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■オープニング本文 ●誓い 甘い香りは花の香り、眠りを誘う温もりは気紛れな天気が時折見せる太陽の温もり。 ハラリ、と風にそよいだ花が花弁を落とす。 「見事に咲きましたねぇ」 こつ、こつ、ツルリとした木の杖をついて見上げたのは幼女のように無垢な微笑みを浮かべる老女。 その横に寄りそうのは、同じく年齢を重ねた老人――長年寄りそい共にした二人だけが醸し出す、独特の雰囲気が二人を纏っていた。 「そう言えば、私達が結婚したのも水無月でしたねぇ」 「ああ、雨は降り――あの時は綺麗な着物も着せてやれなかった」 「いえいえ、いいんですよ」 指輪は野の花だった、摘み取った白い花を指輪にして贈った――頬を染めてその指に白く宿る花に誓いを立てた。 永久に共にいると。 「この命尽きるまでと誓ったが――改めて、此れからも一緒にいてくれるか?」 「勿論ですとも、私からもお願いします」 何時もなら照れくさくて言えない言葉も、優しい思い出を振り返れば口の端から零れていく言の葉。 めぐり合えた事に感謝を、だが‥‥どうしても老人は着せてやりたかった、白い花嫁衣装を。 富豪の娘、そして若い者が白無垢を身につける度に目で追う姿を、知っているから。 決して、自分達は長くはないだろう‥‥だからこそ、旅立つ前に思い出を作りたい。 「白無垢を着たいとは、思わないか?」 「そうですねぇ――死ぬ前に、とは思いますが」 此れからは、若い方々の時代ですから――そう言って、ほんの少しだけ寂しげに笑う。 年齢を重ねて、年月を刻み込んだ顔は、昔の若さを保っている訳ではない。 だが、相応の落ちつきと、そして生来の純粋さを宿した優しい顔だった。 自然と重ねた手は、お互い照れ臭くも離れない。 「そろそろ、戻ろうか――」 「そうですねぇ」 こつ、こつ、杖をついて帰路につく‥‥その夜、老人は大切な仕事道具を質に入れ、使い古しの白無垢を手にした。 随分と昔に、仕事は子供、そして孫に受け継いでいる――今は自給自足、畑を耕し収穫した野菜や米と引き換えに、猟師の仕留めた肉を得る。 存分に蓄えはあった‥‥先は短い、ならば、逝く前に願いを叶えてやろうではないか。 開拓者ギルドに舞い込んだのは『結婚式に来て下さい』そんな依頼。 妻と、私達を祝福して下さい‥‥そんな貼り紙とそして『誓いを立てませんか』そんな誘い。 「あなたと誓ったあの丘で――此れから世を担っていく若い方が、出発出来ればいいですねぇ」 そんな、老女の願い。 |
■参加者一覧
六条 雪巳(ia0179)
20歳・男・巫
悪来 ユガ(ia1076)
25歳・女・サ
和奏(ia8807)
17歳・男・志
ラシュディア(ib0112)
23歳・男・騎
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
ジレディア(ib3828)
15歳・女・魔
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟
鬼貫 バチカ(ib6956)
65歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●晴れの日 作り上げたテルテル坊主は歪な形をしていておや、と鬼貫 バチカ(ib6956)は声を上げた。 「不細工になっちまったねぇ」 不器用なもんでね、と苦笑をした横で、レティシア(ib4475)が綺麗な形のテルテル坊主を一つ作り終えてから、丁寧に丸めるといいですよ、と指摘する。 既に作り上げたテルテル坊主は数珠つなぎ、晴れますように、と祈りを込めて作ったテルテル坊主が効いたのか、空は穏やかで温かい日差しが降り注いでいる。 「晴れましたね」 テルテル坊主の形を整えながらのんびりした仕草で和奏(ia8807)は呟いた‥‥晴れだけではなく、彼はよくないものが来ないように、とも祈りを込めた。 一方、藤村夫妻の思い描く結婚式を問いかけるべく向かった、ジークリンデ(ib0258)とラシュディア(ib0112)は、あらあらと柔らかに微笑むカナ江、職人風の硬い雰囲気を纏う春忠の昔話を聞いていた。 飛びぬけて美しい訳ではないが心優しい村娘、そして不器用ながらも家族思いの男の馴れ初めは仕事の失敗。 嘆く男に差し出したのは、粗末なお握りと優しい微笑み、白詰草。 「私は恋をしたこともないのですけれど、人に恋して人を愛するって素敵なことなのですね‥‥ふふ、そしてやはりお二人の思い出は白詰草なんですね」 紙芝居に、二人の思い出の白詰草を描きつつ、問いかけたジークリンデにカナ江は照れたように笑い、春忠に視線を移す。 恋する乙女から、人を愛する大人に変わったその表情に春忠は頬を掻いた。 「私ね、ずぅっと、恋をしていたんですよ――白詰草の花言葉は『私を思って』なんです」 ラシュディアは思い出していた、目を閉じれば浮かぶのは妹の様なジレディア(ib3828)‥‥ジレディーの姿。 「ラシュディア‥‥貴方が私を妹としてしか見ていない事は知ってます。私がそれに甘えていた事も私なりに理解したつもりになって、それでもあえてはっきり告げます。私は、お兄ちゃんの事が‥‥昔から大好きでした!いつか貴方のお嫁さんになりたいってずっとずっと思ってきたの‥‥!だから‥‥その‥‥私の事、貰ってください!」 唐突な言葉に驚いて、そして一つ一つの言動に目が吸い寄せられる、妹から女の子へ――答えはまだ出ないけれど。 ひょい、と顔を出したのはジレディアと悪来 ユガ(ia1076)の二人、花を摘みに行く途中、挨拶に寄ったらしい。 「めでてぇな、アタシは悪来ユガだ――で」 「あ‥‥魔術師のジレディアと申します。この度は婚礼、おめでとうございます」 ラシュディアに目を吸い寄せられたままのジレディアが、頬を染めて夫妻へ挨拶すれば、くすっと優しい笑みを浮かべ。 「ありがとう。今度は、貴女達若い方の番ね」 「おおっと、これ以上は摘み過ぎない方がいいな」 「ユガさん、その花は毒があるので注意して下さい――」 「ああ、わかった。‥‥にしても、結構集まったんじゃねぇか?」 悪来とジレディアは当初の予定通り、花を摘みに‥‥鮮やかな花達は花吹雪に変わる、ガラじゃないが、摘み過ぎないように。 そう言って照れくさそうに笑った悪来に、純粋な乙女の面影を見てジレディアも頬を緩ませる。 「アタシは応援してるからよ、頑張れなァ」 落ちつかない様子で、先に行くぜ‥‥と風を切る悪来に、ありがとうと感謝の言葉を乗せてジレディアもその背を追う。 そして、レティシアも集まり花達でキュッキュと編んでいくのは花飾り。 指輪の代わりに、白詰草で誓いを立てた二人だからこそもう一度、この花飾りで誓いを立ててくれればと。 「なっかなか、難しいなァ」 「でも、悪来さんは力が強いので――ほら、解けてしまわなくて済みます」 ジレディアが引っ張って見せれば、強くしなやかに編まれた花々は決してほどける事無く硬く、結ばれていた。 「まるで、二人の絆のようですね」 レティシアの言葉に、コクリ、とジレディアは頷いた。 