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■オープニング本文 嗚呼この想い如何に叶えんや。 かの君への募る想い、神よ叶え給え―― ●恋愛成就のお守り 神楽・開拓者ギルドの個室。 ここは人目を忍ぶ依頼や貴人との応対に使われる場所である。時折サボり中の職員が休憩に使う事もあるが――今使用しているのは歴とした依頼、のはずだった。 (「そんな事を依頼しに来ないで欲しい‥‥」) 受付職員がどう思おうが、依頼は依頼であった。 目の前の頼りなさげな北面貴族は、相変わらず細々と頼み事を告げた。 「安須大祭で授かれる、恋愛成就のお守りが欲しいのです」 この北面貴族、名を桧垣実道と言う。それなりの家柄、それなりの地位にいる若き貴公子だ。 ただこの実道卿、人並み外れて気弱な性分であった。 かねてより某名家の傍流にあたる家系の一ノ姫に懸想しておられるのだが、いまだ想いを遂げるどころか碌に印象付ける事さえできず、悶々としている。何とか開拓者ギルドに赴くまではできるようになり、その都度開拓者達に面倒をお掛けになる御人だ。 三度担当になってしまった受付職員は、長期戦覚悟で墨が干乾びかけた硯を引き寄せ殊更ゆっくりと墨を擦り始めた。 実道卿の話を纏めると、以下のようになる。 相も変わらず七宝院家の翳姫様に懸想している実道卿は、石鏡で開催中の安須大祭に於いて恋愛成就のお守り争奪戦が行われるという話を耳にした。 石鏡と言えば精霊の加護満ちる国。そこで年に数個しか作られない恋愛成就のお守りは霊験あらたかで効果抜群だとか。挑戦者の頭上に輝くご利益抜群のお守りを、彼は手に入れたいと思った。 だが自分は一介の貴族である。志体持ちが入り乱れる争奪戦に紛れ込めば半死半生どころか命さえ落としかねない。 故に彼は考えた。開拓者に手に入れて来て貰おうと。 運も縁も、己の意思と才覚で得ていくものではないのか。――とは、立場上口が裂けても言えなかったが、職員の顔には明らかに「またか」と書かれていた。 気付く様子もなく、実道卿は「争奪戦はどのように行われるのでしょうか」などと逆に尋ねる始末だ。 (「‥‥‥‥」) 一瞬考えて、職員は石鏡内で大祭に因んで開催される『お守り争奪戦』を紹介する事にした。 ●お守り争奪戦 石鏡の都・安雲にある、もふら牧場でその競技は行われる。 競技内容は至って簡単。 『もふらさまを捕まえて、幸せを授けてもらいましょう!』 各もふらさまの首にお守りが掛けられているので、捕まえてお守りを授かってくださいという訳だ。 「牧場内にいるもふらさまの中に、恋愛成就のお守りが‥‥」 職員の説明を聞いた実道卿、実に都合の良い理解をしたようだ。 巧みに情報操作した職員、内心「やった」とほくそ笑む。何せ、実は安雲内で開催されるお祭り連動企画なのだ。 競技が行われるのは大もふ様がお世話さ黷トいる安須神宮の牧場ではないし、大もふ様もいない。首に掛けられているお守りは様々で、家内安全健康祈願、恋愛成就も勿論ある。ただし探せば、の話。 ひたすら目当てのお守り探して牧場内を彷徨うも良し、適当に捕まえてまったりもふもふするも良し。そんな緩い競技なのだ――が。 「では、この競技に開拓者を派遣してよろしいですか」 「ええ、勿論です。何卒よろしくお願いいたします」 職員の誘導など露知らず、実道卿は土下座せんばかりに頭を下げたものだった。 |
■参加者一覧
佐上 久野都(ia0826)
24歳・男・陰
玖堂 羽郁(ia0862)
22歳・男・サ
詐欺マン(ia6851)
23歳・男・シ
