【畳】必要と不必要
マスター名:白銀 紅夜
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 5人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/08/28 18:28



■オープニング本文

●生くるか死ぬか
「ああ、開拓者なら、大丈夫じゃないですか」
 密書を日に透かして見ながら、その人物は口を開いた。

「北條流、闇夜鷹の人間が、裏千畳を狙っています」
 北條・李遵(iz0066)の言葉には、どんな感情もこもっていなかった。
 事実を報告しているのみ、或いは、少しだけ楽しげな色が籠っていたのかもしれない。
 何処にいるのか、と聞き返した人物の言葉を空疎な笑みでかわす。
 連絡が裏千畳の人間から入った、単純に『試練に使える』から、だったのだろう。
 そうでなければ、裏千畳の人間が対応するか、李遵自身が狩っている。
 北條に突きつけられた試練、とは。

 ――『シノビを動かし、裏千畳へと攻め込む相手を葬る事』

 身から出た錆としか言いようがないが、役に立つならいいでしょう、と李遵は返した。
「シノビ達を貸します。私達、上忍クラスは一切動くな、と言う返事が帰って来ましたからね」
 ほら、と密書である筈の書簡を惜しげも無く放って、李遵は壁に身体を凭せ掛けた。
 目を通している開拓者を見ながら、此れは北條の団結力を見る試練なのか、それとも、開拓者の采配を見る試練なのか。
 裏千畳の頭目を脳裏に思い浮かべ、冷たい唇に笑みを浮かべた。

(「この話、失敗しても成功しても――北條の力を試す切欠になる」)

 尤も、単純な武力だけでは何れ、失敗するだろうが。
 脅迫紛いの事で認めさせたとしても、李遵自身は構わない……力を示す方法に拘りは無いのだ。
 北條は尤も、苛烈派の氏族である。
 ――生き残るものだけが、生き残ればいい、裏千畳についても。

(「今の時代に、裏千畳は必要とされているのでしょうか……?」)

 必要では無かった、己の氏族を思い起こし、そして、李遵は背後に控える腹心に目をやった。
 たった二人の、生き残り……腹心が喧しいから、今は黙って裏千畳の試練を受ける。
 失敗したら、北條そのものがこの世情に必要とされていないのかもしれませんね――と。
 そんな事を考えながら、李遵は口にした。
「1名につき、10名のシノビを貸します。好きなように、攻め込んで下さい」


■参加者一覧
和奏(ia8807
17歳・男・志
溟霆(ib0504
24歳・男・シ
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
笹倉 靖(ib6125
23歳・男・巫
バロネーシュ・ロンコワ(ib6645
41歳・女・魔


■リプレイ本文

●膠着
 まるで身体中の全ての水分を奪いつくすような、貪欲な太陽が照らしだす。
 雲一つない空は青すぎて、気味が悪いくらいだ。
 北は魔の森、南は林――東西は丘に面しており、標的である闇夜鷹は北南から攻め込んでいるのだ。

「よろしくお願いします」
 そう口にした和奏(ia8807)に、どう返したものかとシノビ達が瞬いた――彼等はシノビ装束などと言うものを身につけていない。
 農民に紛れ込む為の――陰殻では農民すら下忍であるが――野良着のままである。
 4人を偵察に、2人を連絡役に、そして4人と共闘、と振り分けた和奏はかくり、と首を傾げた。
「闇夜鷹さんは、魔の森からも攻めてらっしゃるんですねぇ……」
 半ば関心したようすの和奏に、彼等は陰鬱な表情で魔の森を見据える……彼等は上から命じられればどのような事もやらなければならない。
 だが、それを口にしないのは虐げられる事が最早、日常となっているからである――少なくとも、シノビにとって人間は平等ではないのだ。

