【初夢】ぼくのおしょうがつ
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/02/01 20:00



■オープニング本文

※このシナリオは初夢シナリオです。
オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

「みゅー……」
 ここは胥という猫さんの夢の中。
 胥は白黒の猫で、赤い飾り紐を首輪にしていて、見た目は大分大きい若い猫ですが、お屋敷育ちでちょっぴり子供っぽい甘えん坊。
「ここ、どこにゃ?」
「うなー……しらんのにゃ、でも、えっらくぺかぺかのぴかぴかで、ぬくぬくなのにゃ」
 胥が不思議そうに首を傾げれば、側でうーん、とのびをしてから口を開くのは胥よりも一回りほど大きな黒い猫、金糸を編み込んだ飾り紐を首に巻いた猫、黒甜です。
 黒甜のふてぶてしい顔つきはお屋敷に入る前の野良さんだった頃の名残です。
「また、ひとがいなくなっちゃったのにゃ。ご主人様に籠に入れられてお出かけだったはずなのににゃ?」
「うが、いないならしかたがないにゃ、おれさまたちはおれさまたちでたのしむのにゃ」
 くいと首を傾げる胥に、何か美味しいものでも無いかと鼻をひくつかせる黒甜、こうしていても仕方がないと歩き始める二匹。
「あれなんにゃ? ずいぶんとちいさなおにわなのにゃ」
「ちいさないけがあるにゃ。あのいけ、ゆげがでてるにゃ」
 見たこともない、大きく立派でお洒落な建物を二匹でうろうろしていれば、おそるおそる手近な部屋のふすまを開けて覗き込むと、落ち着いた綺麗なお部屋に火鉢におこた、そして蜜柑の盛ってある籠。
 その向こう側には小さな庭と、備え付けの温泉がありますが、彼らには温泉がぴんと来ない様子。
 彼らのお風呂はもっぱら盥にお湯を張って、押さえつけられてごしごしと洗われる、苦行のようなものだし、お風呂場は危ないからと入れて貰えない場所です。
 中に入ってきて部屋備え付けの、庭の露天風呂を覗き込んで不思議そうな顔をしている二匹は、しばしの間ちょんと前足を入れてはふるふるとお湯をきってみたりしているのでした。


■参加者一覧
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
ゼタル・マグスレード(ia9253
26歳・男・陰
紅 舞華(ia9612
24歳・女・シ
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
ウルグ・シュバルツ(ib5700
29歳・男・砲
フレス(ib6696
11歳・女・ジ
宮坂義乃(ib9942
23歳・女・志
津田とも(ic0154
15歳・女・砲


■リプレイ本文

●迷い込んだところは
「我、二代目として購入されたグライダー……」
 そこはとあるお高い温泉宿、の、廊下。
「改造に改造を重ね、ともに戦場を飛びまわった」
 津田とも(ic0154)の相棒で滑空艇改の九七式滑空機[は号]、その彼は、現在何故か温泉宿の廊下を歩き回っていました。
「砲術の家で、先進的な機械まで手を出した事に風あたりは強かったが……」
 現在温泉を経て吹き込む風が心地良くぽかぽかと暖かく。
「ここまで早く飛べる体にしてもらった」
 しみじみと語るは号は、くわっと目を見開くと翼……を曲げてまるで手を見ているようで。
「なぜか、今は我の意識がある」
 何やら気が付いたようにはっとして。
「きっと今まで頑張った褒美に違いなし! 飲み、食い、語ろうではないかwww」
 ひゃっほーっとばかりにたたたたと駆け出すは号、そこへきょろきょろと周囲を見ながらやってくるからくりがひとり。
