開拓者になりたい!
マスター名:周利 芽乃香
シナリオ形態: ショート
無料
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/07/03 22:53



■オープニング本文

 ギルドに所属し、様々な依頼をこなす者達を開拓者と呼ぶ。
 彼らは先天的に、アヤカシと互角に戦える力を持っている。
 人はその、生まれついて与えられた能力を「志体」「仙人骨」などと呼んだ。

●小さな密航者
 北面の精霊門で、ちょっとしたいざこざが起こったのは数日前の事である。

「はーなーしーてー!」
「依久乃を放せっ!俺たちは行かなきゃならないんだ!」
「ワタシたちはイライに行くのです。そこを通してください」
 年端も行かぬ子供たちが五人、精霊門を使おうとして監視係に見咎められた。
「君たち、お父さんかお母さんは?まさか子供だけで行こうと言うのではないだろうね?」
 監視係に取り押さえられた子供たちに上司の役人が穏やかに尋ねると、年長の男の子が胸を張って応と答えた。
「俺たちは神楽の都へ、開拓者を雇いに行くんだ!」

 それは只事ではないと、役人が事情を聞いてみる。
 曰く、自分達は開拓者を目指している。将来の目標に会って、この先どのように修行を積めば良いのか教えを乞いたい。
 大事でなかった事に安堵したものの、全員で小遣いを出し合って依頼金を用意したのだと金子を見せられて、役人は言葉を失った。
 子供五人の小遣いである。些少どころでなく依頼金には程遠い。だが彼らにとって、これは本気の事なのだ。
「‥‥とにかく、今日は帰りなさい。ご両親に何も言わずに来たのではないかね?正しい開拓者は親不孝などしないものだよ」
 物は言い様。子供たちは素直に村へと帰って行ったのだ。

●思い出作り
 また訪れた子供たちに、役人は今日はどうしたのかねと問うた。
「へっへっへー今日は父ちゃんも一緒だかンな!」
 捕まえるのに苦労した小僧が不敵な笑みを浮かべる。何だかカチンと来たものの、子供の言う事だからと腹の虫を抑えて、親御さんに会わせて貰えるかなと続けた。

 役人の前に現れた男は、先日は子供たちがご迷惑をお掛けしましたと謝罪した後、事の次第を語った。
 数日前に子供たちが精霊門を抜けようとした事を知った村の大人達は、頭ごなしに叱る事はせずに真っ直ぐ子供たちに向き合って事情を聞いた。彼らが開拓者を目指していると知った大人達は、夜通しどうするべきかを話し合った。
 村から志体の持ち主が出たという話は聞かない。開拓者への道を歩める体は先天的に得られるものであり、おそらく子供たちの誰ひとり志体ではない。
 だが――まだ幼い彼らの夢を簡単に打ち砕く事は容易くあれどできない事だった。互いに小遣いを出し合ってまで神楽へ向かおうとした子供たちの真心を踏み躙るような事はしたくないと、大人たちは彼らの夢を応援する事を選んだのだ。
 無論、本当に開拓者を育てようと言うのではない。開拓者の資質は持たねども、人の善なる資質は同じはず。彼らが善き大人へと成長できるように手助けをするのだと男は語った。

「おじちゃん、いってくるねー!」
 男に連れられた子供たちを見送った精霊門の役人は「良い思い出を」と呟いたのだった。


■参加者一覧
沙羅(ia0033
18歳・女・陰
神流・梨乃亜(ia0127
15歳・女・巫
戦部小次郎(ia0486
18歳・男・志
篠樫 鈴(ia0764
17歳・女・泰
桜木 一心(ia0926
19歳・男・泰
花月(ia1143
16歳・女・巫
竜士一陽(ia1572
20歳・男・泰
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰


■リプレイ本文

●無垢なる瞳
 ギルドで係に引き合わされた五人の子供たちは、開拓者たちが考えていたよりも、ずっと幼く純粋かもしれなかった。

「未来ある少年少女たちよ、開拓者ギルドへようこそ!」
 引き締まった体躯、無駄のない筋肉。醸しだす只者ならぬ雰囲気。
 大仰に出迎えた桜木一心(ia0926)に、子供たちがわっと沸いた。
(「開拓者って憧れの存在になるんやな‥‥」)
 篠樫鈴(ia0764)は自然と笑みを浮かべた。「あちょー」とポーズを決めてご挨拶。
「うちはリン!泰拳士をやっとるもんや!‥‥へ、変とか言わんとってー!」
 おどけて泣き声を上げる鈴だが、子供たちの掴みは上々だ。
 邪気のない眼差し。人生の試練はこれから、今はただ夢と希望だけをを湛えた瞳。
 この‥‥みんなの明るい笑顔が、自分を勇気付けてくれる。子供たちがのびのびと安心して遊べるように依頼を遂行しよう。花月(ia1143)は決意も新たに、隣にいる小柄な巫女へ目を移す。
(「梨乃に出来る事は少ないけれど‥‥」)
 目を向けられた巫女――子供たちの笑顔を眼前にして、神流・梨乃亜(ia0127)の迷いは吹っ切れた。
 何して遊ぼう。いっぱい、いっぱい遊んじゃおう。
 この子たちの笑顔を守ろう。楽しい思い出を一緒に紡いで、笑顔で村へ帰ってもらえるようにしよう。
 そんな一同の様子を、竜士一陽(ia1572)は冷ややかに見つめていた。皆が挨拶を交わす中、随伴している小弥太の父親に耳打ちする。
「ちょっと話があるんだが」
「あとにしていただけませんか?」
 単独で連れ出したかったのだが、父親は子たちの引率だ。一人場を離れるはずもなかった。

(「あの子かしらね」)
 沙羅(ia0033)は五人のうち頭一つ抜き出ている長身痩躯の少年を見た。あれが陰陽師に憧れるという天都理という少年だろうか。
 擦り切れた一冊の書物を大切そうに抱えた少年に開拓者たる覚悟はあるのだろうかと、沙羅は厳しい目を向ける。
 そして、厳しくも親身な視線を向ける人物がもう一人。
 戦部小次郎(ia0486)は対等の関係で彼らを導こうと考えていた。通り一遍の世話では意味をなさぬであろう。顔と顔突き合わせ、真摯に向き合う事。彼らの将来の為にも。
 初めて請けた仕事、戦闘を含まない依頼を選んだけれど報酬を貰う以上は全力を尽くしたい。
 剣桜花(ia1851)の肩に力が入るのは初仕事故にだけではない。彼女の持ち前の責任感の強さが緊張に拍車をかけていた。
「桜花さん、頑張ろな!」
 緊張を感じ取った鈴が、元気よく桜花の腕に手を回した。ぎこちない笑みで返しながらも、桜花は肩の荷が少し下りたような気がした。

●神楽の街で
 賑やかな一団が街をゆく。
 神楽の街に開拓者の姿は決して珍しいものではないが、人々が思わず振り返るのは――
「あれは食堂、うまくて安くて身なりに関係なく歓迎してくれる!開拓者にとって夢の国だ!」
 怒涛の如き勢いで案内する一心だ。微妙に実感がこもる案内に、子供たちはただただ感心、大人たちも一心の勢いに飲まれて楽しんでいる。
「兄ちゃん、あれは何?」
「まったく知らん!」
 清々しいまでのいい返事。これには無口な少年も吹き出した。
「‥‥あ、ふゆきにいちゃんが、わらった」
 最年少、五歳の依久乃が小さな手を引いている自分を見上げて「ねー」と笑う様子が愛らしくて、花月も思わず微笑む。
「桜木殿、お待ちなさい」
 風悠来と並んで歩いていた小次郎が、勢いだけで突き進んで迷子になりかけた一心を、冷静に捕まえる。
 何をしてあげれば良いか一生懸命考えて案内した秘密のお店。自分の財布を紐解こうをした桜花を、その手は柔らかく制した。
「美味しいお団子でしたな。好いお店を教えていただきました」
 依頼で仕事で報酬もあるけれど。固く考えずとも良いのだと、引率の優しい目は語っていた。