「おおう、壮観」
 西に陣を張った笹倉 靖(ib6125)が、自軍のシノビ達を振り返る。
 既に、甲と乙に分けたシノビの内、乙6人は陣周辺で敵の把握を行い、少しばかり遠い。
 笹倉の近くには、西の陣の守りを固める甲4名のみがそこにいた。

(「魔の森キャンプ楽しんだ処で、本当に託すべき依頼でしょうか……それにしても、離反一族抹殺ですか」)
 やれやれ、と言いたげにバロネーシュ・ロンコワ(ib6645)は肩を竦めた。
 笹倉との連絡用に、隠密・早駆系のスキルを持ったシノビは音も無く去って行く。
 嘗て辺境の領主として軍務に携わった彼女には、あまりに乱暴な処置に思える。
 理由はあるのだろう、だが――乱暴だ。
「9名は私と戦って下さい、お願いします」
 理知的なエルフの魔術師に言われ、シノビ達は深く頷いた。

 北側からの攻撃を受け持ったのは、長谷部 円秀 (ib4529)と溟霆(ib0504)にロンコワの3名が率いるシノビ達。
 魔の森からの瘴気で消耗しているであろう、敵戦力を叩き、包囲する。
「集団戦ですか……りっちゃんも急ですねぇ」
 それでも友人の頼みなら、と神布「武林」を強く巻きなおした長谷部に、溟霆が笑って見せる。
 超越聴覚で音を拾っているのだろう、伝令であるシノビ達を振り返り、彼は問いかけた。
 少しばかり実力は劣るが、立派なシノビと言えよう――表情一つ変えない。
「南側の戦況は?」
「……和奏殿が殲滅しております。ですが、負傷多数。林である事を逆手に取られてます。笹倉殿が援護、治療を施していますが追い付いていない様子」
「うん、ありがとう」
 どうやら、遊んでいる暇はなさそうだ……指示を待つ8人の自軍へと彼は口を開いた。
「自軍複数対、敵単独を心掛けて始末して言ってくれ。殺し方は各人に任せる。自分で殺れない敵がいたら、連絡をくれ。僕が殺るし――逃走可能なら逃走して構わない」
 指示を下す溟霆の視線の先で、人が弾けた。
 否、弾けるような爆発的な力でシノビが飛ばされたのだ――転げ回ったシノビが、ロンコワの率いるシノビ達に止めを刺される。
 ロンコワ自身は、突出せず遠距離攻撃でいなしながら、徐々に戦線を退いていく。
 優勢と感じれば、更に人は攻めたくなるものだ。

 北側の戦力を引きずり出し、南側と合流させ、攻勢に転じる。
 単純だが、効果の高い――だが、単純ゆえに心理的駆け引きが必要だろう。
 北側の主力と思われる司令官を引きずり出すのは、長谷部の役割だ。

「過激だね……」
「他人の事は、言えないですよねぇ」
 隣で緊張感のない声が聞こえ、溟霆は視線を移す。
 依頼人である北條・李遵(iz0066)はブチブチとその場の草を引っこ抜きながら、目の前の戦場を眺めていた。
 この人物が唐突である事は、今更なので何も言わない――無残な根を晒す草が、激しすぎる夏の陽光の下で哀れだった。

 ――偵察のシノビ達が戻って来る、4人と2人。

 偵察の情報より、魔の森へと進軍した長谷部は無数のクナイを走りながら回避する。
 膚を弄っていく艶消しの施されたクナイからは、何やら腐臭のようなものがした。
「(毒でも塗ってあるのでしょうか――)」
 北側を釣りだす為に、長谷部は突貫する――瞬脚で回り込む彼、そして南側から追撃する自軍。
 両者の合間に挟まれた闇夜鷹は、一足飛びに枝へと移る……残虐な光を放ちながら螺旋を描いて横を貫くクナイ。
 上部から強襲をかけた闇夜鷹の攻撃を、追撃する事で避ける――神布を巻いた拳と忍刀が擦れ合う。
 先に動いた長谷部は、予備動作すらなく上段の蹴りを放ち、続いて拳で殴りつける。
 骨のひしゃげる音、重い振動が布を通して伝わって来る。
 ――印を紡ぐ闇夜鷹、その腕を穿つ味方のクナイ、紡がれた水遁は確かに味方を穿ったが、それだけだ。
 堰を切ったような攻勢を、止める事は出来ない。
 別の味方がそこを狙い、忍刀を閃かせる。
 ジリジリと後退を始めた闇夜鷹は、やがて魔の森を抜けると示し合わせたかのように東西へと分裂した。
 6人の偵察は多過ぎたのだろう――もしかしたら、別の人物とすり替わっているやもしれぬ。
 流石に、全員の顔を瞬時に記憶する事は、難しい。

