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■オープニング本文 ●オープニング 天儀暦1009年12月末に蜂起したコンラート・ヴァイツァウ率いる反乱軍は、オリジナルアーマーの存在もあって、ジルベリア南部の広い地域を支配下に置いていた。 しかし、首都ジェレゾの大帝の居城スィーラ城に届く報告は、味方の劣勢を伝えるものばかりではなかった。だが、それが帝国にとって有意義な報告かと言えば‥‥ この一月、反乱軍と討伐軍は大きな戦闘を行っていない。だからその結果の不利はないが、大帝カラドルフの元にグレフスカス辺境伯が届ける報告には、南部のアヤカシ被害の前例ない増加も含まれていた。しかもこれらの被害はコンラートの支配地域に多く、合わせて入ってくる間諜からの報告には、コンラートの対処が場当たり的で被害を拡大させていることも添えられている。 常なら大帝自ら大軍を率いて出陣するところだが、流石に荒天続きのこの厳寒の季節に軍勢を整えるのは並大抵のことではなく、未だ辺境伯が討伐軍の指揮官だ。 「対策の責任者はこの通りに。必要な人員は、それぞれの裁量で手配せよ」 いつ自ら動くかは明らかにせず、大帝が署名入りの書類を文官達に手渡した。 討伐軍への援軍手配、物資輸送、反乱軍の情報収集に、もちろんアヤカシ退治。それらの責任者とされた人々が、動き出すのもすぐのことだろう。 ●ネームレス 忘れられた場所、辺境にその村は位置していた。 禁教令により取り壊された教会は全て更地に還り、魔術師の末裔である彼等は細々と農作物を作り、石を削っては売る生活をしている。 冷遇を受ける彼らであったが、辺境地の為搾取出来る物も無く脅威になる数でもない。 その為、放っておかれていた‥‥否、忘れ去られているのが正しい。 だが、数多の逆境と飽くなき探求により養われた精神力は鋼のように堅く水面下で蠢いていた。 細々と願いを込めて作るのは古来より伝わる魔除け‥‥教義の大半は失われているが、人の思いは強い。 「このお守りを、コンラートさまへ!」 彼らもまた、今回の決起に関しては密やかな願いを込めていた。 神教会復興、の文字。 しかし、そんな彼らに立ちはだかるのは更なる逆境。 「この―――軟弱モノがぁ!」 響き渡る怒声、叩きつけられた拳の下は軽くへこんでいる。 突如、現れた人物は輝く肌に強靭な肉体を持った―――そう、アニキだった。 ●ストーリー 「と、言う訳なんです‥‥私達も抵抗を試みました、しかし私達で敵う相手では無かった」 辺境の村人だと言う肩幅の広い男性は沈痛の面持ちで首を横に振った。 「最も、逃げ足の速い私だけが生き残れたんです―――志体を持っている者も数名いますが」 生きているのか、死んでいるのかもわからないと彼は話す。 「人間なのか、アヤカシなのかはわかりません‥‥ですが、強靭な肉体と十六に分かれた腹筋を持っている事は確か。どうか、助けてください‥‥出来るのならば、仇を討って欲しい」 彼の頭の中では死んでいる事になっているようだが、真摯な瞳は受付員をまっすぐに捉えていた。 何故、焼きついたのが腹筋なのか知る由も無いが必死そうではある。 「健全な精神は健全な肉体に宿ると申しますが‥‥あれは、いえ。地図は書きました―――私にはやるべき事もあるので離れられませんが、来ていただければある程度はお話出来ると思います」 そう言って、目の前の男性は静かに頭を下げるのだった。 |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
ミル ユーリア(ia1088)
