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■オープニング本文 ●暑さを忘れて 「暑いです、藍玄」 目の前の青白い女が、唐突に言った。 いきなり何を言い出すんだと、普通の人ならば思うのだろうが生憎、この人物は慣れている‥‥悲しきかな。 「夏ですから」 仕方がないですね、と言うニュアンスを込めて書類を書きあげていく藍玄、汗を拭っては筆の先を整える。 ‥‥その横で、じーっと藍玄の手元を見つめる女、北條・李遵。 「李遵様、見られると書き辛いのですが」 「知っています」 汗一つ掻いていない李遵は恐らく、汗で居場所がバレるだの何だの言い訳をしてくれるに違いなく。 最早日々の嫌がらせ――李遵曰く、部下への愛――にも半ば諦めの日々である。 「納涼祭りをしましょう」 「その前に、仕事を片付け‥‥」 「と、言うより納涼祭りして下さい―――にしましょう、私が暑いので」 微塵も聞いていない‥‥いや、聞こえていないのか。 「聞いたうえで、無視、基本ですね」 「もう、何も言いません」 はぁ‥‥と、本日のため息、恐らく72回目。 「藍玄は精神的負荷で、胃をやられそうですね」 誰の所為だ、と聞くまでも無く目の前に突き付けられた紙。 「何も言わず、此れを開拓者ギルドへ」 何も言わないと、言いましたよね、と無駄にキラキラした笑顔に藍玄は73回目のため息を吐いたのだった。 ●納涼大会―IN― 此れは納涼のつもりなのだろうか‥‥と、藍玄は頭を抱えた。 開拓者ギルドへ出された張り紙を改めて、確認する。 朱墨で書かれた、何処か固い文字は紛れも無く自分の上司、李遵の物だ。 『走り抜け、北條主催、納涼大会!』 何故走るのかはさっぱり分からないが、それはいい。 次に書かれているのは明らかに納涼とは言わない‥‥寧ろ、我慢大会だった。 「防寒着着用、百の落とし穴が襲い来る蟻地獄―――」 炎があなたを焦がす灼熱地獄、呑んで騒ごう酒飲地獄‥‥此れは地獄と言うのか。 更に読んでいくと、彼は今なら本気で李遵を倒せるのではないかと言う憎悪に見舞われた。 『藍玄がチアガール姿で応援してくれるようです』 ‥‥最悪だ。 「大丈夫ですか‥‥?」 その場に崩れ落ちた藍玄を見て、心配そうに受付員が声をかけるのだった。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
樹邑 鴻(ia0483)
21歳・男・泰
嵩山 薫(ia1747)
33歳・女・泰
月見里 神楽(ib3178)
12歳・女・泰
朱月(ib3328)
15歳・男・砂
レジーナ・シュタイネル(ib3707)
19歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●涼無き納涼 今思えば、涼の欠片もありません、と首を傾げて見せたのは神秘的な相貌を持つ朝比奈 空(ia0086)だ。 「こういうのは嫌いじゃない。だが、何か嫌な予感がする‥‥」 恵皇(ia0150)の視線は最終コースの普通の道へ、拳一つでK.O.さ!な彼もさすがに障害物相手に拳を叩きこむ気はしない。 『チアガール』と言う単語は初めて聞くわ、と口を開いた嵩山 薫(ia1747)は実物を見て同情の色を隠せなかった。 ああ、此れが娘ならどんなに可愛いだろうか‥‥。 「相変わらず、冗談が服を着て歩いてるような人間ね。