【AP】ぼくのおはなみ
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/05/08 22:46



■オープニング本文

 ※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

「うみゃーっ?」
 ここは胥という猫さんの夢の中。
 胥は白黒の猫で、赤い飾り紐を首輪にしていて、見た目は大分大きい若い猫となって居ますが、お屋敷育ちでちょっぴり子供っぽい甘えん坊です。
 胥は胥よりも一回りほど大きな黒い猫の黒甜と共に、ご主人様である少年に籠に入れられ、一緒にお出かけに来ていた筈でした。
「うがっ、にんげんたちがまたいないのにゃ」
「みゅー、ここ、僕達の知らないところにゃ?」
 黒甜は胥より一回りほど大きな黒猫で、首には金糸を編み込んだ飾り紐を付けていて、ふてぶてしい顔つきはお屋敷に入る前の野良さんだった頃の名残です。
「おれさまはきいていたにゃ、ここは『さくらのめーしょ』とかいうところにゃ」
「ごしゅじんさまいなくなっちゃったにゃ?」
「うが、またみなまいごになったにゃ。ひとばんたてばかえってくるにゃ」
 ちょっと落ち着かない様子でそわそわじわりとする胥ですが、どうにもこの黒甜、すっかりと一日だけ人が居なくなると言う不思議現象には慣れたようで平然としたもの。
「まいごなにんげんがもどるまで、ごちそうたべてあそぶのにゃ!」
 どうやら胥と黒甜が居るのは桜の名所と名高いところの、特別なお宿のよう、偉い人が居るようなお部屋や、街中の屋台などでは人間はいないものの食べ物などは並んでいたりと、桜のお祭りのまっただ中にいるようです。
「うにゃ、あのひらひらおちてるの、きれいなのにゃ」
「うがっ、みにいくにゃ!」
 黒甜に誘われて、胥も尻尾をぴんと挙げると、桜満開の街へと降りてみるようなのでした。


■参加者一覧
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
此花 咲(ia9853
16歳・女・志
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
岩宿 太郎(ib0852
30歳・男・志
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
レビィ・JS(ib2821
22歳・女・泰
ウルグ・シュバルツ(ib5700
29歳・男・砲
宮坂義乃(ib9942
23歳・女・志


■リプレイ本文

●満開の桜の下
「わぁ……」
 桜色に染まる景色の中、桜の木を見上げて感嘆を漏らすのはフィン・ファルスト(ib0979)の相棒で、アーマー「人狼」のガラハッド。
 ガラハッドは身体が50cm程のぬいぐるみ程の大きさとなっており、木々が大きく立派に見えるよう、ふと気が付いいてガラハッドは周囲を見渡します。
「フィン……? 置いてかれちゃったの、かな?」
 んー、と首を傾げてから、仕方ないなぁと溜息をつくと、ガラハッドはぽてぽて歩き出して。
「アレだけ普段から、周りにお酒飲むなって言われてたのに」
 どうやらガラハッドは相棒がお酒を飲んで酔っ払ってどこかへ行ってしまったと思っているようです。
「うにゃ?」
「みがっ!」
「あれ? 君達、久し振り?」
「がらはっどさんにゃ」
 のんびり歩いていたガラハッドは尻尾をぴこぴこ揺らしていた胥と黒甜とばったり、嬉しそうに尻尾をぴんと立てる二匹とお互いにご挨拶。
「……ふぇ、聞き覚えのある声がしたです……」
