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■オープニング本文 地位や体面を重んじる武家や高貴なる家柄。中には贅も得てこの世の謳歌を暮らす向きもある。 古きしきたりや夫や親族の求めに縛られ、必ずしも自由気ままに贅沢三昧という訳でもなく。 華やかなる添え物の妻として、奥を仕切る大黒として、鬱憤や悩みを募らせる事には欠かず。 誰が始めたのであろう。それを解消する為の会合がいつしか作られていた。 初めは数人の茶会だったらしい。ごく普通の。 ただ彼女達は同じ趣味を持っていた。加虐や被虐に喜びを見出す人には明かせぬ趣味。 姿や身分を隠し、こっそりと趣味を満たすうちにその甘美さに捕らわれ。 安心して遊べる場所を――。 一人の未亡人が私財を投げ打って彼女達の為の場所を創った。 奥様秘密倶楽部。 正式な名称ではない。正式な名称など必要ない。 秘密裏に集まる事ができ、ゆっくりと誰にも知られぬ時間を過ごせ、口の固い人材のみが仕える。 紹介で人の輪は広がり、実際何人所属しているのかは元締め以外は誰も知らぬ。 建物の場所も厳密に秘匿されていた。 さる依頼で知り合った裏の筋の人物からの紹介である。幾人も通して話は渡ってきた。 手を尽くし一通り試して、尚それでも物足りぬという上級者ご婦人達を満足させるべく。 志体持ちと組んで、更なる恍惚の頂点を目指せないだろうか。 だが不逞の輩ではいけない。契約をしかと守り秘密を決して口外しない者。 密やかで綿密なる調査の末、君達が選ばれた。 「お上の法には触れぬが、決して公にはできぬ内容でござる。しかとお約束戴きたい」 先方より指定された出逢い茶屋の奥間。約定通り誰にも秘密で其処に赴くと。 深網笠で顔を隠した無紋の羽織の人物。武士風ではあるが正体も年齢も知れぬ。 しかと先払いされた報酬の金子。用意された証文に血判。そこまで念を押し。 「場所も極秘故、貴殿らには薬で眠って戴く。志体持ちに確実を期して量を多くしておるが、健康への害はござらぬ」 出された苦い湯冷まし。 ――目を醒ますと。 ●江夢の間 柔らかな灯りに包まれた室内である。視界に映るのは低い天井。 いや天井にしては何か変ではないか。 自分は固い寝台の上に横たわっている。起き‥‥られない。 薬がまだ効いているのか。いや少しは残ってるかもしれないが、その前に拘束されている。 鋼鉄製の首枷、手枷、足枷。固い板張りの寝台に五体をしっかりと束縛されていた。 ご丁寧に衣装まで別の物に変えられている。 「心配いらないどすえ。お着替えは男女別に係の者がしはりましたわ」 汚れたり、ボロボロになったりするから、と。 華やか、いや凄みのある笑みを口元に浮かべて覗き込んだのは目元を派手な仮面で覆った女性。 手には漆黒に染め上げた革鞭。肌にぴったりとした揃いの革衣装。 「うちはジョセフィーヌ。本日はよろしく頼みますえ」 「あら、そろそろ始められる時間かしら?」 ばいん、ばいんと手馴れた様子で板棒のしなり具合を確かめながら覗き込む第二の女性。 ジョセフィーヌと名乗った鏡餅のような女性と同じ衣装だが、こちらは竹竿といった風情。 「ええ、エカテリーナはん。全員お目覚めになられはった様子どす」 「ならあまり長い時間拘束しても失礼ですし、早速始めましょうか」 カツカツそわそわ落ち着きが無い。 「フランソワはんもこっちおいでなさいな」 「わ、わたくしハイヒールというものは初めてでして‥‥ま」 「エ・カ・テ・リー・ナ。会合では源氏名で呼び合うのが礼儀でしてよフランソワ」 「失礼致しましたっ。エカテリーナ様」 小柄な三番目の女性がよろめきながら近付いてくる。