アルセニー・タナカ(ib0106)
26歳・男・陰
リディエール(ib0241)
19歳・女・魔
明王院 千覚(ib0351)
17歳・女・巫
レジーナ・シュタイネル(ib3707)
19歳・女・泰
王 娘(ib4017)
13歳・女・泰 |
■リプレイ本文 安雲の巫女様方が年に数個お作りになる、霊験あらたかな恋愛成就のお守り。 この安雲大祭で授かる事ができると言う――ただし奪い合って、だが。 ●ようこそ戦場へ? 競技とは言え奪い合い、さぞや殺伐と混沌としているものと思いきや――そんな事はなかった。 広い牧場に点々ともふらさまが居る、どこにでもあるもふら牧場の光景である。所々で家族連れなどがもふらさまと戯れている辺りが観光企画らしいと言えるだろうか。 「もふらさま、がいっぱい‥‥です」 ぽつ、と呟いたレジーナ・シュタイネル(ib3707)が呆気に取られている。実年齢より大人びて見えるその口元が、あどけなく緩んだ。ほわ、と笑んで、アルセニー・タナカ(ib0106)からリボンを何本か受け取った。 アルセニーが用意したリボンの色は六種類、意図があっての事だ。もふらさまの首に掛けられたお守りを調査した印にリボンを飾る。二度手間を避け効率よく探し物をするのに適した作戦だ。 赤は家内円満、青は学業、黄色は金運で白は健康運。恋愛成就のお守りの印は勿論桃色だ。 「‥‥緑は」 王娘(ib4017)が緑色のリボンを示し、言葉少なに尋ねた。アルセニーは企画主に確認したお守りの種類を頭に浮かべてこたえた。 「緑は‥‥総合運、ですね」 当たり障りない万能お守りが混じっているらしい。 ふんわり穏やかな雰囲気の娘が草原でバスケットを持って立っている――それはまるでピクニックの光景のよう。 手作りクッキーをいっぱい詰め込んだ大きめのバスケットを抱えて、リディエール(ib0241)は蒼みがかった白銀の髪を揺らした。リディエール本人も何処か行楽気分で楽しげだ。 天気は良いしもふらさまはご機嫌。アヤカシもいなければ、気を張る理由もない。 「実道さんも来られたなら‥‥自分で見つけたんだって自信をつけるお手伝いが出来るのでしょうけど‥‥」 探したものをお届けでは、そんなにお手伝いしてあげられないですねと明王院千覚(ib0351)はしょんぼり。 そんな千覚の頭に優しくぽふりと触れて、佐上久野都(ia0826)は茶目っ気込めて言った。 「あの争奪戦に参加する女性人の意気込みは、開拓者だって敵わないと思うのですがね‥‥ご自分で取りに行かない辺りが‥‥」 後半は少々呆れ気味に肩竦め、玖堂羽郁(ia0862)に水を向けた。 羽郁は国は違えど貴族の出自の開拓者だ。彼は解らなくはないけどと前置きして、実道の他力本願を嘆いた。 「好きな人の心は自力で射止めないと‥‥その事に、気付いてくれたら良いけど、な‥‥」 貴族の恋は成就するまでに互いの顔を見ない場合さえあるが、それではいけないと羽郁は思う。最初は親友だった少女に想いの丈を打ち明けた時の事を思いだして、彼は微かに頬を染めた。 「これ程の数がいるとは予想外でおじゃる」 これでは本当に牧場丸々ひとつ探索対象ではないかと、詐欺マン(ia6851)は嘆息した。 広い広い牧場に点在とは言え結構な数の毛の塊が転がっている。 だがしかし彼は諦めたりはしない。 何故なら彼は『愛と正義と真実の使者』、実道卿が報われない定めにあろうとも、彼は運命を変えてみせるのだ。 「ところで詐欺マンさん、それは一体‥‥?」 実道と面識はあるが、彼が絢子に贈ろうとした猫又捕獲の件には関わっていなかった羽郁が尋ねた。 