【魔法】ぼくのぱーてぃー
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/11/09 21:00



■オープニング本文

※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。
 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。

「みゅー……」
 ここは胥という猫さんの夢の中。
 胥は白黒の猫で、赤い飾り紐を首輪にしていて、見た目は大分大きい若い猫ですが、お屋敷育ちでちょっぴり子供っぽい甘えん坊。
 今日はどうにもちょっと不思議な装い、黒い短めの可愛らしい外套を、赤い首輪上から、赤い飾り紐できゅと留めてあり、首元で可愛らしいリボンになって揺れています。
「うにゃ、またぼくねむっちゃったにゃ?」
 うーんと延びをする胥は、側ででーんとお腹を出して寝転がっていた胥よりも一回りほど大きな黒い猫、金糸を編み込んだ飾り紐を首に巻いた猫、黒甜に気が付きました。
 黒甜のふてぶてしい顔つきはお屋敷に入る前の野良さんだった頃の名残です。
「うがっ、またにんげんたちはでかけたかにゃ?」
「みゅー……ちがうとおもうにゃ、ここ、おうちじゃないにゃ?」
 くいと首を傾げる胥、そこは見たこともない洋館、南瓜やらなにやら、兎に角色々と飾り付けられている様子。
「だれもいないのかにゃ?」
 大好きな飼い主の幸秀少年も、優しい綺麗なお母さんも、ついでにご飯をくれる保上明征も居ないため、ちょっと不安そうに辺りを見渡す胥。
「さっきいたにゃ、あたまがかぼちゃのそこのやつみたいなののっけた、ごしょじゅんさまたちみたいなのが。いまちょっといそがしいから、たべたりのんだりすきにたのしむといいっていってたにゃ」
「うにゃー? ぼくたち、かぼちゃとかたべていいにゃ?」
「うがっ、ふだんはもらえないにゃ、ゆめのなかならだいじょうぶにゃ?」
 ご馳走一杯、綺麗に飾り付けられていて不思議な洋館。
「うがっ、これはあれにゃ、ごしゅじんのあたらしいゆうじんとやらのいってた、はろはろぱーちーとかにゃ! おれさま、ごしゅじんにつくってもらったこれつけるにゃ!」
 胥の外套を見て思い出した様子の黒甜が橙と黒の異国の道化帽をかぶってにと笑えば、胥もご主人様に付けて貰った外套を思い出してくいくいとなおすと、かっくしと首を傾げて。
「なんかちがうきがするにゃ……いいにゃ、めがさめるまであそぶのにゃ♪」
「うが、あちこちみてまわるにゃ♪」
 にくきゅうをぽむと合わせてはいたっちすると、二匹の猫はわくわくといったようすで洋館へと入っていくのでした。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
ゼタル・マグスレード(ia9253
26歳・男・陰
紅 舞華(ia9612
24歳・女・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
ウルグ・シュバルツ(ib5700
29歳・男・砲
シンディア・エリコット(ic1045
16歳・女・吟
小苺(ic1287
14歳・女・泰


■リプレイ本文

●かぼちゃのおやしき
 日差し暖かく心地良い秋晴れの中を、実に気持ち良く飛ぶ人妖が一人。
 シンディア・エリコット(ic1045)の相棒アンプルナは、その気候を楽しんでいれば急に立ちこめる霧に飲まれて。
「な、何これ?」
 慌てて抜けようと先を急げば、そこに現れたのは黄金色の雲の中に佇む洋館。
 怪訝そうに見ていたアンプルナですが、耳に入ってきた音に思わず笑みを浮かべます。
「おー! なんだか楽しそうな音が聞こえる〜♪」