これが本当に納涼なら貴方ご自身でなされば宜しいのよ」 苦言を呈すも、サラリと返ってきた言葉。 「涼しいと感じるかですからね‥‥万が一術が失敗して部下が倒れたら私も肝が『涼しく』なりますよ」 何を求めているのだろうか、この人物は。 半ば遠い目をした朱月(ib3328)は過去、名張を思い、北條流頭領の李遵を見た。 気付かれないだろう、とは思うが‥‥その青白い表情からは窺う事が出来ない。 「(まさかこんな形で再び陰殻の地を踏むとは夢にも思って無かったよ)」 視線の先にはチアガール姿の可愛くない男、藍玄だ。 「その、気を落とさずにね?悪気はそんなに無いと思うんだ‥‥多分」 多分、と二回程心の中で繰り返す。 「えと、障害物競走で鍛錬‥‥ですよ、ね?が、頑張り‥‥ます」 グッと拳を固めて健気に口にしたのはレジーナ・シュタイネル(ib3707)長兄である『レオにーちゃん』を目標に鍛練。 「ほぁ、チアガールさん、が、応援‥‥してくれる、んですか。何処に‥‥」 続いて呟かれた言葉は、彼女の停止と共に地に落ちた。 ポンと肩を叩いて励ますのは水鏡 絵梨乃(ia0191)である。 「大丈夫だ、ほら、芋羊羹食うか?」 可愛い子好きーの彼女、シュタイネルと芋羊羹を半分こ。 「わーい、運動会、運動会♪皆様といっぱい遊ぶのです!」 無邪気に喜ぶ月見里 神楽(ib3178)は李遵の髪を見上げ、タレ耳をそよがせる。 「北條さんの髪の毛、長くてユラユラ綺麗ですね‥‥うん、別にじゃれてみたいわけじゃないよ」 「じゃれても構いません、貴女も綺麗な耳に尻尾です」 此れは狩りの対象じゃないんだよ、と尻尾をゆらゆらさせる月見里。 「今着てるもこもこ服も好きだけど、その可愛いちあがーるも着てみたいです」 何気なく彼女が放った言葉が、歴戦の開拓者達を震撼させた(一部) 「最後の走る所でお着替えの障害物も置いてみてはどうでしょうか?そしたら皆様と色々な服を着れるもんね♪」 「それはいいな、あ、野郎は別」 水鏡がニヤリと擬音が付きそうな声音で口にする、野郎に当てはまった恵皇と朱月、安堵のため息―――が、甘かった。 「わかりました‥‥男性には特別にくのいちが使うとされるこすちゅーm「李遵様!」 藍玄が吼えた、こ、此れは何だか危ないと直感が告げる。 「えと、走るのは好き、です‥‥拳士の先輩が、一杯‥‥勉強、したい、です」 シュタイネルの空気清浄、嵩山も深く頷く。 「それはいい事だわ、心技体、このバランスが大事よ」 ―――この納涼もどきで学べるかは別であるが。 「やっぱりシノビって忍耐が大事じゃん?これも訓練だと思えばね‥‥うん」 「とは言え、火遁の使い過ぎで何名か倒れてますが」 朱月の言葉に淡々と朝比奈が呟く。 「大丈夫でしょうか?!」 月見里の言葉に、李遵が堂々と口にした。 「問題ありません、私の部下ですから‥‥では、皆さん位置について」 問題ないのか‥‥それでいいのか、この人の下には付きたくないと遠い目の朱月。 すたぁと、の言葉に鏑矢が音を立て、納涼大会と言う名の李遵の暇つぶしが始まった。 ●蟻地獄 スタートダッシュはほぼ同時、嵩山と恵皇。 二名揃って瞬脚での猛スピード、地を走る為落とし穴を踏む回数も高い‥‥だが、脅威の加速力と技の形の保持。 「(落ちる瞬間、壁を蹴ればいいのね‥‥)」 「迷わず行くぜ、行けば分かるさっ!」 積み重ねた年齢、そして経験を活かし冷静に判断する嵩山、そして己の力を信じて猛ダッシュする恵皇。 ―――僅差、嵩山の横を抜け恵皇が前に出た時、悲劇は起こった。 