【陰遵】厄、落とします
マスター名:白銀 紅夜
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/02/22 00:23



■オープニング本文

●災厄は常に
 任務の報告を終わり、ギシギシと痛む身体に眉を顰めながら、静かに彼は頭を下げ続ける。
 やがて、藍玄、と静かに呼ばれてそのシノビ、藍玄は顔を上げた。
 ‥‥嗚呼、今日も厄日だな、とか何とか考えていたりするが仮初で平静を保つ。
「瞳孔が開いてますよ‥‥軽く、死にかけていますね」
 それはどうでもいいんですが、とサラリと流した彼の上司、北條・李遵は手に持った紙を無言で差し出す。
「凶、自己中心は身を滅ぼす‥‥ですか、いい言葉ですね」
「ええ、いい言葉です――私は北條流頭領でありながら、数々の難題を部下に押し付けて来ました」
 何処となくスポットライトが当たり、相変わらずの無表情で語り始める李遵だが、長く共にいる―いたくもないが―藍玄はそれがまた、新たな遊戯だと内心ため息を落とす。
 尚、このため息は本日、304回目になる。
「と言う事で、貴方の厄払いをやろうと思いまして‥‥本厄ですね」
「いえ、李遵様――私は自分の年齢は存じないのですが」
「本厄です、では、頑張って下さい‥‥ああ、せっかくなので開拓者の皆さんも呼びました」
 折角と言うのはどういう意味なのか、そもそも、厄払いなら石鏡の巫女や東房の僧侶でいいではないか――。
「どうせですから、皆さんの厄も祓おうと思ったので」

●八熱地獄
「李遵様、おかしくないですか?」
 陰殻、ぶすぶすと煙を上げた荒地‥‥燃やされた木々が黒い墨となってかろうじて立っていた。
 月隠で姿を隠した二人は、破壊を繰り返しているシノビを見つめる。
 互いに読唇術で、やり取りしながら李遵は楽しげに眼を細めた。
「‥‥おかしくないですよ、巫女も使うじゃないですか、浄炎」
 浄炎は巫女のスキルである、当然ながらシノビの使うのは火遁。
「厄を落として貰おうなんて‥‥他人本願も極まりないです。あの不知火の使い手、キッチリ倒して来て下さい」
 ――他人本願、貴女が言わないで下さいと言う呟きは軽く、スルー。
「絶対に殺さないように――とりあえず、これ以上荒地が増えると死活問題ですし」
 王に怒られます、と言った李遵に、全然そんな事は思っていないだろうと冷たい視線を向ける。
「修練場なら、いい場所があるんですがね――」
「思いっきり、命の危険を感じる場所ですがね」
 ‥‥宝珠爆弾の欠片が散らばった、修練場と呼ばれる場所を思い起こし藍玄はこめかみを抑えた。
「とりあえず、お灸据えて来て下さい。ついでに、不知火浴びれば厄払いになります」
「なりませんよ」
 ‥‥その言葉に、本日305回目のため息が藍玄の口から漏れたのだった。


■参加者一覧
喪越(ia1670
33歳・男・陰
水月(ia2566
10歳・女・吟
御凪 祥(ia5285
23歳・男・志
叢雲・暁(ia5363
16歳・女・シ
からす(ia6525
13歳・女・弓
和奏(ia8807
17歳・男・志
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
アナス・ディアズイ(ib5668
16歳・女・騎