 音に誘われふよふよふよりと館内に入って行けば、聞こえてくる音は大きくなり、そのまま勘を頼りに音の元へ。
「こっちかな〜?」
 といっては左の扉を開け。
「あっちみたいだー」
 呟けば通路を曲がり進んでいけば、ダンスホールの奥にある控えの間。
「此処みたい〜。入ろう入ろう♪」
 賑やかで楽しげな音楽と、がやがや打ち合わせをしている音、扉を開けて押し入るとそこには南瓜頭の楽団がきゅ、と顔を向けます。
「おー♪ おー♪ 僕も仲間に、いーれて〜」
「人妖のお客さん?」
「うん♪」
 満面の笑みでふよふよ近づいてくるアンプルナに、南瓜の楽団は誰かの相棒の南瓜提灯が4人程、ちょっぴり気取った様子で調子をとるとピアノを奏でる南瓜がいれば、そこに加わる管楽器、ハープの音色も楽しげで。
 アンプルナも楽しくなって演奏に合わせてトーンを一つ落として歌いだします。
「主たちも楽しんでいるのだから、ワタクシたちもと♪」
「そうだね〜♪ 早く他の人も来ないかなー」
 楽しげに笑うとアンプルナは同意を込めて頷き返すのでした。 
 不思議な黄金色の雲を歩いて行けばやがて立派なお屋敷が現れます。
「どことなく故郷のわしの家を思い出すなー」
 辺りを見渡してからにかっと笑って言うのは、ルンルン・パムポップン(ib0234)の相棒で、羽妖精のヤッサン・M・ナカムラ。
 ヤッサンは視界に現れた洋館に色々と思い出すようですが、ルンルンがこの場に居たら『思い出が誇張されていると思うの……多分』と言ったでしょう。
「どことなく故郷を思い出すパーティと来たら、わしが参加しないわけにもいかんだろう」
 お饅頭はあるんだろうな、口の中でもごもごと言ってにかっと笑うヤッサンは、故郷を思い出す上に飾り付けなどの様子からハロウィンパーティーを思わせるのに、うきうきと足を踏み出そうとしてはたと気が付きます。
「ふむ、ルンルンの嬢ちゃんの姿が見えなくなっているじゃないか……仕方ない、ではここはわし一人で羽を伸ばさせて貰うとするか」
 どこではぐれたのか不思議だとばかりに首を傾げるヤッサンですが、深く気にするのはやめたよう、ちゃっと手を広げればその手に収まっているのは渋いマント、夢の中なのでそれを特に不思議がることもなく身に纏うと、カボチャの被り物で、ジャックの仮装。
 ハッチョウボリーの門の八百屋のせがれさんだとか。
「こうすればわしもなかなかの者だな……これはきっと、お嬢さん方にも引く手あまたに違いない」
 にかっと笑いながらヤッサンは洋館の中へと足を踏み入れるのでした。
「うにゃ……?」
 てこてこと歩いていた銀灰色をした虎縞模様の猫又は、いつの間にか黄金色の雲に紛れ込んでいて不思議そうに首を傾げました。
 この猫又は小苺(ic1287)の相棒なのですが、相棒になりたてのようで『名前はまだない……』そう。
「どこだろう、ここ……」
 首を傾げる猫又ですが、そこに出てきたのは、他にも誰か来ないかなと見に来た白黒猫の胥です。
「うにゃ、ねこまたさんにゃ?」
「やぁ……」
「ぼくはしょにゃ、ねこまたさんは?」
「んー……とりあえず、今はクーフーって呼んで?」
「くーふーにゃ?」
「うん……ここは?」
「はろ……ぱーちー? のばしょらしいにゃ」
「さりげなく今誤魔化したでしょ」
 まぁいいか、とクーフーがいいながらてこてこと入っていけば、胥は門をちょっぴり心配そうに見てからちょこちょことお屋敷の方に戻るのでした。
「えっと……」
 ほわっと良い心持ちでいたウルグ・シュバルツ(ib5700)の相棒で空龍のシャリアはきょろきょろと周囲を見渡すと、あたりは黄金色の雲の中、シャリアはふと思いついた事柄にきょとんとした様子で首を傾げます。
「また……なのです?」
 愛らしいぬいぐるみ程の大きさになっているシャリアは、どきどきと辺りを改めて見ますが、初めて見る黄金色の景色にちょっぴり怖じ気付いてしまって。
