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■オープニング本文 ●花を散らす風 目を覚ました時、彼女は見知らぬ部屋にいた。 後ろ手に回された手、荒縄が手に食い込んでヒリヒリと痛い。 息を吐けば、些か熱を孕んでいるのを感じた……ドクドクと心臓は激しく動き痛みすら感じる。 一般人にしては、少々聡い耳で彼女、花菊亭・涙花(iz0065)は声を聞き取った。 「……おい、どうするんだよ、このお嬢ちゃん」 「やべぇな、まさか姉姫の部屋にいるなんて思わねぇよ」 「いや、考えようによっては――目的も」 何が目的なのか――こう言う時、姉上なら、兄上なら。 震える身体を、折れる心を大切な人を思う事で、奮い立たせる。 それでも歯の根が合わない、恐怖に身を固くする――。 (「でも、姉上が攫われなくて良かった、ですの」) 甘くて美味しいお菓子を頂いたから、こっそり、姉上の部屋に忍び込んで『差し入れ』を。 だが、小さな足音が聞こえたと思えば口を塞がれ、視界は暗転した。 「でもよぉ、幾ら依頼だからってこんなお嬢ちゃんを――」 「馬鹿言うな、やらなきゃ俺達が消されちまう」 「あンのクソジジイ……貴族だからって、偉そうに」 「偉そうなのは、どの貴族だって同じだろ」 「違いねェ!」 ハハハ、と笑い声が響き渡る――涙花は粗末な土壁に身体をあずけ、目を閉じる。 足音が聞こえる、嬢ちゃん、と声が聞こえた。 「俺達も死にたかァねェ、勘忍な」 話し声は4人ほどだが、もっと奥に人が詰めているのだろう――黄ばんだ歯を見せ、涙花を攫った犯人は言った。 「――あの、どうしてわたくしを?」 「いや、直姫を狙ったつもりだったんだが――あんたには、交渉の駒になって貰う」 非公式の訪問、いや、非公式どころか――あまりに突飛と言っても過言ではないだろう。 「姫様、ご用件は――」 「貴女には恩が御座います。わたくしは、姫ではありません」 「ご用件は?」 「――父上が『花菊亭・有為』を誘拐したと。場所は山奥の廃寺です」 対処した女、花菊亭・有為(iz0034)は表情を変えぬまま、否、押し殺したままでその女性『広川院三ノ姫』を見る。 何故、こうして危険を冒してまで敵対する家に、情報を告げに来たのか。 「対価に何を求めに来た」 「……わたくしの庇護を、父上はわたくしをも、殺すおつもりです」 「相分かった。その情報が真実であれば、三ノ姫、貴女の身柄は此方で保障しよう」 有為様、と駆けてくる侍女――秋菊は主の少ない表情の変化を見、次に広川院三ノ姫を見、頭を垂れた。 「秋菊、開拓者ギルドに要請を。山奥の廃寺、だそうだ」 「畏まりました――」 |
■参加者一覧
佐久間 一(ia0503)
22歳・男・志
安達 圭介(ia5082)
27歳・男・巫
和奏(ia8807)
17歳・男・志
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
ルヴェル・ノール(ib0363)
30歳・男・魔
日和(ib0532)
23歳・女・シ
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
ゼス=R=御凪(ib8732)
23歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●不穏な空 空は厚く垂れこめた灰色の雲に覆われ、太陽を拝む事は出来ない。 眉間に深く皺を刻んだルヴェル・ノール(ib0363)は、誰にも聞こえぬほど小さな声で呟く。 「――かの姫だけでも、平穏であってほしかったものだがな」 そうですね、と思いもよらず返事が返ってきて彼は瞬いた。 「それにしても、今回の件はあまりに強行すぎます」 安達 圭介(ia5082)の言葉に、花菊亭・有為(iz0034)は三ノ姫から聞きだした廃寺の情報に目を通すと和奏(ia8807)へと渡す。 「何故その廃寺が選ばれたのかで……判る事もあるかなぁ?」 緊迫感の漂う雰囲気には、似つかわしくない声で彼は誰にともなく問う。 三ノ姫は最早、情報を告げた後は我関せずと客間に戻ったのか、その声に返答は無い。 「全く、貴族と言うものは――」 ゼス=M=ヘロージオ(ib8732)の瞳には、深い哀しみと憎悪が湛えられている――その暗闇を見据え、何も言う事は無い、とばかりに有為は目を閉じた。 