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■オープニング本文 その男は窮地に立たされていた。 「あたし、キレイ?」 「……は?」 仕事からの帰り道。先を急ごうと普段通らない山道を進んだのがいけなかった。 「正直に言っていいのよ。あたし、キレイでしょ?」 男が暗くなった山道を歩いていると、突然変な女が出た。下着かと思うような露出の高い服を着て、くねくねしながら喋る。 「……………はぁ」 「そう言ってくれると思ったわ。じゃあ、遠慮なく。大丈夫よ、気持ちよくしてあげる」 「は? あ、あの」 「ちょっと待ったあああ!」 男が戸惑っていると、更に変な少女も出た。こちらは長いレースたっぷりのスカートを何枚も重ねて着ているような、恐ろしい厚着である。 「抜け駆けしてるんじゃないわよ!」 厚着少女が露出女に駆け寄り、ものすごい勢いで怒鳴りつけた。 「抜け駆けなんてしてないわよ」 「してるでしょ!? 今、こいつにキレイかどうか訊いたわね!?」 「うるさいわね。そんなこと訊いてないわよ」 「ちょっと、私の地獄耳を舐めないでよ」 「舐めないわよそんなもん。汚いわね」 「こっ、言葉のあやでしょっ!?」 何がどうなっているのかよくわからないまま、男はかかわりあいになりたくないとばかりにソロソロと後ずさった。こんな人通りもなく暗い場所で、この会話。怪しすぎる。 だが二、三歩下がったところで厚着少女がすごい勢いで男のほうを向いた。 「ちょっとあんた!」 「は、はい」 「私のほうがキレイでしょ!?」 「……へ?」 イッタイ何ガ問題デショウ? 男は凍りついた頭で考えた。 キレイ? キレイかどうかが今の状況で大事なのか? こんな山奥で、どんなアヤカシが出るともわからないのに――。 そこまで考えて、男は別の意味で凍りつく。 「無駄よ、この人はあたしをキレイだと言ったの」 「あーっ! さっきはそんなこと訊いてないって言ったくせに!」 「何のことかしら?」 「無効よ、そんなの! 私だってお腹空いてるんだから!」 「駄目、決めたでしょ。キレイなほうが権利があるのよ」 露出女が真っ赤な唇の端を持ち上げてみせる。 「先に血を吸う権利がね」 やけに赤い唇の間から、いやに目立つ二本の白い歯。 「……う……あ……」 男は思わず背を向けて走り出したが、数歩ほどで肩をつかまれ凄い力で振り向かされた。 そこには印象的な赤と白。 「ねぇ、じゃあもう一度訊くわ。――あたし、キレイ?」 翌日、山道でカラカラに干からびた男が発見された。 左右の首筋に噛みあとらしきものが視認できた為、開拓者ギルドに連絡が入り、新たな依頼が貼り出された。 更に犠牲者が出る前に、速やかに退治してほしい。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
月酌 幻鬼(ia4931)
30歳・男・サ
闇野 ハヤテ(ib6970)
20歳・男・砲
エルレーン(ib7455)
18歳・女・志
香(ib9539)
19歳・男・ジ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔
ジョハル(ib9784)
25歳・男・砂
エリアス・スヴァルド(ib9891)
48歳・男・騎 |
