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■オープニング本文 空に浮かぶ島々、天儀。 他の浮遊島との交流も行われるようになったのは、ここ百年近くの間の事である。 泰国、ジルベリア帝国、そして最近、新たな儀との国交が樹立された。 新たな大陸は、名をアル=カマルという―― ●おあしす! 「サンドワーム、ですか?」 突然の来訪者が提示した名前に、一三成は首を傾げた。 「えぇ、馬鹿みたいに巨大な砂蟲でね。見たことあるかしら」 「僅かですが、報告には聞いています」 「あれがオアシスの周囲に縄張りを作っちゃってね。十匹、二十匹と退治したいのよ」 「‥‥」 その女性の提案に、三成は、長くて薄いため息を付いた。 「ちょっと数が多くてね」 女性は、口端を持ち上げて意地悪そうな笑みを浮かべている。黒い肌に白く長い服を纏い、スマートで、それでいて開けた胸元は強調され、何より特徴的であるのは、その細長く尖った耳。 エルフ。 アル=カマル人口のほぼ三割を占めるという人々だ。 「‥‥で、どうする? 報酬額は提示した通り支払われるわ」 氏族からの書簡をトントンと叩く彼女を前に、小さく、解りましたと頷くや、三成の手がすっと取られる。エルフの彼女は、三成の細い掌をきゅっと握り締めた。 「なら契約は成立。私はメリト・ネイト。ご覧の通りベドウィンよ」 ●砂中に潜む巨蟲 アル=カマルに巣食うサンドワームはケモノの一種だ。 その大きさたるや建物よりも遥かに大きい。間近で見た所で、人は洞窟のような巨大な口に砂ごと呑み込まれるのが落ちである。 遠目に見ればサンドワームが蚯蚓型の超巨大生物である事がわかるだろう。長い胴の先に口だけが付いており、砂中を自由自在に移動する。サンドワームが移動する際には雷のような地響きを立てる為、もしも遭遇した際は速やかにその場を離れるのが適切とされている。 しかしオアシス周囲を侵犯したとなれば、討伐に向かわぬ訳にはいかなかった。 「皆さんに向かっていただくのは、この辺りです」 天儀から派遣されたギルド職員が、ただ真白に過ぎる地図を広げて言った。 砂一面の砂漠、目印となるのは唯一の緑が映えるオアシスだ。基点を示す赤丸印から北東に離れた位置を指し、職員は「油断無きよう」と言い添える。 「サンドワームは砂中を渡ります。地の利は向こうにあると思ってください」 場所はただ一面だだっ広い砂漠、討伐区域の生息は特定されていない。砂中から口を出したものを遠目に確認した上では、大小一体ずつは確実に生息しているとの事だ。 大きいもので百尺ほど、小さいほうも三十尺はあろうと測定された。人から見れば小とて充分に巨大な事は肝に銘じて頂きたい。 平時は砂中に潜っており、獲物の物音を感知するや姿を現し呑み込もうとする。気配でおびき寄せ、出現したところを攻撃するのが無難な戦術と言えそうか。また、天儀から騎乗朋友を連れて来ている者は有効に活用するのが良いだろう。 尚、指定区域に向かうのは当依頼を請けた開拓者のみとなる。ベドウィンの同行ならびに周辺住民への気遣い等は無用。 砂漠の民であれば、皆等しくサンドワームの危険性は知っている。既に避難は済んでいるので討伐のみに全力を傾けて欲しい。 |
■参加者一覧![]() 20歳・女・泰 ![]() 19歳・男・サ ![]() 19歳・男・泰 ![]() 15歳・女・陰 ![]() 27歳・男・サ ![]() 21歳・女・巫 ![]() 27歳・男・志 ![]() 25歳・男・騎 ![]() 25歳・女・騎 ![]() 15歳・女・騎 ![]() 27歳・男・魔 ![]() 18歳・女・陰 ![]() 24歳・男・泰 ![]() 15歳・男・騎 ![]() 23歳・男・巫 |
