それぞれの道
マスター名:白銀 紅夜
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/17 18:35



■オープニング本文

●憧れと生活と
 開拓者‥‥志体を持つ超人。
 アヤカシをやっつけ、悪い人を退治する。
 開拓者ごっこにいそしむ子供達のイメージはそんなところだ。

 開拓者‥‥戦う事で食べていける。
 数多の困難も、自分で切り開いていける。
 作物に水をやり、肥料を撒き、虫を捕り作物の手入れをする男のイメージはそんなところだ。

 一息き、中年の男は空を仰ぐ。
 空は青い、この分だと作物も十分育ってくれるだろう。
 ただひたすら、開拓者ごっことして走りまわる子供達を見て彼は苦笑と共に叱り飛ばす。
 長年、鍬を持ち続けた男の手は固い―――勿論、男も楽に食べていける職業ではない事位理解している。
 だが、それでも憧れてしまうのだ。
 ―――自分の生活とかけ離れたものだからか。
 男も近づきたいと、技術を磨いた日はあった。
 志体を持たず、アヤカシと対峙すれば庇われる日々。
 お荷物だ、と言外に言われているような気がした。
 そのまま依頼で出会った女性と、結婚してどれ程経っただろうか。
 今の生活は勿論気にいっている、子供も可愛い。
 だが―――

●村の楽しみに
 この村は自給自足で成り立つ村だ。
 だが、強欲な支配者はおらず、自分の食べていける分を取れば後は売りに行く。
 繰り返していく日常、変わらない安息の日々。
 しかし、刺激が無いと言うのはある意味人々を怠惰にさせる。
 その為、年に一度楽しみがあった。
 それは雨の時期に訪れる‥‥勿論、彼等が雨の日だと予知出来る訳ではない。
 鳥が低く飛んだり、太陽に雲がかかったり‥‥
「じゃあ、これでいいかね」
 資金を集めた村長は口を開いた。
 祭りの始まり、肉を取り火を囲み‥‥舞い手が舞いを踊り豊穣を願う。
「勿論だぁ、楽しみだ」
 その中でも最も楽しみなのは、外から呼んだ開拓者の様々な冒険譚や技術である。
 子供たちにとっては憧れの存在、大人たちにとっては別の世界の話。
 だが、どちらも楽しみにしている事には変わりない。
「じゃあ、依頼してくるよ」


■参加者一覧
玖堂 真影(ia0490
22歳・女・陰
玖堂 柚李葉(ia0859
20歳・女・巫
夏 麗華(ia9430
27歳・女・泰
オラース・カノーヴァ(ib0141
29歳・男・魔
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
小隠峰 烏夜(ib1031
22歳・女・シ
琉宇(ib1119
12歳・男・吟
盾男(ib1622
23歳・男・サ