■リプレイ本文 ● 「どちらが綺麗かを争っとる様どすな」 華御院 鬨(ia0351)が小首をかしげて言った。山道には場違いなほどしとやかに――茂みの陰にしゃがみこんでいる。 依頼が開拓者ギルドに貼り出されてから数日だが、一番近い村では既に三件の被害が出ていた。一人だけ、同行者が襲われているところを逃げて無事だった初老の男性がいるが、彼の話ではあられもない格好(体を覆う布地が少ないということらしい)の女性と何枚も服を着込んだ少女の二人組が、自分達が綺麗かどうかを質問してから襲ってくるようだ。噛みあとということから、女性型の吸血鬼と思われた。 男性の囮を立てて吸血鬼をおびき出し、奇襲をかける。 それが開拓者達の作戦だった。 「折角やし、どない綺麗なのか、演技の参考に拝ましてもらいやす」 華御院が同じようにしゃがみこんでいる面々を見回した。しとやかだが華御院はれっきとした男性だった。その容貌から、真っ先に囮候補から外された人物である。 エルレーン(ib7455)がやけに興奮したように『アヤカシなのに』『デレデレしちゃって』とブツブツつぶやいている。少し違うところに興奮のポイントがあるのかもしれない。 「手当たり次第に吸血すればいいものを、わざわざ容姿を確認するなんて随分可愛らしい心のアヤカシだね」 ジョハル(ib9784)がくすくす笑いながら、松明を数本、地面に並べて確認している。今まで吸血鬼が夜間にしか活動していないようなので、自然、奇襲も夜になった。隠れている間は灯りは使えないが、戦闘になるとどうしても自分達には明るさが必要だ。すぐに使えるよう、準備は怠らない。 同様に雁久良 霧依(ib9706)も自分の武器『栄光の手』を点検している。彼女の武器は先に燭台がついているので、そこにある蝋燭に火を灯す予定だった。 徐々に薄闇が降りてくる。 雁久良が突然、自分の上着をごそごそとまさぐり始めた。 「何しとるん?」 香(ib9539)が雁久良を横目で見て、興味なさそうに訊く。 「皆が吸血鬼に魅了されまくったら、自分の胸をはだけて見せて、皆を正気に戻すわ♪」 「……………」 嬉しそうに告げる雁久良に、誰も何も言えない。 「……そろそろお喋りはなしだ。気ぃつけろ、今回そこらのアヤカシと思わん方がいいかもな」 月酌 幻鬼(ia4931)がため息をついて皆に釘をさす。 「人語を理解するアヤカシは強いぞ」 闇野 ハヤテ(ib6970)はことさら普通を装って離れた山道を歩いていた。 既に辺りは暗く、手には松明を持っている。 (自分が綺麗か聞く時点で不愉快だよなぁ……) アヤカシへの嫌悪感をあからさまに顔に出して、それでも囮としての役割を果たそうと、薄く笑みを浮かべながら地面を踏みしめる。 ぱきん。 靴の下でやけに大きく小枝が折れた音がして足元に目をやり、再び顔を上げると小さな背中が見えた。 (……アヤカシ?) その背中は怯えたように振り返り、走り去ろうとする。 「待って!」 闇野が思わずその背中に声をかけた。 「君、こんなところで一人?」 おずおずと近寄ってきたのは少女だった。涙の潤んだ瞳で、闇野を見上げてくる。 「あの……み、道に迷っちゃって、暗くなってきて……」 くらりと闇野の視界が揺れる。 何枚も服を着込んだ少女は、それでも寒いかのように自身の肩を抱いていた。 (普通に見えるけど……アヤカシ、なのか?) 一瞬迷ったが、まぁいいか、と考え直す。 アヤカシだったら倒せばいい。 違うなら、保護しないと危険だ。 「送っていってあげるよ。一緒に行こう」 闇野が曖昧な笑みを浮かべると、少女はホッとしたように微笑んだ。 (おいおいおい、大丈夫なのか?) エリアス・スヴァルド(ib9891)は闇野の後を尾行しながら、心の中で頭を抱えた。 