17歳・女・泰
クロウ(ia1278)
15歳・男・陰
景倉 恭冶(ia6030)
20歳・男・サ
九条 乙女(ia6990)
12歳・男・志
守紗 刄久郎(ia9521)
25歳・男・サ
サーシャ(ia9980)
16歳・女・騎
エアベルン・アーサー(ia9990)
32歳・男・騎 |
■リプレイ本文 ●目の毒 この奇妙なアヤカシの出現に動いた8名の開拓者達。 そのうちの一人である、梢・飛鈴(ia0034)は龍の上でややあきれがちに口を開いた。 「只の変態なのか、アヤカシなのか分からんアルなぁ―――第一、教会復興と軟弱に関係が無い」 ご尤もな言葉に頷いたのはミル ユーリア(ia1088)である。 梢と同じくらいの速度で飛びながら村の近くまで来ると今回の獲物、十六の腹筋を持つアニキを探す。 「えーと‥‥なんかアレだからあたし隠れてていい?」 アニキを見つけてしまうと、その視覚的被害に思わず及び腰‥‥脳が思わず記憶を拒否するものだから数秒、見ていたと思う。 「安心するネ、ヴォトカ持ってるのもいるシ」 もふら面の奥で目を細めた梢は、龍を旋回させて獲物から離れた場所に着地する。 「ヴォトカで消毒しても、精神的にキそうだわぁ―――」 ユーリアはその言葉に返すと、同じく龍を着地させる‥‥紫の瞳に映るのはボロキレのようになった村人と思われる人々。 「襲ってきた奴はどんな奴アルか?」 先に手当てを始めた梢がテキパキと治療しながら問いかけた。 「‥‥きん、に、く」 荒い吐息と共に紡ぎだされる弱弱しい声、ガツンと音を立てて村人の顔が地面に叩きつけられる。 「うわぁ、痛そう‥‥と言うか、筋肉しか特徴ないって事かしら?」 「お守りを、取り、返して―――」 岩の鎧をまとった女性が大きく息を吐いて二人に告げる。 「あ、無事ですよ、私‥‥ちょっと、ストーンアーマーが重くて」 「コイツ、ワザとアル」 「出番獲得の為って感じね‥‥とりあえず、お守りって取り返したら渡す訳?」 冷静な梢とユーリア二人に女性は半ば涙を流しながら言った―――シリアスを出しているようである。 「当然よ、作るの大変なんだもの‥‥と、抵抗と防御を上げるお守りだからただの筋肉がスゴイ筋肉になっているわ」 「どうでもいいアル」 ご尤もな事を呟きながら、梢は肩をすくめるのだった。 ●依頼人の災難 「十六の腹筋、どうやったらそうなるんだろう‥‥」 そう言って、クロウ(ia1278)は自分の腹を見る―――どちらかと言うと痩せ過ぎを思わせる彼は筋肉以前に脂肪をつけてもらいたいものである、羨ましい‥‥ その横で厳しい表情のまま目頭を強く抑え、男の苦悩を存分に出しているのはエアベルン・アーサー(ia9990) 「腹筋十六分割の人型の何か‥‥いつからジルベリアにはそのような奇怪なモノが出るようになってしまったのだ‥‥」 彼とは正反対に嬉々として言ったのは景倉 恭冶(ia6030)だ。 「さぁすが、世界は広いやね。面白そうな奴がいるじゃないか」 「今回もよろしくなー!‥‥で、アニキってなんだ?」 鼻から赤い液体を出している九条 乙女(ia6990)の頭を軽く撫でて、守紗 刄久郎(ia9521)は全員に問いかける。 「アニキとはとんでもない筋肉を搭載した、男性ですぞ!」 グッ、と拳を握りしめた九条が言い切る。 「毎度の事ながらアヤカシってのは変な奴ばっかだなー」 それを聞いた守紗が呟く、九条の乗っていく筈の馬には大量の荷物が積まれている‥‥コレは一体。 「色々と準備があるので、コレにて御免!」 何やら不穏な言葉を発しつつ、お馬さん、行くですぞと目的地へと向かう九条。 