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■オープニング本文 ●困窮せし、闇の者 むぅ‥‥ 薄暗い掘立小屋の中、男は唸る。 この男、先ほど妻に逃げられたばかり。 頬には見事な紅葉が咲いていた。 「アンタには華が無いんだよ!」 もう、愛想が尽きたと叩きつけるように言って出て行った―――開かれたままの立てつけの悪い扉からはひゅぅひゅぅと風が吹き込み、男の体を冷やしていく。 「お頭!」 「ん、なんだ、手下エー」 「いや、俺には不筒化 権瑞と言う名が―――」 「縁起悪いからいいだろう、エーで」 投げやりな言葉が、男の受けた傷を現していた。 几帳面エーの心にグサリと刺さる言葉の棘、俺は繊細なのさと乾いた声を上げた。 このままではグレてしまう‥‥楽天家ビーは思う。 そうなってしまえば、この『ムサ苦しい華のない』盗賊団は壊滅。 「(それでもいいかも‥‥綺麗な嫁さんもらって、やっぱり子供は二人、いや、三人‥‥)」 ブツブツとつぶやき続けるビー、それを尻目に、一途シーは難しい顔をしていた。 恐らく、このままでは解散してしまう。 世知辛い世の中、凍えそうになっていた自分を拾ってくれたのは他でもならぬ、頭領であった。 一から積み上げてきた、歴史。 それが盗賊団という形であれども、シーにとっては帰るべき場所だった。 ―――全員行動であれど。 考え込む盗賊。 一人の頭領と、そして、手下三人。 スッと、手を挙げたのは今まで口を噤んだままの人見知りディーである。 「華を用意すればいいのでは?」 自分が欲しいままにした四対の瞳。 名案だと各々頷く盗賊達。 そんな中、ピュィーっと鳥笛の音がする、警戒の合図。 「お頭ァ、村の者が来たようです!」 ●僕の変わった日常 やっぱり変だよなぁと首を傾げて穴の開く程依頼文を見つめる受付員。 疲れ目か、と目をこすってもう一度達筆な文字を追う。 「急募、ふらわぁな開拓者募集。簡単で稼げるお仕事です、今なら年会費無料!」 思わず口にして冷たい視線を浴びる受付員、不遇であるが確実に彼は稼げるの文字を射抜いていた。 「その紙、どうしたの?」 冴えない顔だと付け足したのは彼の先輩、一つ首を捻って彼は口を開いた。 「先輩、僕の家に直接来たんですよ『頼れる開拓者ギルド員のお兄さんへ』って」 きっと可愛い子ですねと、呟いた受付員の頭をねこのてが叩く。 「それは無いわ、で、場所は?」 「ええっと―――」 受付員の言葉に、上司が頷く。 「その依頼、貼っちゃだめよ‥‥盗賊団からのものだから」 「盗賊団―――?」 何故そうなるんだと首を傾げた受付員を上司が見下ろす。 「隣接する村の住人から、連絡が来てるの‥‥盗賊団を捕獲してほしいって」 「討伐じゃなくて、ですか?」 「ええ、何してもいいけど生きて返してほしいらしいわ‥‥特に、頭領はね」 首を傾げた受付員をよそに、彼の上司は依頼内容を纏めていく。 「人数は五名、シノビ一人に、サムライ一人に志士が三人‥‥」 「そこまでわかってるんですか!」 下調べ完璧だと受付員は冷や汗を流す。 顔をあげた上司はやや濃く塗った紅の引かれた唇を開く。 「そう、だって―――依頼人は頭領の妻ですもの」 |
■参加者一覧
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
柄土 神威(ia0633)
24歳・女・泰
江崎・美鈴(ia0838)
17歳・女・泰
巳斗(ia0966)
14歳・男・志
四方山 連徳(ia1719)
17歳・女・陰
水月(ia2566)
10歳・女・吟
夜魅(ia5378)
16歳・女・シ