吸血鬼がどこに潜んでいるかもわからず、どのように獲物の位置を確認するのかもわからないため、エリアスは仲間と分かれて警戒しながら闇野を窺っていた。囮をするために、闇野は武器を携帯していないのだ。 背格好からしてどう見ても吸血鬼の片割れだが、先を行く二人は仲睦まじく談笑している。 (演技なのかもしれないが……) 何かあったらすぐに出て行けるよう適度な距離を保ちつつ、二人の背中を追いかけていると、目印の岩が見える。 幾分エリアスが気を緩めた時に、前方で空気が動いた。 「ソフィヤ、どうしてあたしを呼んでくれないのよ」 黒い下着にブーツを履いただけのような格好の、スタイルの良い美人がふっと闇野達の前に現れた。 「美味しそうな匂いがぷんぷんするじゃない」 「あ、レイラにもわかっちゃった?」 闇野の隣の少女が、先程までとはがらりと変わった口調で美人に答えた。 アヤカシだ。 闇野は多少の失望を覚えつつも、仲間が隠れている場所まで連れてこれたことに安堵した。 「あたりまえじゃない。これだけ強烈に匂いがすれば」 「最近、お腹が空いて一気に食べ過ぎちゃったから、まとめて飼っておいたらいいと思わない?」 「まぁ、一度に全部は食べられないだろうけど……」 闇野の胸に嫌悪感が湧き上がる。 「案内してくれてありがとっ」 少女はくるりと振り向くと、闇野に向かってにっこりと微笑む。 「ご馳走がいっぱいいるのはわかってたんだけど、一箇所にまとまってくれたほうが捕まえやすいから助かっちゃった」 闇野の表情が心持ち強張った。 ソフィヤは素早く闇野から離れてレイラの隣に行くと、再び闇野に微笑みかける。 「じゃあ、お約束だから」 「ええ? これだけたくさんなら、順番なんてどうでもいいんじゃない?」 「よくないもん。口のきけるうちに答えてもらわなくちゃ、決められないでしょ?」 「そうだけど」 レイラが眉根を寄せて不服そうに闇野に向き直った。 「まぁいいわ、お約束だから。――あたし、キレイ?」 ● 「暗ぁてよぉ見えへんけど、敵さんホンマに美人なん?粘着質な雰囲気しか分からんわぁ」 香が思わずつぶやいたのを月酌が手で制する。 闇野がにやりと笑って合図の松明を投げ捨てた。 誰もが飛び出そうとしたその時、レイラが闇野の懐に飛び込む。 「油断しすぎ」 レイラは華やかな笑みを浮かべると凄い力で闇野の肩をつかみ、牙をむき出した。咄嗟に振り払おうと出した右手にレイラの牙が食い込む。痛みというよりは腕に走る衝撃に、闇野の視界が一瞬白く染まった。 後方に潜んでいたエリアスが両手に十字剣『スィエールイー』を構え、レイラと闇野に割って入った。レイラが飛びのくと、素早く闇野を後方へ引きずる。 「……素早くなったと思ったけど、まだまだね」 「あんたと一緒にしないでちょうだい」 レイラが唇をぺろりと舐めてソフィヤに答えた。アヤカシでなかったら扇情的と言っていい仕草だ。 吸血鬼と闇野の間に、隠れていた開拓者達が立ちふさがった。 華御院が緊張した面持ちで口を開く。 「お二人とも綺麗かて聞かれている様どすが、どちらが多く綺麗ゆわれた回数が多いんどす?」 華御院の横に無言で月酌が立つ。長巻『松家興重』をいつでも抜けるように、手は柄に置いている。 「どっちかしらね?」 「さぁ? 私が先に食事したのって、何回あったっけ?」 「覚えてないわよ、そんなの」 吸血鬼達が開拓者にペースを合わせてくれるように、のんびりと受け答えをする。 香がさりげなく闇野の前に立ち、彼の姿を吸血鬼から隠した。