「これは‥‥いえ」 九条の荷物から転げ落ちた一冊の書物、それを拾い上げたサーシャ(ia9980)は何も言わず、荷物へと放り込む。 男性同士が濃厚に絡み合った書物、それはサーシャの心の中に片付けられたのだった。 「―――では、取り調べを始めます」 何やらやり取りを見て不安そうな依頼人の前に立ったサーシャは、何処からともなく丼を取り出す。 「件の存在はどういう動きを?」 そう言いながら、彼女は丼ものを食べる―――アレ? 「美味しいです‥‥ああ、ただの非常食ですよ。気にせず吐いて下さい」 依頼人の視線に気づき、自白を促す‥‥その横に立つのは守紗。 手には狐のしっぽ、もふっている。 アーサーも手帳を取り出して構えた‥‥目は真剣。 クロウは符を巨大なゴキブリへと変化させる‥‥何の尋問だろうか? 「まあ、程々にな」 仕事熱心だなーと景倉が頷きつつ、頑張れと依頼人の肩を叩いた。 救いの視線を向ける依頼人、しかし景倉は一撃離脱、及び合掌‥‥その場に崩れ落ちた依頼人は精根尽き果て真っ白になっていたのだった。 ●視覚的毒VS開拓者 次にその場に訪れたのは九条、遠目から目的の村を見ては一人呟く。 「ふむ、風に訊く、素晴らしい筋肉ですな」 何処となく、目が輝いている気がする―――そして。 敵が振り返った、見つめあう両者‥‥ゆっくりとポーズを取る、アニキ。 俗に言うポージングという奴である。 「拙い、これは自分の士気を高める為の補助動作!」 何やら弁舌をふるう村人一人、それを梢とユーリアが二人で黙らせる。 「黙ってるアル」 「鍛えてる人って素敵だと思うけど‥‥正直微妙だわ、と言うより、断固拒絶したいわ」 とりあえず、合流する女性3名―――続いて降りて来たのは5名の開拓者。 尋問を終えたらしく、守紗などは軽く手を上げる。 「おお、その様子だと話は聞けたようですな‥‥筋肉について」 あながち間違ってない言葉に微妙に笑いながら景倉は続けた。 「いや、まあ‥‥アヤカシっぽいって話だけどな。正直あの様子じゃ分からんね」 「と、言うより最後の方は筋肉筋肉、そしてゴキブリゴキブリと精根尽き果て‥‥」 ゴキブリ側のトラウマを植えつけた張本人、クロウが涼しい顔で告げた。 「しかし、話が本当か確かめなければならないな」 厳しい顔でアーサーが告げる、その視線の先にはひたすらポージングを続けるアニキ。 アニキを見た瞬間、凛々しい金の眉が跳ね上がった。 「まだまだ寒さの厳しいこの時にその格好というのは感服! しかし公共の場にそれでは破廉恥極まる! 恥を知れ!」 ビシッと指さされたアニキは徐々に一枚の砦、ビキニパンツを脱いでいく‥‥アレ? すかさず守紗が九条の眼を隠す、ぐっじょぶ。 「あの筋肉はアヤカシ決定アル」 「‥‥これはひどい。いろんな意味で」 梢の後に続き、クロウが全力後退、そして黙っていたサーシャが穏やかな微笑みを浮かべて言った。 「あらあら‥‥うふふ、いけませんね」 糸目の奥の瞳はどんな感情を湛えているのかは定かでないが、アニキは恐らく敵にしてはいけない人物を敵にしてしまった。 「寧ろ、人間捨ててるんじゃないか?」 「刄久郎殿、離して下され!」 以下、長いやり取りが続くのだが‥‥危ない感じの言葉も含まれているので割愛。 「じゃ‥‥とりあえず、ご自慢の筋肉を見せてもらおうか、倒れた後で!」 景倉が妙な気合と共に地断撃を放つ。 「跡形も無く散って頂けると幸いなのですが‥‥」 サーシャが厳しい言葉を呟きながら右に左にと変則的な動きをする。 スキル、スタッキングを使用し間合いに踏み込み、両者はガッチリと組み合う。 