「初めまして。私は玄人様の相棒、桜花と申します! 貴方も温泉に来たのですか?」
「我はグライダーのは号! ここは温泉というのか」
 からくりの桜花は宮坂 玄人(ib9942)の相棒で、小さく首を傾げながら聞けばなるほど、と納得する様子のは号。
「あら? 何か、聞こえますね」
 ふと気が付いた様子で辺りを見渡す桜花に、は号も耳を澄ませて、何やら猫の泣き声が聞こえることに気が付いて。
「おお、確かにあちらに猫の楽しげな声が聞こえるな」
 言ってみましょうと向かってみた先は、庭で、にゃごにゃごと笑いながら雪に塗れている白黒の猫と、黒い猫の姿があります。
「うが? ほかのおきゃくさんにゃ!」
「うにゃ、からくりさんと……からくりさんと……」
「我はグライダーである!」
「ぐらいだーさんにゃ?」
 あくしゅ、と翼と肉球を当ててご挨拶をしていれば、ぱたぱたと飛んでくる羽の音がしてきました。
「よかった、いたのです……! 会いたかったのですっ」
 やって来たのはウルグ・シュバルツ(ib5700)の相棒で空龍のシャリアで、夢の中で何度も遊んですっかり仲良しな、内気な女の子です。
「しゃりあちゃんにゃ!」
 ぐるぐると嬉しげに喉を鳴らして言う白黒猫の胥、シャリアはもじもじしながらも、何とかは号や桜花ともご挨拶を済ませて。
「よう胥に黒甜、久しぶりだな。シャリアのお嬢ちゃんも、そちらの二人も」
 ひょっこりと顔を出して言う忍犬の潮は紅 舞華(ia9612)の相棒です。
 潮は舞華や知り合いであるゼタル・マグスレード(ia9253)の相棒でからくりの蓬莱、オドゥノール(ib0479)の相棒で鷲獅鳥のツァガーン、フレス(ib6696)の相棒で羽妖精のファイを探していると告げて。
「主達と一緒に遊びに来ていた筈なんだが、姿が見えなくてな」
「うが、おれさまたちもさがしてみるにゃ」
「我らはあちらからきた」
「あちらの方のお部屋には居なかったですよ」
 は号に頷く桜花、反対側の棟の方かも知れないと、連れだってぞろぞろ歩いて行けば、何やら人捜しの様子の羽妖精が見えてきて。
「お、ファイが居たな」
「あら……潮、フレスを見なかったかしら?」
「いや。また主達は何処かに行ってしまったようだが……他の皆は?」
「蓬莱はお部屋にいるわ。……そういえばツァガーンは先程から居ないわね」
 羽妖精のファイはふんわりした金色の髪を指で弄りながら考える様子を見せて。
 どうやら相棒のフレスの姿が見えないので心配なよう、まぁ、少し出掛けているだけだろう、そういう潮に、そうですわね、と気を取り直してそれぞれとご挨拶。
「折角の温泉だ、主が帰ってくるまでのんびりしようぜ」
「ところで、おんせんってなんにゃ?」
「洗車……もとい、水で汚れを落とすのとは違うようだが」
「温泉も知りませんの? 自然にわき出るお風呂のことですわ」
 顔を見合わせる胥とは号に、ちょっぴり偉そうにえへんとしながらいうファイが説明しますと、やっぱり興味も沸いて出て来るようで。
 わいわいと廊下を進んでいると、一つの部屋がすっと空き、顔を出したのは絡繰りの蓬莱です。
「ふふ、皆来るだろうと思って、お節料理を用意してきたわ。肉食さんも草食さんも、お好きな物をどうぞ」
 振袖に高く髪を結い上げ、いかにもな新年祝いの装い、落ち着いた様子で微笑む蓬莱は、部屋に色々と必要なものを用意していたようなのですが、何か一行の様子に気が付いたよう。
「ご飯を頂く前に、お風呂かしら?」
「うにゃ」
「ツァガーンさんが、先程いそいそと見に行っていたもので……みんなで先に温泉を頂きましょうか?」