エルレーンが闇野の荷物から薬草を取り出し、手早く噛みあとに応急処置を施す。 「……めっさ重いんやけど」 香は後ろ手に闇野に武器を手渡すと、面倒くさそうにつぶやく。だが闇野が微かに笑ったのを見て内心安堵していた。 ジョハルと雁久良は手早く用意していた松明に火を灯すと、地面に突き刺した。雁久良は更に栄光の手にも火を移す。 開拓者達の様子を見て、レイラが面白そうに華御院に告げる。 「あたし達は別にキレイさを競ってるわけじゃないの。単に食事の順番を決めてるだけよ」 「ああ、そうどすか」 華御院が更に声を張って、普段の舞台稽古で鍛えた艶のある声で言い放つ。 「でも、どない綺麗なんか思うたら、よう見たら肌を露わにしとるだけやないか。なんやがっかりどすわ」 手に持った黒夜布『レイラ』を吸血鬼のレイラに放った。白い露わな肌についた黒い傷。 レイラの空気が固まった。 「おしゃべりのしすぎね、坊や」 「ちょっとレイラ、落ち着きなさいよ!」 「ああ、臭ぁ」 香がソフィヤの注意を自分に向けさせると、『バイラオーラ』を使って魅惑的に舞い、強制的に視線を釘付ける。 「醜い雌豚ん為に金にもならん舞い踊るなんて、自分やっさしいのぉ」 ひらひらと舞いながら少しずつソフィヤをレイラから離すと、毒づきながらも香は仲間が攻撃しやすい位置に誘導していく。 「悪い子にはお仕置きはが必要よ♪」 雁久良がソフィヤのお尻めがけて『ホーリーアロー』を放つ。聖なる矢は過たず命中したが、そのせいでソフィヤの視線が香から外れてしまった。 「……やってくれるじゃない」 ソフィヤは言い捨て一瞬で雁久良の傍まで移動すると、反動をつけて彼女の頭を殴りつけた。咄嗟に武器を掲げて庇ったものの、衝撃は大きく雁久良は地面に倒れ付す。だが雁久良に手をのばしていたソフィヤは、ジョハルが『黒牙』を撃つ一瞬の気配を察して飛びのいた。 命中こそしなかったものの、顔に一筋、掠った痕。 「女の子の顔を狙うなんて最低」 ジョハルに向かって移動するかと思えた矢先、ソフィヤの足元の石が爆ぜた。闇野が右手を庇いつつ、長銃を構えている。 すっと顔から表情が消え、ソフィヤが闇野の方を向く。 「弱った獲物から狙っていくのは定石よね」 エルレーンが闇野の手当てを終えてレイラに向き直ったとき、彼女の頭は真っ白になった。肌を露わにしているからこそわかる、豊かに揺れる胸。 「う、うぎぎ……」 華御院が黒夜布で吸血鬼を傷つけていることも、その肌に少しずつ傷がついていっていることも目に入らない。 「ふ、ふふ……ころす! ころすころすころす!」 「な、何だ!?」 突然『黒鳥剣』を構えて勢いよく飛び出してきたエルレーンを見て、長持を振るっていた月酌が驚いて自身の武器を引く。 「ひゃっはー! 『あたし、キレイ?』だってぇ!? 笑わせるんじゃないよぉ!」 「何、この子?」 逆上して切りかかるエルレーンに、幾分レイラも引き気味だ。 「……何かあったのか?」 「さぁな……」 戦いの最中、月酌とエリアスが緊張感なくつぶやく。 だがエルレーンは『紅焔桜』で能力を上げていても逆上している分あまり敵を傷つけることもできず、月酌は再び長持を構え『払い抜け』を使って素早くレイラの胴に切りつけた。エリアスも一度下がれとエルレーンに告げると、両手の剣を素早くひらめかせ、吸血鬼の肩に傷をつける。 「エルレーンさん、どないしやした?」 華御院が声をかけたが、エルレーンは自分の胸を見てため息をつくだけだ。 ソフィヤの視線が闇野を捉える。 雁久良は『アイヴィーバインド』で精霊に呼びかけると、地面から蔦がするすると伸びてきてソフィヤを絡め取った。