「ぐぁっ!」 「お先に行くよ」 軽く恵皇を踏ん付けて行く、軽い足取りの水鏡‥‥妨害に徹する。 心中の宣誓と違わず、野郎は容赦なく、踏みつけた。 「え、ええっと‥‥、す、すみません!」 続いて恵皇を踏み台にするのはシュタイネル、此れも鍛練ですから。 「うん、まあ頑張って、先に行くよ」 朱月も踏み台に‥‥流石シノビ、容赦ない。 「あ、そこが落とし穴なのですね‥‥行きます!」 必殺☆気功波!とばかりに気功波をぶっ放すのは月見里、此処に明記しておく、彼女に悪気は全くない。 ‥‥だが、悪気が無いだけに憎めないと言うのは事実である。 頭を出したところに気功波を喰らった恵皇、もう一度深い穴にIN 「おかしい、絶対この穴おかしい」 深さ3mの巨大な落とし穴、力作です☆by北條流工作部隊 「(‥‥此処は他の方が落ちるのを見た方が宜しいでしょうね)」 カオスになっていく競技、その中で至極冷静なのは朝比奈。 「しかし、随分と運の要素が強いようです」 持ち前の知覚を発揮しつつ、落とし穴と思われる場所を避け走る。 「‥‥穴の中に何も無い分だけまだ良いですね」 嫌な予感、さっとその場所を避け軽く着地、着物の裾一つ動いていない。 「撒菱とか、熱湯とか‥‥そうなると拷問以外の何物でも無いですが」 一方、水鏡は恵皇を落とし穴に叩きこんだのを確認し、速度を緩め今度は朱月をターゲットに。 「横がお留守だぞ!」 「この程度‥‥まだまだ!」 水鏡の蹴りを咄嗟に、腕で受ける‥‥重い一撃だが耐えられない事は無い。 が‥‥相手の方が素早かった。 「遅い!」 かかと落としと共に地にひれ伏す朱月、地が避け落とし穴に落ちる。 「妨害ね、嵩山流十四代目継承者として負ける訳にはいかないわ」 300mの蟻地獄、最初に通過したのは嵩山、続いて通過したのはシュタイネル‥‥幼い笑みを浮かべる。 「罠‥‥ちょっと懐かしい、ですね。よく、にーちゃ達の作った罠に、落と‥‥落とさ」 ガーンと書いた石でも降ってきそうだが、健気に彼女は拳を作った。 「きっと、世の中罠が一杯、だから‥‥訓練だったん、ですよ、ね!」 疑ってはいけません、信じるものは救われます。 「スポーツマンシップも、楽しい運動会には大切なのです♪」 あんまり、イジメちゃ駄目ですよーとほわほわとした雰囲気で通過する月見里。 タレ耳がピコピコ、尻尾がゆらゆらと動く 「良い耳です」 李遵の呟き、判定基準が全く分からない。 「さ、大体妨害したし‥‥行くか」 4番、水鏡が通過する‥‥一気にスピードを上げ、灼熱地獄へ、尚、灼熱地獄と言う名のオタノシミ。 「妨害‥‥妨害なんかに負けるかぁぁぁ!」 ぬぉぉおおっ!と奇声を上げて走り出すのは恵皇、僅差で朝比奈が通過する。 「灼熱地獄、少々楽させて頂きましょう」 呟く彼女、精霊が呼応し精霊壁が形成され灼熱地獄へ。 7番手、思わぬ妨害を受けた朱月は穴に嵌まろうとも根性で走り続ける‥‥健気だ。 ●灼熱地獄 「心頭滅却すれば涼し、というのは全くの戯言‥‥そう」 ―――熱さを確かに感じ、それを不屈の精神で乗り越える事こそが真の心頭滅却。 自己に言い聞かせる秦拳奥様、嵩山、熱いのは大嫌いである‥‥若干彼女の殺気にあてられたシノビが倒れた。 シュタイネルの横を通り過ぎ、スピードを増してくるの水鏡。 彼女の瞳が妖しく輝き、その身体が紅に染まった。 泰練気法・壱‥‥来る! 「薫さん、覚悟!(ネタの神様、どうかボクに夢を見させて下さいっ!)」 