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■オープニング本文 もしも―― わたくしに志体があったならば、あの方のお役に立てましょうものを。 ●星見 久々に、夢を見た。 遠い過去の夢。幼き日の約束。 世間など知りもしなかった頃、幼馴染の少年と他愛ない誓いを立てた。 ――貴方の、妻に。 だが、生いるにつれて解ってくる事もある。 遥か高位の家柄の少年は世継ぎの君で志体持ち。名家の傍流で殿上はおろか貴族としても下位の自分は只の人。 家格に大きく差のある互いの家が婚姻を結べるはずもなく、分別が付くにつれ正妻になるなどとは口に出せなくなった。 代わりに願うは彼の人の御為になりたいという想い。志体を持たずとも出来る事はある‥‥そう気丈に振る舞いはしていたけれど。 どうやら心の奥底では気に病んでいたらしい。 すっきりしない胸の内を抱えたまま目覚めた七宝院鞠子(iz0112)は、外から流れ込む冷気に身震いした。 もうすっかり冬だ。世は正月、仁生では主だった貴族達が芹内王に新春の寿ぎを申し上げている頃だろう。彼の人も参内しておられるだろうか、装束の色は‥‥想像しかけた鞠子は、思い描く彼の人の姿が幼い少年のまま止まっている事に気付いて嘆息した。 我が身を眺める。背も伸び、すっかり娘らしくなった自分の姿。 (あれから何年も経っていますものね‥‥随分と成長し‥‥成長?) 目の前に、我が身がいた。 切り揃えた前髪、さらりと流した髪は濃茶がかった黒髪、栗色の瞳がじっと見つめ返して来る。まだ少しあどけなさを残す表情は鏡で見る自分とそっくりだ。 (‥‥え、と、あの‥‥わたくし!?) 声も出せずパクパクさせていた口元を慌てて袖口で隠すと、向かいの鞠子はにっこり微笑みこう言った。 「どうなさいましたの、鞠子さま?」 鞠子に声掛けた鞠子は『星見』と名乗った。鞠子と同じく菊花に因む名なのは、何かの縁であろうか。 「私は貴女、貴女は私‥‥そうでしょう鞠子さま」 星見の言っている事は謎めいていたが、だんだんと鞠子は言葉の意味を己の感覚で理解し始めていた。 彼女が言うように『鞠子は星見で星見は鞠子』というのが一番しっくりする。 一心同体、そう言って差し支えない程に、瓜二つの少女は己に馴染むのだ。 鞠子は思い切って声を出してみた。 「星見‥‥さま? わたくしとお話しをしてくださいませんか?」 喜んでと映し身の少女は微笑んで、鞠子の傍に並んで座った。 暫くして―― すっかり打ち解けた二人の少女は、正月の仁生の街へ繰り出した。 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
氷(ia1083)
29歳・男・陰
クロウ(ia1278)
15歳・男・陰
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
からす(ia6525)
13歳・女・弓
霧先 時雨(ia9845)
24歳・女・志
ジルベール・ダリエ(ia9952)
27歳・男・志
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
レイシア・ティラミス(ib0127)
23歳・女・騎
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
ユリゼ(ib1147)
22歳・女・魔
藍 玉星(ib1488)
18歳・女・泰
胆(ib3217)
30歳・男・サ
ベルナデット東條(ib5223)
16歳・女・志
カメリア(ib5405)