■リプレイ本文

●厄除け?
「結局、何の為に荒野にしているのかわからんのだが‥‥」
 ただっ広い荒野を目にして呟いたからす(ia6525)はそもそも、と落ち着き払った様子で続ける。
「火の鍛練なら野営で鍋とか――」
 無益な事を、と悟り切った表情で空をかける烏に微笑みかけ、そしてシノビへ悪役めいた笑み。
「今の俺は燃えている!」
 何だか、遠くでシノビが叫んでいる‥‥端的に言うと放火魔っぽいと言うか、寧ろそのまま火をぶっ放したい連中らしい。
 と言うか、全く気付かないのはシノビとしていいのか――甚だ疑問である。
「からすセニョリータ、気にしちゃいけないぜ?」
 さり気なく肩をポムっと叩きながら喪越(ia1670)は、悟り切ったと言うよりも緩み切った表情でシノビ達を眺める――商売繁盛の為に厄を落として貰うつもりが、むしろいきなり厄が始まっちまってるじゃねぇか!
 と少々前まで考えていた事だが、彼は凄まじい切り替えの速さでピンチをチャンスに変えてしまう、これはチャンスだと。
「シノビ相手に激闘を繰り広げる俺様、そして傷ついた俺を膝枕で解放する李遵セニョリータ‥‥そして、愛の告白!」
 まさかのフラグ――と叫びながら喪越はラブ&ピースとか叫んじゃいながら、シノビに接近、男の鑑である、色んな意味で。
「色々な風習があるけど、ここまでバイオレンスな風習は世界に666位しかないと思うな〜」
 間延びした声で叢雲・暁(ia5363)はうーんと唸るとバッと脱ぐ、その早技、熟練である、と言うかまばゆく輝く裸体が眩しすぎます。
 喪越氏が凝視していらっしゃいますよ、女は見られれば見られるほど綺麗になる‥‥とそう言う事ではなく、一撃必殺を狙う彼女の策略というかポリシーだ。
「‥‥666も、あるんですか。世界は広いですね。火遁に不知火、北條流の皆さまは豪胆です」
 それにしても、脱いで寒くないですか――?と言いながら、和奏(ia8807)がぽや〜っとした表情でコクコク頷いた、彼は気付いていない‥‥これは、依頼人である李遵の暇つぶ、もとい、鍛練である事を。
 その横で冷や汗を流しながら、背中をチラチラと振り返っている長谷部 円秀 (ib4529)は思わず、ボソリ。
「実は‥‥敵より背中が怖いかも」
「いえ、厄除けですから」
 いつの間にか後ろにいた挙句に、さり気なく不知火の印を紡ぎ出した李遵を必死に、藍玄が止めている‥‥妙に凝視されて非常に居心地が悪かった、狙われてるっぽい。
 いい年になるといいなぁ――と言う現実逃避なんかしちゃっている、その横で十字槍の穂先を撫で神経を研ぎ澄ませた御凪 祥(ia5285)は、厄払いか、と呟いた。
「術如きで祓えるとも思えんが‥‥どうせ、喰らわねばならんのだろう?」
「え、私の不知火浴びたいんですか?」
「断る」
 李遵の言葉を秒速で斬り捨て、斜陽を駆使し赤い柄の槍に夕日のような光を纏わせる。
「‥‥やっぱり、なにか違うの」
 あの人達じゃないですよね、と水月(ia2566)がうるうると大きな瞳で李遵を見上げ、違うと言って欲しいオーラを醸し出すが――。
「いえ、あの人達です‥‥大丈夫です、死にかけても救出に行きますから。傷痕も残りません」
 ついでに、獣耳カチューシャつけてみますか、と真顔で言った李遵に水月は泣きたくなった――何がついでなのか、しかも若干副音声で傷つけたシノビは飯綱落としで葬りますとか言っちゃっている。
「(‥‥いや、あんたの所為なんだが)」
 非常にツッコミを入れたい御凪であったが、此処で常識を通しても仕方がない‥‥さっさとケリを付けたいのが本音であった。
「焼くならレア加減『以下』にお願いします」
 アナス・ディアズイ(ib5668)はしっかり、以下、を強調しながらフルーレを構える――美しい戦乙女の如く。
 向かい合う開拓者とシノビ、さやさやと精霊が囁くような歌声は水月の霊鎧の歌、淡い光が祝福をもたらす。