「みなさんと会えたら嬉しい……のですけど……ここ、どこなのです……?」
 不安げに呟いたシャリアの耳に羽ばたく音が聞こえてきて、あわあわと縮こまってしまいます。
「なんや、ここ?」
 羽ばたきの主はヴィゾフニル、フィン・ファルスト(ib0979)の相棒の迅鷹です。
 ただ、見た目が頭に縫い目とか釘っぽいのがついていて、まるでフランケンシュタイン、所謂ハロウィンの仮装した状態で紛れ込んでしまっていて。
 ヴィゾフニルは不思議そうに辺りを見回してから、ちょっぴり自分の状況がふだんと変わっていることに気がついたよう。
「……おおうっ、こいつは!? 姐さんもおらへんみたいやし、ちょいと遊びに行ってみよか〜」
 奇しくもハロウィンパーティーというものを耳にはしていたようで、ちょっと楽しくなったのか改めて前に進もうとして、ふるふると縮こまっているシャリアに気がつきます。
「あー……大丈夫?」
「ぅ……ぁ……は、はい……」
 警戒している様子に、ちょっぴり離れたところに降り丸まってからヴィゾフニルが声をかけると、シャリアはおどっとしていますが、害意はあらへんよーと笑うのに、おずっと頷いて。
「ちょい上から見たら、何や偉い立派な屋敷があるで?」
 一緒に行くか聞くヴィゾフニルに、シャリアもこくりと頷くとちょこちょこと歩き出します。
「しっかし、はろうぃん風やけど、鳥にコレは配役間違えとらん?」
「はろうぃん……ですか?」
「あぁ、人間が楽しそうにやっとったで」
 なんて呼んでいいのか迷う様子のシャリア、それに気がつくと、ヴィゾフニルはにっと笑って。
「あぁ、ヴィーって呼んだってや」
「ヴィーさん……」
 ぱたぱたと飛ぶヴィゾフニルとてこてこ歩くシャリアがやがて屋敷に辿り着けば、シャリアの姿に気がついたのか、入口のところでうにゃうにゃクーフーと喋っていた胥が転がるように駆け寄ってきました。
「シャリアちゃんにゃ!」
「胥さん♪ ……胥さんも黒甜さんも、珍しいもの着てるのです……?」
「ごしゅじんがつくってくれたにゃ!」
「いいなあ、羨ましいのです」
「……中に色々あるみたいだよ」
「ほな、好きなものを着てみるのもえぇ思うで」
「えっと、じゃあ、シャリアも……どういうのがいいのでしょうか……」
 ヴィゾフニルに促されてシャリアは首を傾げながらも、胥やすぐに後からきたクーフーと黒甜も一緒に、屋敷の中へと入っていくのでした。

●たのしいかそう
「羅喉丸も確かハロウィンとか言ってましたね。それに、はろはろぱーちーですか……」
 猫たちの会話が聞こえていたか、羅喉丸(ia0347)の相棒で羽妖精ネージュはなんだか楽しそうです、とくすりと笑って屋敷を見て回れば、入り口付近が賑やかになって。
「うにゃ、こんばんはなのにゃ?」
「はい、今晩は。皆様、はろはろぱーちーというものに集まられたのですか?」
「うん……今は、仮装衣装とかがどこにあるのかなって、探していて……」
 ご挨拶をすれば、クーフーの言葉に先ほどちらりとみた一階には思い当たりません、と答えるネージュ、と。
「衣装部屋ならこっちだ」
 二階の廊下から吹き抜けの玄関へと声をかけたのは紅 舞華(ia9612)の相棒で忍犬の潮。
 潮の主が見慣れない格好で楽しげに出かけていったのを見送り夢の中へ、と思ったらこの屋敷にいたようで。
 折角お誘いを受けたパーティーのようだし、主がいつもと違う格好で出かけたから、そういうものなのだろうと一足先に探り出していたようで。
「お、この帽子とかマントはいいな」
 上機嫌にマントを羽織り帽子を被れば、潮はどこか海賊っぽい格好、胥はマントで吸血鬼、黒甜は道化師で、シャリアは可愛らしい赤いずきんを被ってちょっぴり赤くなってみて。