誓いの丘――白詰草の咲く場所で。 「敷物も用意したし、次は草刈りか」 「お花畑‥‥」 満足そうに頷いたラシュディアの横で和奏は、フワフワと飛んでいる蝶に視線を移したり、揺れる白詰草に視線を移したりとキョロキョロ。 「何か、あるのか?」 ラシュディアの言葉に、ゆっくりと和奏は首を振って。 「いえ、珍しいので――」 綺麗ですね‥‥とスローテンポで口にする和奏に確かに、と頷いて。 ――浮かんだジレディアの姿。 「は、はじめようか、草刈り」 「‥‥?はい」 少し頬を熱くさせて、ラシュディアは誤魔化すように和奏と共に草刈りを始めるのだった。 調理を担当するのは、六条 雪巳(ia0179)と、テルテル坊主を作り終わった鬼貫だ。 「一生に一度のお祝い事ですもの、良いお式に致しましょうね」 ふふ、と夫妻の喜ぶ姿を思い浮かべて、トントンと手際よく煮しめに使う料理を作っていく。 「そうだねぇ、大層なものは作れないが」 「豪華なものより、気持ちのこもった物の方が喜んで下さいますよ」 手際良く、重箱に稲荷寿司や煮しめを詰めて。 「旦那はいたが、私も式らしいもんは挙げなかったねぇ」 「おや、旦那さんがいらっしゃったんですか?」 「ああ――宴会めいたものはあったが、結婚式は挙げなかったね。と、私は奥方の身支度を手伝ってくるよ」 ササッと作り終え、後は頼むよ‥‥と付け足した鬼貫にはい、と六条は微笑み。 「いってらっしゃい」 ちょうど、妻であるカナ江のところにはレティシアが顔を出していた――祖母が好きだったと言う薄ライラック色の振り袖。 「はぁ‥‥はぁ、ダッシュで買ってきました」 ギュッと薄ライラックの反物を抱きしめ、頬を紅潮させて口にするレティシアは正に乙女。 「直ぐに作ってしまうからねぇ‥‥これでも、針を持たせば向かうところ敵なしってねぇ」 チクチクと手際よく、既に達人の域に達しているカナ江の針捌きを見ながら、レティシアはぽわ〜んと、未来の恋人へ思いを馳せる。 「あの、ブーケトスをやって頂いてもいいですか?」 ブーケトス?と返すカナ江にコクコクと頷くと、レティシアは良い雰囲気の二人と、そしてブーケトスの意味を伝える。 「勿論、いいですねぇ」 「奥方、そろそろいいかい?」 パチンと、最後の糸を切ったカナ江を見て鬼貫が声をかける――祖父の故郷の衣装なのだ、と告げて袖を通したレティシアが嬉しそうに声を上げた。 「ありがとうございます!」 「丁度いい、おまえも手伝ってくれないかい?」 テルテル坊主のよしみで――鬼貫の言葉に、勿論ですと彼女は言い切った。 「そしておまえも」 「あ‥‥はい」 そこには、入ろうかどうしようか、悩んでいたジレディアが立っていた。 「化粧刷毛を取ってくれないかい?」 「はい!」 テキパキとカナ江の身支度を整えていく鬼貫に、一生懸命手伝うレティシアとジレディア‥‥クスクス笑いながら、そして頬を染めて髪を結いあげ、化粧を受ける。 「双方が壮健な内に、心残りを晴らしておくってのは最良の事だ‥‥羨ましくもあるが、女の悋気は慎む事なんていうからねぇ」 「ええ、仕事と私と、なんて思った時もありましたけれど」 純白の白を纏い、カナ江は照れ臭そうに目を伏せた。 「よぉく、似合う。それにいい名前だ、藤村の『フジ』この頭のフの字に二人チョンチョンと並べば『ブジ』になる」 穏やかさと、そして強かさに懐かしさを瞳に宿し、鬼貫は続けた。 「何事も『無事』二人揃えば万事安泰。強く願いな、あんたの名前みたいにさ。