「アー、モシモシ?ソコのアナタ達?神を信じ――」
「男は退けぇぇえええっ!」
 シノビ、渾身の不知火を喪越に放つ、何故カタコトなのか‥‥せめてそこ、突っ込んでおいて欲しいものである。
「その鎧、燃やしてくれるわぁっ!」
 ぶっ放す火遁‥‥ディアズイに襲いかかるが当然ながら鎧だけを燃やすなどと言う芸当が出来る筈もない――と言うか、一体何がしたいんだ。
「熱烈な歓迎と厄払いありがとうございます‥‥」
 金髪美女のディアズイはフルーレを一振りすると、神々しくも火の中からトテツモナイ雰囲気を放ちながら現れた――オーラです、勿論。
「お礼に、頭を使うのが苦手なあなた方の為に色々ご用意しましたので」
 しっかり矯正されて下さい、と有無を言わせぬ口調で言い切った彼女の隣でせっせと盗品を回収していた和奏がボウッ、と火に包まれた。
「ああ、もう一度拾わなければ‥‥」
 せっせと拾い集める姿は何だか、勤勉な蟻さんのようでこの勤勉さを見習って欲しいと藍玄がため息を吐く――こんな依頼に巻きこまれてさぞかし、大変だろう、大丈夫だろうかと青年の行く先に思い馳せるが。
「やり返してもいいのですね?」
 二度目の火遁は普通に避けた彼は、思いっきり桔梗をお見舞いしていた‥‥もう一人の危なっかしい方と言えば水月さん、火遁を浴びなければならないもののかなり苦戦していた。
 何しろ、見た目がふわふわの子猫のような姿なので害意を抱かれにくいと申しますか――呪縛符で主と同じように、真っ白ふわふわの子猫さんたちが絡みついて。
「たーげっと・ろっくおん‥‥しゅーとっ!」
 白狐をお見舞いしても、ラブリー過ぎてシノビさん達の印を結ぶ手が止まってしまう‥‥依頼が達成できなければどうしよう、なんて不安そうにする辺り、もうギューっと抱きしめたく――。
「どんな相手でも、戦うように訓練した筈ですが」
 困りましたね、と言いながら李遵がシノビ蹴り飛ばして不知火浴びせていた――若干巻きこむ形で水月の方へ。
「今日の不知火は一味違います。‥‥そうですね、盾になってきて下さい」
 何やらゴゴゴと恐ろしい音を立てて空気を焼きながら不知火が迫ってくる、若干命の危機を感じる水月、あ、と思う間に何か、と言うか誰か飛んできた。
「くっ、此れでともかく不知火は‥‥受けまし、た」
 膝から崩れ落ちる長谷部、もう、背中が重傷レベルと言うかカチカチ山だった――お陰で水月はちょっとのダメージで済んだが、ちょっとでも浴びたらいいらしい。
「お、お願いします‥‥不知火では無く、薬草を!」
「すみません、シノビを蹴ったつもりですが長谷部様でした」
 涼しい顔でと言うか、寧ろ確信犯的な雰囲気を醸し出しながら李遵が薬を塗りつけるが、微妙に無臭なのが怖かった。
「‥‥効果が不気味ですが。私たちだけ厄払いと言うのもなんですし」
 紅蓮紅葉と炎魂縛武で炎を纏わせ、刀を被りながら長谷部は斬り込む‥‥かわされた攻撃を最低限の動きで返して当てる。
「どうぞ!」
 酷い、酷いよ‥‥おかーちゃーん!とシノビが叫んでいるが容赦なく鳩尾に一発、刀の背を使い昏倒させた。
「先ずは、全裸で重装備のヤツと戦って勝利を掴む事だ!」
 早駆を駆使し、不規則な動きで地をかけ入り乱れるように奔刃術で忍刀で薙ぎ、裂いていく‥‥YAKUはウチが叩き切る!と叢雲が声をあげる。
 荷物を押し付けられた藍玄が、何に使うんだろうと酒と塩を手にため息、衣服は洗濯しておくべきか――と何やら所帯じみた事を考えていた。