「見せてやろう、開拓者の力をな」
 不遜な物言いと共に連れて来られた修練場。一陽の様子に殺伐としたものを感じたか見せ掛けと看破したか――彼の顔に貼り付いた笑顔を子供たちは遠巻きに見つめている。
「ほう、手合わせか!超桜木流拳法師範・桜木一心、組み手を頼もう!」
 気合充分、握った拳を打ち鳴らし一心が前に出る。朗らかに鍛え上げた二の腕を見せつけた。
「格の違いを見せ付けてやる!」
「甘いな!俺に弱点はなァい!!」
 青年二人の組み手を、手に汗握って応援する子供たち。急所を狙った一陽の一撃を見事にかわし、一心が対手の均衡崩しを狙う!
「解説しよう!超桜木流拳法は対手の姿勢から重心を瞬時に判断し、攻撃と同時に相手の体勢を崩すのだ!」
 おおぅとどよめく子供たち。何のことはない、泰拳士の空気撃なのだが!
 すんでの所で踏みとどまった一陽に一歩下がって辞儀をすると、一心は営業――もとい自流派の演舞を派手に、無意味に派手にしてみせた。
「兄ちゃんスッゲー!」
「当流派を会得すれば、このくらい当然のこと」
 したり顔で頷くも、相当いかがわしい。だが子供たちは大喜びだ!

「一心さん大人気やねえ」
 小弥太に超桜木流拳法基本所作を伝授している同業の泰拳士を、ちょっぴり羨ましげに眺めた鈴は、敦比古にこっそり打ち明けた。
「実はうち、こういう訓練はちょっとしかした事ないんよね‥‥ずるいと思う?」
 意外な事を打ち明けられたと驚く少年に鈴はさらに「実は‥‥」と続ける。
「うち、実は正義の泰拳士マスクやってるんよ」
「‥‥姉ちゃん変!真面目に聞いてソンした!」
「変な人ちゃうよ!?仮名やし!損とか言わんといてー!!」
 赤いマスクを取り出して「どう、どう格好ええ?」ポーズを決める鈴。冗談を交えた本音はとても優しく思い遣りに溢れていた。
 ――生まれた時になれるか決まってるもんやなんて、ね。
「泰拳士の姉ちゃん!一緒に超桜木流拳法やろうぜー!!」
 鈴は赤いマスクのまま小弥太に手を引かれて行った‥‥泰拳士マスク正体判明の危機や如何に?

「みこのおねえちゃん、ふしぎなちからをみせて?」
 依久乃が梨乃亜の袖を引いてせがんだ。
「力‥‥うーん、力の歪みでもいいかなっ?」
「歪みですと攻撃対象が必要ですね。神風恩寵はどうでしょう?何でしたらわたくしが傷を付けて‥‥」
 巫女に属する者三名、全員が神風恩寵と力の歪みの修得者である。桜花が自身を傷つけようとするのを見て、依久乃が「いたいの、だめー」怯えた表情を見せた。
「痛いのは‥‥そうね。痛くするのは止めるね」
 依頼を見世物と考えておれば、そのまま自傷し回復していた事だろう。だが、子供と向き合うと決めていたから、おのずと手が止まった。制止しようとしたのだろうか、自分に抱き付いて来た依久乃の頭を撫でてやる。しがみつく少女を撫でながら、桜花は改めて自分の力について考えた。
「巫女はね、痛い時に治す力を持っている人もいるのよ」
 花月が穏やかに依久乃へ語りかけた。桜花の腕の中から「ほんとに?」ちょこんと顔を出す幼子に「ええ」とにっこり笑いかける。
「でもね、力を持ってるだけじゃ駄目なの。どんな職、どんな人にも必要だと思うのは、強くて優しい心を持つ事だと思うわ」
 真実を知りなお、前に向かって真っ直ぐに進んでいける芯の強さ。自らを見失わない強い心。
 花月の言葉は実感を伴っていて、依久乃の心に強く残ったようだった。