■リプレイ本文 見下ろした砂の大地は、仮設ギルドで示された地図そのものだった。 一面の砂、唯一の緑。 オアシスを目印に、開拓者達は龍を北東へ進ませる。其処に砂蟲が群れているはずであった。 ●偵察 「ネイト、何か見えるか?」 駿龍のネイトに声を掛け、ジルベール(ia9952)は自身も注意深く辺りを見渡した。 サンドワームは最大百尺はあるという。最大限伸びをされても届きそうにない高度を保ちつつ、空戦班は討伐区域内上空を旋回している。 「うっはー あっちぃなー」 地ゆけば陽が照り返し、空ゆけば陽に近い――滲む汗を手の甲で払い、笹倉 靖(ib6125)は飄々と堪んねぇなとぼやく。しかし口調と裏腹に、真剣な視線は砂煙の先を凝視していた。 (ヤツが動く時にゃ地響き立てるって言うが‥‥砂紋、出るよな) 超巨大生物が砂中を移動する以上、その証が現れるに違いなかった。瘴気の有無も確かめてみたかったが、神経を集中し目視での警戒に留める事とする。 地中を蠢く音がしていた。 ――いる。 更に目を凝らして地表を見つめる。砂の流れが読めてきた。 「気をつけろ、でかい方かもしんねーぞ」 「事によっては二体居るかもしれませんよ?」 慎重に、しかし危険な事をさらっと言うディディエ ベルトラン(ib3404)。両儀の友好の為とは言え、果たしてこれは割りの合う仕事なのだろうか。 「‥‥これも先行投資と思えば、ねぇ。そうは思いませんですか?」 炎龍のアルパゴンに話しかければ、アルパゴンは地表の照り返しの煌めきに目を細めていた。さて投資が何倍にもなって戻ってくれば良いがと、金色の龍に乗った獣人の少女に目を向ける。 焙烙玉投下を担ったプレシア・ベルティーニ(ib3541)は暢気なものだ。 「ふみゅっ‥‥狩り祭?」 甲龍のイストリアに尋ねてみれば、イストリアも「そうなんじゃない?」とでも言いたげに鼻を鳴らした。同じ師匠の許で育って来た姉妹のような一人と一頭だから、発想も似ているのかもしれない。 ――と、砂中からサンドワームの一端が覗いた。 「これは‥‥」 リーディア(ia9818)が思わず息を呑む。頭だか尻尾だか、一瞬の事で蚯蚓型の超巨大生物のどの部分かは判別できなかったが、その一部から割り出せる予想体長は如何ばかりか。 「アル=カマルには、こういうのがうじゃうじゃいるのですね」 「‥‥とんでもないな」 あの大きさで、ケモノ扱いなのか。 オドゥノール(ib0479)の呟きは、場に居た開拓者全ての気持ちを代弁していたに違いない。 つい口に出てしまったが、気丈に表情を引き締めると、オドゥノールは駿龍・ゾリグに話しかけた。 「行けるか」 短い一言。だがそれは開戦の合図となるものでもあった。 手綱をしっかり握りなおしたオドゥノールは、荷から取り出した焙烙玉に火を点けると、ゾリグを駆り急降下した。 ●出現 一方、地上でサンドワームと戦う開拓者達は上空を見上げ、開戦の瞬間を待っていた。 周囲に響く地響きで鼓膜が麻痺しそうだ。音を聞いてからでは遅いと言うが、これだけ大きな音がすれば立ち退こうとするのが人の本能。しかし討伐に訪れたのだから去る訳にはいかない。 砂漠全体でする大音響の発生源を地上から特定するのは難しい。また、だだっ広い砂漠に潜伏に適した場所がある訳でなく、多くは防砂布を砂の色に紛らわせて凌いでいる。 砂が入り込まぬようアーマーに防護を施している搭乗者は多かった。