詐欺マンが荷から取り出したのは、竹輪。 「あの者の力を借りる事が出来ればあるいは‥‥」 「竹輪?ああ、ちくわですか」 実道が開拓者に捕獲を依頼した野生の猫又は詐欺マンが与えた竹輪を殊のほか気に入り、自ら名をちくわとしたのだ。実道には懐かなかったが結果的に絢子宅の居候になったちくわに因んで、詐欺マンはもふらさまを竹輪で餌付けする作戦のようだ。 「これに託してみるでおじゃる」 それに、これまで実道と関わってきた詐欺マンは信じている。ああ見えて実道はそれなりに成長していると。 いずれは――そう、あと百回位このような事を繰り返せば道は開けるに違いない。百回目で実道が頓死しなければの話だが。 ●色分けもふら さて、数種類のリボンを手に各々草原へ。もふらさま所持お守り調査開始だ。 もふらさまを招き寄せた千覚は、まずはご挨拶。手にしたブラシで身の丈ほどのもふらさまの毛を優しく梳いてやる。もふ〜と心地よさげに目を細めたもふらさまの毛はふかふかのもふもふだ。 「もふらさま達も冬毛になるんですね‥‥とってももふもふであったかです」 ブラシで梳かしたもふ毛を手で撫でて、千覚はそっと頬を寄せた。 このまま昼寝ができそうな心地よさ――だけど大事なことが残っている。 「もふらさま、お守り見せてくださいね」 素直に頭を傾けたもふらさまの首の辺りをもふもふもふ。 手に当たったお守りを引き寄せて確認すると、これは――もふらさまのお守り? 「えぇと‥‥緑、でしょうか」 緑のリボンを結ぼうとして、千覚は少し考えた。 もふらさまの首に掛かったお守りをいただく企画ではあるのだが、貰いっ放しはもふらさまに悪い気がする。 考えている間も、あやすように優しく撫で続けていたもふらさまの背から手を放し、身の丈ほどのもふらさまに向き直った。 「もふらさま、あの‥‥手持ちの御守りと交換して貰っても良いですか?」 「いいもふよ」 持って来ていた恋愛成就のお守りと交換し、千覚はもふらさまの首に桃色のリボンを結んだ。 もふらさまは色の意味は解らないものの、お守りと一緒に綺麗なリボンまで結んで貰ってご機嫌だ。 もふ〜もふ〜と喜ぶ様子に、自分達もと周囲のもふらさまも集まって来た。 「あらあら‥‥少し待って下さいね」 順番に遊びましょうと、千覚は兎耳を揺らして微笑んだ。 もふらさま達が喜びそうな食べ物を手土産に持って来た者も多い。 詐欺マンの秘策・竹輪以外にも、旬の果物にお手製クッキーなど、ちょっとしたピクニック状態だ。アルセニーに至ってはお昼のお弁当持参である。 弁当持参の執事さんは、もふらさま相手に小声でもふもふお話し中。 「あなたに理解しては貰えないと思いますが‥‥聞いていただけるでしょうか」 「もふー?」 暢気な返事を肯定と受け取って、アルセニーはもっふりした背に身を預けて悩みを語り始めた。 もふもふもふ、と毛並みを堪能しつつ――真面目に、独り思い悩んでいる恋の話。聞こえているのは聞き手のもふらさまだけ。 「タナカ、何話してるのかな‥‥」 同行の開拓者を一瞥した娘は、しかしすぐにもふらさまに視線を奪われた。 もふらさまが、いっぱい。 表情の変化こそないものの、ちょっぴりワクワクしているらしい。猫耳フードに興味を惹かれて寄ってきたのを、抱きついてもふもふもふ。小さいもふらさまは膝にのせて、いいこいいこと撫でてやる。 観光牧場だけあって、随分と人に慣れたもふらさま達だ。 バスケットから漂う甘い香りに誘われてやってきたもふらさま達に囲まれて、リディエールはおっとりとクッキーを指に挟む。 「もふらさまもふらさま、お首のお守り見せてくださいな」 歌うように囁くと、どのもふらさまも快くお守りを見せてくれた。