 西に陣を張った笹倉は戦況を見、そして言った。
「何とか逆転したいとこだけどなぁー。ま、挟撃狙いから南に纏めて狙って貰いますか」
 戦況は刻々と変化していく、迫って来る闇夜鷹達を甲のシノビ達が切り裂いていく。
「(南北それぞれに、最低でも一人ずつは指揮官居るはずだよね)」
 つまり、即席の作戦なら東西、どちらかが乱れる筈だ……指揮官がいないのだから。
 閃癒で治療を施した彼は、情報を持たせて各々の担当場所へと返す。
 その途中でおや、と彼は瞬いた……そして、ゆっくり、近づく、そして、捕まえる。

 ――味方に化けた闇夜鷹の下で、地面が砕け、仕掛けられた撒菱が足を貫いた。

●流転
 ――少し、時は遡り。

 増援要求の狼煙を上げながら、それでも休みなく斬っていく。
 半数以上の闇夜鷹が、南の林からクナイや手裏剣を投げつけてくる。
 螺旋を描いて飛来するものは、確かに肉を穿つが『それだけ』でしかない。
(「予想以上に……多かったですね」)
 まるで闇夜に浮かぶフクロウのように、無数の攻撃が刺さって来る。
 それを篭手払で弾きながら、和奏は持久戦を強いられていた――本来ならば、自分の数より多少多くとも問題はない。
 だが、木の上から狙ってくる敵を攻撃する、遠距離手段に彼は乏しかった。
 自軍のシノビがクナイを放ち、揺さぶり落としていく。
 そこを狙い、秋水で仕留めると言う単純作業……段々と緩んでいく戦況の最中、新しい風が吹き込んで来た。

 ――ドスッ!

 飛来したクナイが額に突き刺さり、敵は仰向けに倒れて落ちていく。
 西の方角を見れば、ひらり、笹倉が手を振っていた。
 自分の手を見、そして和奏も真似をして振り返す――そして、前を見据えれば、今までの戦法が通じないと判断した闇夜鷹達が襲いかかって来た。
 倍以上の数に、自軍のシノビ達は和奏の顔を窺う……別段変わりはない。
 人形の様なかんばせをした彼は、両手で握った刀を見た目からは想像も出来ない速さで振るった――瞬風波の先制の一手から、秋水で仕留めていく。
(「この数で……怯えぬのか」)
 次々と倒れ伏す敵に、自軍の士気も高い――放たれた水遁が、闇夜鷹達の足を乱した。

●反転
 笹倉の助言で、東西に分かれた開拓者達。
 西側に長谷部と笹倉、東側にロンコワと溟霆。

「開けた場所だし、数と力で勝負だな。ま、頑張れー」
 へらり、と笹倉が笑う、自軍のシノビ達はそれぞれに得物を構え、襲いかかった。
 忍刀の銀が閃き、空中を裂く。
「拳の頂は遙か彼方、ですが――」
 いつか、辿りつくと決めている『拳聖』と言う頂点、長谷部はまるでしなやかな獣のように複数の闇夜鷹を相手取った。
 瞬脚で回り込み、徐々に南へ集めるように側面に回り込む戦法は変わらない。
 だが、積極的攻勢に転じた彼の前に、闇夜鷹達は明らかに戸惑っていた。
 最小限の動きで手裏剣を交わし、カウンターとして拳を叩きこむ……一直線に迫って来る火遁を気合いだけでやり過ごし、燃え移った炎をも武器とし、蹴りつける。
 火の移った闇夜鷹が、痛みに呻いた。