31歳・女・砲 |
■リプレイ本文 新春、正月、新年。 真新しい気持ちで始める爽やかな一日――と思いきや、目の前には自分が居た。 「‥‥いけね。まだ寝惚けてるらしいや。寝る」 「いやいやいや!待て起きろー!!」 いかん、声まで似てやがる。 二度寝を決め込もうとした氷(ia1083)の布団を、目の前の自分が引っぺがし、ヒョウと名乗った。まだ覚醒し切っていない頭で、氷はもっそり考える。 「ヒョウ、ね。どっかで聞いた名前だな」 「氷、か。俺もだよ〜いや〜親近感ってやつ?」 ヒョウは何だかこの状況を楽しんでいるようだ。 大層面倒臭いと思ったのだが、陽気なヒョウに連れられて家の外へ出た。 「‥‥‥さぶっ」 もう一度、家の中へ入ろうとした氷をヒョウが引きずって行く―― さて、場所は北面、仁生である。 正月の賑わいを見せる街は何時にも増して人が多い。所々で双子と思われる二人組の開拓者を見かけるので尚更だ。 世の中には自分と同じ顔の人間が――何人いるのだったか。 まさにその同じ顔の人間を面と向かう因果を体感中の皇 りょう(ia1673)は、ぎこちなく連れを見た。 物珍しげにきょろきょろと、視線を巡らせていたりょうの連れ――リョウが標的を定めた。 ――来る。 「おにーさーん! アタシと結婚して皇家を継いでくn‥‥!!!」 りょうはリョウの口を全力で塞いだ。 リョウが纏う大胆な衣服の裾が乱れて白い脛が顕わになると往来の男共が足を止める。 「やめんか! 全く‥‥天下の往来でぎゃ、ぎゃ‥‥逆ナンとは恥を知れ!」 口にするのも恥ずかしいとばかりに言い澱んだりょうを他所に、リョウは口元の手を振りほどくと猛然と反論した。 「だってさーまずは出会いでしょ? 向こうからやって来るのを待ってる間にお婆ちゃんになっちゃったらどうすんの」 ご先祖様に顔向けできる? 問われてりょうは、ぐ、と詰まった。 しかし天下の往来で、おなごの方から男を口説くとは如何なものか。そもそも皇家の当主はリョウではなく自分である。 「あ、お茶屋さん発見。おいしそ〜」 リョウはりょうなどお構いなしだ。また逆ナンパなどされては敵わない。りょうは慌てて後を追った。 「な、なあ、今の人、すごい美人だったな!」 おのぼりさん感覚でどきどきしている瓜二つの少年――ルークと名乗った彼の目が追う方向を、クロウ(ia1278)は無感動に見遣った。 「あの人?ああ、確かに綺麗だなー」 クロウからすれば、りょうとリョウの二人連れはよくある開拓者連れである。 そう、不思議と開拓者ギルドに登録されている志体持ちは美形が多い。 ルークにとっては開拓者ギルドはまるで関係のない世界なのだろうなと、クロウは志体を持たぬそっくりさんに目を向けた。 彼もまたジルベリア出身なのだと言う。小さな村から出稼ぎに来たというルークはごく平穏に育ってきた印象を受ける。顔も話し方も似てはいたが、クロウとは決定的に何かが違っていた。 (‥‥もし俺が普通に‥‥ルークみたいに育ってれば‥‥) 「‥‥ほんっと、クロウは‥‥あれ? なんか顔、怖いぞ?」 つい憎き野盗の事など脳裏に浮かべていたせいか、ルークが怪訝な顔をしてクロウを覗き込んでいた。慌てて頬を揉む。 「‥‥ああ! ゴメン! ‥‥で、何?」 「だからークロウは淡白過ぎるって」 そうかな、そうだよ、などと話しつつ、同い年の少年達は喧騒の中に消えていった。 フリルが愛らしい紅白のジルベリア衣装を身に纏った少女と連れ立って歩くは、からす(ia6525)。背格好は同じくらいなのに、からすの方が年上に見える二人連れである。 「美味しいものが私を呼んでいるのですわ」 「成程。