■リプレイ本文

●晴天なり
 数刻前の雨が嘘のように太陽が顔をだしている。
「よく、晴れましたね‥‥」
 眩しそうに太陽を見た佐伯 柚李葉(ia0859)は傍で同じく空を見上げる玖堂 真影(ia0490)に視線を移す。
「そうね、土砂降りだったから直ぐに晴れるとは思っていたけれど」
「これなら‥‥素晴らしい日になりえましょう」
 ジークリンデ(ib0258)が涼やかな声で告げ、のオラース・カノーヴァ(ib0141)は遠くへ視線を送った。
 準備も手伝おうかとニヤリ、と笑みを零す。
「じゃあ、僕はその横で歌を歌ってようかな」
 楽しみだね、と琉宇(ib1119)はリュートの弦を確かめた。
「のんびりしたのもいいもんですねえ。ただ自分の話聞いて開拓者への憧れとかなくなるかもしれませんね」
 それはそれで親御さんは喜ぶのかもしれませんが、と苦笑し口にしたのは盾男(ib1622
 準備は万全、意表をついた見世物になる事だろう。
「大道芸人になりたいですよ」
 呟いたのは小隠峰 烏夜(ib1031)だ、彼女の芸人魂‥‥全天儀の大道芸人の商売敵か?
「一緒に頑張りましょうね、小隠峰様」
 夏 麗華(ia9430)は穏やかな笑みで口にした、芸人魂、気付いているのかは未知数だ。
 そのまま歩きだした彼女にぶつかる、一つの影。
「あら、大丈夫ですか?」
 影はどうやら子供のようで、村の子供だろうかと首を傾げればその子供が口を開いた。
「開拓者の人?」
 外見が同じくらいの、琉宇が近づいて頷いて見せる。
「うん、僕は琉宇‥‥吟遊詩人だよ」
 依頼を受けたと聞けば、子供の表情は輝いた。
「本物か?本物の開拓者か?!」
「そうよ、依頼を受けたの」
 玖堂の返事を聞けばすぐさま、開拓者が来た、と大声をあげる子供に参ったなぁとカノーヴァが全く参って無い様子で呟いた。
「皆さん、落ち着いて下さい‥‥ちゃんと後でいきますから、ね?」
 佐伯の言葉に子供の中でも年長だろう、少年が頷いた。
「いやはや、元気ですねぇ」
 盾男の呟きに、元気だけじゃないと騒ぎだす子供達、剣は無いのかという声には頷いて。
「ええ、盾で戦うんです」
 地味だ、と口にする子供や、殴るのが浪漫だよな、と知ったかぶりの子供まで。
「ところで、村長さんはいらっしゃいますか?」
 夏の言葉に、子供達は顔を見合わせついて来いとばかりに胸を張る。
 これなら何とか村へ行けそうだと開拓者達は顔を見合わせた、ところでジークリンデが声を上げた。
「違和感を感じますね」
 視線の先には明らかに色の変わった場所‥‥所謂、落とし穴。
「ちょっと、此処通ってみて?」
 たじろぐ子供‥‥発した玖堂はと言うと、金色の瞳を悪戯っぽく細めている。
 出来るわよね、と笑顔で畳みかける彼女に、佐伯がまあまあと笑みを零した。
「真影さん、その辺りで―――」
 許してあげましょう、と苦笑する。
「ご、ごめんなさーい!」
「うわぁ、すごーい。この中に落としてあげようか?」
 琉宇が土を払いのけると、中には蛇がぎっしり。
「この子達もこうして、生きているのですから‥‥こんなことをしてはいけませんよ」
 夏がやっと出られたとばかりに這い出す蛇を見、ややキツイ口調で諭す。
「これは、大変な作業で」
 盾男が困ったものだ、と肩をすくめる‥‥それにしても、とジークリンデがため息をついた。
「とても、気合の入った歓迎ですね」
「飛び込むべきであります!」
 大道芸人として、と小隠峰の口にした言葉にそれはいけませんと、夏が青ざめた。

●祭りの準備を
 ようやく、村長の元へついた開拓者達、老人は年月の刻まれた顔に柔和な笑みを浮かべ、よく来たと声をかけた。
「手伝う事はあるだろうか?」
「あ、こちらをお願いします!」
 カノーヴァの言葉に、人手が足りないのだと、鹿を捌いていた女が声をあげた。
「調理道具をお借りしてもよろしいですか?」
 夏の言葉に首をかしげつつも首肯する女、笑みを浮かべて夏は口にする。
「泰料理をふるまおうと思いましたので」
 村で生活している彼等には泰料理など、口にした事が無い。
 楽しみだと笑みを浮かべた女に夏も微笑んだ。
「じゃあ、私は酒盛り用のおつまみをつくるわね」
「お手伝いします!」
 玖堂の言葉に、大切な方の姉と慕う佐伯も続いた。
 長閑な雰囲気を見ながら、ジークリンデは懐かしむようにその氷蒼色の瞳を細める。
「開拓者にならなければ‥‥こうして外の世界に触れることもなく一生を終えていたのかもしれません」
 魔術の才をもつ彼女は、魔術師の家系で育った‥‥開拓者と言う道が最善なのか今は分からないけれど。
「そうですねぇ、色々過去を思うと苦いものもありますが」
 盾男、その視線の先にあるのは故郷の地か。
「過去‥‥」
 仕える主は無く、開拓者として生きる‥‥小隠峰の視線は空を飛ぶ烏へ。
「おーい、手伝ってくれ!」
 櫓を立てていた男衆、開拓者達に声をかける‥‥それぞれに3名は勿論と頷いて手伝い始めた。
 少し離れたところでは琉宇が子供達と遊んでいる。
「あ、落とし穴の蛇が怒ってるよ?今夜現れるって」
 うっそだーと言いつつ、子供の顔は青かった。