太刀花(ia6079)
25歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●求む、情報! 「此処か」 そう言って手元の地図を見たのは太刀花(ia6079) 彼はクイッと眼鏡をあげるとその村を観察する。 「意外と大きな村ですね」 そう言って呟いたのは巫 神威(ia0633)だ。 「ふらわあな方、募集とは、変わったと言うか?‥‥みなさん、やる気満々ですねえ」 もう一枚、盗賊団からの依頼が書かれた依頼書を見ながら橘 琉璃(ia0472)が呟いた。 とは言え、しっかり手に持っているのは赤い縄。 似合うかどうかは別として、華やかにはなるだろう。 水月(ia2566)が何度か小さな手に持ったお弁当を確かめる。 「(喜んでいただけるでしょうか‥‥)」 精一杯作ったお弁当は少々崩れているが、そこが手作りの醍醐味。 「大丈夫ですよ」 そう口を開いたのは巳斗(ia0966) どこからどう見ても可憐な少女ではあるが、男である。 「巳斗、女装が好きなんだな」 江崎・美鈴(ia0838)は可愛いなぁなんて思いつつ、巳斗へ視線を向ける。 「(抱きしめたいけど‥‥うん、依頼が終わってからだな)」 内心、ぐっと拳を握り締めている彼女の横で、巳斗はとんでもないと言いたげに首を横に振った。 「場所がわかりました」 進んで偵察に向かっていた夜魅(ia5378)が冷静な声で告げる。 少ない情報を頼りに、家を突き止めたらしい‥‥ちなみに、先ほどから5分と経っていない。 「では、行くでござる!」 四方山 連徳(ia1719)はそう口にすると、ガシャガシャと金属がこすれる音を立てながらたのもーと叫びつつ村の中へ入っていった。 「素早いですね、負けてはいられません」 続いてダッシュする夜魅。 見た目は大和撫子‥‥否、天儀撫子ではあるがその心には熱いものを秘めているようだ。 兎も角、ふらわぁな盗賊団を壊滅させる為、開拓者達は依頼人の元へと足を運んだのである。 ●その女、ヤマンバの如し シャーコ、シャーコ‥‥ 先ほどから続く、刃物を研ぐ音。 時折その女性は刃を見てはニヤリと笑う―――身の危険を感じながら口火を切ったのは巫だ。 面倒見の良いお姉さんの実力発揮である。 「あの、依頼についてなのですが」 その言葉に続き、素敵眼鏡、太刀花が口を開く。 「敵の戦闘法について教えていただけますか?」 キランと光る眼鏡、そしてキランと光る女性の刃物。 「心眼でさっさと見つけて、隙をついて逃走って感じかしら‥‥ああ、でも、開拓者のみんななら大丈夫じゃない?」 ドジだし、と言うツッコミが入る。 「頭領ってどんな奴だ?」 黙っていた江崎が巳斗の後ろから顔を出して口を開く。 「そうね、ヘタレ」 にべもない。 「あの‥‥へたれって、何、ですか?」 「ヘタレと言うのは、ヘタって体が柔らかく、グニャグニャと動く人間でござる!」 四方山が水月の疑問に誤解を植え付ける。 「そうですか‥‥凄いですね」 あっさりと信じた水月、純粋な緑玉の瞳が輝いている。 それに苦笑しつつ、巫がまあまあと口を開いた。 「それは、出会ってから確かめる事にしませんか?」 そして、常識人の巳斗がさらに続ける―――苦労性なのか、それとも面倒見がいいのか。 それは御想像にお任せである。 「アジトへ近付く者が村人以外と分かると、攻撃を仕掛けて来ますか?」 「ええ、仕掛けてきます。村人の場合は逃げますが」 「特技はきっと、逃げ足でござるね!」 うんうんと頷く四方山、これは矯正が必要ですねと橘が呟く。 巳斗が頷いて聞きつつ、次の疑問をぶつける。 「なぜ旦那様の盗賊団を壊滅させたいのですか?」 しん、と静まる屋内。 