磁石のようなものか」 リボンを揺らして先を行く音呼の後に、からすはいつものように動じる事無く付いてゆく。 甘味に引き寄せられる音呼の本能に導かれて進めば、やがて美味い店と出会える。焼き団子の串を手に、ここだあそこだと歩き回れば、少女二人連れの愛らしさもあって何時しか店の宣伝にもなる。 「ここも美味しそうですわ」 「音呼が言うなら間違いないね」 引き寄せられて茶店に入ると、りょう達がいた。 既に随分空の皿が積みあがっている。どうやらお品書きに載っているもの一通り食べたらしい。 「では、私も全部いただきますわ」 この少女、相当の健啖家である。 別の席では、ベルナデット東條(ib5223)が連れのジルベリア少女に「どこまで物知らずなのだ」と辛辣な反応。 「ねぇねぇ、善哉って何かな?」 「善哉も知らないのか‥‥?」 甘味処で善哉を尋ねるとは‥‥おまけにこの娘、箸の使い方も知らぬ。 此処に着くまでに散々繰り返して来たのと同じように、ベルナデットは口では文句を言いつつも甲斐甲斐しく説明してやり、箸の持ち方も教えてやった。 揃って善哉を食しながら、ベルナデットは向かいに座る少女を見る。 物知らずというか箱入り娘というか。放っておけば人攫いにでも遭いそうな、人を疑う事を知らぬ素直な娘だ。幸せな育ち方をしたのだろう、笑顔がとてもよく似合う。 出会いがしらに「やっと会えたね。私」少女はそう言ったが面識があった記憶はない。しかし何かが心に引っかかっていた。 一方、勘定待ちの娘達は食後の茶を喫しながら少しだけ真面目な話。 「‥‥ねぇ、りょう」 最初に口を開いたのはリョウ、何だと顔を上げたりょうにリョウは素直な気持ちを口にする。 「もうちょっと‥‥ちょっとだけ、自由になりなよ。髪の色とか、女らしくないとか、そんな事気にして無理に自分以外の誰かを演じようとするなんて‥‥哀しいよ」 「え、演じてなど‥‥」 いない、とは断言できなかった。 目の前の開けっ広げな女の言葉が、りょうの心に沁みてゆく。 「ま、堅物なあんたもあんただけどね」 堅物言うなと怒りながらも、りょうはリョウの思い遣りに気付いていた。 さて再び正月の街。 「なあ、あの人も綺麗だろ‥‥?」 確認するかのように問いかけるルークが示すは新年早々白昼堂々ナンパの現場。 「私と教会でお茶しませんか」 神々しいばかりの聖職者スマイルに、聖職者にあるまじきナンパの文言。エルディン・バウアー(ib0066)である――が。 「エルディンさん、双子だったんだ‥‥」 軟派神父が増殖していた。 同じ顔同じ声音、同じように女性へ甘い言葉を紡ぐ金髪の青年。 「素敵なステンドグラスと、パイプオルガンの音色が貴女を異国情緒にいざないますよ」 きらり、もう一人の白い歯が輝いた。 しかし相手は開拓者、そしてまたしても双子。 「あら、ナンパ? がんばりなさい、良い女の子が釣れると良いわね」 あっさりと受け流す美女の名は美咲 斬華。レイシア・ティラミス(ib0127)のそっくりさんだが、少し強気な雰囲気を纏っている。 「キリカ、貴女って人は‥‥」 「行くわよフローベル、仁生一の甘味処へ連れて行ってあげる。じゃね、ナンパ師さん」 鮮やかにエルディン達を振った斬華は、レイシアを引きずって人混みに消えた。 「おやおや、残念でしたねえ」 「負けません、これも神の試練です‥‥おお、これは良いもふら」 聖職者達は不屈の精神で次の標的を目指す――クロウ達が傍観しているのもお構いなしだ。通りをふらついていたもふらさまを見つけて教会へ誘い始めた。どうやら交渉成立したらしく、もふらはもふもふ付いて来た。 そっくりさんに負けじとエルディンもナンパに精を出すが。 