カナエ、叶え、ってね」 「ふふ、そうですね」 「あの。結婚って、どんなお気持ち、ですか」 ずっと、聞きたかったんです――付け足した言葉にカナ江は微笑んで。 「此れからも一緒に、生きていく。支えていく、満足感ですかねぇ」 一方、春忠は、と言うと。 「棚が壊れた時に、直す道具が要るだろ?」 鋸歯のテルテル坊主を吊り下げながら口にした悪来の言葉に、彼は大工道具へ思い馳せる――人生の大半はその道具と共に過ごしていた。 思い入れは大きく、そしてその仕事は誇りであった。 「随分と、無理を強いてしまったから‥‥男の決意ってやつだ」 その言葉に、悪来は寂しげなものも見たが――やがて、それが喜びに変わるのを見た。 「あなた‥‥ありがとうございます」 妻のカナ江が、白無垢の姿で立っていた――その笑みは、少女の様なあどけなさを残したままで。 ●白詰草の丘 「とってもお綺麗です。歳を重ねて、いつかこんな人になりたいなぁと思っちゃいました」 キラキラとした瞳でレティシアが口にする、言い過ぎですよ、とカナ江は照れた言葉を口にするがまんざらではない。 「白くて綺麗ですね‥‥」 感想、と思えば浮かんだ言葉は、とびっきりの白。 和奏の言葉に、そこ?と皆の視線を浴びて本人は首を傾げる――何かおかしな事を言いましたっけ? 何処か切なくも――曇りなく笑った表情で、鬼貫が自然と寄りそう夫妻を遠巻きに見つめる。 「(叶わなかった昔を夫妻の婚礼に重ねて見るもまた良し‥‥なんてねぇ)」 まだまだ、腕は落ちていない事を確信し、次は――と、視線を向けるのはラシュディアとジレディアの二人。 お互いをチラリ、チラリと見ては視線が合い、そしてパッと逸らして‥‥中々じれったい二人。 「始めましょうか、結婚式を」 祝詞を奏上するのは、巫女である六条の役目。 狩衣に御幣を手にした姿、丘の上の宴会場は和奏とラシュディアによって、綺麗に敷物が敷かれ、和やかな雰囲気を醸し出していた。 凛とした声が、祝いの言葉達を彩っていく。 レティシアによって、餌付けされた小鳥達が彼女と共に囀り、祝福を紡ぐ。 『この丘にて誓いを立てられた日から、 これまでお二人は互いに尊びあい、支えあい、 共に歩んで参られました。 今日ここに、再びの誓いをもって婚礼の儀とし、 お二人に精霊の加護と祝福のあらん事を伏して願い奉ります‥‥』 ゆっくりと頭を下げた二人、ふぁさっと、御幣が揺れる――六条の手が差し出すのは、女性達が作った花の首飾り。 「此れを、カナ江さんにかけてあげて下さい」 やんわりと微笑む目の前の巫女に、礼の意を込めて頷き、そして春忠はカナ江の首に其れをかけた。 「此れからも――ずっと、共に」 「はい‥‥」 自然と重なる手、そのまま、吸い寄せられるように重なる唇。 羨ましさと鼓動の高鳴りを感じつつ、レティシアの薄ライラック色の振り袖が、青空に舞う‥‥祝福の調べは優しくも力強く、決して変わることの無い愛を歌っているようにも見えた。 「(たとえ、二人が亡くなった後もこの場にいる人達の思い出の中に残せるように、生き続けますように)」 命ある者は消えゆくのなら、その一時を大切に生きよう‥‥人生と言うスコアに、縁が鮮やかに描き出される。 決して長くは無い『先』を前にして力強く寄りそう二人に、祝福を。 一時、止まった音色が続いて紡ぎだされる――六条が用意したのは『朱杯「金銀日月」』だ。 天儀酒を注ぎ三々九度、友人の婚礼に貰ったものだと言うその杯はきっと、これから変わらない縁を呼び込んでくれるだろう。 天儀とジルベリアの文化を交え、粛々と進む婚礼の儀式、その終わりは投げられた。 