危なっかしい。 やはり同じ格好。メリハリのある身体の線で一番良く似合っている。 「フランソワは上級会員になられたばかりで慣れてないから仕方ありませんわ」 「最初は靴で踏むとか蝋燭垂らすとか、易しい所から始めるとええどすわ」 「床に零したお酒を舐めて戴くというのも簡単で趣きがありましてよ」 「はい‥‥色々試してみたいと思います」 想像して嬉しげに頬を紅潮させるあたり、素質は高い。 お相手する奥様方は本日三人のようだ。 珍妙な衣装を纏いジルベリア風の源氏名で呼び合っているが、全員が生粋の天儀人と見受けられ。 立ち振舞いに滲み出る上品さと言葉遣いは偽れず、良家の奥様方という風情。 「道具はこの通り、色々揃ってるから希望がありましたら聞きましてよ?」 ひとつひとつ嬉々として紹介してくれる。 鞭に蝋燭。短刀。鋸。畳針。板棒。荒縄。目隠し布に猿轡。 冷水に熱湯に蜂蜜、卵、小麦粉、葱、塩、砂糖、醤油、味噌、高級酒。蜘蛛や蟻を封じた壷。 「枷は趣向に必要なければ、すぐに外して差し上げますわ。あ、こういうのもありますのよ。お好きかしら?」 紐を引くと降りる仕掛けになっている針天井。寝台も仕掛けで傾けたり分割できるそうな。 鎖鉄球付きの足枷。散歩紐付きの犬用首輪。罪人の膝に抱かせるような切り石。 金に飽かせた設備、であろうが。用意のし過ぎである。 「さあて、子猫はん達。誰から一緒に遊んでくれはります?」 ――時は始まる。 |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224)
18歳・女・志
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
ネオン・L・メサイア(ia8051)
26歳・女・シ
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
ウィリアム・ハルゼー(ib4087)
14歳・男・陰
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
八条 高菜(ib7059)
35歳・女・シ |
■リプレイ本文 「四人はいくら私でも持て余しますわね。フランソワ!この生意気な子猫を躾けてあげなさい」 「おやおや上品なマダムではボクには太刀打ちできないとはね。それはそれは残念」 「おだまりなさいっ」 「くふっ。ふはは、ふははははははっ」 この甘美なる苦痛。ボクと子猫ちゃん達との一時には付き物さ。 日頃幼い少女を愛するあまりフランヴェル・ギーベリ(ib5897)は手痛い仕打ちも慣れたもの。 細腕の婦人が繰り出す百叩きなんか、志体持ちの子猫ちゃんの全力攻撃に比べれば可愛い。 昂然と面を上げ、挑戦的な瞳でエカテリーナを見上げる。 「子猫と呼ばれるのも悪くないね」 ガッ。 枷を外されるなり引き摺り起こされ。固いヒールに背中を蹴られ、埃ひとつない床板に転がる。 ぽろりと何かが懐から落ちた。藁に包まれた庶民には馴染みのある物体。 「まずは縛り上げなさい。縄の使い方は判りますわね?」 「もっと固く結んで。ボクは簡単に解いてしまうよ?」 「こうですか?」 慣れぬ様子のフランソワをむしろ指導するフランヴェル。余裕の笑み。 「その程度じゃ百戦錬磨のこのボクを屈服させれないよ。もっと、もっとだ!」 ● 「それで、何と仰いました?そこの緑、ああ二人とも緑ね。固そうな方の緑の山猫」 「お姫様と付き人と飼い犬を嬲る貴族婦人というシチュエーションはどうだ、と言った」 「演技をしてくれるというのかしら。なかなか通な提案ね。