●豊穣祈願
 夜を剥ぐ光と熱を持ち、赤々と火は燃える‥‥玖堂と佐伯の作ったおつまみに、夏の秦料理、カノーヴァと村人の作った肉料理。
 そして、開拓者達の冒険譚、大人も子供も好奇心は抑えられない。
「あたしは、石鏡の巫覡氏族『句倶理(ククリ)の民』の長の一族の出よ」
 口火を切ったのは玖堂、ククリ?と首を傾げた村人たちに文字を書いて説明する。
「句は時間や空間、目に見えざるもの、倶は物質、目に見えるもの、理はことわり、物事の決まり‥‥此れを守護する民、代々巫女や志士を輩出してきたんだけれど、私は陰陽師を選んだ、もう、皆大反対よ!」
 それはわかる、と村人たちは頷く。
 今までの常識を覆す事は、恐ろしい‥‥その常識が長く続けば続く程。
「でも、あたしには目標があった。それは、強くてイケメン。二枚目とも言うわね。その自我を持った人型式‥‥人妖の創成」
 故郷を追い出される事も考えたのだと、彼女は語る、だから一人でも生きていけるように開拓者になったのだと。
「そりゃぁ、親御さんの気持ちもわかるなぁ」
「過保護よ。で、父との大喧嘩は全治2ヶ月‥‥やっと許しを貰えて、今に至るわ」
「開拓者、やっぱいいなぁ」
 子供達も憧れるように呟く。
「ええ、そして私の目的は半分達成されてるの」
 そう言って彼女の手から飛び立つ黒の蝶、そして一瞬にして現れた彼女の人妖におおっと村人たちが湧いた。
「でも、真影さんが開拓者になったから‥‥こうして会えたのですから」
 佐伯が微笑み、続ける―――愛しい人は、今どうしているだろう。
「そういえば、贈り物が‥‥」
 彼女の術、因幡の白兎が木筒に入れてコッソリ隠した水を探し当てる。
 花弁を入れた水を氷霊結で凍らせるとお洒落な、細い氷柱の出来上がり。
「白兎は明音(あかね)って付けました。この子、少しの間しか姿を出せないですけど。精霊の白兎さんなんだそうです」
「お姉ちゃんは巫女さんなの?」
 少女の言葉に曖昧に頷き、佐伯は続けた。
「巫女ですが、神楽舞は取っていません‥‥旅一座の楽師で舞手ではありませんから」
 次は、精霊の歌の習得を目指しています、と彼女は微笑む。
「また‥‥歌が歌えるようになったら教えて欲しいな」
 約束、と微笑む少女に首肯する。

「神楽舞になるかはわからないけれど‥‥舞を披露するわ」
 豊穣祈願と玖堂が巫女袴を身につけブレスレット・ベル、扇子を持ち現れた。
 佐伯が哀桜笛で伴奏を始める、是非と乞われて彼女は櫓へ。
 艶然に、彼女は舞い始める‥‥揺らめく炎は殊更神秘的に見せた。
 術により蝶が舞い、小鳥が飛ぶ、七色の蝶と花弁が舞う、儚く高い佐伯の笛が舞に寄り添うように奏でられる。
 やがて舞は速く、それを追いかける笛の音、燃え盛る劫火のように激しく荒々しく、そして。
 大龍符が村人へ襲いかかる‥‥ように見せかけた大迫力の術。
 強い太めの音で奏でられた笛の音、最後に佐伯の方から爽やかな風が吹き、村人達は心地よさそうに目を細めた。

