季節はずれの怪談話
マスター名:シーザー
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/31 19:48



■オープニング本文

「誰もいないはずのその部屋から、夜な夜な女のすすり泣きが聞こえ、勇気を振り絞って男が襖を開けると‥‥そこには‥‥」
 僅かな灯りだけが頼りの薄暗い部屋。閉めきった障子の向こうからは、息の詰まる室内とは対照的に鈴虫の愛らしい声が聴こえてくる。
 車座になった男衆は各々太いろうそくを手に、固唾を飲んで語り手の言葉を待っていた。ろうそくの半分ほどが消えていて、この百物語もどきが佳境に差し掛かっているのがわかる。
 同様に、語り部の話も佳境に入っていた。そんな中――
(「あれは‥‥なんだ? 目のようにも見えるが‥‥ん? もう見えない。疲れているのかな‥‥何かを見間違えたか」)
 語り部であり、主催者の辰夫は闇の中に浮かぶ奇妙なモノを見た気がした。しかし、それはすぐに消えた。ろうそくの火か何かだと辰夫は思い、話を続ける。
 この怪談話の最高潮である、襖を開けた先の正体を明かそうとすると、語り部の視界の端にいた男が俯いたっきり動かなくなった。辰夫は、自分の話に怖れをなしたのだとほくそ笑む。
「おや? 清五郎さん。そんなに怖かったですか。ですが本当に恐ろしいのはここからで‥‥清五郎さん?」
 得意げになった声音にはおどろおどろしい雰囲気はなく、少々興ざめかと思われたが、語り部が二度目に清五郎を呼んだ時、その声は引き攣っていた。
「清五郎さん?!」
 恐ろしさのあまりに俯いていた男の姿が忽然と消えた。
 驚いたのは清五郎の両脇に座していた男達である。今、確かにいた仲間がいないのだ。まるで初めからいなかったように、そこだけ鋭利な刃物で切り取ったように、清五郎がいた場所にはなにもなかった。
 会は騒然となった。
 慌てて部屋の明かりを点け、確かめたがやはり清五郎はいない。逃げ出したのかと思ったが、障子が開けられた様子もなく、さりとてこっそり逃げ出したようでもなかった。
 だが、血塗れの座布団を見たとき、残った男達は、清五郎はもはや生きていないのだと確信した。

 別の場所でも同様の事件が起こると、その噂は瞬く間に広がった。真実かどうか確かめようと、この季節はずれの百物語の会はあちらこちらで開催されるようになったが、必ずしも行方不明者が出るとは限らなかった。
 それでも消息を絶つ者が出ることに変わりは無く、二人目、三人目と犠牲者は増えていく。中には、この騒ぎを利用して借金取りから逃げ出す輩もいたりするから、すべからく犠牲者と判じるわけにもいかない。
 会の参加者の中に犯人がいるのか、外部の犯行か。怨恨か、金銭か――有力者や自警団の手によって調査されたが、解決に繋がる糸口さえみつからない。
 焦れた町の有力者達は、この事件の早期解決を望んだ。そこにアヤカシが関わっているのなら、素人が手を出せるものではない。真相解明の依頼は速やかにギルドへと提出されたのだった。



■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
アーニャ・ベルマン(ia5465
22歳・女・弓
宮鷺 カヅキ(ib4230
21歳・女・シ
蒼井 御子(ib4444
11歳・女・吟
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
笹倉 靖(ib6125
23歳・男・巫
琥宮 尋(ib6972
16歳・男・陰