衣装も合ってますわね、ふふ」 「ここは城の地下牢だ‥‥」 寝台に束縛されたまま、ふふと笑うネオン・L・メサイア(ia8051)。さあ楽しい宴の始まりだ。 「でしたら、そこの子には首輪を付けて戴きませんとね」 まだ朦朧と状況を理解できずにいる相川・勝一(ia0675)を手早く仕立てあげ。 「な、何で僕こんな格好!?どうなって‥‥!?」 「犬は犬らしく鳴きなさい」 ぐいぐいと首輪に繋がれた紐を引かれ、苦しい。 「ちょ、これは一体何‥‥痛っ。痛いっ、やめて」 よくしなる板棒で尻を幾度も叩かれ涙を大粒の瞳に溜め。 「犬になりきるのよ、判りまして?」 「ひゃぁ、は、はひ。わ、わん?」 「いい子ね。お座り、伏せ」 「わうっ」 よく判らないままも素直に従ってしまう勝一。上目遣いに見た光景は異様。 (ネオンさん‥‥真沙羅さん‥‥どういう事!?) 「さあ、従者や犬からきちんと見えるようにしましょうね。姫?雌豚が何寝言を仰ってるの?」 「雌豚‥‥そんな」 「豚がお嫌なら牛だわ、雌牛。この乳牛風情が。大人しく牧場で裸になって乳搾られていればいいのよ」 「‥‥やぁっ、い、いくら胸が大きいからって、う、牛とか言わないで下さいぃぃ」 自分で胸が大きいとか言うか雪ノ下 真沙羅(ia0224)。上から下まで一直線、竹竿のようなエカテリーナの前で。 「そのだらしない乳を矯正しないといけませんわね」 荒縄でこれでもか、これでもかときつく縛られ。むしろ胸が溢れて強調された態。 「そんなぁ‥‥あぁ」 「き、貴様、姫様から離れ‥‥あぐっ!」 叫んだ口に生卵を投げつけられ、噛み砕いてしまったネオン。唇からとろりとした液体が滴り落ちる。 「貴女が先かしら?邪魔をするなら‥‥そうね。犬!」 「わんっ!」 「ちょっとお待ちになってね‥‥」 大きな壷を抱えてきたエカテリーナ。ネオンの身体を上から下までじっくり検分。 「その固そうな身体をほぐしましょうか。ふふ、腕は確かだから安心してよろしくてよ。でも動いたら保証しませんわ」 「何をするっ!貴様、私はその程度で屈服しないぞ!」 口答えしながらエカテリーナの動きを見切る。ふむ、言うだけあって筋は確かだ。 これは楽しいじゃないか。 板棒を自由自在に操り、びしりびしりと。勢いよく弾け飛ぶ留め金。 「な、そこは‥‥!」 「牛の従者も所詮牛ですわね、そう‥‥同じ事してもつまらないわ」 「や、やめっ‥‥熱ぅっ」 「あらこんな無駄な脂肪にも感覚があるの?冷たいのも感じまして?」 「ひゃっ、冷たいっ。ば、馬鹿にするな!」 熱い蝋燭を垂らされ、冷水を注がれ。また繰り返し。豊満な胸を執拗に責められ悶えるネオン。 繰り返され身体が慣れるうちに快感にも感じられて‥‥くるような。 責められる自分という状況に酔って、感覚がおかしくなってきている。 「はぁ‥‥はぁ‥‥」 陶酔してるうちに革鎧は全部外され、下着だけになっていた。 (はっ。つい自分の世界に浸ってしまっていた。真沙羅と勝一は!?) 真沙羅が天井から吊るされ、嬉しいんだか苦しいんだか判らない悲鳴を盛大に部屋中に響き渡らせている。 「やぁんっ、お胸そんな強くしちゃダメで‥‥お、お尻もダメですぅ♪」 叩かれる喜びにすっかり目覚めてしまってるようだ。既に自らノリノリの様子。 「さすがに疲れましたわ。後は犬、私を楽しませなさい。あらできないの?」 ネオンと真沙羅を並べて床に転がし、蜂蜜を塗りたくって指で弄んだエカテリーナ。 身体を火照らせた二人に仕上げ、と。赤褌一丁の勝一に舐めるよう命令したが。 無理です、僕にはできませんと首を横に振る勝一の髪を掴み、匂う液体を満たした大椀に叩き漬ける。 「ぶはっ。お酒ですかこれ!?」 「まだ言う事が聞けないのかしら、この駄目犬!」 