「残念だけれど、他を当たって頂戴、聖職者さん」 あっさり霧先 時雨(ia9845)に断られた。次に声を掛けたのは――おや、知り合い。 「あら、こんにちは♪エルディンさんは‥‥いつでもどこでも、エルディンさんです、ねぇ」 意味深な言葉と共にくすくす笑う二人の女性、双子のほうだが一人は耳の先が僅かに尖っており、他種族を思わせる。 「御機嫌よう、カメリアさん。アイリスさんも‥‥おや、違うようですね」 さすが女性に笑顔割増しの神父様は目敏く違いに気が付いた。カメリア(ib5405)は彼女を妹ではなく『ハーフエルフのカメリア』だと紹介する。 「この子達は?」 もふらを初めて見たらしいハーフエルフのカメリアは、もふもふ寄ってきた生物に興味津々。教会に行けばもっといますよと誘われて、買い求めた珍しい書物を抱えて付いてゆく。 「私はちょいと付き合っても良かったけどな♪」 エルディン達を横目に、つれない時雨の反応を笑い飛ばす限間。時雨は渋い顔で言った。 「独り身のアンタと違って、私には相手、いるもの」 「あらまぁ、妬まし♪」 翳の出そうな言葉を、限間は飄々と言ってのけた。 (死んでる、のよね) 母の恩人であり、我が名の由来となった開拓者、限間 時雨。 開拓者になるべく家を出た後、消息を辿った限間の末路はアヤカシ退治で命を落としたというものだった。 「‥‥まったく、自分の末路を見たみたいで凹んだものよ」 「ま、私はああいう風に生きて死んだけれど、霧先は霧先で好きにしなさいな」 文句を言う時雨に対し、限間はあっけらかんとしたもので。 名だけでなく、何の因果か姿も似た二人。だけど生き方はそれぞれが選び取ってゆけるはず。 限間に時雨が返事しようとした時にはもう、彼女の姿は消えていた。 一年の計は元旦にあり。 正月とは言え羅喉丸(ia0347)は鍛錬を休まない。拠点の武道場で稽古始めを終えて温まった身体から流れる汗を拭っている所に『彼』は現れた。 聞けば彼はサムライであると言う。 羅喉丸、幼き日に泰拳士に命を助けられて泰拳士を志した青年である。もしやと思う所もあって、羅喉丸は彼に尋ねてみた。 「俺は泰拳士なのだが‥‥貴殿がサムライを志された理由を伺っても構わぬか」 「私か? 生まれ育った村をアヤカシに襲われてな‥‥助けてくれた開拓者がサムライだったのだ」 やはり。姿かたちが似ているだけでなく境遇も似通っているとは。 言葉を交わすたびに親しみが湧いてくる――が、ここはやはり拳で語り合うのが男であろう。 「やるか」 「望むところだ」 お互い鍛錬好きの上に、相手を頼むのにこれほど適した者も居るまいと、意気投合した二人は武道場を借り切っての鍛錬に励む。やはりいつもの稽古風景である。 ここで逢ったも縁、二度と逢えぬかもしれぬ縁。二人は思い残す事がないよう、全力で組み手を始めた。 神社では二人の少女が初詣。 「健康運に金運に、それから‥‥」 「まあ玉星。素敵な殿方と巡り会えますように、を忘れてますわ」 藍 玉星(ib1488)に上品な駄目出しをした少女は玉晶。泰国の富裕層が着るような豪華な衣装を身に纏い、何処か浮世離れした雰囲気を醸しだしている。 「そ、そうアルか」 赤面した玉星は速攻で祈りを終えた。隣では玉晶が延々祈り続けている。 「‥‥いつまで祈ってるアルか」 「私の王子様が現れるまでですわ」 賽銭箱から湧いて出はしないので、さっさと離れる事にしたのだが。 玉晶は御神籤を引いてみれば『待ち人来たる』が出るまで引き続けるし、男性参拝者に少し肩が当たっただけでも「袖触れ合った縁、この方が私の王子様?」などと絡むものだから、玉星は堪ったものではない。 