■リプレイ本文

 笹倉靖(ib6125)は火を灯した蝋燭を掲げ、部屋の奥を照らしてみる。凝視する笹倉の足元へ、リィムナ・ピサレット(ib5201)が寄り添うようにやって来た。
「なにか見えるの?」
 すでに涙目の少女へ笹倉は笑顔を見せる。
「ん? どうだろうな」
 含みのある物言いは、こっそりと聞き耳を立てていた天河ふしぎ(ia1037)の全身を震わせた。
「もう怖がってるのか? 気が早いなあ、ふしぎは」
 からからと笑うのは水鏡絵梨乃(ia0191)。
「別に怪談なんて、怖くなんか、怖くなんか無いんだぞっ、これは誘き寄せる為に仕方なく、仕方なくなんだからなっ!」
 喧々と吠えながら、友人の肩をポコポコ殴る天河だった。
「こんなのアヤカシを誘き出す作戦なんだからね! 怖がってなんかいないんだからっ」
 きゅうと着物の裾が握られて見下ろすと、リィムナのさくらんぼみたいな唇が尖がっていた。なんだかよけいに苛めたい衝動に駆られた笹倉の、
「世の中見えなくていいものは山ほどあるから」
「ぴゃ!」

 家は二間しかなく、仕切りの襖はすでに取っ払われていた。奥の六畳間には納戸があるようだ。闇と同化したような木戸が、重苦しく佇んでいた。
 訪れた開拓者の中の心に芽生えた小さな恐怖を察知し、すでに家の中にアヤカシが潜んでいるかもしれない。表へ逃げられては面倒だからと、縁側の雨戸は締め切っておく事にした。
 だが、雨戸は古く、隙間も多い。背後に注意を集中させたい水鏡は縁側に一番近い位置で腰を下ろした。
「お、お、男たる者、侵入者と真っ先に刃を交えねば、ば」
 強がって水鏡の隣へ腰を据えた天河の声はまだ震えていた。
 そうか、ここにいればコレが上手く使えるか、とこっそりニヤけながら仮面を隠すアーニャ・ベルマン(ia5465)は、怖がらせるつもりが実は雨戸の向こうで息を潜める庭が気になって仕方がない。他の面子を怖がらせておく事で、自身の恐怖を相殺するつもりなのだ。ナイスアイデアである。
  リィムナは、そのアーニャの左隣に座り、陰陽師の琥宮尋(ib6972)も続いて腰を下ろした。笹倉は納戸の前で、ゆっくりと腰を落ち着かせる。意外に素で怖がっている仲間を見ると、さて自分の身にも何かしら起きるのではという考えが巡ったが、
「俺、巫女だから人が亡くなった話を聞いたり、色んなモノが見えたりすんだけどさ」
 と前置いて、未だ落ち着かない様子で挙動不審に室内をウロついている、宮鷺カヅキ(ib4230)と蒼井御子(ib4444)の二人をちらりと見遣る。またその視線が恐怖を呼ぶようで、二人は、その場へぺたりと座り込んだ。
「ある街にあった寺子屋の話だ。そこの教師は周辺の住人からの評判のいい綺麗な女性だった。彼女には一人息子がいたんだが、ある日、不幸な事故で命を落とした。それからというもの、おかしなことが起こるようになった――授業を受けてる子供が消えるんだ」
 笹倉は声を潜めながら、視線を蝋燭の炎へ向ける。ゆらゆらと炎が揺れる度、彼の鼻や頬の陰影までも踊るように揺れた。口調はゆったりと、沁みるように皆の耳へ入り込む。