 くすりと笑って言う蓬莱に、お湯に入るの? とばかりに胥と黒甜は顔を見合わせるのでした。

●ぬくぬくの温泉宿
「これは……素敵!」
 くわっと開眼する鷲獅鳥が一人。
 そこはお庭にある広い露天風呂、そこに荷兎ギル未済図でくわっと羽を広げ、无やら振る振ると震えているのはツァガーン、通りすがる時のほこほこの湯気、そして何より人間が話していて小耳に挟んだ、肌に良いのよ、という言葉もあってか。
「ふふふ、身体が何故か小さくなったのは好都合……やりたかったことが目一杯楽しめるわ!」
 よいしょ、っと持ってきたのは大きめの盥、今の鷲獅鳥の身体には丁度良いそれに、お水を汲んで、お湯の側へ準備は万端。
「はぁあぁ……本当に、素敵……」
 ほこほこと鳥出汁鷲獅鳥出汁、兎も角もはや味も出てきてしまいそうな勢いで茹だり続けるツァガーンは、満喫、という言葉が甘い程に浸かって居ます。
 時折ざば、っとお湯から出てはよろよろと水桶風呂に飛び込んで居る姿は、なかなかに凄い光景で。
「だ、大丈夫?」
 そこにやってきた一行のファイも、流石に恐る恐る水風呂に浸かるツァガーンに声を掛けるのですが……。
「だって普段温泉でゆっくりなんてできゃあしないのよ?」
「ゆ、ゆっくり……」
「……ゆっくり?」
 どう見ても煮出されている様子のツァガーンに目を白黒させますが、皆でこれから温泉に入ろうと言うことになったと告げると、どうぞどうぞと水風呂桶の中からお勧めします。
「これがおんせんにゃ?」
「みたことはあるが、おれさまもはいったきおくはさだかではないにゃ」
「胥と黒甜も温泉に興味あるのかしら」
 ちっちゃな額を寄せ合って首を傾げているに引きに、ファイはらためて温泉について説明をしようと反っくり返ります。
「いいわ、教えてあげる。温泉というのは人間が娯楽と健康のために作りだした施設で地底より湧き出たお湯に……ふわあっ!?」
 湯船の縁の石に乗っかって反っくり返っていたためか、バランスを崩してそのままどっぽーんと落ちるファイ。
「あら、大丈夫?」
「……ふ……ふっ、これが温泉の正しい入り方よ」
「いや、それはない」
 桜花が服ごとずぶ濡れになって居るファイを助け起こすために手を貸せば、ちょっぴり厳しい言い訳をするのに即座に潮の突っ込みが入ってみたり。
「これが温泉ですの……!」
 実際の温泉を前に、ちょっぴり感動している様子の桜花、入浴用の浴衣を身につけゆったりと浸かれば心地よい暖かさにほうと疲れが取れるようですと微笑んで。
「あ、えっと、前ににいさまが連れていってくれたのですっ。暖かくて、気持ち良いのです……」
 そう言っておずおずとお湯に入ったシャリア、それぞれタオルを借りたり薄手の浴衣を着たり、兎にも角にもとぷんと入る中、やはり猫である胥と黒甜はちょっぴり程曠があるようで。
「炬燵や日向の温かさも良いけれど、温泉も気持ち良いわよ」
 薄手の浴衣に着替えてお湯に入った蓬莱は、お湯に浸した手ぬぐいで黒甜をぬぐってやれば、ふにゃふにゃ良い心持ちのよう、蓬莱がひょいと手を伸ばすのとだっこしてあげて入れば、まるでとろけてしまっているようにふにゃふにゃで。
「私が抱っこして入ってあげるから、足がつかなくても大丈夫よ」
「ふにゃぁぁ……あったかいのにゃあ……」
 胥の方はと言えば、ちょいちょいと興味は有るみたいで前足で触っては居ますが、なかなか入る勇気は起きないよう。
「えっと、背中、乗るです……?」
「うにゃ、ありがとうなのにゃ……」
 背中に乗っけてもらってシャリアがゆっくりとお湯に入ると、きゅと掴まるようにして胥の体もお湯にぷかぷか。
「あったかいのです、落ち着くのです……っ」
「うにゃぁ、ぼくもなんだかぷかぷか……ぷかぷか……」
