摂養の湯は如何?
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: イベント
危険
難易度: 普通
参加人数: 22人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/13 21:52



■オープニング本文

 その日、開拓者ギルド受付の青年である利諒は、ギルド内にぺたりと一枚の『お知らせ』を張り出していました。
「これで良しっと‥‥傷湯治で人気の場所でしたねぇ、なんだか懐かしいです」
 そう言って頷く利諒、どうやらお知らせの内容は湯治で知る人ぞと言われる類の宿からのもののようで。
「おう、どうした?」
「あ、庄堂さん。これなんですけれど、ほら、今ちょっと大変な状況じゃないですか、この辺り」
 利諒に声をかけるのは庄堂巌、利諒と同じ開拓者ギルドの受付をしている男性です。
「あー‥‥そうか、確かに今の状況じゃ、客は来ねぇな」
「ええ、どうせお客様が来ないなら来ないで、場所や人を遊ばせておくあれもないとのことで‥‥」
「しっかし、懐かしいとか何とか言ってたみてぇだが?」
「あっはっは‥‥幼少期親に扱かれたとき、この霊山だったんですよー」
「‥‥傷湯治にお勧めの宿が、幼少期の扱きとあまり繋がらねぇのは何でだ」
「‥‥つ、追求しないで下さい‥‥」
 少し遠い目をする利諒ですが、ふとなにやら思いついたのか。
「どうせなら、庄堂さんも行ってきてみればどうです? 傷の治りが早い、気がしますよ」
「気がするだけなんだな‥‥」
 何ともいえない表情の庄堂ですが、改めてお知らせへと目を向け。
「えー‥‥『当方、摂養の湯という湯治宿。此度の戦において、開拓者の皆々様へ、一時解放致したく‥‥』なんたらかんたら‥‥宿舎と宿があって、その中の宿の方を解放するってぇ感じか」
「宿舎まで開けて受け入れる余裕はないんじゃないですか?」
 利諒の言葉に首を傾げると、庄堂はそんなもんかねぇとばかりに頭を掻くのでした。


■参加者一覧
/ 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 弖志峰 直羽(ia1884) / 九法 慧介(ia2194) / 平野 譲治(ia5226) / 倉城 紬(ia5229) / 珠々(ia5322) / 御神村 茉織(ia5355) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / リエット・ネーヴ(ia8814) / 紅 舞華(ia9612) / アルーシュ・リトナ(ib0119) / 琥龍 蒼羅(ib0214) / 明王院 浄炎(ib0347) / 明王院 未楡(ib0349) / 无(ib1198) / 真名(ib1222) / リンスガルト・ギーベリ(ib5184) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / ローゼリア(ib5674) / 雪刃(ib5814


■リプレイ本文

●温泉を楽しみに
 後に、開拓者ギルドのR氏は語ります、『非常に気不味かったです‥‥』と。
『Sさんの古傷に良いかなと思って一緒に来たのですけれど‥‥部屋をこの忙しいのに変えて頂くわけにも行かず‥‥』
 尚音声を変えてお送りしております、R氏達の隣の部屋は明王院 浄炎(ib0347)と明王院 未楡(ib0349)の夫婦。
 当人達は節度ある行動を取っているつもりでも、必ずしもそれが出来ている訳では無いと言うこと、激しく睦み合うのは個人的に秘湯にでも行って二人きりでするのが吉でしょう。
 気を取り直し、合戦場に程近い湯治の宿は、合戦が始まって以来の久々の活気に沸き立っていました。