 その声を聞いていたのは、綺麗な桜並木の中途方に暮れていたウルグ・シュバルツ(ib5700)の相棒で駿龍のシャリア。
 はぐれたのとも違う様子に予感があったのか、恐る恐る桜の木の陰から顔を出して、見知った姿にシャリアはぱぁっと顔を輝かせて出てきます。
「……やっぱりです……! 胥さん、お久し振りなのです!」
「うにゃ、シャリアちゃんにゃ! 会いたかったのにゃ!」
 嬉しそうに駆け寄る胥にシャリアもぽてぽて駆け寄って、ガラハッドと黒甜にもほわっとした笑みを浮かべます。
「いい感じに、桜が咲き乱れていますわね。絶好の花見日和ですわ」
 満開の桜の下を可愛らしいバスケットに此花 咲(ia9853)の相棒で羽妖精のスフィーダ・此花は、上機嫌でぱたぱたと飛びながらここへ通りかかり、気が付いてぱたぱたと側へ寄って。
「貴方達もお花見かしら?」
「あ、ようせいさんにゃ! ようせいさんはひとりにゃ?」
「今日は、マスターがいない事ですし……思いっきりハメを外させて頂きますわ!」
 ぐっと力を込めて言うスフィーダは、ちょっとずれかけたバスケットを抱き抱え直すと口を開きます。
「さ、行きますわよ!」
「ふぇ?」
 きょとんとするシャリアですが、ぱたぱたと進むスフィーダにつられる様に歩き出す一行。
 どこで見ようかしらと辺りをスフィーダが見回せば、あちらこちらに屋台とご馳走はあるようですが、やはり人の姿は見えません。
「ここはどこかしら。桜がキレイねえ……いつもはちっちゃな人間を怖がらせないように気をつけて飛ばないといけないけど、今日はその心配はなさそうね」
 桜の花びらに心地良さ気に言うのは菊池 志郎(ia5584)の相棒で鷲獅鳥の虹色、今日はちょっと大きなぬいぐるみぐらいになっており、目を細めて桜並木の下を歩いていました。
 シャリア達の様子が虹色からも見えたよう、ゆったりとした様子で一行に歩み寄ると。
「あらぁ、可愛い子たちねぇ?」
 かけられる声にガラハッドが首を傾げてみると、そこにはしなやかな肌触りを思わせる雄の鷲獅鳥がにこやかに笑っており、虹色にシャリアはちょっぴりガラハッドの後ろでもじもじと見ています。
「ここで会ったのも何かの縁、皆でお花見しない? 一人はつまらないわ」
「うにゃ、みんなでおはなみにゃ?」
「えぇ、良ければだけれど」
「あら、あの辺りが宜しいのでは?」
 なんとなく胥と虹色が肉球たっちをしていれば、スフィーダが声を上げて一行を促します。
 そこは大きな桜の木を中心に下に広い芝生の場所があり、お弁当を広げて花を見上げるのには最適な場所。
「そちらを持ってもらえないかしら?」
「みが、こっちのはしはおさえたにゃ」
 スフィーダが籠から引っ張り出すのは茣蓙、何処に入っていたのかと思うくらいの大きさであるものの、端っこを押さえるように黒甜が乗っかり、ガラハッドがスフィーダの言葉で端っこを持ってぽてぽて端っこへと運び広げました。
「これで良しと……」
 にっこり微笑むスフィーダ、そこへ更に聞こえてくる声があります。
「キレイな桜だ! お料理だー!」
「神父様と一緒に花見に来たはずなんだけれども、迷子なのね……しょうがないわね」
 やって来たのは岩宿 太郎(ib0852)の相棒で甲龍のほかみと、エルディン・バウアー(ib0066)の相棒で迅鷹のケルブ。
 ほかみが全身で桜満開の下、歓声を上げて見上げていれば、ケルブは首に括り付けられた包みに目を落としつつ、ちょっと不思議そうな表情で何処に行ったのかしら、と呟いて。
「あ、誰かいる?」
「あらぁ、良かったらあなた達もこちらにいらっしゃいな」
 首を傾げるほかみににこやかに虹色が声を掛けて。
「そうね、折角だからご一緒しようかしら?」