「先ほどまで隣に座って共に勉学していた筈なのに、然と消えている。そして二度と戻ってこない。消えるのはその寺子屋に通う子供ばかり。一人、二人と数が増えるうちに大人たちも不審に思い寺子屋に乗り込んだ。すると、そこには息子を無くした悲しさで自害した教師の遺体が横たわっていた‥‥だがな、おかしいんだ。その遺体、明らかに数週間放置されていた。それなら、ここ数日子供たちに授業をしていたのは誰だったんだろうな。それからというもの、その寺子屋に人が訪れると知らない内に一人消えてるんだってさ」
 ふっ、と笹倉が笑った。食指でとんと膝を小突き、
「ほぅら、お前さんの友人は大丈夫かい? ちゃんと隣にいるかな?」
 ふうと意味ありげに蝋燭を吹き消すと、合わせるように琥宮が、
「大家さん、隣の蒼井君はちゃんといますか?」
 と指を指したが、その位置が悪かった。蒼井の頭上数センチ上辺りを指差したのだ。大家さん、と呼ばれた宮鷺カヅキ(ib4230)は油の切れた機械人形のように、グギギと首を横へ向ける。そこにあるはずの蒼井の顔はなく、白い腕が二本、にゅうとこちらへと伸びていた。
「うひっ。腕が二本! 蒼井さんがいません、いませんよっ」
「ひゃあ、おばけの腕ですか?!」と飛びついたのは蒼井本人だった。
「なんか小さいのが来たアァ‥‥って蒼井さん! さっきまでいなかったのに」
 くすくすと笑うのは琥宮だ。わざと蒼井の頭上を指したのだから、そこに顔があってたまるものか。もしあったのならそれは間違いなく本物ということになるではないか。
「次は僕が話す!」
 天河が素早く手を上げる。一本しか灯りは消えていないのに、酷く暗く感じるのは気のせいだと思い込む天河。特に笹倉の背後が恐ろしく暗い。闇というよりも底なしの空間が口を開けているように見える。
「‥‥話す、けど」
 ちらり、ちらりと左右の水鏡とカヅキを見遣る。まるでもっと近くへ寄れという縋るような視線だが、天河はそれを二人に指摘されると、
「怖いんじゃない。寒いから仕方なく、だっ。――じゃあ、話すよ。いいな、話すからな」
 寒いということを強調する為に蝋燭の火に手を翳しながら、天河は続けた。
「ある空賊船長に聞いた話しなんだけど‥‥グライダーの夜間飛行って、風は冷たいし、孤独な時間なんだ‥‥その日も、彼は偵察の為に飛んで居て‥‥。やがて雲が厚くたれ込め出し、月も星の明かりもない空で周りからぼそぼそぼそぼそと何かが囁くような声が聞こえ出す、そしてその途端にがくんと何か重しが乗ったかのように機首を下げるグライダー‥‥」
 ごくり。唾を嚥下する音を闇が弾き返す。
「何とか命からがら操縦して帰った彼がふと自分の愛機を見ると、機体にびっしりと赤い手形が‥‥」
「あんな風に?」
 一呼吸入れる間も与えずに、カヅキが言う。だがその声はどこにも揶揄する響きがなく、天河はガチガチに硬直した。先ほどまで寒いと言っていたのが嘘のような大量の汗を流している。
 そんな風に強気で仲間を脅かすカヅキだが、内心はまったく反対の事を思っていた。
(「目さえあればどんなに醜いアヤカシでも大丈夫です。目さえあれば‥‥」)
 二つ目の蝋燭が消え、闇の侵食が広がる。暗視を始めたカヅキの目が静かに暗銀へと変化した。