「んっ、良い天気なりよっ!」
 晴天の空、平野 譲治(ia5226)が実に嬉しそうな様子で伸びをしてから空を見上げれば、やぁとばかりに目があって軽く手を振るのは礼野 真夢紀(ia1144)。
「合戦時は忙しいし、嬉しいですよね」
「そうなりっ! なので全力で休むなりよっ!」
 平野がそう元気良く言うのに、真夢紀も笑って頷き、出迎えに来た宿の人に部屋の場所を聞くのでした。
「ローゼリア・ヴァイスですの」
「真名よ。よろしくね」
「はい、それにリトナ様ですね。お部屋の方にご案内致します」
 仲睦まじそうな三人に宿の仲居さんもつられて笑みを浮かべて。
 部屋に向かうながら歩く三人は、仲良くお喋りなどもあってか、広めの部屋にアルーシュ・リトナ(ib0119)と真名(ib1222)、それにローゼリア(ib5674)、三人は本当の姉妹のように楽しげな様子で仲居さんについて部屋に向かいます。
「温泉なんて久しぶり‥‥折角だし楽しみましょ」
「そう言えば、ローザさんは温泉初めてでしたね?」
 楽しげに目を細めて言う真名、アルーシュは微笑みを浮かべて訊ねると、頷いてちょっとどきどきした様子を見せるローゼリア。
「ええ、楽しみですわ。でも、療養とありましたが、傷にきくんですの?」
「ええ、傷の治りが早いとか、色々と言われているんですよ」
 そうにこやかに言って部屋へ案内する仲居さんに、いくつか露天風呂があるらしいのを確認して、その一つを使いたいとお願いすれば、貸し切りで時間をあけてくれるとのこと。
 それを聞けば、早速浴衣などを借りて楽しそうな様子の三人。
「私も、前の時は見よう見まねでしたから‥‥」
 教えてくださいね、そう笑いかけるアルーシュに、真名はにっこり笑って頷いて、やってきたのは囲いのある庭に面した露天風呂。
「わぁ、庭がとても綺麗ですわ」
 ぱっと顔を輝かせるローゼリア、真名に習ってかけ湯を手桶で掬って行えば、にっこりと笑いかけ口を開く真名。
「じゃ、流しっこしましょうか♪」
 おしとやかな女性が揃っていても、きゃあきゃあと明るく華やいだ声は上がるもの。
 楽しげに話していた三人、真名が最初にお湯に入れば、アルーシュもお湯へと入ってゆったりと浸かり、ローゼリアはどこかおっかなびっくり。
 ちょんと足先を入れてはきゃっと引っ込めるのを繰り返しています。
「ローザさんは猫の獣人ですけど、熱いお湯は大丈夫ですか?」
 そう尋ねかけて、あまり熱すぎない所を勧めるアルーシュ、猫舌と同じ感じなのでしょうか? そんな風にちょっぴり心配げに見るアルーシュに、意を決したか縁に腰を下ろして足を入れると、ぎゅっと目を瞑って縁に捕まったままお湯へと入って。
「ぁ‥‥」
 源泉に近すぎないところを勧めてくれたアルーシュのお陰か、程良い熱さのお湯は心地良いようで、ほんのりと頬を染めたローゼリアにほっとしたようなアルーシュ、真名も掬って肩にかけたりして。
 後に身体を洗って湯船に入れば、岩に囲まれた湯船は三人ではいるとゆったりとしていて、岩に腰を下ろした状態で浸かりながら自然と話も弾みます。
「蒸し風呂とは違う良さがありますね」
「ん‥‥慣れると、良いものですね‥‥」
 微笑むアルーシュに、あまり意識していなかった身体の疲れなども感じられるのか、軽くお湯の中で腕を揉むようにしてローゼリアも頷き。
「ん〜〜♪ 良い気持ちね」
 そう言ってお湯の中で伸びをした真名は、にっこり笑って二人にぎゅっと抱きついて。
「二人とも大好き♪ これからも宜しくね」
 互いにその思いを確認してから、楽しげな様子の三人の時間は、今暫くの間ゆっくりと流れているようなのでした。

●心許す者と
「温泉です! 気合を入れて湯治です!」