関節部に巻いた布の具合を確認するネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)はアーマー・ロギの足に木板を取り付け、砂漠でも沈まないように工夫を施している。 「はぅ! 砂地仕様ロギの可動実験なのですよ〜♪」 「一面砂ばかりですのに何を食べたらあんなにも巨大になるのかしら?」 戦闘前の緊張を、朗らかに解すアレーナ・オレアリス(ib0405)の呟きを聞いたかどうか、ロック・J・グリフィス(ib0293)が深紅の薔薇を揚げて気高く言った。 「ケモノと聞くが、サンドワームとやらが人に仇為すのであれば、放っておくわけにはいかんからな」 そう、砂漠に生きる者が守らねばならぬ掟がある。 オアシス独占の禁止――その禁を犯したものは、等しく制裁を受けねばならぬ。 ――と、上空に変化があった。 一騎の駿龍が地上目掛けて降りてくる。続いて、爆音。 地面が大きく揺れた。オドゥノールが投下した焙烙玉の振動ではない――サンドワームだ! 二体同時に現れたサンドワームへ、プレシアの焙烙玉が落ちた。しかし各々数十尺もの体長を持つサンドワームである。二体を引き離し誘導するには至らない。 焙烙玉に刺激されたサンドワームは、間近の生物に目を付けた。すなわち、同族・サンドワームである。 互いに争う構えを見せたサンドワーム達と開拓者達、大地を揺らしての混戦が始まった。 古酒の空徳利を投げ捨てて、水鏡 絵梨乃(ia0191)は目を見張った。 大きい、とは聞いていたがあまりにも大き過ぎた。敵の一撃が重いと予想した絵梨乃は回避重視で臨む構えでいたのだが、避けきれるものだろうか。 ――と、隣で不敵に笑う気配がした。 「天儀じゃ見ねぇ大物だな‥‥おもしれぇ、燃えてきたぜ」 酒々井 統真(ia0893)の呟きが絵梨乃を冷静にさせた。 敵の攻撃を回避しつつ攻撃を重ねる――大き過ぎる敵に人間の一撃は小さいけれど、必ずや倒してみせる。 「さって、その図体、俺の拳に耐えられるか?」 「燃えるのはいいけどさ、統真、ボクもいるんだから無茶しないでよね」 肩に収まった人妖の雪白が、馬の手綱を取っているかのように統真の耳元で釘を刺している。 「統真、雪白に心配かけちゃダメだよ? 行くよ、花月!」 いい感じに解れた絵梨乃は淡桃の迅鷹・花月に声を掛けると、やや小振りのサンドワームへ向かって駆け出した。 対手のあまりの大きさに、ジルベールは思わず呟く。 「‥‥何やねん、あの化物は」 遠く離れていてもなお、巨大としか言いようのない蚯蚓。二体がのたうちまわり暴れまわっている。 随分と大きいですねぇ‥‥と、長谷部 円秀(ib4529)は温和な表情のまま視線を鋭くし敵を見据えた。 「‥‥しかし、大きさが強さなどではないと教えましょうか」 確かにサンドワームは大きいし、それに伴う力の強さは相当のものだろう。 だが、大きさに見合った動きと戦い方はそれぞれにあるものだ。まして志体持ちであれば。 「小さいには小さいなりの戦いかたがあるんですよ?」 続けた言葉に剣呑な響きを滲ませ、円秀は駿龍の韋駄天を方向転換させた。 ヒトは知恵を持つ。協力する心を持つ。暴れるだけが能の巨大なケモノにその戦い方、示してやろう。 ●混戦 数十尺の生物を誘導するには、焙烙玉は弱かったかもしれない。 予想以上にサンドワーム達が移動しなかった様子を上空で把握した騎龍の面々は、すぐさま地上班の援護に動き出した。 巫女二人、靖とリーディアが龍を駆り地上班へ加護結界を施す。駿龍のタノレッドをぎゅーぎゅーして、アルネイス(ia6104)は符を握り締めた。 ――片方を押さえればなんとかなるかもしれない。 「さぁ、久々の出番ですよ!殿〜」 殿ことタノレッド、本当は本名で呼ばれた方が嬉しいのだが、真下の戦場に意識を集中しているのか、不平も表さず抱きゅされるがままになっている。 地上では大小二体のサンドワームが縄張り争いを始めていた。 「殿? そろそろいきますよ〜」 ぎゅむぎゅむ。ようやく背のアルネイスに意識を戻す。 彼女の言わんとするところを悟り、殿は大きい方のサンドワームの口元目指して急降下を始めた。古の神の名を冠した符は強力なもの、構えたアルネイスは精神を集中し始める。 「獅子身中の蟲という訳では無いですが。大きくても毒なら効くはず!砂蟲には毒蟲で対抗です!」 ギリギリまで接近し、間近から口へ毒蟲を放った。手に感じる一瞬の違和感。構えた姿勢のまま再び上空へ戻ったアルネイスの手に古神の符は残っていなかった。 「効きましたか!?」 振り返り見れば、サンドワームに変化はない――しかし、動きがないようにも見える。巨大過ぎて反応が判り辛いのだが、龍牙・流陰(ia0556)声で成功を知った。 「お見事でした」 互いに争っていたサンドワーム達のうち、大が劣勢だ。動きが鈍って小さい方に押され気味になっている。 「では僕は小を抑えに向かいます」 礼儀正しく一礼し、流陰は己の上背よりも大きな野太刀を軽々と振り捌いた。甲龍の穿牙に軽く声を掛けると、少年の顔は戦士のそれとなって地上へと降りていった。 「影牙、頼りにしているぞ‥‥いざ、推して参るっ」 駿龍の影牙の手綱を軽く握り、滋藤 柾鷹(ia9130)は大の抑えに向かう。駿龍は、その名の如く影のように滑らかに敵へと向かっていった。 地上で最も早く動いたのはアレーナが駆るヴァイスリッターだ。 足が取られる砂漠の不利を物ともせずに、小サンドワームの胴へ急接近する。いままさに同族へ喰らい付かんと大口開けたサンドワームの動きが一瞬止まった。乱入した物体に意識を向けたその時、乱入者は片刃の剣を中段に構え、横薙ぎに振った。 『オォォォォォ‥‥!!!』 叫びとも地響きとも付かぬ大音が響いた。胴に食い込ませた鋸刀を更に深く引くようにに払い斬る。硬いと言われるサンドワームの鱗とて、アーマーが扱う鋸刀を防ぎきる事は難しい。断ち落ちはしなかったが、殻の合間からケモノの肉が覗いた。 痛みを感じるのか全身でのたうちまわるサンドワームへ、空からの撹乱が飛来する。 「どっち見てんねん、こっちやで!」 ネイトの背から挑発するジルベールの声が、サンドワームの翻弄する。素早さを高めた駿龍の飛行に砂蟲の感覚は追いついてゆけない。 「砂漠の蟲は寒さに耐え切れるでしょうか〜」 のほほんと、けれど的確なディディエの詠唱が冷気を生んだ。負傷し暴れ雄叫びを上げるサンドワームの口目掛けて送り込む。僅かに怯んだケモノの隙を突いて、急降下した穿牙に乗せた流陰の一撃が降った。 毒蟲が効いてきたか、口を開けたまま固まっている大サンドワームの口へと、ジルベールの強弓が矢を射掛けた。空中の援護を受けたXに搭乗したロックが騎兵槍を振るい、サンドワームを転ばせる。 「ちっ、なんて固い外皮だ」 ロックは舌打ちするものの、大サンドワームが起き上がる気配はない。 オドゥノールが好機を逃すはずがない。 「‥‥防御を突き破るはずの一撃、あれに通じるかどうかはわからないが、やってみるしかない」 一か八か。空からゾリグを躍らせて、全身で装甲を貫いた。見事に開いた脇腹に追撃せんと、ネプの搭乗するロギが渾身の一撃を叩き付ける。 「エグゼを持ったからには‥‥負けるわけにはいかないのですっ!」 