何度も漬け込まれるうちに正気が吹っ飛んだ。 「う〜、わおーん♪ぺろぺろ」 「ひめひゃ、ひょうい、ふおおおっ!?」 「ネオン様もぉ、凄く厭らしい姿、ですよぉ。れろれろ」 「ま、まひゃら!?」 ● 「まぁ可愛い。ほらここでごろんごろんしてくださいね」 耳と尻尾も付けて犬になりきった叢雲・暁(ia5363)が小麦粉の上で嬉しそうに転げる。 全身真っ白にして可愛らしく舌を出してご褒美をねだる瞳。 (こんなお遊び、お安い御用だよ〜♪色んな修行したからねっ) 「はい、ご褒美ですよ」 ムギュっとハイヒールの尖った踵で踏まれても笑顔。感触にうっとりとするフランソワ。 「次は取ってこいですよ。あの青いドレスをびりびりに噛み千切ってください」 指差した先に瞳を閉じて横たわるのはウィリアム・ハルゼー(ib4087)。 何もしてはいけませんという言いつけだ。のしかかる暁の生暖かい息が肌に感じられる。 「いい表情ですわ、うぃる。貴女、好きなのね。次は何をされたいのですか」 「はい、うぃるはえっちでいけない娘だから、もっと責めて欲しく思います‥‥胸とか」 「胸を悪戯されたいのですか」 沈黙。どんな事をしてくれるのだろうと胸を高鳴らせ。全て身を委ね。 「いい姿だわ。綺麗なドレスがボロ雑巾のよう」 自分がどれほどあられもない姿になっているか夢想してウィリアムが頬を薔薇色に染め。 くるくるとフランソワの回りを戯れる犬のように暁が巡る。 「お酒を舐めさせるといい‥‥とエカテリーナ様が仰ってましたわね」 「ひゃひいっ」 服の束縛が解けてもなお形の崩れないウィリアムの胸の谷間に酒が注がれる。 「あら零れてしまいますわ。起きて貰いましょう。枷は外しますが、暴れたらダメですよ」 「うぃるはフランソワ様の仰せの通りに致します」 枷を解かれ上体を起こしたウィリアムの胸に再度酒が注がれる。 「零さないよう胸を抱えていてくださいませね」 「はい、うぃるは胸を抱えています」 たぷん、とぽとぽっ。 「ひゃひいっ!らめぇっ!お許しくださいませっ。これ以上は溢れちゃいますぅ」 「しょうがない子ね。ほら、鼻を突っ込んで全部飲み干してあげなさいな」 尖った爪先で暁の尻を蹴る。 顔色を見てわざと反抗的な顔を見せて、つんと背け。 (もっと蹴って満足して戴かなきゃね〜) 棚に置いてある鞭を口に咥えて戻り、彼女の足元に放り出してこれでとねだる。 充分に振るって叩いて貰ってから、おもむろにウィリアムに飛びかかる暁。 (お仕事、お仕事♪) 「や、やめてくださいませぇっ」 口ではそう言いながら暁に脚を絡めちゃったりなんかして。フランソワの方が赤面。 「もう充分ですわ‥‥素敵な時間をありがとうございます」 虫責め、はどうやらフランソワ自身がダメな方らしく。免除であった。 「ありとあらゆる責めを受け‥‥っていぇええ!?」 「これで責められたいから持ち込んだのでしょう?」 いつだかの会合で聞いた事が。納豆を鼻に詰めると面白いと。 フランヴェルの傍らに落ちたそれに気付いた瞬間フランソワの顔が輝いた。 むにゅ。摘ままれて鼻腔で納豆が潰れる。 「ぐあああ!中年男性の穿き古した足袋の如き異臭がボクの鼻腔に充満してるっ」 悶絶して転げまわるフランヴェルを嬉々として眺めている奥様。 「では香りの良い物に変えましょうね」 「無理っ、そんな大きいの入らな、うぎゃああ」 丸ごと一本の葱が鼻腔に。それもう一本。 「んぼおお!これ以上は死んじゃうぅっ」 そこでフランヴェルの記憶は途切れた。 ● 「は、早くぅ。この格好のまま放置だなんて。お願い、ジョセフィーヌ様‥‥私から始めてください‥‥」 枷に拘束されたまま、もぞもぞと動き着せられた肌襦袢を乱す八条 高菜(ib7059)。 