「湯治は気合いを入れるものなのか‥‥?」
 ぐっと気合い十分でその露天風呂に入ってくるのは珠々(ia5322)、その様子に微笑を浮かべながら一緒に入ってくる紅 舞華(ia9612)は笑いながら小さく首を傾げて。
 二人が入りに来たのは、一応柵はあるものの、崖から景色が見下ろせる、庭に突き出た形の床も湯船も滑らかな板張りのお風呂。
「あぁ、でも‥‥確かにこれは心地良い湯だ」
 湯船に歩み寄って手で湯加減を見れば笑みを浮かべる舞華、仲居さんが頼まれたお酒を持ってきたのを受け取ると珠々と共にかけ湯の後にお風呂に入って。
「うむ、良い湯だ」
「入ってみたら思った以上に広いです」
 のんびりと入りながら珠々がふぅと息をつくと、お湯に浮かべた盥からお銚子を手にとってちびりとお酒を楽しむ舞華は、笑みを浮かべて軽く振って見せて。
「珠々も今回お疲れ様、酒飲むか? ‥‥っとまだ飲めぬな」
 縁にてーと身体を預けてのんびりお湯に浸かっている珠々は、これでもか、というぐらいに楽しげに茹だっており、笑って手のお猪口をくいと干すと盥へ戻し縁へと置いて、改めて肩まで浸かってふぅと舞華は息をついて。
「後で美味しい物を一緒に頂こうな」
「楽しみです〜‥‥」
 ちょっぴりぼーっと煮えていた珠々、ふと思いついたか、ちゃっと手を組むと、ぴゅーっとお湯を舞華へと水鉄砲ならぬお湯鉄砲。
「わ、やったな?」
 お湯がかかってにと笑う舞華、珠々へと同じようにお湯をぴゅーっとかけ返して、そこからは楽しげに盛り上がる二人。
「おー‥‥えぇと、珠々ちゃん、大丈夫?」
「思い切り‥‥のぼせ、ました‥‥」
 お食事を一緒にと約束していたお座敷にて、浴衣でぱったりと行き倒れている珠々に、やってきてからとりあえず扇子でぱたぱたと扇ぐ弖志峰 直羽(ia1884)。
 御神村 茉織(ia5355)も入ってくると、窓際でのんびりと風に当たりながら、珠々を団扇で扇いでいた舞華がなかなか良いお湯だった、と話して。
「夕食まで、とりあえず少しのんびりするかねぃっと。お、そうだ、さっきちらっとあの二人見かけたぞ」
「なるほど、暇を見て呑みに誘うか」
 御神村と舞華はそんなことを話しながら、珠々の様子を見守っているのでした。
「お招きいただきありがとうございます♪ この機会にゆっくりとさせて貰いますね」
「あ、紬ねー!」
 かけられた声に倉城 紬(ia5229)が振り返れば、そこで嬉しそうに笑みを浮かべていたのはリエット・ネーヴ(ia8814)です。
「リエットさん」
「あ、今回はよろしくなのっ!! リエットだよ。温泉に入りに来たっ!」
 紬が笑いかければ、あ、と小さく声を漏らしてから、宿の人へとにっこり笑って挨拶をするリエット。
 微笑ましげに見ている宿の人が部屋へと案内すれば、小さめの個室ではありますが、真ん中の障子を動かせば一部屋になる続きの間で。
「入り口で会えて良かった、結構混んで来ていますしね」
 紬に言葉に嬉しそうに笑うと、ぎゅーっと腕に抱きついてからきらきらした目で見るのに笑うと早速荷物を置いて支度、浴衣を手に取り着替えるとリエットが着るのも手伝ってから、卓の上にメガネを置く紬。
 メガネを外すと世界が一瞬にしてぼやけて色分けされたものへ、リエットがニコニコしながら手を引いて、教わっていた湯に向かいます。
「一緒に身体と頭を洗いっこしよー?」
「はい、髪はこんな感じで‥‥」
 嬉しそうにはしゃぐリエットにつられるように楽しげに笑う紬は、自身を洗い終えるとリエットが身体を洗うのを手伝って、髪をしっかりと洗ってあげて。
「あわあわ・・・きゅっ、うっきゅー♪ 紬ねーお湯かけていいじぇ〜」
 良く髪を洗い終えれば、あわあわとしてから目をぎゅっと瞑って両手で押さえて言うリエット、紬はそれを見てくすりと笑うと手桶にお湯を汲んで上からかけながら髪を濯いでいきます。