「済まないアル、こいつちょっと、屠蘇の飲み過ぎで頭が飛んでるネ‥‥」 相手の女性に睨まれて平謝りしつつ、恋人持ちの男性から玉晶を引き離した玉星は逆に責められる始末。 「酷いですわ、玉星。どうして私の恋を邪魔しますの?」 「‥‥殴っていいアルか?」 かなり本気だ。 花椿隊詰所では元旦の挨拶が交わされている。 「ジークリンデお姉様、天儀のお召し物もとてもよくお似合いですわ」 大店のお嬢さんが相変わらずの様子でほうと息を吐いた。 着せ付けられたジークリンデ(ib0258)は、どきどきと不安気に振り返る。 「似合うわよ」 温かい微笑みに安堵した。 落ち着いた大人の女性――出逢ったばかりなのに、姉のように思える人。 「ケルテ様もお召しになってみませんか?」 「そうね。私はこれを着てみたいわ。鞠子様はこちら、星見様はこの柄は如何?」 大部屋で護り袋を縫っていた鞠子と星見にも声掛けて、ケルテはあれこれ世話を焼く。 ジークリンデより二つか三つほど年上だろうか、仁生の街なかで立ち往生していた引っ込み思案のジークリンデの手を引いて救い出してくれた人は、本当に姉のようで。 茶店に入れば合わせるともなく声を揃えて注文したり、好みのものまで同じだったり。楽しかった一日を思い出す。 「ケルテ様‥‥」 共に仕立てた護り袋を差し出せば、ケルテもまた自身が縫ったものをジークリンデに渡してくれた。 (心配しないで。あなたはきっと私になれるわ) 今は言えないけれど、大丈夫。だって私はあなたですもの。 ケルテの想いを知らぬジークリンデは頬染めて謝意を示した。 ありがとう――大切な事を、夢を思い出させてくれた貴女。 私から生まれたあなたは、この身を記憶に残さんと、目に焼き付けんと見つめてくる―― 「ああ、あの子達、可愛いな」 鞠子と星見にすれ違った娘は楽しげに呟いて、すぐに淡々と「だけど私きっと忘れるわ」と続けた。 「リゼ‥‥」 ユリゼ(ib1147)は自分と鏡写しの少女の名を複雑な気持ちで呼んだ。 左手に巻かれた包帯はリゼの力を封じるもの、彼女の力は記憶を代償として発動されるものだから、今の記憶もいずれは消えてしまうに違いない。 ごめんね、とリゼはユリゼの手を包んだ。 「本当は忘れたくないわ。だから大きな力になるの」 嫌な事忘れたい事を忘れるのとは違う、大切な記憶だからこそ。 リゼはユリゼの顔を覗き込んだ。左右対称に色違いの瞳は右が碧、左目が青。 「私とても幸せよ?」 だって――安心して忘れられるって、とても幸せな事なんですもの。 今から百数えた後に、曙姫さんがあの角を曲がってやって来る。 一年後から来たという自分似の男の宣言を、ジルベール(ia9952)は最初信じなかった。 「なんやそれ。予言みたいな事言うやんか」 「予言や。何なら曙姫さんの着物の色も当てたろか?」 未来から来たジルベール――ややこしいので以降はジルと呼ぶ――は、鞠子が二人に何と挨拶するかまで予言してみせたが、はたして。 「まあ、ジルベールさま。新年あけましておめでとうございます」 その後続いた挨拶文言、一字一句間違いなくジルは当ててみせた。勿論最初の「まあ、ジルベールさま」も含めてだ。 勝ち誇った顔のジルと複雑な表情のジルベールを見比べて、鞠子は怪訝そうに首を傾げた。 「そんならもう一個当てよか、あの教会に行ったら知り合いに会えるで」 向かってみればエルディン教会仁生支部、もふらと開拓者達が待っていた。 一緒に茶を喫しつつ、ジルベールはひとつだけジルに問う。 「奥さん、元気か? 仲良ぉしてるか?」 当然、と――ジルの自信満々で幸せな表情が語っていた。 |