「……なんか、ぷかぷか流れてくるのは、気のせいか?」
 シャリアにぴっとりと掴まって浮いていた胥が浮かんでいるものに気が付くと、しゃかしゃか犬かきでよってきた潮も心配げにそれを見て。
「だ、大丈夫かしら?」
 流石に浮かんできたものが、ぬいぐるみ大なのに、もしや誰かが、と慌てて桜花が手をかけて起こせば。
「んあ……?」
 どうやら浮かんできていたのはルオウ(ia2445)の相棒で破龍のフロドでした。
「あー……いや、良い湯だなぁ」
「眠っていたのか……まぁ、初めて感覚であるが、湯というのは良いものだ」
 ちょぽんと手ぬぐいを頭に乗っけてお湯に入ったは号が言えば、お湯の中でフロドはふるふると頭を振ると眠気を晴らしてから、お風呂にはいるまでの話を始めます。
「なんだよ。迷子かあ? しょうがねえなあ」
 ふと気が付いたら、フロドはルオウの姿を見失っていたようで、ため息をつくと。
「ま、あいつなら大丈夫だろ」
 そうでないと乗せてる意味がないしな、信頼からそんなことを言いながら辺りを見渡せば、見知らぬ所のようできょろきょろと見渡しながらも困惑気味なフロド。
「それにしてもここはどこなんだろ? 変な所に迷いこんじまったなあ」
 そのうちどうにかなるだろう、そんな風に困惑気味ながら前進していけば、廊下の先に辿り着いたのがこの露天風呂。
「ん? なんだ? 湯気でてるけど」
 物珍しげに覗き込んでみれば、寒さと好奇心には耐えかねて行水宜しく、そのままドボンと飛び込んだようで。
「おお……染み込んでくるなあ……」
 暖かく心地良いお湯が、文字通りしみこんでくるようで、体の隅々まで暖まり、そのまま心地よさにうとうととしていたよう、ぬいぐるみの大きさだったためぷっかり浮いたのかもしれません。
「つーことで、溺れた訳じゃねーから。あ、俺はフロド、宜しくな!」
「……まぁ、溺れてなかったのなら良かったですわ」
 濡れた服をきちんと寄せて、妖精用の浴衣を準備してから、タオルを巻いたファイがちょぽんとお湯に入りながら言うと潮やツァガーンの毛ずくroiや羽尽くroi、自身の羽の手入れにも余念が無く。
 そんな周りの様子を見て、興味深げに口を開くは号。
「皆はやはり、相棒と来たのか?」
「ええ、私は修羅場を乗り越えた記念に……玄人様に言って温泉に来たんですの」
「修羅場?」
 桜花の言葉に目を瞬かせる猫たち。
 おそらくは尋ねてみた相手と答えている当人の間で、修羅場の認識は違うと思いますが、何はともあれ、大変だったと言うことはとても良くわかった様子。
「ごほんをつくっていたにゃ?」
「え、えぇ、まぁ……」
 ちょっぴり説明に困っていたのはきっと気のせいでしょう。
「それにしても、は号さんもツァガーンさんも、大丈夫ですか? 翼とか」
「羽毛? あとからしっかり毛づくろいすればよいのです!」
「乾けば問題ない」
 びし、っと答えるツァガーンに、
「ふふ、でも、そろそろ猫さん達が茹だり始めているわよ」
 一旦上がってのんびりおこたに入りましょう、そう蓬莱が提案すれば、それはそれでツァガーンの琴線に触れたかしゃきん、と起き上がって。
「うが」
「こら、濡れてる内からぷるぷるしないのよ。周りに水飛沫が散っちゃうでしょ」
 温泉から出た黒甜がぷるぷると水を切ろうと身体を振れば、すぽっと布を被せて、ふきふき拭いてあげながら言う蓬莱。
「うう、風が冷たいのです。そういえば、前に行ったときはにいさまが拭いてくれてたのでした……」
 くしゅ、と小さなくしゃみをするシャリアにも、蓬莱は布でぽふぽふとぬぐってあげて。
「良いか、胥、こうして他に水がかからないところで……ぶるぶるぶるっ」