「ど、どう、ですか……?」
「シャリアちゃん、つばさがなんだかちょっぴりおとなっぽくなったのにゃ? あかいずきんとあいまってかわいいのにゃ♪」
 胥にいわれて嬉しそうにぱたぱたと翼を動かすシャリア、クーフーは、潮と一緒に引っ張りだした立派なビロードのマントとブーツ、帽子を被ってまるで貴族風です。
「普段はあんまり着るものに興味はないが……こんなカラフルな色々な衣装を選んで着るのは楽しい、かもしれない」
 ふむりと頷きながら言う潮、皆が楽しげにあれこれ衣装を見ていれば、ネージュはどれにしようかと少々思案顔。
 見つけた氷を模したドレスはちょっと綺麗でも冷たい感じがして少し悩んでしまったようです。
「こっちはどうかな……?」
 クーフーが引っ張り出すのは黒と橙の愛らしいドレス、髪に飾るミニシルクハットも黒に橙のリボン付き。
「ふふ、羅喉丸が見たらなんて言うでしょう」
 ネージュがドレスに着替えてシルクハットをきゅと直せば、一同を見渡すシャリアはおずおずと切り出します。
「このお屋敷、ちょっとこわい感じもするのですけど……綺麗なのです。探検、してみたいのですけど……」
「探検ですか、心が躍りますね」
「おし、んじゃ行こか……とと、どうせなら、途中で何か自分で調達か館で探してプレゼント交換してみんのはどーやろ?」
 楽しげに笑って頷くネージュに、同意したヴィゾフニルは折角ならと更に案を出して。
「ぁ……胥さんも黒甜さんも、その……一緒に来てもらっても、いいのです……?」
「もちろんなのにゃ♪」
「うがっ♪」
 ちょこんと首を傾げてシャリアが聞けば、しっぽをぴんと立てて答える猫たち、それを見てクーフーはちょっと考える様子を見せます。
「上を見に行ってみようかな……」
「上の階は私もまだ見ていませんね」
 行ってみます? というネージュにクーフーも頷いて、一緒に三階へと上がる階段へと足を向け。
「俺は下の階の奥でも見に行ってみるかな」
「なんやおもしろそうやな〜」
 潮が階段を下り始めればヴィゾフニルも降りていき、シャリアと胥、それに黒甜は2階をそのまま探索することにしたようです。
「……頭がかぼちゃ、なのです……? こわいおばけじゃ、ないのです……?」
「こわいかんじはしなかったにゃ」
「後で怒られたりしないのです?」
「うが、おれさまなでてもらった」
 あちこち飾り付けられた可愛く飾られた南瓜提灯に、こんな感じ? とシャリアが聞くと頷く胥。
「うが、どこがおもちゃべやかにゃ?」
 くいくいと道化帽を直しながら言う黒甜は先行してぽてぽてと歩いて行けば、何やら絡繰り細工のようなものが付いた部屋を見つけます。
「う、うにゃ……」
「ちょ、ちょっと細かくて掴みにくいです……」
「おれさまのつめもはいらないにゃ」
 何せ夢で結構自由がきくとはいえ、細かいところはちょっぴり苦手のよう、顔を見合わせる二匹とシャリアですが、そこにすと近寄るすらりとした影。
「ふふ、お困りのようね」
 そう笑う女性は黒基調の豪奢なビスチェドレスに、首元はゆったりとゴージャスな羽マフラーが飾るその人の目元には、美しい石をちりばめた仮面で隠されていた魔女の姿です。
「あ、あ……」
 おろおろっと縮こまるシャリアに目をぱちくりさせる胥、黒甜は首を傾げて。
「これをどうしたいのかしら?」
「あ、えと……そこをこう、したいのにゃ」
「これを、こう、したいのね」
 魔女が胥の肉球の動きに合わせて動かしてあげればかちりと扉が開いて、ぱっと顔を輝かせた胥と黒甜が部屋に入れば、シャリアもひょこっと入ってから振り返るとそこに誰もいません。
「……え、えと……?」
 首を傾げながらも部屋に入ると、そこは可愛らしいおもちゃや絡繰りのお人形などが飾られた部屋です。
「わぁ、可愛いのですっ」