「‥‥旦那の腕が悪いっていうのもあるけれど、村長、私の父さんが死んだからそろそろ後をついで村を守ってもらわないと、と思ってね」 「お父様が、ですか―――すみません」 変な事を聞いてしまってと謝罪する巫、そして父とは複雑な関係をもつ太刀花が微妙な表情を宿らせる。 「義賊なんて言っても、所詮は盗賊。隙を見て、傷つけ、奪うのは変わりない。早く目を覚ましてもらおうと色々したのだけれど」 「例えば?」 夜魅の言葉に、依頼人はスラスラと数々の拷問、もとい武勇伝を上げていく。 「縛りは欠かせないと思いますが」 縛りマニア、橘‥‥その会話に他の開拓者達、思わず苦笑。 キョトンとして周囲を見る水月の耳をそっと、巳斗が押さえた。 ちなみに江崎は既に耳を押さえている。 「では、生け捕りと言うのは村長の後を継いでもらう為、と言うので構いませんね?」 太刀花の言葉に依頼人は大きく頷いた。 「よろしくお願いします、せめて、盗賊稼業から足を洗ってくれるように」 「よしわかったなんとかしよう!罪を憎んで人を憎まず!だ」 グッと拳を握って言いきった江崎に、他の開拓者達も大きく頷いた。 ●ふらわぁ開拓者襲来 「この辺りでしょうか」 巫が周囲を見ながら呟く。 「そのようですね、心眼を‥‥」 そう言って地図を確認、次に周囲を確認しようとした巳斗があれ、と首をかしげる。 「すみません、活性化するのを忘れました」 申し訳なさそうに視線を伏せる様は非常に愛らしい。 「そんな巳斗も可愛いっ!」 江崎、思わず抱きつく‥‥それを見ながら、相変わらず仲がよいですねと巫、そして水月もコクコクと頷く。 「本当、皆さん元気ですねぇ」 今にもお茶を飲みだしそうな橘―――否、彼は酒豪の為お酒であろう。 「さて、あんな依頼書で釣られたと思われるのは癪ですが」 いつの間にか、ふらわぁな開拓者募集の紙を持っていた太刀花が口を開いた。 「では、行きましょうか―――」 夜魅が呟き、地面を音もなく蹴った。 「よし、弄りと同時にタンマリため込んだ財宝も貰っていくでござるー!」 四方山がタダならぬ意欲を見せ、遠目に見える地図へと駆けだした。 「あっ‥‥」 水月がちょこちょこと歩く中、そっと巫が手を差し出す。 「一緒に行きましょうか」 それに頷き、水月はその手を取った。 「失礼します」 一番先に小屋へ向かった夜魅、彼女の隣を一陣の風が通り過ぎる。 「仕留めそこなったか!」 反射的に交わした夜魅は思考を巡らせる‥‥得物を抜くのがいいか、それとも害がない事を告げるべきか。 「待って下さい、私達は依頼を受けた開拓者で!」 「ふらわぁな開拓者募集を見てきたでござるよ!」 続いて到着した四方山、後から続いてやって来た太刀花は依頼書を見せる。 「ふむ、お頭の字ですね‥‥お頭、開拓者達が来たようです!」 それを検分する盗賊の一人、集まった全員を見、心眼で念入りに人数を確認してから口を開いた。 「おお、シー、御苦労‥‥来てくれたか!」 現れたのはゴツイ男、お頭と呼ばれて出てきたのだから彼が盗賊頭なのだろうが、華はない。 『(確かに、地味だ‥‥背景と区別がつかない)』 開拓者の意見が見事に一致、しかしそれを知らない盗賊頭は中へと叫ぶ。 「皆、ふらわぁな開拓者が来てくれたぞ!」 「笑顔です!」 その横では巳斗が険しい顔の江崎の頬をむにゅっと引っ張った。 「そうだな‥‥!」 「あ、あの‥‥これ―――」 そっと水月が差し出したのは手作りのお弁当。 キョトンとした顔で受け取った盗賊頭‥‥首を傾げながらも包みを開く。 「おお、これは‥‥すばらすぃ!」 喜びの声に水月は恥ずかしそうに俯くのだった。 ●ふらわぁの道 「先ほどの攻撃は、華がありません」 一番先に手厳しく言い切ったのは巫。 