「あの娘は、隠されたままでいた方が良かったのだろうか――」 「……理由は知らないが、そう言う事を言っているのではない」 深い後悔を感じ、ヘロージオは片眉をあげた。 どうも、貴族と言うものは得体の知れない、奇妙に歪んだ価値観しか存在しないかのようだ。 「業を重ねれば身から錆となって零れ落ちる。自分もいつかと思うと……因果な話ですね」 「あの娘が、涙花様がどうしたと言うのです!」 佐久間 一(ia0503)の呟きに、絹を裂くような悲鳴を上げたのは花菊亭・涙花(iz0065)の侍女、鈴乃だ。 こけつまろびつしながら、佐久間に掴みかかり、悲鳴をあげる。 「お願いです、涙花様を――絶対に連れ戻して下さい、絶対に、絶対に……」 後半は啜り泣きに変わり、恨むかのように崩れ落ちては空を仰ぐ。 それでも縋ったままの手に、自分の手を重ねて大丈夫です、と佐久間は呟いた。 「必ず、とりもどします――」 それに頷いたのは他の開拓者も同じ、件の廃寺へ向かって歩を進める……始めは、有為や秋菊に併せるかのように落ち着いた足取りだった。 しかし、誰ともなく歩みを速め、廃寺へと向かう。 「(…もう二度と繰り返すものか。自分が、何故在るべき騎士を胸に打ち立てたか、その理由を忘れはしないッ)」 握りしめた拳は白く変色し、食いこんだ爪は鈍い痛みを発する。 だが、雪切・透夜(ib0135)は白いフードの下で真っ直ぐに正面を見ていた。 「散らせることはさせない。取り戻す、絶対に……!」 涙花を見る度に重ねてきた、失ってしまった小さな友達――その記憶は愛おしくも痛みを覚える。 超越聴覚で小さな物音を聞きとりながら、日和(ib0532)は常に目を閉じ続けた白い左目を見開く、赤と白の双眸が見据えるのは目的地。 開拓者達は互いの顔を見やると、日和を先頭に涙花が捕えられている廃寺へと歩を進めた。 「いた、涙花の気配がする」 「数は、2名。見張りでしょうか……」 心眼【集】を使った佐久間は、見張りが存在している事に気づき、指を二本立ててみせた。 見張りはあまりやる気が見られないのか、口を開けて大きな欠伸をしたり、どかりと座りこんでいる。 「――あいつらが、涙花を!」 日和の心の中に噴き上がる殺意、だが、それを安達が軽く手を置いて制した。 此処でしくじっては、元も子もない。 「もう少し、様子を見ましょう。まずは、中の様子を特定しなければ」 「三ノ姫さんに貰った地図には、間取りはありませんでした」 同じく、心眼【集】を見張りの目をかいくぐるようにして使用した和奏は、2名です、と告げる。 「日和さん、声は聞きとれますか?」 フードの下の声は、低く地を這うかのようだ……激する事はないが、雪切には静かな決意と怒りが混じっている。 「待って。涙花の声と――2名が話している、姉姫がどうとか。交渉がどうとか」 日和の言葉を聞いて、チラリと秋菊が有為を見た。 有為の表情は青く白く、まるで肝を抜かれたかのようだ……幽かに色を失った唇が動く。 「やはり、か」 「探知出来たのは、5名ですね、一人は涙花さん。見張りが2名」 「此方は2名、変わりません」 佐久間、和奏の言葉に、ふむ、とノールは考え込む。 内部にいるのは5名、交渉に使うのならば易々と殺しはしないだろう――と言え、些か見張りが邪魔だ。 「私は見張りの1人を眠らそう。アムルリープがある」 「では、自分はもう一人へ向かいます」 「なら、そのまま突入しましょう。……これで、此れで良いですよ」 天すらも凍えさせるような冷えた輝きの杖を手に、それを温めるかのように優しい舞いを踊り、雪切、有為、そして秋菊へと加護の力を付与する安達。 精霊達はまるで、母の様に優しく包みこんだ。 佐久間は廃寺のギリギリまで近づく――そして、一気に踏み込むと秋水で刀を滑らせた。 刀が美しい軌道を描き、銀色の線を残す……致命傷にならず、声を上げようとした賊へ雪切の刀が突き、そして横薙ぎに薙ぐ。 「……邪魔だ。相手をするだけ時間が惜しい」 その場に倒れ込んだ賊を、手早く手持ちの荒縄で雪切は縛りあげた。 それと同時に、ノールがアムルリープを仕掛け、そして他の者は一気に中へと突入した。 ●豪雨の如し まるでその強襲は晴れた日に降りしきる、豪雨のようだった。 一番初めに踏み込んだ和奏は、瞬風破による風の刃で直線状の敵へと攻撃する。 各々の得物を掴んで、踏み込むと和奏へと斬りかかる賊達。 両手に握りしめた刀でそれを打ち払い、刀を叩き斬るようにして背を当て叩きのめす。 「涙花!」 