(「どうやら、こっちにはいませんよー」)

 下がった場所で冷静に観察を続けていた笹倉が、ちょいちょい、と連絡役を呼ぶ。
 陣を組む訳でもなく、ただ、ひたすらに南へと釣りだされる闇夜鷹達。
 統率者を失くし、自滅へと向かう姿は哀れだった。

「――此方に、統率者がいる可能性が。心してかかって下さい」
 連絡を受けたロンコワが、キリリとした表情で口にした。
 既に、自軍のシノビは従う事を決めているのか、静かに頷きそれぞれに得物を構え直した。
「統率者君がいるって。それは結構」
 ロンコワのアイヴィーバインドで援護を受けつつ、奔刃術で走りながら忍刀「鈴家宗直」を滑らせる。
 同じく奔刃術で受けて立った闇夜鷹の一人、その姿がぶれ、消えていく。
(「秘術影舞ねぇ……でも」)
 自軍に影響が出れば――或いは、ロンコワ達の軍に影響が出れば厄介だな、と思いながら一歩、踏み出した瞬間に鳴り響く金属音。

「音までは消せない、覚えておいた方が……」

 口にした溟霆は、後ろから聞こえる音に咄嗟に避けるべく、体を動かした――その隙を狙う闇夜鷹。
 だが、水流刃が閃き、印を結んだ自軍のシノビが平然と立っている、そして振りむき様に切り裂いた。
 反対に放った方の闇夜鷹は、内心溜息を吐き、忍刀で払う。
 闇夜鷹の士気そのものが、あまりに低い……魔の森から攻め込み、挟撃する手筈だった。

 ――なのに、この様とは。

 こうなれば、純粋な数と力の撲滅戦に賭けるしかない。
 闇夜鷹達は氏族長の命令の元、駆ける――。

●合流
 東西から集められた闇夜鷹達、どちらかと言えば、それは敗残兵と呼ぶ方が相応しいかもしれない。
 魔の森からの奇襲、明らかに彼等は消耗していた。

 和奏が、刀を構えなおすと同時に、土埃がもうもうと立ち込め、それと同時に煙遁で目の前の敵が掻き消える。
 ブリザードストームを放ったロンコワが、見えないと言うのは厄介ですね……と嘆息した。
 超越聴覚で音を拾い続ける溟霆と、そして自軍のシノビ達が音を頼りに切り裂いていく。
 赤茶けた土に沁み渡る赤、噴き出した赤を押さえながら崩れ落ちていく闇夜鷹達。

「まだ、まだ勝機はある筈だ……!」

 闇夜鷹の氏族長と思われるシノビが、重低音で口にし、率先して斬りかかる。
「合流させたのは、少しまずかったかな」
「……ですが、戦況は有利に動いています」
 溟霆とロンコワが軽く会話し、ロンコワが杖でクナイを弾き落とした。
 どうも、今日の『雨』は血なまぐさくていけない。
 
