっ」
「何と言う外道‥‥」
 しかしバカ殿は悪辣な表情を湛え、倒れた爺を気にする素振りすら見せず冷徹な宣告を言うと、コロリと笑うアリス以外の全員はその鬼畜っぷりにそれぞれ、先までいたマスに戻りながらもバカ殿への殺意を滾らせる。
「えと、それじゃあ投げますよ」
 がそんなシリアスな空気を普通にスルーして声を響かせたペケ、何故か彼女の傍らには黒子が数人、既に付き添っている‥‥と言うのも、事ある毎に胸元が肌蹴たり等と色っぽい付随イベントも発生すればそりゃ、緊急での別働隊もつく訳で。
「‥‥頼むから早く終わらせて下さい」
 バカ殿こそ最初はハァハァもしていたが、終盤となった今では命の危機を感じる程に血が足りなくなっているらしく、彼女へ本気に土下座なんかしてみたり。
「『3』ですよ、っと」
 しかしそんな事、彼女は見てもいないし聞いてもいなかった。
 と言う事で進んだその先は上がりのマスより二周り以上も大きなマスで明らかに何か仕込まれている、大きな何かが。
「えー‥‥これは?」
 果たしてペケの問い掛けに黒子は応じる代わり、そのマスを開放すれば‥‥直後、競り上がって来たのは簡易型ロケットか。
 え、と首を傾げる彼女を気にせず黒子は彼女を手早くそれに縛り付けると、点火ボタンをポチッとな!
「‥‥っあーーーー‥‥」
 そしてロケットと共に空の高みへ打ち上げられるペケだったが‥‥やはり運命の悪戯か、まだ最高高度まで至らない内に彼女を縛る紐がゆるりと解ければロケットとは別、降下を始めればその途中で衣服を引っ掛け、盛大に胸が‥‥暫くお待ち下さい。
「何かお世話になりっ放しで、スミマセン‥‥」
 数分後、振り出しに戻ったペケは気まずげに各所へ頭を下げるも主に気恥ずかしさやら何やらで男性陣とは視線が合う事はなく。
 因みに架茂は遂に輸血を受け始めたので、それ所ではなかったり。
「も、もういやですぅ〜☆」
 とその次に言ったのは圭介‥‥複数の口調変化イベントマスに止まった末、上がりに辿り着くまではそのままと言う事で今に至っています。
「‥‥は、早くやれ」
 だが彼の泣き言はバカ殿によってはどうでも良い事で、何とか声を捻り出しつつもあっさり一蹴すれば泣く泣くサイコロを投げる彼は出た目の通りにマスを進むと
「こ、これはぁ〜‥‥☆」
 頑張って可愛らしく言う圭介のその眼前には、並々と熱湯が満たされた透明の湯船が主役は俺だ、と言わんばかりに鎮座していた。
 いや、開始直後にそれだけは既にそこにあったから皆気付いていたんだけど、お約束と言う事で!
 無論、圭介はと言えば遂に来るべき時を目前としてたたらを踏むが‥‥背後から強烈なバカ殿プレッシャーを受ければ渋々湯船へ向かうと落ちていた一つの台本を読んで後、彼は言った!
「おっ、お‥‥押さないで下さいねっ☆」
 お約束キター!
「そこまで言われては‥‥!」
「押せと言っている様なものでおじゃるよ!」
 と言う事で、湯船の淵を掴みフルフルしている圭介の下へ褌マッチョに抱擁されたまま未だ元気な遠藤が彼らを抱えつつ駆け出せば、お笑い火薬の悉くを踏んで半ば炭と化す詐欺マンも駆けると揃い彼へ突撃し‥‥後は諸共、湯船にドボン!
「ぎあ、あっちー!」
「何で押したんですかーっ☆」
「押すなでおじゃるー!」
 と湯船でもがく彼らにしかし予め命じられていた黒子は三人を湯船から出さない様に押さえつけたり、熱湯を追加したりとやりたい放題。
「まだ遠いですが、頑張りますよ?」
 しかしそんな光景を目にして衣装チェンジに鰻風呂やロシアン大福を乗り越えても尚、平然としているアリスはおっとり笑んでサイコロ投げれば出た目に従い、進んだその先。
「あら、これはもしかして‥‥」
 上がりからは一番一行の中で遠いマスではあったが、そのマスに置かれていた紙片の文字を読み、電光掲示板と照らし合わせれば恥ずかしげに視線を俯けて頬を染める彼女。
「な、何がー‥‥ぐぼぼぼ」
 未だ湯船で足掻く遠藤が遂に力尽き、熱湯の中でプカリ浮く中でアリスは手にした紙の文字を読み上げるのだった。

●果たして勝者は!
「‥‥誰だ、こんな落ちのない詰まらんイベントを仕込んだ馬鹿は」
「私です」
 城の片隅にある、総檜造りの天然ラジウム露天混浴風呂(ポロリはないよ)に浸かりながら問い掛けた架茂へ応じたのは、やはりアリスだった。
 あの時、彼女が引いたイベントとは自ら考案した『全員ゴール、お花見宴会へ突入』と言うある意味、バカ殿封殺の究極手段が一つだった訳で‥‥架茂が不機嫌なのは当然と言えば当然だが
「楽しい経験をさせて頂きました、ありがとうございますね?」
「‥‥むぅ」
 桜舞い散る中、微笑んで言う彼女にはそれ以上厳しく迫る事は出来ず渋面を浮かべる彼。
「けど結局、賞品って何だったんだろうか」
「酒池肉林‥‥さりげに罰ゲームの臭いがするね。が今となっては知る機もなく、残念だな」
 その傍ら、何とか三途の川からの帰還を果たした遠藤の疑問が響くと桜を見上げながら呟いたアーネスティン、直後に失言と気付くが‥‥好機を見逃す筈がないバカ殿は嬉々として叫ぶのだった!
「残念か! ならば今回は特別に皆へやろう‥‥優勝賞品の酒池肉林をな」
 それから後がどうなったかは、ご想像にお任せするとしてバカ殿の高笑いと皆の絶叫が響く中、巨大双六大会はめでたく盛況の内にその幕を下ろした。