ブーケトス、ブーケがその手に収まりジレディアが頬を染める、目配せを行う開拓者と藤村夫妻。 「此れからは、披露宴‥‥皆さん、お待ちかねですよ」 さて、と六条が笑みのまま、重箱を取りだした。 ●これから先を 甘辛い煮しめや、稲荷寿司。 塩を振ったおにぎり、柳の丸箸を各自手にして箸を伸ばす。 自慢そうに、弁舌を振るうのは鬼貫だ、凄い!と笑顔を見せるレティシアへ説明を付け加える。 「南瓜の煮付けは、こぼれた種でも芽が出る程の強健さに因んで」 「熱っ、でも、この天ぷら美味しいです」 「ああ、キスの天ぷらさ。魚に喜ぶで目出度い。旬の梅肉でお食べ」 火傷をしないように、と言われてコクンと頷き和奏が梅肉と共に、口に運ぶ。 「見事な料理の前で恐縮ですが‥‥」 六条が伏し目がちに言えば、飛んでも無いと煮しめを頬張る悪来、持参した握り飯と混ざり合って丁度良い。 「こう言うのもいいよ」 実家に残した弟は今、如何しているだろうかなどと思いつつ、ラシュディアが伸ばしたのはアユの塩焼き。 「アユ塩焼き。二人で三尾をお食べ。共に鮎三つ、アユミ、共に歩み、だ――」 意味を聞いては、頬を染める。 「素敵ですね、彩りも‥‥生命の美しさを感じます」 ジークリンデが感心したように見つめる先には、紫蘇飯‥‥病がすぐに治る。紫色の蘇る草でシソ。 アジのタタキに生姜醤油、アジのある人生を――鯛が入らなかったと笑う鬼貫にカナ江はゆるりと首を振り、袴と羽織り姿の春忠へ視線を移す。 一等めでたいものよりも、ずっと愛されるものを、そう言う絆で在りたいと。 たっぷり腹を満たした後は、朗々たるジークリンデの声が丘を包む。 「白詰草、花言葉は約束、私を思って――指輪に込めた思いは、永遠に」 巫女装束に包んだ彼女が、舞い踊るのは精霊への祈りと祝福――生命を身体全体で表す動の動きから、静かに舞い降りる光の様な静へと移り変わる。 細く伸びやかに伸びるのは、六条の横笛‥‥寄りそっては流れを作るのは音楽も同じ、静かに舞いを終えたジークリンデに続くのは、悪来の激しく猛々しい演舞。 「艱難辛苦は叩いて砕け。幸福の戸は叩いて開け。〜二人が紡いだ今迄と、これからの人生の礎を、掛矢を以て、この誓いの丘に打ち留めん」 グルリと掛矢が一転、空を切り裂いては地を打ち止める寸前で留まり、そして大きく振りあげる。 先程とは打って変わって、激しい六条の横笛が更に猛々しさを表す。 「〜道はこれにて盤石なり。二方の、多幸を祈る」 ずん、と足で地を叩いては、ゆっくりと頭を下げての見得をきり、風に吹かれる花吹雪。 「穏やかに年を重ねていくのは、理想の行きつくところかもしれません」 パチパチと拍手をしながら、和奏がいいですね〜と間の抜けるような声で口にした‥‥もしかしたら、その前に人付き合いを!と彼の相棒が此処にいればツッコミを入れたかもしれない。 夕暮れ、静かに風が吹き抜ける丘で。 精一杯の告白から、返事を返す為にラシュディアはいた、目の前には所在なさそうなジレディアの姿。 十分、迷ってから彼は正直な言葉を口にした。 「一人の女の子として見るとは決めたけど、この感情が恋愛関係なのか家族としてのなのかよく分けられてなくてね。だから、まだ返事はできない」 でも、大事だと言う事は事実だから。 「待って欲しい、それまで、笑顔を守り抜くよ」 何があっても‥‥。 「――わかりました。今はその答えで。でも何時かの為に、この白詰草の指輪を」 嵌めて頂けないですか――問うた言葉と、対の白詰草の指輪。 後はそう、二人の物語。 |