お礼にクッキーを差し上げて、耳や頭の毛をひと房にリボンを結ぶ。すっかり懐いて居座った調査済みのもふらさま達に囲まれて、リディエールも時折は自分もクッキーを摘みつつ、時を過ごす。 「クッキー、ほしいもふ」 おねだりした膝上の子の口にあーんと入れてやって、優しく毛を掻き撫でた。 ●恋してますか 「やぁ羽郁。久し振りだね、何時振りだったかな」 羽郁と並んで、もふらさまの首元を確認し始めた久野都は、今日は姉上は居ないのかいと声掛けた。 姉上――羽郁には双子の姉がいる。世界にただ一人、半身たる双子の姉。 「家内安全とかあったら、貰っとこうかな。あと安産祈願とか‥‥いや、まだまだまだまだ先の話だけど!」 「‥‥‥‥」 独り言で一人で盛り上がり、真っ赤になってわたわたしている羽郁の顔は、半身から独り立ちを始めた男の顔だ。 我に返った羽郁、怪訝そうに「もふぅ?」唸っているもふらさまの口には干し柿を押し込んで久野都に照れ隠し。 「れ、恋愛成就が見つからなくっても、俺が清めと祈念するから!」 これでも石鏡の巫覡氏族だ、適当なお守りでも『石鏡の恋愛成就祈念のお守り』程度にはなるだろと羽郁は笑って誤魔化した。 羽郁の祈念であればさぞご利益もあろう。好いた相手ができたに違いない少年を微笑ましく見つめ、久野都は血の繋がらぬ双子の妹達に思いを馳せた。 妹達、歩む道を別つとも変わらず二人仲良くあって欲しいと思う。 彼女らへの土産にと考えるお守りは、種別は問わないが揃いで同じ物を授かりたいと兄は願った。 「もーふ、りんごもふ」 「かきもふ〜」 寄ってきた仔もふら達は久野都に果物をねだる。その姿は殆どそっくりで、希望通りに林檎と柿をやって両手を伸ばし毛を撫でると、目を閉じれば区別つかないような似た撫で心地だ。 「あなた達は双子なのですか?」 「もふー?」 「もふ〜?」 揃って首を傾げた仔もふら達の首元を見せてもらうと、共に同じお守りを付けている。 お守りをくださいねと仔もふら達から授かって、久野都は仔もふら達に穏やかに笑いかけた。 「これからも二匹仲良く、ね」 はふ、ともふらさまに顔を埋めてレジーナは物思う。 (にーちゃ、より、好きだと思う人、なんて‥‥絶対居ないと思ってた、んだけどな) 憧れの長兄。目標で、大好きで‥‥だけど。 頬に熱を覚え、更に毛に顔を埋める。もふ毛が氷であれば熱も冷めようが、頬に触れる毛はもふらの体温を帯びてふわふわと柔らかい安らぎを伝えるばかりである。 「もふらさま、も、恋とかするのかなぁ‥‥しますか?」 「もふ?こい、ってなぁにもふ?」 おいしいもの? そう尋ねてきたもふらさまはどうやら恋とは無縁のようだ。美味しいものらぶ、と言えるかもしれないけれど間違っても恋煩いはしないだろう。 「‥‥可愛い、です」 ふふ、と小さく笑ってレジーナは、もふらさまにきゅっと抱きついた。もふらさまに断りを入れてから、お守りを見せて貰ってリボンを結ぶ。 「恋愛成就のお守り、見つかる、と、いいです、ね‥‥」 なかなか結ぶ機会のない桃色リボンは何時結ぶ。 求めている人の為にも見つかって欲しい――願いつつ、祈りつつ、レジーナはもふらさまの間を縫って探しもの。依頼でしている事だけど、それはとても温かくて優しくて。 (実道さん、も‥‥ご自分で、来られたら良かった、のかも) 探しもののひとときに幸せを感じつつ、レジーナは遠く北面で恋に苦しむ若き公達に思いを馳せた。 (痛くて、苦しくて‥‥恥ずか、しくて。泣きたくなるばっかり、なのに‥‥ それでも会いたいっ、て思う。