●将来の夢
 その夜。
 北面からの来訪者たちは神楽の宿に泊まっていた。開拓者の中に引き止める者がいた為だ。広い大部屋に衝立ひとつを差し挟んで、一行は布団を並べる。子供たちはすっかり懐き、打ち解けた雰囲気の中で真面目な話が語られる。

「驕らず媚らず侮らず、他人に誇れる強い心を育ててください。体格や資質が大事と言う様に言われるかもしれませんが、最後は心の強さが問われるのですから」
 男の子たちに話しているのは小次郎。彼は知っていた。志体の持ち主はそう簡単に出現しない事、すなわちこの子らが開拓者になるには並大抵の努力では認められない事を。
 己と同じ志士を志す風悠来と、サムライに憧れる敦比古。五名の中で年長にあたり体格も良い2名に自ずと目が行くのは、心を軽く見る傾向がないかを危惧しての事だ。
 願わくば、挫折から立ち直る心の強さを育てていって欲しい。この先‥‥少なくとも一度は挫折するはずなのだから。
「何故、開拓者になりたいと思ったのですか?」
 最年長、八歳の敦比古に問うと、意外な答えが返って来た。
「村祭で見た芝居の開拓者がさ、すっげカッコ良かったんだ」
「見た事あるの、アツ兄だけなンだよ」
「村には数年に一度、旅芸人の一座が来ましてな‥‥開拓者の活躍を描いた演目があるのですよ」
 六歳の小弥太が続けて、その父が補足した。

 世界を駆け巡って人を助けたり冒険したりする、開拓者って人たちがいるんだって。
 開拓者ってのはギルドで仕事を引き受けてるんだって。
 剣を持って戦う者、精霊を駆使して戦う者、色々いるんだって――

 敦比古が観た話は、同年代の子供たちの間に浸透して行った。親が語る伝承や昔話が『開拓者』像をますます英雄化させてゆき、子供たちは開拓者ごっこをして遊ぶようになった。
「村の者は誰もがそうやって子供時代を過ごして来たんですよ‥‥尤も、精霊門を抜けようとした子は、これまで誰もいませんでしたがね」
 村人は皆心当たりがあったから、子らの遊びを微笑ましく眺めていたし、精霊門を突破しようとしたと連絡があった時は、頭ごなしに怒るのだけは止めて真剣に話し合った。
「大人になった時に懐かしく思い出せる出来事だと考えたのです。幸せな思い出を得た子は、幸せを支えに辛い人生も乗り越えてゆけますから‥‥良い思い出を作ってやりたかったのですよ」
「お子さん方は、村の皆さんに愛されているのですね」
「そんなくだらん事におれらを巻き込んだのかよ」
 衝立越しの花月の言葉を頷く大人へ、吐き捨てるように言った一陽には子供時代がなかったのだろうか。引率はただ憐れみの眼差しを向けるのみで、何も言う事はなかった。

「カッコいいから、ですか‥‥」
 些か拍子抜けした小次郎だが、それならそれで対応はあると言うもの。
「では‥‥開拓者でなく、大きくなったら何になりたいかを、尋ねてもいいですか?」
「「父ちゃん!」」
「ガクシャに‥‥」
「村長!」
「お嫁さん!」
 次々と夢のある答えが返って来た。何だか具体性に欠けるようなものが混ざっているが、父親のような男になりたいという意味だろう。
 頬染めて布団を転がる依久乃を、梨乃亜はいつも持っている人形の『冥夜』のように愛おしく抱きしめた。父から譲られた冥夜、依久乃の温かさに父を思い出して少し寂しくなったけれど、次に会える時まで修行を頑張ろうと心に誓う。
(「キミ達は開拓者に選ばれなかったんやない‥‥だから」)
「お父さん達みたいにも学者さんにも村長さんにも、もちろん依久乃ちゃんは可愛いお嫁さんにもなれると思う!」
 思わず言葉に力が入ってしまう。志体を持たない子供たち。梨乃亜の胸で眠りに落ちた依久乃を慈愛に満ちた眼差しで見つめ、鈴は心で呟いた。
(「神様がきっともっと素敵な事ができる力をくれてるから、焦らないで‥‥正しく生きていってね」)