「では、次は俺が‥‥この前は占い関係の依頼をうけてな」
 こんなに大きなアヤカシが‥‥と彼がストーンウォールで巨石を生み出す。
「で、でけぇ!」
「大きさも勿論、頑丈で困った‥‥勿論、蛙シャーベットにしたがね」
 そのままブリザードストームで石の壁を破壊する‥‥それを見て琉宇が言った。
「オーラスさん、色々なところでシャーベット作ってるんだね!」
 注意、シャーベットはシャーベットでも食べられません。
「じゃあ、次は僕かな。鬼のアヤカシに攫われた女の子がいる。突貫したら乱戦、笛で挑発したら女の子も驚いちゃう。さぁどうしよう」
 謎かけのような言葉に子供も大人も首を傾げる‥‥鬼のアヤカシなら何とかなるんじゃないか、と口にした大人に琉宇は首を振る。
「それだと、乱戦になっちゃうね‥‥僕はリュートの弦を引っ張り上げて強く叩き付けるという特殊奏法。きみもやってみるかい?」
 そう言ってリュートを渡された子供がパチンと音を鳴らしてみる‥‥彼の言うとおり激しい音だが、けたたましくはない。
「弦を押さえる指を上から下に滑らせていくと音が高くなる。同じ音の2本の弦で交互にこれをやると‥‥不思議だね、どこまでも高い音に聴こえちゃう。空を飛んでいく感じだね。逆に短めに押さえて長めに滑らせていくと、今度はどんどん落ちていく感じだよ」
 何だかお化けでもでそう、と口にした少女に微笑みかけた。
「あはは、怖がらなくていいよ。音の手品だからね」
「吟遊詩人と言っても、様々ですなぁ」
 のんびりと口にした村長は此れは美味いと夏の料理を食べつつ、玖堂と佐伯の作ったおつまみも口に放り込む。

「さて今回の話はある開拓者のお話です。といってもワクワクするような冒険談ではありません」
 口を開いた盾男、ゆっくりと紡がれる言葉に村人達も耳を傾ける。
「彼は元々ジルべリア帝国の名家に生まれ暖かい家庭で育ち、日々騎士として成長していました。時に反乱軍・アヤカシ等を退治しながらそれなりに平穏に過ごしていた。その後更なる経験を積むべく辺境へ赴いたそうです」
 カッコイイと声を上げた少年に、苦笑めいた笑みを浮かべ続ける。
「数年来の部下や信頼する上官とともに出向いたその地はさほど危険でもない筈でした。しかし暫くして周到に用意された反乱軍の襲撃を受けそこは地獄へ変わりました。多くの者が倒れ壊滅的な被害を被ったそうです」
 渋面の大人達‥‥人同士で無くとも彼等もまた、動物を狩り肉を食う。
「折り重なる様に倒れた死体の山の中で生き残った彼は全てを捨て、一人の開拓者となったそうです。逃げたのか復讐する為なのか護るものを探してるのか等、彼が何故そんな道を選んだのかは不明です」
 語られる言葉は、一人の人間の歩いた軌跡‥‥恐らくそのまま歩き続けるだろうその人に言うのか、村長が口を開いた。
「それでも、生きておると信じたいの。生きる事に王道は無いが、道を見つける為には生きねばならん」
 老いぼれの言葉だ、と笑う村長に盾男も笑みを返す。
「つまらない話でしたね。お詫びに変わった戦い方をお見せしましょう」
 適当な物を投げて下さいと口にした彼に、恐る恐る投げ始める村人達。
「いけーっ!」
 子供達は率先して色々な物を投げつける、石や食べた後の骨。
 それを盾男が的確に弾いていく、常人以上の反射神経は直ぐに投げられる物を捉え、ガードではじいた。
 盾は滑るように動く、水が流れるように淀みなく。
「すげぇ‥‥俺達の攻撃が当たらないなんて、見直したぜ!」
 一丁前の言葉をかける少年に。
「それは光栄です」
 茶化したように彼も返答した。