恋って、とっても‥‥不思議、ですね) 知らず、もふらさまを撫でるレジーナの指先は愛しさを滲ませていた。 さて、弁当持参のアルセニー。 彼の周りはすっかり悩み相談室状態だ。尤も、もふらさま達が相談員として有用かは別問題だが。 アルセニーとて本気でもふらさまに助言を貰おうとしているのではない。だけど、誰かにただ聞いて貰う――できれば無関係な相手が良い――というのは、心の重荷を下ろすのに丁度いいものだ。 「身分違いの恋をしてしまいました。私の仕え先で恩のある家の長女で、それは美しく、また可愛らしく微笑む女性です」 もふもふもふもふ‥‥‥‥ いっぱしに相槌を打つもふらさま達。麗しのお嬢様を心に思い浮かべ、アルセニーは溜息を吐いた。 「いずれは身分に相応しき貴族に嫁ぐ御方です。しかし、私は‥‥もう胸が張り裂けそうです」 もふもふもふもふ‥‥‥‥ 苦しげに表情を歪めるアルセニーを覗き込み、不思議そうなもふらさま達。絶対に恋煩いなんて理解できなさそうだ。 「ああ‥‥こんな話をしてしまってすみません‥‥話をして少し楽になりました。お礼にお弁当を一緒にどうですか?」 もふもふもふもふ!! 途端に元気になったもふらさま達に戸惑いつつも、アルセニーは気前良く「お気に召したのならどうぞ」と弁当全て差し出した。 抱きついているのか、しがみ付いているのか、埋もれているのか。まったり大もふらさまに抱きついて辺りを見渡す娘、周囲のもふらさまはもう皆リボンが付いていて、彼女が抱きついている子が最後のようだった。 みんなは希望のお守りを貰えたのかな。 お守り自体には特に興味のない娘だが、恋愛成就のお守りを望んでいた同行者が授かれていればいいなと思う。 「でも‥‥お守りなんか無くてもその行動力があれば大丈夫だろう‥‥」 此処までやって来た者達なら自力で成就させるに違いない――多分。 また参加しよう、もふらさまと戯れに。 娘はそう呟いて、大もふらさまからお守りを授かると牧場を後にした。 ●信じる者は救われる? 神楽、開拓者ギルド特別室。 石鏡より帰還した開拓者達は実道に対峙していた。依頼上は別に依頼人と面会する必要はなく、一言物申したい者が居残っていただけである。 「‥‥皆様、ありがとうございました‥‥」 身分だの建前だの全く無視で土下座せんばかりに頭を下げる実道に、リディエールは困った風に表情を曇らせて言った。 「実道さん‥‥今回は、私達がお守りを探して来ましたけれど‥‥自らがうごかなくては、ご縁は巡って来ないと思うのです」 そうだと頷く開拓者達。 自ら動き恋の花咲かせた羽郁、夏に翳姫の微笑を呼んだ開拓者仲間を知る久野都、自信を付けて欲しいと願う千覚。 「少しずつでも自信を持って物事に当たられるようになるといいですね」 「ありがとうございます‥‥」 千覚の言葉に恐縮しきりの実道である。 「そこで、これでおじゃる」 なればと詐欺マンが徐にお守り三種を取り出した。一見ごく普通のお守りである――が。 「霊験あらたかな詐欺マンぱわーを注入したこの代物、運気を大きく変える効果があるでおじゃる」 「おお、さすがは詐欺マン殿!」 神社の注連縄にしがみ付くかの勢いで、実道は詐欺マンの言葉に乗った。 尚、『詐欺マンぱわー』とは『信じる者は救われる素敵な力』の事だとか。ある意味、最強の力ではあるまいか。 皆より受け取ったお守りを押し頂き、実道は何度も深々と礼をした。 別れ際、レジーナは実道に言葉を掛けた。 「貴方にとって‥‥良い恋でありますように」 それは彼女自身へ向けての言葉でもあった。声には出さず、レジーナは心の中で呟く。 (お互い‥‥頑張りましょう、ね) |