●真実
 寝静まった中、ふらりと立ち上がるひょろ長い影に、引率の大人は手洗いに行くのかと思った。
 何やらごそごそと身支度をしているようだ。様子が変だと伺っていると、きちんと着物を身につけた天都理は宝物の書物を小脇に抱えて部屋を出て行った。
「天都理を何処へ連れて行きなさる?」
 男に呼び止められた沙羅は振り返って短く「五行へ」と告げた。

 神楽から、陰陽師の多くが修行する国・五行へ向かうには精霊門の開門を待つよりほかなかった。
「オジさん、行ってもいいでしょう‥‥?」
 思えば昼間の天都理は元気がなかった。元々大人しい子ではあるが、修練場でも何処か蚊帳の外に見えた。宿で見せた将来の夢を語る天都理の顔を思い出す。今目の前で顔色を伺う少年は、学者になりたいと目を輝かせて言ったのだった。
「‥‥依頼として請けてくださった貴女を信用しましょう。天都理、行っておいで。朝までに戻って来るんだぞ」
 沙羅は無言で頷くと天都理を連れて宿を離れた。向かうは五行の修練場。

「あなた、陰陽師に憧れているのよね。何故?」
 人づてに聞いた陰陽師像に憧れた事は宿で聞いた。将来学者になりたいと言った事も覚えている。それでも改めて問うてみる。
「このセカイのフシギをカイメイしたいのです」
 精一杯背伸びして大人の真似をしている子供が無理に難しい言葉を使おうとしている固さを感じた。沙羅は素っ気無く返す。
「そう。理由はわかったけど、君が考えてるほど、陰陽師はかっこよくも万能でもないけど。陰陽師の私が言うのだから間違いない」
「それでも‥‥ワザを磨き続けているのでしょう?フシギを追っているのでしょう?ワタシは知りたいのです。フシギを知るスベを」
「不思議‥‥ね。実態を知ったら何て言うかしら」
 修練場の入口で事情を説明し、見学を請う。依頼ならばと通されて早速に目にしたのは――
「アヤカシ‥‥?」
「そ。陰陽師って魔物を操る事を生業にしてるんだけど。魔物で魔物を退治するという訳ね」
「セカイのフシギをケンキュウする仕事ではないのですか‥‥?」
「残念ながらちょっと違うわね」
「ワタシは、このセカイにある謎の全て‥‥光や闇も全て、知りたいのです」
 沙羅の瞳が薄く細まった。彼女の目標は、光と闇という相反する二つの力を自在に操る実力を得る事である。
「そんなに簡単にはいかないわよ」
 私が言うのだから間違いない。そう続ける沙羅に「簡単にいけば夢ではないです」と少年は笑んだ。
「そう。そろそろ戻りましょうか。もし、君が大きくなって本当にこういった事に興味を持てるようになったら――」
 その時は、もっと色々教えてあげる。一般人の陰陽師への道は険しいけれど、本気があるなら尋ねて来なさい。
 正直にありのままを。嘘偽りのない沙羅の言葉に、天都理はいつか必ずと約束した。

●また会う刻まで
「困った時にはいつでも助けを呼んでね」
 花月の微笑みに「はーい」素直な応えが返る。開拓者を身近な存在に感じてくれたようだった。
 そこへすすっと前へ出る一陽。お土産にと差し出された、花札に書かれた『志』の文字。
「これを見て今日を思い出すんだ」
「おにいちゃん、たりなくなったら、はなふだあそべなくなっちゃうよ?」
 依久乃に志は伝わらない‥‥幼子の言葉に一陽は苦笑するしかなかった。

 姿が見えなくなるまで、目一杯腕を振って見送って。桜花が鈴の胸に倒れ込む。
「疲れた‥‥もう‥‥ゴールして‥‥いいよね‥‥」
「うんうん、お疲れ様ー!」
 本当にお疲れ様。初めての依頼、鈴は桜花をぽふぽふ叩いて労ったのだった。