「じゃあ、次は‥‥拙者達が」
 小隠峰と夏の瞳が重なる、彼女達の見世物は得物を使うという事で村人は危険の無いように一つにかたまっている。
 炎がゆらり、と夏の持つ飛苦無に反射した、夏の手が動き次の瞬間には『壱』と書かれた的へ吸い込まれるように飛苦無が刺さっていた。
 弐、参‥‥それを的や櫓を踏み台に、空中で回転したり捻りを入れたりと工夫を凝らしながら小隠峰が回収し、投げ返す。
「わぁっ!」
 思わず青ざめる村人、夏は武器を受け止め、軽く手の中で回すと慣れた様子で回収していった。
「ねぇちゃん達すげぇ!」
「拙者からもう一つ、披露したいものが」
 小さな池、その場所へ滑るように歩く小隠峰は仰々しく礼をする、大人も子供も食い入るように見つめている。
 十分に視線を集めた彼女は印を結ぶ、爆発する炎‥‥火遁。
 きゃぁ、と悲鳴が女たちから上がるが―――。
「どうかしました?」
 涼しい顔で濡れた髪を軽くはらい、岸に現れ小隠峰が烏を手に止まらせ問いかけた。

「‥‥一夜限りの夢の世界。今宵は現世の喧騒を忘れ、真夏の夜の夢をお楽しみ下さい」
 ジークリンデが口を開いた、空は良く晴れている、早朝の雨のお陰で湿度も高い。
 ストーンウォールで出来た一辺の開いた、五角形の石壁、水面に映る。
 内側にブリザードストームを叩きつけ冷たい風を、溜めていく‥‥攻撃によって消えていく石柱はカノーヴァが補っていく。
 夜の熱と冷えた空気が混じり、上へと上っては水を小さな雪へと変える。
 月明かりの中で微笑むジークリンデはさながら、妖精の女王。
「綺麗―――」
 うっとりと呟く少女、その少女に微笑みジークリンデはシャラン、と涼しげな音を鳴らした‥‥ブレスレット・ベルだ。
 琉宇がリュートを鳴らす。


 吟遊詩人は戦えない

 武器も魔法も使えない
 開拓者なのに何でだろう
 楽器を握って考える

 でもほら
 音を奏でてみよう
 他の誰にも真似のできない
 不思議なことができるよね

 開拓者でなくてもできること
 志体がなくてもできること
 それをみんなが感じてくれたら
 僕は嬉しいな
 友達になれるよね

 だからみんなはここにいる


 戦いは苦手だから、と笑う琉宇‥‥志体がなくても、と呟いた男がいた。
「志体があっても無くても、こうして素敵な人はいるものね」
 そっと寄り添うのは彼の妻だろうか?
 当たり前の幸せが、希薄な現実の中で愛しく思えた。

●幕引き
 真夏の夜の夢、妖精に浮かされたような夢心地は喜劇で終幕する。
「開拓者だからと言って心は何にも変わらない。手助けしたい子の悩み一つにだって、上手く行かないこともあるけど。だから、背一杯楽しんで悩んで進もうって」
 楽しい時間はあっという間に過ぎる‥‥日常という非日常へ人は戻っていく。
「また来いよな!」
 こら、と怒られる少年に開拓者達は苦笑する。
 遠くなる開拓者達の背を見送り、彼等は理解する‥‥彼等もまた、人だと。
 悩み、苦しむ人だと―――だから、密やかに願う。
 ずっと危険にさらされる彼等が、自分の道を歩き続けることを。