「と、お仕事ごくろーさん」
 笹倉が閃癒で治療を行いながら、おお、と笑った。
 40人程度まで減らされた闇夜鷹の一部が、此方に向かって襲いかかって来る。
 赤とも茶色とも言えない野良着の群れは、不気味な陽炎のようだ。
「此処でお待ちを」
「おー、俺は頭を使うのがお仕事ですからねー」
 扇子を広げ、気まぐれに白霊弾で援護を加えながら、弾け飛んだ闇夜鷹に遅いかかる自軍を見る。
 それにしても、このクソ暑いのに火遁とか、よくやるよ、と思わぬでもない。
「水遁にしときゃ、よかったかなぁ」
「まさに、その通り」
 やや後ろから返って来た相の手に、アンタ暇そうだねー、と言葉を返す。
「そういや、裏千畳の職人だっけ。薬、喜んでた?」
「ええ。気遣いに職人の好感度が……と言うのは置いておいて、喜んでましたよ?」
 何故、疑問形なのかは聞かない――それは良かった、と返してロンコワから入ってきた情報を見、書き加えていく。
 結局、正攻法に変わってしまったがまあ、いいだろう。
 周辺の罠にかかった闇夜鷹を白霊弾で襲い返す。
「突貫するなよー。特に乙。ところで、敵指揮官は見つかりそう?」
「はい、既に東班に看破され、交戦中の模様」
「どうも。……援軍にも向かったしなぁ」
 南からの攻勢に、笹倉は乙から3人、甲から2名の援軍を出している。
 頭脳労働も楽じゃない、と彼は肩を竦めた。

 キーン

 カッ、カカッ

 忍刀が擦れ合い、別の闇夜鷹から仕掛けられたクナイを忍刀ではじき返す溟霆。
「残念ですが――」
 ガッ、と鋭い突きを繰り出した長谷部が、更に踏み込み蹴りを放つ。
 腹に喰らって吐血しながら、弾き飛ばされる氏族長。
「まあ、相手が悪かった」
 多種多様なスキルを駆使する開拓者と、統率を失った闇夜鷹のシノビ達。
 ロンコワがアイヴィーバインドで絡め取り、そこを狙って和奏が強襲する。
 瞬風波の攻撃と共に、溟霆が影を使った忍刀で喉を一突き――吹きあがった鮮血に、崩れ落ちる氏族長。
 ――此処から先は、残党討伐。
 戦場に於いての勝者と、敗者が決定した瞬間だった。

「根絶やしにして下さい」

 事切れた闇夜鷹の氏族長の膝に乗せ、李遵は口にした。
 子に対する親のように、優しげな声音でありながらその言葉は冷酷だった。

「私は北條どころかシノビですらないんですがね……まぁ、りっちゃんの頼みですし」
 長谷部の言葉に、李遵は頷き笑った。
「ええ、頼みです。他の里長もよく、わかるでしょう。北條が動いた意味と、裏千畳に仕掛けた里の末路が」
(「見せしめ、ですか」)
 ロンコワは若い北條流頭領を見、理解する、彼女にとって里一つ滅ぶのは、決して重いことではないと。
 一番先に動いた和奏が、地を駆ける闇夜鷹達を斬り捨てていく――彼が踏み込むと同時に、彼の率いるシノビ達が素早く追撃する。
 ……追撃戦、それは一方的な暴力と言える情景を移し、そして、終わった。

●終焉
「それにしても動きにくい世界に生きてるよね、アンタ」
 中々しない体験だった、と頭脳労働で疲れましたよーと言いながら、笹倉が李遵に告げる。
 現れた裏千畳の職人、と言うのは老人と言う部類に入るであろう男だった、銀髪を束ねている。
 瞳は鋭い、職人としてだけでなく、シノビとしても有力な部類だろう。
「フン、じゃじゃ馬娘が勝ったか」
「発注武器は、鋼糸です。出来るだけ細いものを」
「他には……ないのなら行くぞ。さっさと打たねばならんでな」
 じぃじ、と少年が駆けより、男を支える。
 もしかしたら弟子かもしれない、違うかもしれない。
「裏千畳ねぇ、そんな氏族がいたとは驚きだ」
 陰殻出身の溟霆は、愉しげに口にした――赤い瞳が鋭く光る。
「限られた者にしか、姿を表しません。その内、歴史の闇に消えたであろう氏族です、諏訪の陰険眼鏡が言いださねば」
 そして、腐敗を始めた死体と開拓者、李遵だけが取り残された。