「筋肉型といえばポーズと共に光線を放つアヤカシも存在する様ですが、放たれると面倒なので邪魔させていただきます」 それを補助するように梢とユーリアが動き、アニキの背後から空気撃、そして気功波を叩きこんだ。 刹那、アニキの足の筋肉が膨れ上がる‥‥瞬発的に力を高めたアニキはサーシャと組み合ったままその身体を動かす。 被弾するが、その巨体が体勢を崩す事は無かった。 「クッ、あの筋肉の膨らみ方―――羨まし、じゃないおかしいですな」 「ああ、おかしい‥‥だが、成敗するしかないのだ」 九条とアーサーが呟き、両端に散り仕掛ける―――そのままアニキの足下へ滑り込んだ九条は低い体勢から股間を攻撃。 「必殺『双玉砕撃!』筋肉の鎧を粉砕する技ですぞ!」 思わず男性陣、内股になる―――痛そうと誰かが呟いた。 アーサーの手に握られているのは事細やかに筋肉について書かれたメモ。 短時間での調査を可能にしたのはただならぬ気力のお陰かもしれない。 クロウの手から呪縛符が放たれ、ゴキブリの大群と変化する。 「クッ‥‥流石に、強い」 サーシャが呟き、投げに持ち込もうとするが思ったより重量があり、斜め後ろへ足を置くと同時に力を抜いて受け流す。 たたらを踏んだアニキ、大きく足を踏み出すと棍棒のような腕をカウンターのように叩きつけた。 二度目の攻撃に移ろうとしたアニキを守紗が咆哮で引きとめる。 「あんたの相手はこっちだ!」 アニキが引き付けられ、暫し見つめあう‥‥ 「まだまだ、鍛え方が足りん! 筋肉の同志よ!」 ポージングと共に吐きだされた言葉、共にアニキが疾走する。 「え、ちょっ‥‥この展開なに?! 来るな、消えてくれ!」 思わず放つ両断剣―――切りつけたクレイモアに血は付着していない。 傷口がポッカリと開いているのみ。 「こ、これはまっちょまいせん殿と刄久郎殿のフラグ‥‥」 ドバドバ鼻血を流しながら九条が呟く、軽く致死量のような気がするがそれはのーぷろぶれむである。 「とりあえず、そのフラグは止めておいてやれ、恐らく不本意だ」 ポンッと九条の肩を叩いて景倉が言い、説教を始めるアニキの前に躍り出た。 「全く‥‥柔軟だといってほしいもんやね。実際にガチガチに堅いよりかは折れにくいもん‥‥すまん、てめぇの姿で心が折れそうだ」 咆哮で引き付けたものの、精神的に来たのか気分的吐血。 だが、めげずに地断撃を放つ‥‥ちょっと近づくのは遠慮したかった。 「取り合えずアヤカシのようですし、あの筋肉を真っ二つに―――」 クロウが呟き、斬撃符を仕掛けようとするが手が止まる。 「これは‥‥ワタシの更生を待っている若者よ、暫し待たれよ! その肉体を筋肉の鎧で包み込もうではないかっ!」 「意味が分からんネ、この筋肉‥‥ちょこまかと動かれると鬱陶しいアル」 梢が呟いて苦無を放つ―――疾走するアニキは笑顔を向けると敢えて受けてみせた。 クロウの後ろに陣取ったユーリアが気功波を放つ、盾にしている感があるが気のせいだと‥‥思う。 「キモッ! ‥‥ちょ、来ないでくれよ!」 白鞘に付着するスッパイ臭い‥‥汗とオイルだろうか? 一気に、30mは離れたと思われるクロウに熱い抱擁を放たんとアニキが詰め寄る。 「さあ、観念して美しき肉体の海に沈みこみたまえ!」 「全力拒絶する!」 思いきり放つのは斬撃符、鳥の姿をしたシキは切り裂いていくが目の前のアニキは歩み続ける。 お約束だ。 「沈み込んでる間にボコればいいアル」 手を叩いていいアイデアとばかりに梢が言いきった。 そして実行に移すのか、飛手の汚れを軽く拭って地を蹴る。 