次に滑り込んだ雪切の後ろで、涙花は訪れた人と人の斬りあいに身をすくませた。 「……ふむ、どうやら無事のようだな」 「涙花!よかった、無事だったか……」 日和がその頭を撫で、そして縄に擦れて紅くなった細い手首を見、目端を釣りあげる。 ノールが、近づきこそせず相手の出方を窺っているが、優しげな頬笑みを涙花へと見せた。 「透夜、日和様、ノール様、姉上、秋菊さっ――うわぁあぁん!」 堰が切れたかのように泣き叫びながら、涙花は肩を揺らして縄から逃れようともがく。 まるで子供が駄々をこねるかのような、感情の発し方に雪切は軽く頭を撫で、刀を滑らせて涙花の手と足の縄を切り捨てた。 そしてトリビュートを構え、目の前の惨劇が見えないように立ちふさがる。 既に床に飛び散った血痕まで消す事は出来ないが、だが、目で見る惨劇は予想以上に心に傷を付ける。 そして先程から感じている、湿気だけではない、纏わりつくような視線。 否、視線であるのか、或いは術であるのか……雪切には判らないが、第三者が見ている、そんな気がした。 だが今は、自分の背中の後ろで震える、小さな存在を守りたい。 「…これ以上、大事な人を傷つけさせはしない」 「我が名は佐久間。佐久間 一。花菊亭を守護する者也。命の要らぬ者から、かかって参られよ!」 堂々とした佐久間の言葉に、及び腰のまま刀を握り締めかかって来る賊達。 それを秋水による単純な速さで斬り返し、頬に突きつけられた刃を刀で絡めとり、弾く。 弾いた次の一手は佐久間の方が速く、賊は崩れ落ち。 もう一人は腰の短剣を抜き、その手に構える――弱くは無い、だが、強くもなさそうだ。 側面から和奏の瞬風破が、賊を捕えた、土壁に斬撃の痕が付く。 青ざめた表情で、その賊は最悪の一手を投じた――ただ一つの得物である短剣を投げたのだ。 それを刀で打ち払った佐久間は、その首筋に刀を突きつける。 勝負は決まった……そして、賊は刀を見、そして佐久間の顔を見、その場に崩れ落ちた。 「……くっ!」 腕を貫かれ、有為は痛みに表情を歪めた、すぐさま安達が神風恩寵と手当てを施す。 「残念だが。そう易々と逃がすわけにはいかない」 単動作で素早く弾の装填を行ったヘロージオが、顔色一つ変えず、一つ二つ、賊の足を撃ち抜いていく。 脛を抱えて呻きまわる賊と、そして壁を突き破って逃げ出そうとする賊、既に3名は床にのびている。 「……ふむ、何処へ行くつもりだ。大人しく降参するならば良い……さもなくば、手加減はできんぞ」 動けはしないだろうがな、とアイヴィーバインドで締めつけたノールが、顔色一つ変えず近しい場所へとアークブラストを放つ。 牽制のつもりの一撃だったが、近くの樹が焼け、その威力に青ざめ腰を抜かす賊。 奇闘術で一気に近づいた日和が、斬りかかり迷いのない一撃で賊を葬った。 赤と白の瞳が、冷たい意思を湛えている。 「た……たすけ!」 化物だ、と発した賊の直ぐ脇を、一本の矢が貫いた。 外から狙っていた有為が、無表情で矢を番えている。 汗と血の染み付いた刀を軽く、振り払いながら鞘に収めた佐久間は、おかしいですね、と首を傾げた。 だが、2名は確保した――じっくりと話を聞く事が出来るであろう。 しかしながら、どうやら圧倒的な戦力に怯え歯の根が合わないのか賊達は涙と鼻水と涎で顔を濡らす。 まだ怒りが収まらない日和が、その首に向かって業物の切っ先を突きつける。 「今ここで殺されるか、あんたたちを雇った奴らに消されるか……選択肢はそれだけだ」 「ああ。お前らの命はどう転んだところでない。…誰の命令で動いた。吐け」 青緑のロングマスケットの銃口を向け、ヘロージオが淡々と告げた。 「いえ、待って下さい。彼等の身の振り方は、花菊亭さんにお任せするべきです」 安達が日和の持つ業物に手を添え、落ちついた語り口で言い聞かせる。 くしゃり、と日和の顔が歪んだ……チラリと友人である安達を見る。 「手、怪我していないと、いいですの」 手のひらに食い込んだ爪の後に気付いたのか、涙花が日和の手をそっと握る。 「関わった事もなければ思い入れもないが。無事であるならば何よりだ。それ以上は望まない」 「ええ、無事でよかったです……」 ヘロージオと、和奏の言葉にはい、と頷いて涙花は笑みを向けた。 「大丈夫、ですの」 「……が。逃がして貰える、とは思わない事だな」 会話の隙を狙って、這いながら逃げ出そうとした賊へ、アイヴィーバインドをかけてノールは告げた。 「出来るだけ正確に、分かる全てを答えて下さい」 佐久間の言葉に、賊は何度も頷くともぞもぞと縛られた手を動かした。 