「うほっ、イイ女」 呟いた盗賊ビーの頭に盗賊頭の拳骨が決まる。 「まずは、ふらわぁを身につける為に巷で(あと五十年くらいしたら)静かなブームになっている(可能性は捨てきれない)『ジルベリア風華道』を身につけてもらうでござるよ!」 都合の悪い事は伏せ、しっかりと宣言。 四方山がどこからともなく取り出したのは花と剣山。 「それは一体‥‥」 呟くエーに白い目。 「え?マジで?知らないでござるか?」 当然ながら、他の開拓者達も聞いた事がないのだが此処は相槌を打つ。 「そうですね、今、流行っていますね」 太刀花が言っては、一つ頷く。 「花を愛でる、素敵だと思います」 水月がそっと呟く―――盗賊頭は水月を見、頷いた。 「やるに決まっているだろう、将来子供が生まれた時には是非とも伝授せねば!」 「(奥さんが潰して下さいと依頼したのですけれどねぇ)」 肩をすくめつつ、橘はそれを静観する。 「まずは走り込みでござる!」 皮鎧で身を固めた盗賊達、鼻息荒く華を身につける為に頑張る、が‥‥ 「お頭、やめましょうよ!」 シーが騙されていますと抗議するが、それは盗賊頭の妻への愛と華への渇望の前に瞬殺。 「え?マジで?もうやめるでござるか?」 四方山にものすごく可哀そうな目で見られるシー、それでもと首を振る彼に徐々に慣れてきた江崎が口を開く。 「根性いれろ、根性!」 重々しく頷く盗賊頭にシーは口を噤み、そして走り続けるのだった。 盗賊達、グッタリしながら花を生ける。 「真面目に開拓者をすればもっと素敵な女性にもてると思いますよ?」 夜魅がタオルを手渡しながらそっと呟く。 「あの‥‥衣装」 着てみますか、と問いかける水月の声に即座に頷く盗賊達。 正直、重装備を纏い続けるのはきつかった‥‥まさに彼らにとっては天からの助け。 娘にしたいなどと飛び交っているが、出てきた衣装に似合うのだろうかと首をかしげる。 巳斗が選んだという衣装は華やかでフリルのついた衣装、それを着て出てきた盗賊達―――見苦しいのでその着替えシーンは開拓者の脳内からは抹殺された。 敢えて言うのならば 『いやーん、俺ってば、か・わ・ゆ・い!』 などと言う声が聞こえていた模様。 その間に開拓者達はさっさと得物を隠しにかかる。 暫くして着替えを終えた盗賊達‥‥さて、と口を開いたのはデー。 疑い深く、品定めするように開拓者達を見つめている。 「我々の求めている華は外見の美しさではなく、にじみ出る華。見せていただきましょうか」 当然とばかりに立ちあがる巳斗。 「この様な身形をしておりますが、ボクも男の子なのですよ」 ゆったりとした舞にヒラリと翻る着物の裾。 「可愛いのに、男の子だなんて‥‥」 何やら、悔しげな盗賊。 しかし、彼が舞を終えれば拍手がわきあがる。 「さあ、橘さんも」 「はあ、自分もですか?こんな感じですね?あまり見せないのですが」 橘の妖艶な舞、扇子が流れるように動いてふわりと頭から被っている布が舞った。 盗賊一名、鼻から出血の模様。 「皆さんもご一緒に」 巳斗に促された盗賊達、試しに舞っていくが、体はガチガチ、動きも硬い。 「筋肉舞踊でござる」 四方山の言葉に思わず賛同しそうな開拓者数名、グッとこらえる。 「ま、踊りはいいとして‥‥凄腕なら、凄いことをやってほしい!」 江崎が額の汗を拭いながら呟く。 ぐっじょぶ‥‥むさくるしい筋肉舞踊を見せられた開拓者達は思わず拍手をしそうになるが、それも堪える。 「(この、精神的疲労感‥‥これは彼らの能力でしょうか?いえ、それは『灰汁』ですね)」 橘がそんな事を思いつつ、灰汁を強調。 「必殺技名を叫びながら技を繰り出すとかっこいいですよ」 巫の提案に『モテたい!』