ソフィヤは引きちぎろうともがくが、魔法の蔦はびくともしない。 ジョハルがソフィヤの顔をめがけて、再び黒牙の引き金を引いた。頭を打ちぬいたかと思ったが、ソフィヤは自由になる頭を素早く動かして直撃を避ける。吸血鬼の耳が吹き飛んだ。 「……っ!」 ソフィヤは一度つらそうに目を閉じると、ジョハルに可愛らしい笑顔を向けた。 「私を傷つけるの?」 無邪気そうに尋ねるその仕草は愛らしかったが、ジョハルは隠し持っていたダーツを握り締め、痛みで魅了されないように耐えた。 「ソフィヤ……残念だけれど俺は君よりもずっとずっと魅力的な女性を知っているよ」 今はもう二度と会うことのできない面影を思い出し、再度短銃に弾を装填する。 ソフィヤは狂ったようにもがくが、蔦は更にぎりと締め付ける。 「可愛い顔にごめんね」 黒い羽の幻影が舞い、黒牙が火を噴く。 ソフィヤだったものは、さらりと崩れて宙に舞った。 華御院が『紅焔桜』と『白梅香』で桜色の燐光と梅の香りと白く澄んだ気を纏い、レイラを浄化するように華麗に切り刻んでいく。その切られたあとからは、瘴気が空に溶けていった。 「うちのレイラの方が綺麗やろ。そないな美しさやしたら、男のうちにも勝てまへんどす」 華御院が艶やかに微笑む。 「頭を潰すのは有効みたいだな」 「仮にも女だから、顔はなぁ……一思いに首をスパッといくか」 エリアスと月酌が話している最中、エルレーンが息を一つ吸い込み、再度『円月』を使ってレイラに切りかかる。だがわずかに狙いが逸れて右腕を切り落としたのみだった。 そこをエリアスがすかさず『スタッキング』でレイラの至近距離に接近し、『ポイントアタック』でダイレクトに首を狙う。 だがレイラも必死だ。落とされた右腕を庇いながら後ろに飛びのく。 しかしそれを狙っていたかのように、レイラが飛びのいた位置に月酌の長持が追いついた。 素早くエリアスが横に飛んで、月酌に攻撃を譲る。 「お前さんは確かに美人だ」 首をとらえた手ごたえを感じ、月酌がレイラに呼びかける。 「だが次からは自分から聞かなくても美人と言われるようになろうぜ? じゃあ、また何処かでな……」 そのまま刃を横薙ぎにする。 崩れ散る時、レイラが微かに笑ったように見えた。 ● 「やだやだ、相手がアヤカシでも、おっぱいボインボインだったらデレデレするとか……男の人って、これだからやなのっ」 堰を切ったように叫びだすエルレーン。 その場の男性陣は申し合わせたように目を逸らす。 「心配しなくても、世の中には色々な嗜好の人がいるわよ♪」 胸の大きな雁久良がなかなかにズレた慰めを言った。むー、とむくれるエルレーンの頭を撫でる。 「女の姿してるのとやるのは寝覚めが悪ぃ。帰って一杯やっか……」 月酌がため息をついて、ぼそっとつぶやいた。 「俺も一緒にいいか? 美女に乾杯しよう」 エリアスが月酌の隣に立ち、にやっと笑う。その横で闇野に肩を貸しながら、香はぶっきらぼうに告げる。 「闇野、ホンマに油断しすぎ」 「香くんさぁ……性格悪いでしょ」 「落とすで」 くっくっと笑う闇野は案外楽しそうだ。 「あまり女形の演技の参考にならんで、残念どすわ」 華御院は一人ぶつくさ言っていた。アヤカシが本当に演技の参考になると思っていたらしい。 ジョハルは何も言わず胸の首飾りに手をやった。 立ち止まって、月を見上げる。 「ジョハルさん?」 華御院がやはり立ち止まって声をかける。 「ああ、はい」 ジョハルは微笑むと再び皆と並んで歩き出した。 月が静かに輝いていた。 |