●ダンスタイム
少し時を遡り交渉決裂した喪越さん、ポーーーゥ!とか何処かの有名歌手のような声をあげつつアフロヘアー、ぷすぷすと煙の上がる姿はまさしくこんがり焼けました☆と言う感じである。
「きみの気持ちはよ〜く分かった。地獄の一丁目の田中さん家までお使いに行く覚悟は――」
「長ネギと肉をお願いします。支払いはツケで」
「出来たかって李遵セニョリータ台詞被っ‥‥」
「小娘?甘く見ない事だ」
「――からすセニョリータ、だから台詞被って」
 猟兵射で行動を封じながら、気配を絶っていたからすの矢がパチパチと燃える炎に焼かれ火矢となる。
 やったか?と言う問いには、悪役のような笑みを浮かべながら凄みと共に口を開く――やってない。
「伊達に術殺しとは呼ばれてないさ。ちょっと熱かったけどね――さて、お返しに君には厄をお届けしよう」
 それが道理だろう?とばかりに心毒翔がシノビへ飛んでいく、近接戦には山猟撃で包丁に持ち替えカウンター。
 肩を裂く手裏剣と、またもや噴き上がる火遁を打ち払うように近づき、思い切り蹴とばした、狙い、股間。
「さあ、大人しく」
 あんまり痛そうで、男性皆が若干内股になった‥‥シノビ一名、悶絶しながらのたうちまわる。
「見切った、見切ったぜ、アミーゴ!」
 不規則に腰を振りながら槍を持ち、狙いは彼女だ、と内股になっていないシノビを喪越の慧眼が見極めた、地味に素晴らしい能力だ。
「なっ、やめろっ!」
 柔らかい弾力と共に火遁二度目、だが悔いはない‥‥と思いきや次の瞬間彼は金的攻撃を受けてのたうち回る。
 若干、目尻に涙を浮かべながらそれでも喪越、離さない。
「は、な、せ――っ!」
 ヘンタイ、とか叫びながら、飯綱落としを仕掛けるシノビの腰を掴んで喪越のバックドロップが決まる。
 ゴングが鳴った、と言うか何時の間に用意していたんだか――流石に盗品じゃないだろうなと、御凪が後方に投げてよこす。
 水仙で己を高めながら、鋭い突きを繰り出し徐々に間合いを詰めていく、空を切るように強襲をかけるシノビを槍の柄で受けながら投げ飛ばすように敵へと弾き飛ばす。
「倒したシノビを、盾にしてもいいよなぁ」
 含み笑いが何となく、怖かった。