「綺麗になったじぇぇ!!」
「‥‥最後に一緒に肩まで浸かりましょうね♪」
 手を振り上げて居るリエットに笑いながら、湯船に入ればおいでおいでをして紬はリエットを呼んで。
 うずうずと飛び込みたい様子を見せるリエットも、紬の手招きに、大人しく湯船につかることにしたよう、ぎゅっと紬に抱っこされながらゆっくりと肩までつかれば実に幸せそうで。
 そんな様子に紬はふっと、自身の姉妹達を思い浮かべ目を細めて。
 リエットは、そんな紬に抱っこされて満面の笑みのまま、髪の一筋もぴこぴこと揺れているようで。
 今暫くの間二人は、のんびり幸せそうに時を過ごすのでした。
「八曜丸、やっぱり温泉って良いですねぇ」
「もふぅ‥‥」
 こちらは、宿の裏手を少し上ったところにある露天風呂に、のんびりとつかっているのは、髪を纏めてあげる姿がちょっぴり色っぽい柚乃(ia0638)、付いてきたもふらの八曜丸はちょっぴり茹だり気味です。
「何かこう‥‥解放されるような気分に。え? 身も心も?」
「おいらはむしろ、身から心が解放されそうもふ‥‥」
 煮詰まる前に上がって、お風呂脇でふるふる水分を飛ばすとふぃーと風に当たる八曜丸、温泉脇の風は程良く暖かくて、茹だった身体にはちょうど良いよう。
「天儀秘湯名湯巡りの旅‥‥なんてあったら素敵なのにっ」
 むしろあったら神楽にいつ帰り着けるか分からないほど温泉好きとのこと、たまに温泉に行けるのが逆にちょうど良いのかもしれません。
「んー‥‥滞在中に雨が降ったら、屋根のある宿のお風呂にも入りましょうか?」
 それはそれで風情がありそうとお湯を出て浴衣を身につけながら微笑む柚乃は、八曜丸と部屋へ戻ると、しっかり拭いてあげてもふもふとしている八曜丸に埋もれて、とりあえず夕食の時間まで夢の中。
「休めるときに休まないとね」
 管狐の尾無狐の頭を撫でながら、庭に面したお風呂を勧められたのは无(ib1198)。
 まずは食事前に力を抜いてのんびりと疲れを取ろうとのようで、暫く身体を休めてつかれば、目を細めて湯から上がり。
「さて‥‥少しゆっくりしてから食事かな‥‥」
 軽く肩を回して脱衣所へと戻っていく无に、尾無弧もついて部屋へと戻っていくのでした。

●賑やかに穏やかに
「‥‥なるほど‥‥」
 何やら宿の広間で宿の人と話しているのはからす(ia6525)、どうやら温泉の効能などを聞いて居たようで興味深げに頷いて。
「薬湯の類なのだろうかとも思ったが、ふむ‥‥」
「確かに普段の湯治の時には、お客様の中には薬湯をご希望の方もいらっしゃいますが、温泉と混ぜるのではなく、宿にある湯船に入れて入られる形になりますね」
 そうからすに説明するのは、宿の湯の管理を主に行っている男性で、何かお気づきの点がありましたら、と頭を下げてお仕事に戻るようです。
「さて、ゆっくりと湯にでもつかろうか」
 そう言って暖めて貰ったお酒の入った徳利を手に露天風呂へと向かうからす、と。
「おやおや、良薬も過ぎれば身体に毒だよ」
 宿の広間の入り口辺り、のぼせてぱったり転がっている平野、少し遡りますが、平野は男性が入っている時間と分けられていた温泉に入って、ぷかぷかとお湯を堪能していたのですが、何事も全力、故に、ちょっとばかり入る時間が過ぎたよう。
 からすはふらりと少し廊下を戻ると、冷たい水の入ったお湯呑みを手に戻って来て、微苦笑気味に渡せば、そのお水で少し生き返った様子の平野。
「どうかな?」
「大分‥‥調子は戻ったなりよ‥‥」
 お夕食まで暫く休む様子の平野と別れ、改めて温泉へと向かうと、盥を浮かべて徳利にお猪口で一杯と洒落込むからす、見上げれば既に夕暮れに、色づき始める木々を眺めながら、今暫くはゆったりとお湯を楽しんで。