 ケルブがぱたぱたと茣蓙の所までやってくると、ちょんと首に括り付けられた包みから器用に首を抜いてそれを茣蓙の上に置くと、やはりちょっぴりガラハッドの後ろから顔を出してなにかなと気になっている様子のシャリア。
「それなんにゃ?」
「これ? お弁当よ。神父様が私のために作ってくれた焼肉定食なの」
 シャリアと同じく気になった様子の胥がそう聞くと誇らしげにケルブは答えます。
「うあ〜、極楽〜。ご主人いないから静かだし、満喫しちゃおっと。一度くらいゆっくり風情を感じながらお食事してみたかったんだ〜」
 笑っていうほかみの背後でがさがさと音がすると、ひょこりと顔が現れきょときょとと周囲を見渡しました。
「どうやら桜花はいないみたいだな」
 それは宮坂 玄人(ib9942)の相棒で駿龍の義助、同じ玄人の相棒でからくりの桜花はよっぽどにお喋りのようで、しんなりとしながら歩いていて、はと気が付いた時には桜花の姿が見えなかったようです。
 はぐれたか何かに興味を持った桜花が居なくなったのかと思った義助は、他に誰も居ない中で聞こえた一行の声を聞きつけて念の為確かめに来たようで。
「桜花さん? そういう方はいらっしゃいませんわ」
「……という事は、のんびりと花見が出来る?!」
「なんか知らないけど、楽しんでいけば?」
 スフィーダが言うのに義助が顔を上げるとほたかもくいと首を向けて言えば、ではお邪魔して、と茣蓙にちょんと腰を下ろしてどこかほぅと幸せそうな表情を浮かべます。
 拠点を決めてから、ちょこちょこと屋台に仕入れに言ったりしている一行、胥と一緒に屋台を見に行っていたシャリアは、そこで見覚えのある人、基犬を見かけました。
「ヒダマリ、さん……?」
 ちょっぴり自信が無さそうにシャリアが聞くには理由があります。
「ああぁまた変なところで道に迷って……」
 シャリアが声を掛けたのはレビィ・JS(ib2821)の相棒で忍犬のヒダマリ、屋台の並ぶ辺りでふるふると震え心配そうにおろおろあっち行きこっち行きと、はぐれた相棒のレビィを探していたようですが、さっぱり見つからず落ち着かないよう。
「全く、本当にお姉ちゃんったらどこに……」
「ヒダマリさん?」
 聞こえていなかったようでもう一度シャリアが声を掛ければ、はっと弾かれたようにシャリアを見るヒダマリ。
「だれかさがしているのかにゃ?」
「大丈夫、ですか……?」
 一瞬思考が止まった様子のヒダマリですが、直ぐに取り繕うようにふるふると首を振ってからシャリアと胥に向き直って。
「大丈夫ですよ。それより、シャリアさんは?」
「みんなで、お花見しているのです」
「お花見、ですか?」
 シャリアが差し示す方を見れば、各人ご馳走を追加して茣蓙の所へと戻って来ており、良く見ればお酒もそこに並んでいるようです。
「そ、そうね……お姉ちゃんもここに戻ってくるかも知れないし、うろうろするのは得策ではないわね……」
 動揺を押し隠すように言うヒダマリ、一緒に茣蓙のお花見へと合流することにしたのでした。

●ご馳走を食べながら
「胥さん、美味しいですか?」
「おいしいのにゃ、シャリアちゃんは?」
「美味しいのです」
 ほわっと笑みを浮かべながらお肉を分け合って食べているシャリアと胥、食べやすく小さくしてから食べている間、その横ではあんぐりと大きく口を開けて黒甜がお肉をもしゃもしゃ食べていて。
「おいしそうね〜。生肉はあるのかしら?」
「くしやきのところにあったかにゃ?」
「うーん、焼く前のお肉はあったみたいだよ?」
 虹色が訪ねるのに黒甜はくいと首を傾げてガラハッドを見上げ、ガラハッドも頷きます。
「あら、じゃあちょっと貰いにいこうかしら」
「おれさまもいくにゃ!」
「ぼくもいこうか?」