「‥‥あー、俺も流石にアレにハグしたくないし、頑張れ」 ハグ魔の守紗であるが、流石にアニキに抱きつく趣味は無いらしい―――全身毛皮のアニキだったらどうなのだろうか? ●アニキのホンキ アニキの背後ではアーサーが背面の筋肉をメモする―――雰囲気が真面目なので誰も突っ込めない。 「背筋の鍛え方がまだまだ足りぬな! 腹筋ばかりにこだわってバランスを崩すようではまだまだ未熟!」 挑発だ‥‥筋肉を求めし者として、アーサーは純粋に言っていた。 直ぐ様、アニキの背筋が盛り上がる‥‥が、アーサーはアニキに止めを刺した。 「スキルに頼るような軟弱な筋肉に用は無い!」 これはキツイ‥‥流石のアニキも振り返る。 目が本気だ―――咆哮と共に、最後の砦、ビキニパンツが紐パン状へ進化する。 そのまま膨れ上がる筋肉‥‥何となく嫌な感じである。 と言うか見たくない、とても見たくない。 「そろそろ片付けるか。視覚的毒で死にそうやね、って言うかこれ以上は流石に見てられない」 景倉が呟く横で勿体無いと九条が呟く。 「初めっからそうして下さいぃ!」 クロウの叫びが聞こえるが、アーサーが足を踏み出した。 「その肉体美を追求するまでは手が出せなかった―――騎士道としても不意打ちは良くない」 「フイウチ、ヨクナイ‥‥肉体言語で語った結果、速やかに排除して下さいとの事でした」 サーシャが続けるが、何故カタコトなのだろうか‥‥肉体言語って何? と言うツッコミは誰もしない。 さて、と呟いた梢は空気撃を叩きこむ、続いて骨法起承拳のコンボ‥‥気功波でユーリアも遠くから攻撃する、遠くから。 「二度と出てくんじゃないわよ、視覚的汚物!」 軽く精神も抉っておく。 アーサーがスタッキングで近づき、弱いと見た背筋に一撃を加える。 咄嗟に振り向いて素早い蹴りを放つアニキ、そのまま流れるようにサーシャにアッパーを食らわせようとして、停止。 アニキの視線の先には豊かな胸‥‥それに気づいた開拓者、一瞬の隙を逃さない。 「平和の為に消えて無くなれ!」 景倉が弐連撃を放つ―――わき腹目掛けてザックリと。 「淑女ならば‥‥一撃必殺!」 タックルと共にアニキの顔が至福に包まれ、口を開ける―――開拓者一同、ドン引き。 ただ単に食べよううとしただけだったのだが、アヤカシの心情など知る由も無い。 崩れ落ちるアニキ、確実に止めを刺そうとした開拓者をカッと目を開けて一度だけ見たが、それ以降動く事は無かった。 ●嗚呼、アニキよ永遠に 生存者5名の救助を終えた開拓者達は簡素な墓を建て、村人の労いに返答を返した。 「今度こそ、あんたらのお守りと願いが無事届くといいやね」 景倉の言葉に村人は大きく頷く。 「同志よ、永遠に‥‥いやー、あの腹筋はちょっとした敗北感があるな!」 サーベルの汚れを拭ったアーサーが笑顔と共に言いきった。 若干、不穏当な言葉が含まれているが彼なりの達成感なのだろう。 「背、けっこう高いと思ってたけど‥‥上には上がいるんだなぁ」 クロウがそういえばと周囲を見回して呟く。 「しかし、こんなんに襲われて昇天っつーのも報われんアルなあ。カミサマっのがいたら何て言うやら」 梢の呟きに笑みを浮かべて村人が言った。 「全てご存知です」 「それにしても‥‥何故こんなものがいきなり現れたのでしょうか?」 サーシャの言葉に、九条をハグりながら守紗が口を開く。 「まあ、アヤカシにマトモな奴はいないと言う事だなー」 「悪・斬・滅ですな‥‥」 涎を流しながら九条が言うが、ツッコミどころ満載である。 「濃かったわね‥‥二度と遭いたくないわー」 ユーリアの呟きに大きく頷く開拓者。 「まあ、筋肉は素晴らしかったが‥‥俺も負けてられないな!」 ガッハッハッと豪快に笑い、アーサーはメモった筋肉についての研究を読み返すのだった。 |