 部屋へと戻ればそろそろ食事の時間、希望の人には部屋に運んだりもありますが、幾つかの部屋をつなげて作られている広間に大凡のものは用意されています。
 幾つか用意された卓には茸と地鶏のお鍋に、南瓜や蓮根、おくらの薯蕷和えや茗荷に茸たっぷりのお芋の天ぷら盛り合わせ、茶碗蒸し、里芋や人参をしっかりと煮込んだ煮物に、胡桃を練り込んだお餅など。
 無花果と梨が盛られたお盆に、お酒も幾つか、目玉は梅酒の新酒。
「へぇ、旨そうだな」
 にと笑って言う御神村、まま、と弖志峰が舞華へと梅酒をお酌すればご満悦な様子、その舞華は、ちょいと梅酒を飲みつつ、にっこり笑って匙を手にとって。
「煮物が遠いだろう、よそおう」
「あ、ありがとうご‥‥ぇ‥‥えぇと‥‥」
 気を許した仲間の中なので上機嫌に食事をしていた珠々は、お礼を言いながら煮物がたっぷりとよそわれたお椀を、渡された煮物の中身、お芋や茸やお肉の中に、茶色い物体として紛れていた、それに、思わず硬直して。
「あ、あぁ‥‥」
「好き嫌い無く食べないとなー」
 旨く紛れさせていたためか、危うく気が付かずに食べるところでした、とちょいちょいと人参を寄せながら思わず冷や汗の珠々に、笑いながらこの天ぷらとか美味しいよ、と勧める弖志峰。
「お、利諒じゃないか、それに庄堂殿も」
 と、そこに気が付いたのは舞華、見れば庄堂は先に部屋に入って隅っこに腰を下ろしていて、利諒は何やら竹細工のお櫃を持って入ってくるところで。
「あ、舞華さん。というかお揃いで」
「何を持っているんだ?」
 利諒の手のお昼に興味があるようで御神村も聞けば、炊きたての炊き込みご飯です、とにっこりと笑って言う利諒、ちょうど炊きたてが準備出来た頃合いだったようで、部屋に来るついでに受け取って来ちゃいましたと言って。
「お待たせしました、七輪で焼いて食べて下さいね」
 そこへやってくるお店の人は、七輪に済みを入れて金網と共に持ってきて、見れば、野菜や茸の入った笊も持ってきていて。
「へぇ、七輪で焼いて、味噌をつけるのか」
 茄子や茸を焼いてお味噌や醤油で、と勧められて酒の肴に良さそうだと笑う御神村、舞華は弖志峰や利諒にお酌をされてちょっとご満悦。
 ちなみに、茸の炊き込みご飯は、当然と言おうか茸に油揚げ、そして、細かく刻まれた人参がたっぷりと含まれていて、珠々が徹底したこだわりで小皿に人参をより分けて冷めてしまった、等といったことがあったとか。
 上機嫌な舞華に言われて弖志峰が一差し神楽舞などを披露してみたり。
 窓際では、御飯を堪能した後の柚乃がびわを手に取り爪弾いて、その側ではもふらの八曜丸が丸くなってくっついてまったりとした時間を過ごしており。
「んーっ、美味いなりよっ」
「これも美味しいですよね」
「ふむ、美味」
 そして、別の一角では、食事の並ぶ卓と、その側に誂えられたお茶席が。
 平野が嬉しげに食事をしてはしゃいで居れば、にこにこと頷く真夢紀は食事前に温泉を楽しんできたよう、そんな様子を眺めつつ、からすもお湯を沸かしながらちょっと食事休憩中。
「美味しいご飯に‥‥後は‥‥」
 言いかけて、ちょっとふぅと溜息をつく真夢紀、少し温泉に関して心残りがあるようで。
「久しぶりに髪も洗ってさっぱりしたけど‥‥でもここは人間しか入れないんですね‥‥」
 今度の戦の最中、一緒に頑張っている朋友の龍のことをどうしても考えてしまうようで、もう一度、ふぅと溜息をつく真夢紀。
「今回の戦も、まゆの小隊機動力確保の為に鈴麗に色々協力してもらったしなぁ‥‥」
「少し山を登ることになるが、裏から行ける場所に獣と入るような大きな温泉があったぞ」