放たれる気功波、冗談じゃないわとばかりに嵩山も臨戦状態へ、八極天陣でヒラリと回避。 「‥‥っ!焼ける!」 夏用の秦拳士衣装、際どい衣装が燃えしなやかな肢体が白日の下にさらされる。 「わわっ、こ‥‥こっちもですか?!」 シュタイネルの服が焼け、此方はおへそがチラリ。 「ぐっじょぶ!」 裏方の火遁のシノビさんも頑張ったようです。 「お気に入りの‥‥服だったのよっ!」 そこですかっ、とばかりに瞬脚から青い雷が走り、絶破昇竜脚へ。 「本気で潰す!」 「まて、早まらないでくれ‥‥」 ちょっと焦る水鏡、うわぁ―――なんて言う呟きが。 「即妙たる紅鴦、此処に在り」 ビシッと旦那様からの贈り物、扇を構えて威風堂々。 「男で良かったのか何なのか‥‥」 「全裸になっても、色々な事情でモザイクが入るので大丈夫です」 「嫌だってっ!と言うより何時の間にコッチに来たんだよ!」 哀れ、ひょんな呟きから朱月も燃やされる‥‥平然と抑えておきましたなんて李遵がのたまう。 「北條さん虐めちゃダメです!」 ぎゅっとじゃれるのは月見里、純粋な瞳がキラキラと輝く。 さり気なく耳をもふられつつ彼女は問いかけた。 「にゃ、北條さんは耳が好きですか?」 「好きです、似合う者がいなくて陰殻破壊してやろうかと思いました」 するな。 「神風恩寵は必要ですか?」 涼しい顔で口にする朝比奈、頼みますと口にした朱月だが。 「ああ、競技でしたね‥‥失礼しました」 笑みすら見せず、では、と言って先んじて行く辺り地なのかどうなのかが把握できない。 「この、水蒸気の前では無力だっ!」 走りながら石清水を振りまくのは恵皇、直ぐ様蒸発していくが逆境に燃えるタイプなのでオールOK‥‥尚、服も燃えているがやっぱり気にしてはいけない。 水鏡の蹴りを瞬脚で速度を上げ、かわす‥‥彼女の興味は朝比奈に向かっているのか追撃は無い。 朝比奈を抜き、シュタイネル、朱月、月見里の後ろ、四番手へ。 「空、行くぞ!」 「止めて下さい、ただですら暑いのに」 精霊壁を駆使しながら、空気撃のダメージを最小へ。 「脱がしたいんだ!」 直球な‥‥頑張って下さい、と李遵が何処からか取りだした大漁旗を振りあげる。 「全シノビに告ぎます。気力消費、全力で行きなさい、シノビは煩悩です」 「自重して下さいぃっ!」 藍玄の悲鳴もなんのその、李遵の言葉と共に、朝比奈の衣装も所々焦げるが当人はため息と共に。 「‥‥オイタが過ぎますよ」 悪魔的な瞳、水鏡の耳へ息を吹きかける。 「ひゃぁあっ!」 「ちょっとした悪戯です」 妙な声を上げて耳を抑える水鏡、それを満足し、クスッと笑みを漏らすと朝比奈はまた走り出した。 ●酒飲地獄 酒飲地獄、先にたどり着いたシュタイネル、此れは‥‥と戸惑いを見せる。 「あ、あの。お酒、は‥‥あんまり、飲んだ事なくて、家族にも、まだ、子供だから止めろって、言われてて」 えぐっと涙する可憐な少女に、ギュンと来るシノビ達、トキメキ以上のクリティカルな何かだ。 「この前、ヴォトカ買ったら‥‥辛かった、です。甘いのは、ちょっと飲めましたけど‥‥あう」 「いや、辛いって言うより急性アルコール中毒が心配な気がする」 辿りついた朱月も、樽を手に飲み始める、この量はキツい、寧ろ命の危険を感じる。 「いくら志体持ちでもこれは‥‥正に最終地獄!」 「でも、神楽みたいなミセイネンが飲んでいいのかな?」 樽を目の前に、呟く恵皇と月見里‥‥決まっている場所もあるようですが。 「陰殻、北條の場所では未成年でも可能です」 涼しい顔で告げる李遵、目の前で飲んでいる。 