 連れだって立ち上がると、屋台に向かっててこてこと歩き出して。
「あら、本当。いろんな種類のお肉があるのね」
「おさかなにゃ! ……でも、ちょっとおおきいにゃ」
「大丈夫? ぼくが持ってあげるよ?」
「ほんとかにゃ? ありがとうなのにゃ!」
 幾つか追加の戦利品を手に入れて茣蓙の所へと戻ってくれば、お酒でも嗜もうとなっているところで。
「ヒダマリさん、大丈夫?」
「いやいや大丈夫です。落ち着いてますよ」
 お手々をぷるっぷるさせながらお肉を口元へと運ぶヒダマリに、ちょっぴり心配げに聞くケルブ、ヒダマリはちょっと目が泳ぎつつ落ち着こうとばかりに側に置いてあったお湯のみをぎゅと握るとぐいと煽ります。
「ふうぅ……」
「あら? 私のお酒、何処に行ったのかしら?」
 きょとんと首を傾げるスフィーダ、どうやらそれはスフィーダのお酒だったよう。
「なかなか美味しいですね……」
 ヒダマリの目が座って居る気がするのはきっと気のせいでしょう。
「それにしても、空にも屋台あるのかしら?」
 桜の花を見上げ、更に空を見上げて言うほかみ。
「花と来たら買い食いでしょ! 槍じゃない串団子とかお花見に合うものよ! 桜の花もキレイだけど、やっぱり私の乙女心は団子でこそ満たされるってもんよ!」
「はなよりだんごなのにゃ?」
「お花もお団子も美味しそうなのです……」
 ぐっと力説するほかみに、胥とシャリアは頷きながらほのぼのと空の上の屋台を思い描いているようで。
「兄様にも、見せたかったです……」
「うにゃ、ごしゅじんさまも、みているのかにゃ……?」
 想像してその楽しそうな光景にぱぁっと顔を輝かせると、途端にシャリアも胥も相棒や御主人にもその光景を見せたいと思ったようで。
「そういえば、皆の相棒やご主人様ってどんな人なのかしら? ちょっと其の辺りお話ししない?」
 ケルブが提案すればどういうお話なのかきょとんとする一行。
「そうね、言い出した私から……私のご主人様……じゃなくて恋人は教会神父よ」
「神父様?」
「ええ。神父様がアヤカシに襲われていたときに私が助けてあげたの」
 えっへんと胸を張るケルブは、アヤカシから助けたと言うのにわぁと驚きと何処か尊敬を込めた眼差しを送る猫二匹に軽くウインクをしてみせます。
「神父様は私を神の使いとか何とか言ってたわ。よく分からないけど、とても優しくしてくれるから、きっと私にLOVEなのね! もう、私ったら罪深いわね♪ しょうがないから、教会で神父様を守っているのよ」
 そこまで言ってからはぁと溜息をつくとケルブは。
「信者とかいう人間がよく教会に来るけれども、女の人にはずいぶんと笑顔なのよね〜、私って恋人がいながら妬けちゃうわ」
 そう言ってほうと仕方がないわねとばかりに翼を竦めて見せます。
「心配しなくっても男は包容力のある女が好きなのよ」
「そうかしら? でも、やきもちを焼いちゃうのは仕方がないと思わない?」
「そうねぇ、恋人のやきもちは嬉しいものじゃない?」
 ケルブは虹色の言葉にちょっと嬉しそうに目を細めると、他の子達は? と聞き、ちょっぴり考える様子を見せてから口を開くのはガラハッド。
「んとね、普段磨いたり、部品の点検も、定期的にやってくれるのは、いいの。でも、新型の気密性を試すからって、海に飛び込まれたら、錆ちゃう」
「えっと、それは大変、なのです……」
 シャリアが言えば頷くガラハッド。
「あと、戦いや土木作業もいいけど、もう少し優しく、扱って欲しい、かな。無茶ばっかりするから、危ないの。ぼくも、中のフィンも」
 フィンに何かあったら悲しいし、ふぅ、と息を付くガラハッドに、分かるとばかりにうんうん頷く一同。