だの、『愛羅武勇!』など聞こえてくるがそれは既に必殺技名ではない。 「薄毛が気になる斬り!」 薄毛を気にするエー、その哀愁に満ちた言葉は木を叩き斬る―――薪用の。 「すごいな!もっと、もっと見せてくれ!」 江崎が声をあげる‥‥可愛らしい少女の声にどんどん薪を割っていくエー。 その隣では巫が盗賊頭にダメ出しをしていた。 「うーん‥‥今のもイマイチなのでもう一度お願いします。決め台詞も含めてです」 「なら、『チミのハートを狙い撃ち!』―――どうだ」 雷火手裏剣が盗賊頭の手から放たれる。 「ダメです」 厳しい巫の言葉を聞きつつ、デーが屈伸を始める。 「‥‥?」 水月の視線に、デーは準備運動と答えるのだった。 ●ふらわぁ道皆伝? 「さて、次は俺から伝授させて頂きましょうか」 何やら知的な雰囲気を醸し出す太刀花、実際は頭よりも体が先に動くタイプである。 「フォーメーション、つまり陣形です。華を与えるとともに仲間同士の信頼も深まります」 グッタリした顔を持ち上げたのはシー、信頼に反応したようだ。 「お頭、やりましょう!」 「うむ」 大きく頷いた盗賊頭、素晴らしき友情。 「陣形第一、此れは横陣と呼ばれる横一列の陣形です」 何の役に立つんだというデーの疑問にシラッとした視線を向ける太刀花。 「基本です、基本を積まねば、次にいけませんよ?」 ピシャリと言われた言葉に盗賊達は軍隊のように背筋を伸ばす。 「お、カッコイイな!」 疲れかけた盗賊を、江崎が盛り上げる。 「今のすごくかっこよかったです。でも身に付くまで練習してください」 続いて巫が口にする。 その時、デーの眼があやしく光った。 「練力を使わせたりこれほどの体力を使わせたり‥‥今までの流れ、重装備で走り、スキルを使用させ」 一瞬、何名かの開拓者の表情が曇る―――それを見逃さず、デーは近くにあった棒を振り上げる。 そこに巫は背拳で軽く避け、チラリズム。 白の羽織に描かれた赤の彼岸花が鮮やかに舞う。 見えそうで見えない状態、一瞬の迷いをついて巫は空気撃を叩き込む。 防盾術でかわし続けるデーだったが、最終的にすっ転んだ。 「転び方にも華のある倒れ方とかあるんですよ?今のは百点中四十点ですね」 デーの言葉に刺激されたシーも服の布を割いて簡単に拳を保護し、フェイントを繰り出す。 四方山が魂喰を放つ、ついでに吸心符‥‥勿論、体力回復も兼ねている。 「陣形八番!」 そこに太刀花の声‥‥思わず扇状に陣形を組む盗賊。 ジリジリとにじり寄る開拓者達。 「繊細っ子は伊達じゃない!」 エーがそう言って走りだす‥‥遠くへと。 「行かないで!」 水月が力の歪みを使用、別方向に逃げた盗賊頭は早駆で夜魅が追いかける。 「やれやれ、出番ですか?では」 集められた盗賊達に橘の視線が向けられる。 「怖いからって逃げるからますます怒られるんですよ?」 「奥様に惚れ直させたくは無いのですか‥‥?」 夜魅の言葉、そして巳斗の言葉。 「盗賊になった時点で華を失くしてしまったんじゃないですか?それだけの腕があるなら開拓者になった方が良いですよ、素質はあると思いますし」 諭す巫。 そして――― ●遠いふらわぁの道 依頼人が見つけたのは赤い縄で亀甲縛りにされた盗賊達。 「見事な手練ですね」 「ええ、特技ですから」 依頼人の言葉に橘はこともなげに答える。 「巳斗可愛い、うにゃう〜」 ぎゅぅ〜と江崎に抱きつかれた巳斗は頬を赤くしながらワタワタ。 「美鈴さん?」 「更生してくれると、いいですね?ただ、自分達の弄りで、変な方向に目覚めないと良いのですが」 橘の不安げな呟きに開拓者達は突っ込む。 『もう、戻れない』 ‥‥と。 |