 見本を見せながら体の水の切り方を伝授している潮。
「こうして、お湯から出たら念入りに水を飛ばすんだぞ」
「ふにゃーっ」
「その後は部屋で火の傍に行く等良く乾かしてな」
「はいはい、とにかく、二人も、良く拭かないと駄目よ」
 ふるふるふるっと頑張って身体を振ってはいるものの、まだなかなか綺麗に水を切れない胥ですが、シャリアを拭いて当てた蓬莱が、潮と胥にもぽふっと布をかけて。
「ふふふ、次の楽しみは、レッツ、コタツムリ!」
 綺麗に蓬莱に拭ってもらうと、ツァガーンはいそいそとおこたのある客室へと突進していくのでした。

●炬燵の幸せ
「ふにゃー」
「ふいー」
 胥とは号が温泉でぬくぬくと満足、と言った様子でお部屋の畳の上に転がっていれば、おこたに突進して、すちゃっと座りながら腰まで炬燵布団を引っ張り上げるツァガーン。
「ふふふー。腰まで入っちゃって、寝転がっちゃうわよ!」
「うが、おれさま、いつもはいってるにゃ」
「前に家の外から見て羨ましくてしかたなかったのよ、コタツムリ。いつもどちらかというと庭から見ていて……はっ! この大きさなら羽まで入っちゃってもいいのかも……」
 どきどきした様子でおこたに肩まで入ってごろごろしていれば、幸せそうにぐるると転がるツァガーン。
「さ、おやつにお餅は如何? そのままでもいいし、餡子、きなこをつけて召し上がれ」
「美味しそうですわ」
 和気藹々と蓬莱が火鉢でお餅を焼けば、はいと渡されたお餅に、卓へとのっかっているあんこやキナコの鉢から、好みのものを掬って振りかけて食べる形にしてあるようで、桜花が嬉しそうに受け取っていただけば。
「磯辺焼きや砂糖醤油もあるわよ」
「む、我はそれを食べてみたいぞ」
 すくっと起き上がってとととと蓬莱に近づいているのに、先程から蓬莱の隣でちらちらと見上げていたファイが
「仕方ないわ、私が作ってあげる」
 そういって蓬莱から小皿を受け取り、お醤油をぺたぺた塗ってくるりと海苔で巻いて準備していて、その姿を蓬莱は微笑ましく見守ります。
 どうやらファイは、落ち着いた様子の蓬莱に、かなわないと思ったようで、ちらりと弟子入りなどが頭をよぎってみたりして、小さくふるふると頭を振ると、お餅に期待ではち切れそうな様子のは号へと渡してあげて。
「我はこうした形でものを食べるは初めてだ」
「あ、俺もお餅ー肉ー刺身ー」
 実に嬉しそうにお餅をもきゅもきゅ食べるは号に、口がそこにあったんだ、と驚く間もなくフロドもわーいとお節に突進します。
「ほら、黒甜、胥、潰さないように気をつけてな」
 ころりん、と猫たちの間に転がされるのは可愛らしい蜜柑が一つ。
「うにゃにゃにゃ〜」
「みにゃ〜っ」
 ころころ転がる様についつい乗りに乗ってきたようで、ぺちぺちとにくきゅうで転がしに転がせば、ほどよいところですちゃっと止めて蜜柑を受け取る潮は。
「少し転がした方が甘くて美味しいぞ」
 そう笑って器用に皮を剥いて渡してやれば、にゃんこ二匹で半分こ、黒甜は蓬莱に、胥はシャリアにさらに半分こを渡してにっこり。
「美味しいのです……」
 その様子を潮が笑って蜜柑を食べつつ見ていれば、蜜柑に気が付くツァガーン。
「せっかく蜜柑があるのなら……今、憧れ第二段を試すわっ!」
 もぞもぞとおこたから上半身を出して前足で蜜柑を掴むと、じっと蜜柑を見て当たりをつけたツァガーンは、前足で器用に蜜柑をむき始めると。
「ほら、兎! 次は鳥!」
「お、おお……」
 おもわずぱちぱちと拍手する桜花は、手元の蜜柑と綺麗に形作られた蜜柑の皮を見比べてどうやるのかしら、と確認して居たり。
「せっかくの新年だしな。胥や黒甜、シャリアとかも、今年の抱負とかはないのか?