「あら、中々に面白そうな事を話していますわね。私も混ぜて下さいませ」
 そこになかなか酔いの回ったスフィーダが声を上げると、ばんばんとバスケットを軽く叩きながらスフィーダは続けます。
「まったく。うちのマスターと来たら……聞いてくださいます!?」
「とりあえず、ぜんぶいってしまうといいのにゃ、ついでにもっとのむにゃ」
 話し始めてからふつふつとしたものが溢れそうになって居るスフィーダに、お湯のみを改めてとんと置いてたっぷり並々とお酒を注ぐ黒甜、きゅーと飲み干してから、きっと青を挙げて
「毎日毎日、朝早くに叩き起こしにきては『スフィーダさんはまだまだ未熟なのですー』とか言って、きつい修練ばかり与えてきて。しかも、模擬戦の時は手加減の手の字もせずに打ちのめしにくるのですよ!? あれは、間違いなくドSですわねっ!」
 きしゃーと火でも吹きそうな勢いでぶんぶかと手を振って言うスフィーダは、話していてどんどんと盛り上がっていくよう。
「まま、もういっぱいにゃ」
「きゅーっ……ぷはっ! お昼御飯はたらこ入りおむすびばかりだし、自分の胸が小さいからって私の胸を妬ましそうにみるしで。ほんと、器量も度量も小さいですわ!」
「……むねがちいさいとなにかあるにゃ?」
「よくわからないのです……」
 更にお酒を飲ませていく黒甜と更に勢いを増すスフィーダの相棒への愚痴、胥とシャリアはちょっぴりきょとんとしていますが、虹色は微笑ましげに見ています。
「……まぁ、でも、まぁ、感謝する事も多いですけども」
 ちょっぴり照れも入りながら、こほんとひとつ咳をしてから言うスフィーダ、ちょっとほのぼのしていれば、義助は桜を見上げてから顔を戻すと口を開いて。
「俺の主人は桜の花が大好きなんだ。今日も花見に来ていたはずだったんだがな」
 はぐれたのか義助は笑みを浮かべて言うと、少し不思議そうに本当に何処ではぐれたのか、と続けて。
「ただ、修羅ゆえに男勝りなのが難点か……」
 ちょっぴりどういう人かを説明しようとしていて自然と出て来るのは心配しているような言葉で、幾つかこんな所もあるんだがと目を細めて言う義助。
「そういえば、先程仰っていた桜花さんという方は?」
「あぁ、いや……今、玄人と一緒にいるからくりが凄くお喋り好きでな……」
 スフィーダが聞くのに遠くを見る義助は、深く深く溜息をついて。
「この場にいたら興奮して滅茶苦茶叫んでいるだろうな……」
 ま、今日はのんびり花見だ、と言う義助。
「もーね、いつもいっつも! 私が言ったっていうのに!」
 声を上げるヒダマリ、先程まで相棒に対して心配だからかぷるぷると手を震わせていたヒダマリは、すっかり出来上がったようで、手元のお湯のみを抱え込んで明らかによくない方向の酔い方をしているようです。
「全くそれで私が毎回どれだけ苦労しているか……お姉ちゃんはさっぱり分かってないんですよ。私が居なければなーんにも出来ないのに! それに……あれ。お酒がない。ちょっとー、お酒無いですよー。おーさーけー」
「どんどんのめにゃ!」
「ばんばん注いでください! ばんばん!」
「……ヒダマリさん、何だか大変なことになっているのです……」
 ますます興奮していくヒダマリと煽っている黒甜ですが、何だかちょっと楽しそう、それを見ながらちょっと吃驚しているシャリアに、胥はくいと見上げます。
「シャリアちゃんのあいぼうさんはどんなかんじにゃ?」
「え、あの、にいさまのこと、です……? えっと……にいさまは、とっても優しいのです」
 話を振られて思い返してから、かぁっと赤くなりながらもじもじというシャリアですが、そう話す様子は嬉しそう。
「見返りなんかなくても、いつも人の為に頑張ってるのです。お仕事の時もありますけど……危険なとこにも行くから、大きな怪我しないか心配なのです」