ロギが構える斧は彼女から貰った武器、彼女の想いはネプのやる気だ。 桜色に塗装したロギの足に木板は無骨だったが、逆にそれが足元の安定を生んだ。ほぼ通常通りに力を発揮したロギの一撃は、硬い甲殻を裂き大量の体液を撒き散らして内部への損傷を与えていた。 大の鼻先で撹乱していた統真が異変に気付く。サンドワームから力が抜けている――おそらくはどこかで致命傷を与えたに違いない。 「‥‥ちっ、負けてられるかよ!」 「統真、待って!」 肩にしがみ付いていた雪白が慌てて止めた。 雪白とて頭に血が上った統真を引きとめようとは思わない。だが、その前に。 「守護童はかけさせてもらうよ!」 絶対無事に帰って来て。 肩を離れた雪白の祈りと共に、統真はサンドワームの口中に直接飛び込んだ! 攻撃で弱ってゆくサンドワーム達とは裏腹に、地響きはさらに大きくなっていた。 「ふみゅっ、何かヘンだよ〜」 プレシアが、その異変に逸早く気付いた。耳をぴこぴこ、地響きは確かに近付いている! 「もう1個、行ってみる〜?」 誰にともなく尋ねてみて、プレシアは徐に焙烙玉を取り出した。 ぴこぴこ。このへんかな? 「おりゃ〜 『びっくりたまげたすなむしさん!』ってなれぇぇっ!」 戦況無視、ただ地鳴りのする位置へ向けてプレシアは焙烙玉を放り投げた! 『グォォォォォォォ‥‥!』 怒りの咆哮と共に、やっぱり出た三体目だ! 地上ではいきなりの爆音と新手の登場に戸惑いを隠せない。 「こんな硬いやつがもう一体出てくるなんて‥‥!」 ひとつの鱗に狙いを定め、拳を当て続ける絵梨乃の気が一瞬逸れた。 拳が空を切ったと思った瞬間、三体目が飲み込んだ砂に足を取られて流される。懸命に砂を掻き、辛うじて流砂から逃れたものの、ギリギリの所でオーラを噴射させ難を逃れたヴァイスリッターを除き、地上の何名かが巻き込まれている。 「そうだ、統真!?」 相棒の安否が一瞬気に掛かった。統真が見当たらない。 彼が向かっていたサンドワームはぴくりとも動かない。口から胴から体液を流して死んでいた。 ――と、その口から顔を出した者がいる。龍の名を冠した拳鎧を纏った開拓者は統真だ。 しっかりとした足取りで出てきた彼は、出迎えた雪白に頬をつねられながらも満足気に言ってのけた。 「破軍を越えた、破天の拳‥‥しっかりぶち抜いてやったぜ」 ●連携 一体が力尽き、残るは二体。 個々の力は大きいけれど、敵の大きさが長期化を強いている。 上空で援護と戦況を見ていたディディエが騎龍の開拓者達へ合図した。 「あの無駄に大きいサンドワーム達‥‥ダメージを与えるにせよ、牽制するにせよですね〜 バラバラに攻撃していたのでは、埒が明かないかもしれませんですねぇ、はい」 空中班で一斉攻撃しませんか? ディディエの提案は、個々の力を連携させるという点で重要な意味を持っていた。殊に単騎攻撃となりやすい地上班はサンドワームの標的にもなり易く、空へ注意を向かせる事は地上班への目くらましとも成り得た。 そういう事なら、とアルネイス。 「新しく出てきたサンドワームにも、毒蟲を送り込んでやるのです!」 「ほな俺が奴の注意を引こか。ネイト、無茶させて悪いな。もうひと踏ん張り頼むで」 「その間に呑まれた人の救出を」 「ちっと多いんで俺も手伝うぜ」 ジルベールが援護を請け負うと、リーディアと靖は負傷者の回復に動き出す。 「では、その隙に私達が斬り込もう」 「一太刀浴びせてやりましょうかね」 オドゥノールと円秀の言葉に力強く頷く柾鷹と流陰。 援護を頼むと遠距離攻撃手に請えば、常と変わらぬディディエの横でプレシアもまた普段通りふにふにしていた。 