(「ええと‥‥確かこの辺りは浮遊霊の佐々木さんをいつも見かけるところだったか。結構お茶目な方だし、少し協力してもらおうかな」)
 考えただけで楽しい。琥宮はつい緩んでしまう口元に両手の指先をそっと宛がい、
「‥‥よし、アレにしよう‥‥ん? おや」
 意味ありげに雨戸を見つめる。よくある、猫のアレだ。部屋の一点をただじっと凝視しては飼い主を恐怖のどん底へ叩き落す、アレだ。一点をみつめつつ、
「四年くらい前かな‥‥細い路地で迷子になった子を見つけたんだ。その子は大きな笠を被ってて顔は見られなかったけど、落し物したとかで一緒に探したんだ。見つかった落し物は人の頭。ありがと、ってその子は俺を見上げて‥‥首から上は無かったよ」
 琥宮の視線がつつ、と移動する。何かいるの? 何かいるのかそこに、と天河とアーニャが俄かに慌て出す。
「あ、佐々木さんだ。こんにちは、お久し振りですー」
 手を振って見えない誰かに挨拶する琥宮。
(「出番はもう少し後ですよ」)と小さく呟く。
 続いて水鏡が口を開いた。
「怖い話は、そうだなぁ。昔友人から聞いた話にしようか」
 淡々とした口調である。
「あれは、節分の日の出来事らしい。豆をまき終わって夕飯の準備をしようと思ったら、部屋の奥から、『バリバリッ‥‥バリバリッ‥‥』って音が聞こえたらしい。気になってそっちに行ったら、その音が大きくなっていって、部屋の前に着くとその音はピタッと止んだそうだ。気味が悪いと思いつつも、部屋の襖をスーッと開けると、そこは暗いだけで誰もいなかった。床にまいた豆しか落ちてないんだけど、よく見るとその豆がボロボロになってきて、なんだか血のような赤いものがべっとり付いてたらしい」
 何気なく指しただけの畳の上に注がれる視線。
「怖くなって戻ろうと後ろを振り向いたら、目の前に真っ白な女の人が血を流しながら立っていて、凄い形相で首を絞めてきたらしい。友人は次の日の朝、血だまりになった自分の部屋で目が覚めたらしい‥‥――皆も節分の日の豆まきは気をつけた方がいいぞ‥‥ってなところかな」
 と、突然天河が悲鳴をあげた。
「ぎゃひー! 何かが肩を叩いたぁぁッ」
「ぴきゃああ」
 釣られて叫んだリィムナが天河の腕にぎゅうとしがみつく。もう嫌だといった具合に、アヤカシ退治に移行したいリィムナはそのままの格好で、
「昔うちの近所に変わったお爺さんが住んでた、髪と髭が長くて顔で見えてるのが鼻と口だけ、目は全部隠れてた、よく昔話を聞きに行っててこれは最後に聞いた話」
 紫の髪を少し逆立て、なんだかカタコトのようになっている。話が佳境に入ると、さらに天河の腕を強く掴むと、指先がすっかり土気色。
「お爺さんの顔の上半分は綺麗に食いちぎられ、脳が露出していた。その後の事は覚えてない。ただ、その日からお爺さんはいなくなり、あたしはスプーンを持ち歩く様になった。もし視界に消えない点が現れ大きくなっていくなら躊躇いなく目を抉りだす為に! ぎゃあああああああっ」
 自分で話していて恐怖が最高潮に達する。思わず抱きしめる天河。
「いや、これは、僕が守ってあげているんだからなっ」
 そういう事にしておいてあげよう、と生温い視線と共に水鏡が友人の肩に手を置いた。
 瞳を暗銀色に変化させたカヅキの顔色が、俄かに青ざめる。蟻や小さな羽虫が集団で移動する時に起こる、独特の音がするのだ。
 確信したが位置までは特定できない。やはり姿を現すまで辛抱するか、とカヅキは口を開いた。
「昔、師匠の知人の陰陽師さんから聞いたお話を‥‥。その方は師匠と会うために、遭都と陰殻の境の山道を歩いていました。中腹に差し掛かったところで、後ろから呼ぶ声が――“もしもし”と。彼は嫌な予感がするとかで振り向かなかったそうです。声を無視し続けること一刻――‥‥前方に旅人を見つけました。その人も同じ方向へ向かっています。その時また“もしもし”の声。今度は彼の後ろではなく前。つまり旅人の後ろ‥‥旅人は足を止めて振り返りました。一瞬後、その人は目の前で崖崩れに巻き込まれ‥‥――昔から行方不明者が多い場所でしたが、あの声は一体何だったのか‥‥今となってはもう分かりません」