「飲んでくれると嬉しいのだが‥‥」 「無理です、厠をぶっ壊しますよ?恵皇様が厠の場所を聞いていた事は把握済みです」 おずおずと交渉を持ちかける恵皇だったが、一蹴され気合を入れつつ飲む、飲み下す。 「ヤな情報網」 朱月の呟き、ご尤も。 「辿りついたわ‥‥予定は狂ってしまったけれど」 5番手の嵩山、後背にいるのは水鏡と朝比奈。 「服を燃やされた恨み‥‥」 地獄を見るがいいわ、とばかりに酒樽を放り投げる嵩山、凄まじい爆音、鼓膜を響かせる。 「うわっ、やべぇっ!」 「過激ですね‥‥」 咄嗟に避ける水鏡と朝比奈、直撃はしなかったものの顔にこびりつく墨や焦げた服。 そして死屍累々(死んでません)のシノビ達。 「丁度いいじゃない、此れもいい修行の一環よね!」 おーほほほっと高笑いをしつつ、次々と投げ込む嵩山。 「成程、お酒は燃やしちゃえばいいんですねっ!」 「(え‥‥?)」 月見里のキラキラした笑顔、何だか嫌な予感がするシノビ達、だが。 「いくね、骨法起承拳!」 肉球グローブが宙に軌道を描く、派手にぶちかまされた酒は炎と混じって空を焼いた。 「にゃはっ、頑張っちゃいました」 決めポーズも可愛らしく、無邪気に言われたら諦めるしかない。 「死屍累々だな‥‥」 辿りついた水鏡、月見里の後ろから抱きついて呟く。 「大変そうです」 朝比奈が呟き―――酒樽の中身を飲み干していく、解毒を使おうとも思ったが、酩酊ならば意味が無いだろう。 「ボク、北條じゃなくて良かった」 心底の思いを吐き出す朱月、フラフラで這って進む。 「あぅ‥‥ゴールの向こうに‥‥お花畑、と、レオにーちゃ(長兄)、の笑顔が見える‥‥です」 注意、兄は死んでいません―――気力を使い果たしたシュタイネル、戦闘中なら戦闘不能なのだろうが。 「此れは、お遊びですからね」 頑張って下さい、と酒を飲みつつ李遵が呟く。 「お遊びのレベルじゃないと思うけれどね‥‥」 「嵩山様の樽投げ、拝見しましたが中々のレベルで‥‥」 きっと、嵩山の娘がいたら『そんな事だから門下生集まらないのよっ!』と言っていただろう、否、もしかしたらため息で終えるかもしれない。 「しかし、うっ―――やはり、これが‥‥地獄か!?」 やっとの思いで飲みほした恵皇、口元を抑え、走る、ただ、走る。 「目が、回る‥‥」 棄権すれば楽なのだろうが、彼は逆境に強かった、或いは強すぎた‥‥ 心地良さそうな寝息を立てている水鏡、女性のチラリを見れて満足の模様。 「うぉぉおおおっ!」 ‥‥堤防、決壊寸前。 「って、うわっ‥‥ちょ、こっち来るの?!」 朱月が慌てて速度を上げる、そりゃあ、ゴールは一緒ですから。 そのまま、朱月と恵皇はゴールである白いテープをブチ切る、恵皇は猛然と厠へダッシュ。 「おにーちゃ、頑張った‥‥よね」 ガクンと崩れ落ちるシュタイネル、声が聞こえた気がして顔を上げる、視線の先に。 「酩酊に効く薬を、調合しました」 ‥‥調合したチアガール姿の藍玄、シュタイネル、意識不明再び。 藍玄、思わず目から汗。 「にゃはっ、ゴールです!」 「同時になったわね」 元気な声を上げてゴールする月見里、そして瞬脚を止めた嵩山。 「這って行って正解でした‥‥」 7番手で辿りついたのは朝比奈、実は水鏡の場所からは絶景なのだが残念、彼女は睡眠中。 仕方が無いですね、なんて言いつつ朝比奈が彼女の顔に濡れた手ぬぐいを当てる。 なんだかんだと役得、なのかもしれない。 |