「うにゃ? ほうふはよくわかんにゃいのにゃ。うしおはどーなのにゃ?」
「俺か? 俺は……そうだなぁ。そろそろ跡継ぎが欲しいかな。……可愛い子に巡りあいたい」
 笑って言うと、にやりと笑って胥に聞き返す潮。
「そういや気になる子とかいないのか?」
「うにゃ? ぼくはしゃりあちゃんがだいすきなのにゃ」
 ぐるぐると喉を鳴らして甘えながら言う胥に、シャリアはなでなでと撫でつつもちょっと赤くなったりしています。
「シャリアちゃんは楽しんでる?」
 赤くあってちょっともじもじしていたシャリアに微笑みながら訪ねる蓬莱、シャリアはこっくりと頷くと。
「みなさんと一緒にいられて、とっても嬉しいのですっ……でも、ちょっとだけ残念なのです」
「残念?」
「シャリアは、にいさまにもみなさんのこと知ってもらいたいのです」
「そうねぇ……ここにフレスが居たらもっと嬉しいのだけれど」
「そうですね、玄人様もいらっしゃればいいのに」
「ルオウの奴も、どこで迷ってんだかなぁ」
 それぞれ相棒のことを考えればしみじみ、この楽しい時間を共有できればいいのに、と考えて居るようで。
「あぁ、でも、この楽しい時間が終わるのも寂しいわ、夢なら覚めないで〜」
 ちょっぴりツァガーンの願いは切実ではありますが。
 何はともあれ、ごちそうを頂いて、お菓子を頂いて、お酒を頂く子も居ればあとでもう一度温泉を、と楽しみにしている子も。
「今年も良い一年になりそうね。胥くんに黒甜くん、改めて今年も宜しく、ね♪」
「うにゃ、よろしくなのにゃ♪」
 改めて蓬莱が言うのに嬉しげに尻尾をぴんとあげて応える胥。
 わいわいがやがやと楽しい時間を、それぞれもう少しの間味わって過ごすのでした。

●夢から覚めて
 はっとツァガーンは目を覚ますと、いつもの大きさに戻っておりふかふかの寝藁の上に伏せていました。
 傍らを見れば、こちらも藁に埋もれてふかふかと心地よさそうに寝ている潮の姿、視線を巡らせれば、すぐ側に温泉宿の建物が見えて、さっきまであの中にいたのにとちょっぴり残念に思っていて。
 ファイは目を覚ませばすやすやと心地良さげに寝ているフレスの姿に、目が覚めたらいっぱい夢の話をしようと笑みを浮かべて寝顔を眺めて居ます。
 蓬莱は、初詣に出かけている相棒をのんびりと部屋で待ちながら、お膝に乗っけて撫でた黒甜の甘えた様子を思い出して微笑を浮かべ。
 桜花は目が覚めて、相棒の玄人が起き出して部屋を出ている様子に、こちらが夢かあちらが夢か、ちょっとだけ混乱した様子。
 フロドは目が覚めてから顔を出したルオウに、迷子になって居ただろうと伝えようとして互いに会話がかみ合っていないことも気にせずあれやこれや好きな事を言っていたようです。
 シャリアは、目が覚めて大好きな兄様であるウルグに一生懸命擦りついて、楽しい夢を見たことを伝えようとして、撫でてもらって幸せそうな表情を浮かべていて。
 そうしては号は、相棒のともが何やら夢を見たようでお餅と蜜柑が供えられ、取り出した紙に何やらさらさらと書き付けるのは、他の相棒とどうにか交流が持てないものだろうか、と言った趣旨のことのよう。
 白黒猫の胥と黒猫の黒甜も目を覚ますと、お部屋には大好きな飼い主の少年と、その両親の姿。
 まるで楽しかったことを家族に聞いてもらおうとでも言うかのようにうにゃうにゃと甘えながら、一緒に遊んだ相棒達の事を思い浮かべているのでした。