 やはり気持ちとしては心配なのでしょうが、ほわっとしたシャリアが珍しくぐっと決意を込めた表情を浮かべます。
「だから、にいさまが無事でいられるようにシャリアも頑張らないとなのです!」
「みゃ! とってもいいひとなのにゃ? ……ぼくも、つよくにゃれたらいいのににゃ……」
「うふふ猫ちゃん達のご主人のお話も聞きたいわ」
 シャリアの様子に胥は普通の猫であることにちょっとしょんぼり、微笑ましく見ていた虹色はそう胥へと聞いて。
「みゃ……あるひおうちにきて、ぼくにこのかざりひもをくれたのにゃ。やさしくてだっこしたりなでたりしてくれて、ねるときもいっしょでごしゅじんさまのゆみのけいこをみたりしているにゃ。がんばって、かいたくしゃになりたいっていってたにゃ」
「あら、胥ちゃんのご主人様も頑張り屋なのね。胥ちゃんはご主人様の傍に居てあげたり、帰る場所を守るのも大事なのよ?」
 虹色がなでなでとにくにゅうで胥を撫でれば、ほふぅと息を漏らすほたか。
「み、皆かなり惚気てくんのね……正直どこもウチみたいなもんかと思ってた! ヨソはヨソ、ウチはウチっていうけどこんな露骨に違うなんて神様このやろう!」
「な、なにがあったのにゃ?」
「う〜、うちのご主人なんて仕事で奇行に走るし未だに独り身だし貧乏だし……」
「モテない主見てると時々心配になってくるわよね。何が足りないのかしら。求愛のダンスができないから?」
「何より体格差ってものを考えずに自分基準でご飯よこすのよ! そりゃ毎度ご飯奪うわよ! 体積考えてよ! 死ぬよ! もーちょっと稼いでもーちょっとご飯出してよ――っ!!」
「……流石に龍に人の分量のご飯は酷いわね……」
 ほかみはなかなか苦労しているよう、
「ぐ、愚痴ばっかもアレね、え〜っと……そ、そうそう、ごくたま〜に開拓者らしいことするから限界ギリギリでちょっとだけ見直してるのよ、真剣にリクルートしたいけど!!」
「……そっちも苦労しているのだな」
 ほたかの様子に同情気味の義助、虹色はくすっと笑ってから、自身の相棒を思い浮かべます。
「こうして喋ってると、アタシも志郎ちゃんが懐かしくなってきたわ。港に来たら爪のお手入れしてもらおうっと」
 楽しげに話しながら、暫くの間、相棒達のお話は続くようなのでした。

●空の散歩
「どうかしら? 空からの景色は」
「わぁ、ぜんぶさくらいろなのにゃ」
 空からのお散歩をしようとなり、ケルブが胥を乗せて飛べば、ガラハッドは頭以外の甲冑を外し、マントは恥ずかしいので取らないらしいですが、ほかみに載せて貰って空からの景色にわぁと感嘆を漏らします。
「飛べるみんなは、いつもこういう光景、見られるんだよね。いいなぁ……」
「ここまで揃うと見事ね〜」
「おやまのてっぺんもよかったけど、おそらのうえもすごいのにゃ!」
「楽しんで貰えているなら何よりだ……本当に良い景色だな」
 義助が心地好さげに飛べば、背に乗る黒甜が嬉しげに尻尾をぴんとたてます。
「そういえばウルグが居ない……まさか彼が……!?」
「にいさまがどうかしたですか?」
「男は皆獣なの! 何を考えているのか!」
「え、えええっ!?」
 シャリアに載せて貰っていたヒダマリが、ウルグとレヴィに何かあったのではとじたじたするのに、シャリアもあわあわとしてみたり。
「ん〜、心地良い風ねぇ」
「こうして桜を見下ろすのも、中々に宜しいですわね」
 虹色が言えばスフィーダは笑みを浮かべて。
「今日は、中々に楽しかったですわ。来年もまた、こうして会えると良いですわね」
 スフィーダの言葉に頷く一同、相棒達のお花見は、今暫くの間続くのでした。