●厄はこれから
「盗品が燃えました」
 ああ、でも仕方がないですよね、別に盾にしようと思った訳じゃなくてウッカリですからとか言いながら和奏が秋水でシノビを斬り捨てていた。
 動きを止めたシノビに息がある事を確かめつつ、ディアズイが荒縄で捕縛する‥‥そもそも、と口を開いた彼女は冷静に続けた。
「この状況で盗品を回収するのは、無理があると思います」
 チラリ、と李遵を見れば若干シノビに混じって遊んでいるし、その部下の藍玄は覇気無く李遵をたしなめながら洗濯中。
 こいつ等大丈夫なのか?的な視線を送りつつ御凪が、槍を使ってシノビを放り投げる――もう、この小悪党と言うか悪ガキレベルのシノビ相手に本気出すのが面倒で仕方がなかった。
「そもそも、この程度の小物相手に頭領が動くのか――」
「分かって無いな‥‥複雑な乙女心だ。俺様を呼びたくても呼べない李遵セニョリータが引き起こした――」
 ぼう、と不知火に包まれる喪越、ポーーーゥ、と本日二回目の雄たけびを上げながら放った人物へダッシュ。
「セニョリータ以外のお誘いはお断りだ!」
「あ‥‥盗品」
 ダッシュしていく喪越が蹴散らしてしまった盗品を悲しげに見ながら、ポツリと水月が呟く――さり気なく、彼女の頭を撫でながら李遵が口にした。
「大丈夫です、全く問題ありません」
 さり気なくもふもふとハグしていたりするのだが、手に握られた獣耳カチューシャ、この問題頭領、隙あらば付けさせる気だ。
「問題だらけのような気がするのですが‥‥」
 ディアズイの言葉に、大丈夫ですと何処が大丈夫なのかサッパリ分からない返事を返しつつ、一人講義を続けている叢雲へ視線を移す。
「一つ、シノビの極意は全裸にあり!」
 ウチについてきて!とばかりに輝く裸体を晒しつつ、叢雲は火傷を負った身体に厄払いの〆に塩を塗り込んで酒を浴びた。
 清めであるが、非常に痛い――だが、これは清めであるからにして避けては通れない、となれば。
「きみ達にも塗ってあげよう!」
 YAKU祓いだからね、と傷を負ったシノビに塩をベタベタ、酒を浴びせて阿鼻叫喚が巻き起こる‥‥豪胆ですね、とさり気なく自分は結構ですオーラを出しつつ、和奏がちょっぴり叢雲と距離を置いた。
 そりゃあ、痛いのは嫌ですから――ふるふると拷問を受けているかのような心境のシノビに、そっと水月が手を握る。
 おずおずと、そして大丈夫とでも言うように大きな瞳が語りかけ、傷を撫でて行く‥‥うーん、マイナスイオン。
「しかし、何故荒野にしていたのだ?‥‥答えぬとヴォトカを刷り込むぞ」
 涼しい表情であらわれたからすに、今度は青ざめる捕縛されたシノビ――金的攻撃に若干トラウマ、内股であるのは言わないお約束だ。
「そ、その――燃やしたくて。俺達のハートが燃えるように、陰殻も燃えて欲しかったんです」
 だからヴォトカ止めて下さい、止めてーっ!と悲鳴が響き渡る、と言うか至極どうでもいいような動機を聞いたからすは、そうか、と一つ頷いて。
「お茶でもどうかな」
 あ、そこは突っ込まないんですね‥‥と、誰が思ったかはいざ知らず。
 服を着た叢雲がお茶を頂きつつ、ウチのYAKUも落ちたと頷く――御凪が自分も、と寄って来たシノビを冷ややかな視線で一瞥。
「‥‥‥‥」
 ちょっとまあ、彼等も被害者のような気がしない事も無いのでお茶を差し出してやる――骨の無い連中だったな、と酷評を内心で呟くが顔には出さない。
「あ、自分も――」
 和奏がありがとうございます、と恭しく頂きながら後ろで起こっている惨劇に視線を移す。
「凄いですね‥‥」
 凄いでいいのか、それでいいのか‥‥ある意味豪胆ですよね、その辺り。
「ああいう風には、なりたくは無いと思いますが」
 凄いですね、とディアズイは返しつつ、変な人、とにべもない言葉を口にした――非常に同感である。
 大丈夫?とオロオロしている水月が何度か後ろを振り返ると――。

「これって、本当に厄払いなんですか?李遵さんが楽しんでいるだけのような‥‥あ、もう不知火はいいです、お腹一杯」
 言った先から、巻き込まれる長谷部‥‥その言葉は、やって下さいと言っているようなものだ!と言うのは李遵の弁。
「デートの誘いは優しく頼むぜ、セニョリータ!」
 スリリングなお誘いもいいけどな、と喪越さんのたくましいお言葉――うん、男の鑑ですよ、男の鑑、重要なので二回言いました。
 弄られ体質のお二人様、そうですねぇ、と呟いた李遵は爬虫類のように感情の無い瞳で遠くを見て、一言。
「私だって、何も考えず直感で動きたい時もありますよ」
「‥‥頭で考えても、直感でやってもこうなるんですか」
 藍玄のため息が落ちていく‥‥音を立てて地面に落ちたような気がした。