 恐怖を最大限にしたい気持ちはあるが、自らも怖くてたまらないカヅキ。それを必死に押し隠して話し終える。
 にやり、と妖しく微笑む琥宮。刹那、アーニャのすぐ後ろの雨戸が盛大な音を立てて揺れた。
 思わず腰を浮かせて飛び出しそうな勢いのアーニャに顔を向け、
「百物語中は、その部屋から出たらいけないのだそうですー。色々くっ憑けて戻ってくる可能性が高いのだとか。最悪、あちらに連れて行かれてしまいますよ? そうでしたよね、尋さん?」
 恐ろしくて堪らないのが自分だけではないと知った途端のこの強気発言である。
「カヅキさん、脅かさないで下さいよ〜〜」
 ぽとり、とアーニャの手から面が落ちた。おや、と笹倉が目を瞠る。アーニャが慌てて面を拾い上げると、
「このアヤカシ退治は恐怖が餌なのですから、これは、演出です〜」
 バラしては意味がない気もするが、そこはやはり玄人である。気持ちを切り替え、怪談を始める。残り少ない蝋燭の灯りが心許なげに揺れていた。アーニャはこれは実話ですと前置いて、
「女友達とお泊り会のとき、今回みたいに怪談しました。すべて話し終わった後、幽霊も何もなく皆そのまま寝ました。
夜中、私がトイレに行って戻ってきたら、私の布団で誰か寝てるのですよ。友達が寝ぼけたんだと思って他の布団も見回すと、皆それぞれちゃんと寝てるのです。じゃあ、私の布団で寝ているのは誰!? 頭まで布団被っているけれども、髪の毛がはみ出ています。黒髪で長いし、あきらかに私じゃない誰かがいます。それで、もぞもぞお布団が動いてこっちを見ようとしているのですが、前髪がぞろっと長くて目元も見えませんでした」
 わかっていても怖ろしいものだ。アーニャが不揃いに伸びきった長い髪の女の面を被ると、あちらこちらが身を寄せ合う。
「声も出ないほどの恐怖で、入り口で一番近くで寝ている子をたたき起こして、改めて私の布団を見てみたら、誰もいませんでした。いったい何が寝ていたのでしょう!」
 琥宮が笹倉は顔を見合わせて笑い合う。笹倉は浮遊霊の佐々木さんのイタズラには気づいているので終始薄ら笑いを浮かべていた。
 小さな子がぷるぷる震えているのは可愛いし、怖い事を必死に隠して強気を通そうとしているのに、全部バレている天河やアーニャが可愛くて仕方ないらしい。
「それじゃあ、最後はボクだね」
 蒼井が竪琴を抱え、弦を軽く爪弾いて見せた。
「さて。昔より『夜中に爪を切ると』などと良く申します。さて、これは何故か」
 澄み切った声が、却って薄ら寒く感じる。
「理由づけはあるでしょう、しかし、その言の葉が出てくる前からの謂れと言う物もございます。これは手前が旅の中にて聞き及んだ話となりますが。夜中に爪を切っていた人が、爪を切る間に耳慣れない音を聞くが、特に気にしないでいた。音は爪を切るたびに少しずつ大きくなり、やがて――」
 小さく奏でられていた旋律が止み、しん、と静まり返った。
「じょきり」
 竪琴が低く泣く。
「じょきり」
 竪琴が低く、
「じょきりと音は戸をやぶり――じょきり」
 一声泣いた竪琴はそこで沈黙した。
「聞いた話、どこまで本当かは分かりませぬが、ね」

 ふう、と最後の灯りが消されると。壁、天井、畳の目からぞろりぞろりと小さな目が現れた。
 そこからの展開の早さは、もしかすると開拓史上に残るかもしれない。
 リィムナのマシャエライトによって荒れ果てた室内は照らし尽くされ、正体が明らかになったアヤカシの命運はすでに無いに等しい。
 乱れ飛ぶアーニャの矢。蹴り潰す水鏡。
「怪談話と比べたら、お前なんか怖くないんだからなっ。クロスエンド!」
 土壁を吹っ飛ばす天河。カヅキは影縛りで纏めて粉砕だ。
 宵闇に吹き上がる粉塵の中を精霊が乱舞する。激しい旋律に合わせ、小さな目ん玉共は次々に斬撃符で切り裂かれ、開拓者の餌食となった。
 
 打ち崩された民家を前に、ぷかりと紫煙を吐く笹倉。
「さて、終わったが百物語の続きやるかい? ネタならまだまだあるんだが」