 ぱぁっと顔を輝かせるシャリアに、ふわふわのぬいぐるみにうずうずしながらも爪を立てないようにと気をつける胥と黒甜。
 二階は他にふかふかのベッドがある部屋が幾つか、それぞれ可愛らしいハロウィンの飾り付けでいっぱい、高い棚を覗き込もうとすれば、やはり仮面の魔女さんが現れて助けてくれたりします。
 助けてくれる魔女が誰か気になるのか、不思議そうに見上げる胥に気が付くと。
「私がわかるかしら?」
 悪戯っぽくくすりと笑う仮面の魔女に戸惑う表情の胥と、聞き覚えのある声の気がして首を傾げるシャリア。
「しっているひとにゃ?」
「え、えと……」
「にはは、おれさまわかってるにゃ♪」
 にんまりと笑う黒甜、シャリアはうーんうーん、と一生懸命考えると。
「ぁ……、えと、からくりの、蓬莱さん……?」
 前にやはり夢で一緒になった時に聞いた声を思い出したのか、おずおずと聞くシャリアに、魔女は仮面に手を添えるとにっこりと笑ってそれを取り払うと。
「ふふ、正解、よ♪」
 眼鏡をつけて微笑んでから、ひょいと胥と黒甜を交互に抱き上げて改めてご挨拶するのは、ゼタル・マグスレード(ia9253)の相棒でからくりの蓬莱です。
「帽子やマント、とても良く似合ってるわね。シャリアちゃんのふんわりのお洋服と頭巾もね」
 そう蓬莱は微笑むと、そろそろ広間でパーティーが始まるんじゃないかしら? と告げるのでした。
「あの壁の箱は何でしょう?」
「ん……箱は開いた、けれど、あと、ちょっと届かない……」
 よいしょ、と箱の側にあった子供用の椅子に乗ると、箱をかぱっと開けてあるのは何やらレバーのようで。
「これは、こう下ろすものですね」
「みゃ? 階段が降りてきた……屋根裏みたい、だね……」
 見れば廊下の天井の一角が開いて、屋根裏部屋への階段が降りてきたよう、ネージュとクーフーは顔を見合わせると、屋根裏部屋へと上がっていきます。
「へー……ここも飾り付けされてるんだ……」
 きょろきょろと見渡すク−フーに、ネージュは何か見つけたようで、ちょっと高めの棚にあった小さな箱を手に取ってから降りてくれば、綺麗な木の箱のようですが何かは分からずに首を傾げて。
「これはなんでしょうか、そうだ、もって帰って見てもらいましょう」
「それがいいとおもう……」
 手元の箱を二人で見て見れば、ネージュの言葉にクーフーも同意を込めて頷くのでした。

●はろうぃんぱーてぃ!
「ハッピーハローウィン♪」
 楽しげに弾むアンプルナの声、一同が一角にご馳走のテーブル並ぶダンスホールへやってくると、張り切って演奏をする南瓜提灯たちと、アンプルナに迎えられました。
 早速始まるのは楽しいパーティ、椅子に腰掛け優雅なティータイムとなるのは蓬莱、お膝に乗っけられた黒甜はぐるぐると幸せそうに喉を鳴らしながら撫でられており。
「黒甜くんのお気に入りはどれかしら?」
 テーブルに並ぶ色取り取りのキャンディー、ジャックオランタンを模したクッキーに、きらきら光っているような南瓜のプリンにタルト……ひょこと顔を上げてテーブルを見渡す黒甜。
「うが、あれもこれもおいしそうにゃ〜」
 もっとも、優しく撫でる蓬莱の手の方がよっぽどにお気に入りのようではありますが。
「ふぅ、お菓子だけじゃなくて確りと料理があるのも有難いな。煮付けにステーキに、清酒まである、いやいや、美味い」
 上機嫌な潮が探検の結果見つけたお刺身のお皿を持って行けば、蓬莱に食べさせて貰ってどうにもうっとり。
「酒はまだ早いかな」
 名前の通り溶けてしまいそうな黒甜に潮と蓬莱は笑って見るのでした。
「とってもおいしいのです……!」
 そーっと小さく囓ってから、ぱぁっと顔を輝かせるシャリアは、南瓜のパイを食べたよう、ほわほわのクリームをちょんとのっけて、確かめるかのようにもう一口。
「胥さん胥さん、こっちなのですっ」