 小さく口の中でもごもごと言っていた真夢紀ですが、六色の谷にも有るけどな、とからすにお茶を貰いに、そしてお茶菓子の差し入れに顔を出した庄堂が言って。
「あぁ、宿の人間にさっき聞いたな、そんな話は。上らなきゃいけないが、木々に囲まれてちょっと雰囲気がある露天風呂だそうだな」
 そこにやって来た琥龍 蒼羅(ib0214)、聞いた話を思い出すように口元に軽く拳を当てて考えて口を開きます。
「人が入りに来たときには獣も近寄ってこないから結構安全らしいが、宿の方で今は男湯今は女湯という管理は普段していないから、自分で脱衣所に張り紙などするか、場合によっては相談に乗るとか何とか」
「じゃあ、そのうち鈴麗ときてみましょうか」
 そう言って嬉しそうに笑みを浮かべる真夢紀。
 その様子をちらりと見ていた无と尾無弧、月を肴にちびりと嘗めるようにお酒を飲んでいた无は、ふと思い直したようでからすにお茶を貰うと一息。
「良い香りだな」
 そう小さく口元に笑みを浮かべると、暫くお茶を飲みつつ窓の外を眺め、改めて、月見をしながらの湯も良いかもしれないなとふらりと立ち上がって。
 庭に面した露天風呂を借りてはいると、月や星がよく見えて、庭にはぼんやりと提灯明かりでそれなりに風情があって。
「たまには本ではなく、月が風呂の共にというのもなかなか‥‥」
 そんなことを言っている无は、いつもと同じように心地良いお湯にうとうととして、湯船に沈む前に尾無弧に起こされたりするのでした。

●月明かりの中で
「アルーシュ姉さん、どうしたの?」
 楽しげにお部屋でご飯を頂くアルーシュに真名、ローゼリア。
 ふと真名が尋ねれば、微笑を浮かべ手口を開くアルーシュ。
「ジルベリアの料理にも使えないかしらと思って」
 その言葉になるほど、と頷くと、私だったらもっと赤くなるのに、とちらっと考える真名は大の辛党のようで。
 とはいえ、今は辛いものと同じく、大好きな甘い季節の者を堪能しているようでもあり。
「‥‥平和、ですわね‥‥」
 楽しげに談笑していれば、ローゼリアはしみじみそう思ったのか、そう微笑みながら月を見上げるのでした。
「はー、良い湯だ」
 人の捌けた頃、のんびりとお湯につかっているのは御神村、空にはぽっかりと月が浮かんでいて、手拭いで軽く顔を洗うと、良く絞って頭に乗っけて。
「良い湯ってなぁ、活力になるよな」
 にと笑って暫く月を見上げていた御神村は、湯から上がると自身の部屋へと戻って窓に歩み寄り、藍色の湯呑みで一杯と洒落込んで。
「はー、極楽極楽」
 そう言って目を細めると、御神村は暫く月を眺めています。
「休む時に休んで、しっかり仕事しねぇと」
 言って暫く月を見上げて考えるのは、今の戦や忙しく働く仕事のこと、そして身内のこと、ふぅ、と僅かに表情を緩めて、そろそろ休むか、と呟くのでした。
 ふらりと湯に入りにいったのは琥龍も同じ、顔見知りと食事やお酒、お茶を楽しんで居ましたが、人も捌けてきた程良い頃合いと見たようで。
 ゆったりとお湯につかって暫く、上がれば十分に暖まり、良い心持ちでふらりと庭を歩けば、途中で縁台に腰を下ろして月見酒を楽しむからすが居て。
「一杯如何かな?」
「んー‥‥そうだな、一つ貰おう」
 いって杯を受け取ると、琥龍も腰を下ろして酒を飲み、月を見上げるのでした。
 お部屋で食事を楽しんでから、空いた頃合いを見て入りに来たのはリンスガルト・ギーベリ(ib5184)とリィムナ・ピサレット(ib5201)です。
「美味しいご飯だったね!」
「そうじゃのぅ、なかなか美味であった」
 楽しげに話す少女達、季節の野菜などもさることながら、秋の味覚、栗や梨、無花果を堪能した様子の二人は、貸し切りにして貰った庭の露天風呂に入ってくると、ちゃ、と取り出すのは洗髪用の帽子。
「妾はこれがないと髪が洗えぬ」
「うんっ。‥‥んー‥‥」