「いえ、でも。どっちに転んだって、ねぇ?」 窺うような目で賊は開拓者面々を見る、無論ながらどちらにしろ、であれば彼等に利点はない――。 だが、暫く考えていた有為は、おもむろに口を開いた。 「そうだな。私達『花菊亭』がそれなりに『口利き』をすれば、死ではなく投獄で済むかもしれないな」 「有為――!」 噛み付くように口にした日和を、有為は首を横に振って制す。 「どちらにせよ、この者に利用価値も何も無い」 それは知っているだろう、と……戦いの最中で、それ程に強力な敵であったか、と目が問いかける。 「そう、そうです。第一俺達は広川院に雇われただけで、あ、投獄の中に酒は持って行って良いんですかね?」 マスケットに弾を詰めたヘロージオの動きを見、賊はいえいえ、と慇懃に言った。 「姉姫の部屋に案内するからって、警備の手薄な時間と。ああ、依頼人は小柄で丁度、姐さん位の背でしたかね?」 黒いフードを被っていました、と秋菊の方を見て賊は答えた。 バサバサバサ、と何かが飛び立つ音がし、そして漆黒の術が飛来する。 「まさか!」 誰ともなく得物を構え、雪切はトリビュートを構えて涙花と有為、秋菊を守るように立ちふさがる。 音がした方に向かって、ヘロージオはマスケットを撃ったが手ごたえが無い事に気づき、小さく首を振った。 「あっ……!」 開拓者達の一瞬の隙を突いて、へたり込んでいた賊が弾かれたかのように飛び出した。 大股で動くと、ノールは術を詠唱する――短剣に雷の様な光が走り、アークブラストが発動した。 だが、一歩遅かったのかその先に『仕留めた』と言う感覚は無い。 「始めから、本気を出していなかったという事もあるな」 ノールの言葉に、涙花の手首の傷を見ていた安達は、そうですね、と返す。 「何を要求するつもりだったのか――」 ダン、と床を叩いたのは日和だ、悔しげな表情で唇を噛みしめている。 「しまった……私じゃ、術は見破れないんだ!」 『音』を持たない術は、超越聴覚に引っ掛かる事は無い、それを今更のように感じて彼女は固く拳を握りしめる。 「大丈夫、ですの。わたくし、皆様を信じてますもの」 ただただ、許して笑う隣の小さな存在が、哀しかった。 「依頼人は『広川院』に『黒いフードの中背の人物』ですか」 「その誘拐犯の方々は、選ばれたのでしょうか――?」 偶然だったのかも、と紡いだ和奏の言葉に有為は雪切に背負われて眠っている涙花を見る。 「有為さん、術がかかっていないか見て貰った方がいいかもしれません」 「……そうだな」 ●背後の闇 「此方は無事でした!」 そう言って出迎えた、伊鶴が寝ちゃってる、と涙花を見て呟いた。 「お留守番、御苦労さまです」 苦笑いしながら佐久間が口にし、はい、師匠との返事に開拓者達も笑いを浮かべた。 「警備の見直しですね」 『第三者の可能性』と言うのを、開拓者達は危惧していた――何らかの、計り知れないものが後ろにいる。 灰色の雲は切れ、つかの間の光が差し込む。 「全く、交渉に奴らだけの目的、ではないだろうな……貴族は何時も何時も」 道具番号、6番。 苦々しい自分の『番号』を思いだし、ヘロージオは眉を顰める。 涙花が目覚めたのは、よく知った人達と暖かい場所。 「……涙花。無事でよかった」 フードを取って笑いかける雪切、泣き笑いのような日和。 和奏は庭を見て、綺麗ですね、と声を掛け。 佐久間と安達、そしてノールは有為と伊鶴と話をしている。 そして、鈴乃は悲痛な表情で、涙花に毛布をかけるのだった。 ●後日談 結局、涙花には術は使われていなかった。 少しばかり、誘拐犯の面影がチラついてうなされたが……黒いフードの人物は誰かもわからず。 三ノ姫は正式に側室として、花菊亭家に迎えられた。 「父上、今回の事をご報告致します。広川院の目的、それは涙花ではなく私、有為だった模様」 淡々と父に説明する有為の表情に、変化は認められない。 「そして、逃げ出した賊がいたのですが、数キロ先で何かによって殺害されています」 殺害、と父の表情に動揺が走る。 「術により、何らかの警戒がありました。此方は同行した開拓者も、確認済みです。恐らく敵は、内部に精通し、術に精通する人間かと」 「――洗いだしは」 「まだ出来ておりません。ですので、父上は一旦別荘へご静養との目的で、滞在なさるよう申し上げます」 有為の口調に、有無を言わさぬ――彼女の祖父に似たものが見え、父は口をつぐむのだった。 |