変な気負いはない方がいい。程よく緊張の解けた一同は地上の援護に乗り出した。 地鳴りとは別の、大きな気配を感じて見上げた絵梨乃は機が訪れたのを悟った。 ネイトを駆ってジルベールが矢を射かけ、アルネイスが殿の背から符をかざしていた。 「さぁて、そっちのサンドワームも毒蟲喰らうといいですよ!」 駿龍がサンドワームとすれ違う一瞬に、符は蟲と化して砂蟲の自由を奪う。その隙に丸呑みに巻き込まれた開拓者達を巫女達が救出していた。 「ああ、俺は大丈夫だが‥‥Xの塗装が剥げたな」 忌々しげにごちるロック、回復もそこそこに雪辱を晴らさんと再びXに乗り込んだ。 大口開けたまま固まったサンドワームをヴァイスリッターが襲う。外殻の一部が削げたのを絵梨乃は見逃さなかった。 「花月!」 迅鷹と同化し、渾身の蹴りを傷口に叩き込む。一瞬、絵梨乃は蒼き龍を纏い巨大な砂蟲をも凌駕した。 「やったか!?」 削げた部分から大きく抉れたサンドワームはいまだ動いている。空から穿牙が全身を武器にして体当たりし、背から流陰が野太刀を振るった。 傷口を更に広げんと、ディディエが冷気の刃を打ち下ろす。プレシアが符を使うと、首輪の付いた大蛇が現れた。 「んんんん〜!迷彩すねーく、かもーん♪ まくまく食べちゃって☆」 相変わらず楽しそうな様子で、プレシアは大蛇に攻撃を命ずる。より強い拘束を施されている式は、大きさの違いなどものともせずにサンドワームに喰らいつき、食い破った。 「ね、ね、でっかいミミズ美味しい?」 止めを刺した大蛇の召喚主は、暢気にそんな事を気にしていた―― 残る一体。小サンドワームの命運も尽きかけている。 影牙が翼で起こした衝撃波に薙ぎ倒されたケモノの体へ柾鷹の剣技が襲った。炎の幻影を焔陰で実体化させて、長巻を力任せに叩き込む。ソリグで肉薄したオドゥノールがオーラを纏い突っ込んで来た。 「ゾリグ、お前の思うまま、飛べ!」 接敵の瞬間、手にした槍で流し斬る。穂先の鎌がサンドワームの肉片を掻き斬って飛ばした。 最早サンドワームに抵抗の力は残されていない。ケモノの本能で、サンドワームは地中へと逃れようとした――が。 「逃がすか‥‥ここが正念場‥‥!」 何を思ったか、円秀は韋駄天から飛び降りた。 空をゆく円秀が構えた名刀が微かに赤く輝く。着地点はサンドワームの頭部、眉間辺り。 この発想は料理好きの彼ならではだろう。着地ざま独特の構えで刀を押し当てた円秀は、魚の鱗を削ぐ要領で易々とサンドワームに刃を入れた。 「終わりにしましょう」 魚を捌くが如く、巨大なケモノに引導を渡したのだった。 ●終戦 砂に半分沈んだ巨大な三つの死骸を見上げて、開拓者達は溜息を吐いた。 「‥‥にしても、この国はこんなんがふつーに出てくんのかぁ」 「ジルベリアの自然も過酷でしたが、アル=カマルの自然もまた、過酷なのですね」 アル=カマルの人々は、この巨大なケモノを避けつつ生きているのだ。ウィーウェさんを撫でながら、リーディアが感慨深く呟いた。靖が素朴な疑問を口にする。 「‥‥サンドワーム食ったりすんのかねぇ?」 食うに反応して、プレシアの腹の虫がぐきゅるる〜と鳴った。 「焼いて食べたら美味しいのかな〜 上手に焼けました〜♪ ってやってみよ〜よ〜?」 無邪気に袖を引っ張られた統真は苦笑して「不味いかもしんねぇぞ?」などと言っている。後で聞いた話によると、地元の人も食べないらしい。 殿をぎゅーぎゅー抱き締めながら、アルネイスが真面目に言った。 「アル=カマルの生態系について詳しく知る必要があるかもしれませんねぇ」 天儀の者達にとって、新たな儀は謎ばかりである―― |