「ふにゃ、あまくてほろほろなのにゃ」
 どーぞとばかりに胥に勧めるシャリアに、胥もぐるぐると嬉しそうに食べると、シャリアにはい、と可愛らしいリボンの形のクッキーを渡していたり。
「どれも美味しそうですね、目移りしてしまいます」
 微笑んで卓の上を見ていたネージュ、と、そこへ近付くのは、ちょっと早くにダンスホールに来たため、見つけたお饅頭をもきゅもきゅと食べながら待っていたヤッサン。
「お嬢さん、一つわしとダンスでも……」
「お? これは凝ってんな〜、飛ぶ南瓜や」
「って、こらこら、わしはカボチャのお菓子じゃない、仮面をかじるな、こらっ」
「お? いやいや、すんません」
 ぱっと見は、お菓子に埋もれた南瓜がふよっと飛び上がったように見えたのでちょんと突いてみたヴィゾフニルに、ヤッサンはあわあわと止めます。
「わぁ……」
 感嘆の声を漏らすクーフー、見ればアンプルナの伸びやかな歌声、ダンスホール内だというのに小鳥が舞ってアンプルナの手に止まり羽を休める姿は幻想的で、心奪われる光景です。
「そろそろプレゼント交換の頃合いかな」
 潮が出してくる包みは、ちょっと小粋なハロウィン柄のハンカチ、ネージュはきらきらと綺麗な小さな人形をテーブルに置きます。
「探検していた時に見つけたとっておきの物です」
 そう言ってネージュが触れれば、ぽろぽろんと、人形の姿に良く合った澄んだ音色が流れ出ます。
「どうです、すごいでしょう」
「とっても素敵なのです……私は、これを……」
 ちょんと小ぶりな木の実のオーナメントを出すシャリア、それは灯りを受けると赤い実がぽうっと色付いて見えてとても可愛らしく。
「取れちゃったみたいで、お部屋の隅っこに落ちてたのです。拭いてあげたら、とっても素敵だったのですっ」
「わぁ、これ本当に素敵ねー」
 にっこり笑うアンプルナは、橙に輝く蝋燭で、南瓜提灯達と歌っていた控えの間に幾つか点っていたものの一つ。
「わいはこれやな」
 ヴィゾフニルが出してきたのは、もふもふっとした感触の枕で。
「これは……?」
「あぁ、今まで抜けた羽根で作った枕や。羽毛で出来た布団とかあるらしいけど、こんな抜け毛みたいなの詰めてホントに気持ちええんやろか?」
「枕って羽毛で作っていたっけ?」
 不思議そうに首を傾げるクーフーは、屋根裏部屋で見つけたスノーボールをことんと置きます。
「お饅頭は天儀に来て初めて食したが、そう言えば娘達が小さかった頃、ふかしパンが好きだったな、亡くなったあいつも……後、お義母様はよく、わしのへそくりで……」
 ヤッサンが出してくるのはお饅頭、山盛り。
 ちょっと遠い目をしていますが、きっと気のせいでしょう。
「最後は私ね」
 蓬莱はそう微笑むと、手に持った魔女の杖を一振り。
 ぽん、とその場に現れるのは大きな本。
「あ、これ……この子達?」
 表紙の南瓜の楽団に、自分らしき姿、そして、楽しげな猫たち。
 アンプルナが首を傾げれば、
「ええ。私は魔女だから、私の知らない事も、この夢の中では知っているの」
 悪戯っぽく微笑んで言う蓬莱が拍子を捲れば、ぽん、と、紙面の上で生き生きと動き出すのは、この場に集まった相棒達です。
「わぁ……」
 暫し魔法の飛び出す絵本を楽しむ一同。
 やがて、楽しげに笑って食べて、踊ってと楽しんだ時間は過ぎていき、一人、また一人と再び眠りの中に戻って行くようで。
「とっても楽しかったよ〜。また来年あおーね♪」
 アンプルナは南瓜の楽団に手を振ると、心地良い眠りへと落ちていくのでした。

●おもいでは
 目が覚めればいつものお家、いつもの姿の自分。
 けれど、確りと憶えている黄金色の光景。
「帰ったら、羅喉丸にもとっておきの冒険譚を聞かせてあげましょう」
 眠りから目が覚め、出掛けている主と、そして楽しい夢を思って、ネージュは微笑むのでした。