 早速、リンスガルトの背中をごしごしと洗い始めるリィムナですが、何となくその視線はリンスガルトの髪へと向かい。
「どうかしたか?」
「リンスちゃんの髪って、きらきらしていて、あのお星様みたいで綺麗だなって」
「リィムナの方こそ、健康的な肌で余程に綺麗じゃ」
 そう言いながらも、リィムナが手際良くリンスガルトの身体や髪を洗っていくのに、にゃふと不思議な鳴き声が漏れたとか。
「うむ、やはり、日焼け跡が綺麗じゃ」
 ちょっぴり仄かに特別な思いがあるのかいうリンスガルトに、リィムナも嬉しそうに笑って。
 身体の洗いっこが終われば、二人で湯船に入って、しっかり暖まるためと肩までつかって二人で数を数えてみたり。
 ぽかぽかになって出れば、浴衣を着込んで部屋へと、既にきちんと並べて敷いてあるお布団にお休みなさいと声を掛け合って入るも。
「‥‥ん‥‥っ?」
「えへへ‥‥」
 リンスガルトが見れば、リィムナがお布団へと潜り込んできたようで、ぎゅーっと抱っこするかのように抱きついて。
「リンスちゃんお人形みたいに可愛いから、抱っこして寝てみたかったんだー!」
「ふむ‥‥受け身ばかりは性に合わぬ」
 口元に笑みを浮かべて逆にぎゅっと抱きしめ返すリンスガルトに、リィムナはなんだか暖かくて満たされた気持ちになったか、直ぐにくーと寝息を立て始め。
「こうしていると実に心地よい‥‥」
 そう小さく呟くリンスガルトは、リィムナの髪を撫でると。
「よく眠れそうじゃ‥‥」
 そう呟いて、幸せそうな様子で目を閉じるのでした。
「んー‥‥そろそろ良いかな」
 きょろきょろと様子を見ながら布と着替えの浴衣を手に貸しきりにして貰ったお風呂へとやってくるのは弖志峰。
「傷養の湯と言われるだけの事はあるなぁ‥‥」
 一人湯に入れば、心底疲れが抜けていくようで僅かに目を細めて呟く弖志峰。
「‥‥」
 ふっと目を落とせば、湯煙の中に見える大小の疵や縫合の痕、ずっと昔に刻まれたはずのそれは、僅かに薄らぎはしても消えることはなく。
「はぁ‥‥」
 深く息をつくと、根強く感じる自身を巣くう後悔と悔恨が浮かんできてしまいそうで、軽く頭を振ると、お湯を掬ってばしゃっと顔を洗い。
「いつか、過去の事だと人に話す事ができる日は来るのだろうか‥‥」
 小さく呟く、そんな弖志峰の様子を、月明かりが照らしているのでした。
 希望をして、一階の庭に面した露天風呂のあるお部屋に案内されていたのは九法 慧介(ia2194)と雪刃(ib5814)。
 二人で部屋を借りられるかと尋ねたところ、混浴も可能だし自由に入りたいならばと、宿一番のお部屋を案内されていて。
 広くてゆったりとした部屋に、部屋から出られる区切られた庭と、そこに大きな傘を立てた露天風呂。
「この傘を閉じれば、直接月夜が見上げられるな」
 そう言って笑いかける九法、雪刃が背中を洗っていれば、その背を見て酷い傷がないのを改めて確認してほっとしているようで。
「大丈夫だよ。それよりも、雪刃の方こそ、怪我は大丈夫だった?」
「大丈夫‥‥」
 言ってほんのり頬を染めるのに、さっと身体を流してから九法が先に湯船へと入って手を差し伸べ、寄り添うようにしてお湯につかると、肩を抱く九法に雪刃の頬は更に赤く染まって。
「‥‥」
「‥‥」
 お互いに何を言うでもなく、寄り添って月を眺めていれば穏やかに流れる時間。
「上せるといけないね」
「‥‥あぁ、そうだな」
 雪刃が言うのにちょっと名残惜しげに笑うと九法も頷いてお湯を上がり、浴衣を引っかけ部屋へと上がると。
 共に腰を下ろしふと目が合うと、ちょっと緊張した様子の雪刃ではあるものの、九法の手が頬に触れると微笑み返して。
 幸せそうに見つめ合い寄り添う二人を、月だけが淡く光って見守り続けるのでした。