鮮やかな緋色の中に零れ広がる白い肌を見せ付けて、嫌々と首を振り長い黒髪を寝台に乱す。 「性急でいはりますなぁ。お願いと言われたら、枷を外す‥‥訳あらへんわ」 「ひっ」 ドスンッ。重量感のあるヒールが耳元に落とされる。灯りを背に迫る大きな顔。 「あんさんは最後どす。お行儀の悪い腰は仕置きしておきましょな」 「そんなっ。せめて、せめて衣服を‥‥」 「襦袢をそないに散らして何を言うてはるん」 凹がええやろか凸がええやろか。ぶつぶつと呟くジョセフィーヌ。 「と、凸でお願いしますっ」 意味は判らないが、何となく言葉の響きで凸がいいと思った。懇願する顔に笑みが返る。 「そやなぁ、よぉく鑑賞しながら待つとええどす」 「ひゃん。お、お尻に寝台の角がぁんっ」 何やら寝台の脇でガチャガチャ操作してたかと、突如左右二つに割れた寝台が凸型に変形した。 手首も脚も枷に嵌められたままなので胸を高く仰け反った格好。 「枕くらいは添えてあげはるで、これなら良く見物できるやろ?」 お尻が、お尻がぁーっ、喰い込むのぉんっという叫びは完全に無視され。 「あの‥‥女性には優しくしたほうが良いかと思いますが‥‥」 神よ、どうか彼女の苦痛を私に与えたまえ。と薄絹のローブ姿でセクシーに横たわりながら祈る。 高菜のあられもない姿を直視する事ができず、しかし何が為されるか好奇心を抑えられず。 これは天儀における巫女や僧侶の修行と同じと勘違いしてやってきたエルディン・バウアー(ib0066)。 「神‥‥精霊様に祈うてるんどすか?優しい殿方でいなはりますなぁ」 「いえ精霊様ではなく、人々を救われる偉大なる神をですね」 「うちのこの疼きも救うてくれはるんか」 「はい、神は天の下、全ての方に平等です。私にどうぞ貴女のお手伝いをさせてください」 「素敵やわぁ」 ビシッ。身体をくねらせて恋人の胸を突くような仕草で鞭で叩く。 「はうぁ。も、もっと強くっ」 「こうどすか?それともこないでもよろしゅうおますか?」 ビシッバシッビシッ。白い肌にくっきりと赤く筋が描かれたのが布越しにうっすら透け。 「み、水を‥‥天儀の聖職者は薄い衣を着て拷問のように流水を浴びると聞いたことがあります」 「痛かったやろなぁ。今、お望み通り水掛けてあげますえ。それとも飲みはる?」 「いえ口移しは、ちょっとまだ心の準備が。もっと心を清澄に絶頂の域に達してからですね、その」 「後でゆっくりな。楽しみやわぁ」 ごくり。柄杓から口に含んだ水を喉に落とし。再び汲んだ水を何処から掛けようか。 じりじりと待たせるジョセフィーヌ。 「ひっ、くっ‥‥うう‥‥はわぁっ」 少しずつ一箇所ずつ。鎖骨、腋の下、臍の上と水を注がれて堪えきれず声を漏らすエルディン。 ほどよい肉付きの男性らしい骨格のラインに透ける薄絹がぴっとりと貼り付き。 「これも神の思し召し‥‥あ、そ、そこはその‥‥」 「綺麗どすえ、恥ずかしがる事あらへんで」 臍の下から広がり染みてゆく冷水の感覚が、そのあの。 「あら、きゃっ。若い子の‥‥」 「み、見な、いえ見てください。ああ恥ずかしい、これに耐えるのも修行でしょうか‥‥おお神よ」 裸を直視されるよりも何か恥ずかしいような。 「真っ赤に頬染めて可愛いどすなぁ。ほら次は膝から腿を濡らしますえ」 「え、そっちなのぉ?ほ、ほら辛かったら私を見て‥‥」 だから高菜、何を期待して。襦袢を更にはだけさせてエルディンを励まし、いや苦しめて。 唇を噛み歪め堪える顔。 「ああ神職のその表情ええわぁ、燃えるわ。ほな、お待たせした子猫はんを」 内心やった♪と思いながら、そんな、あ、やめて‥‥とジョセフィーヌの気を引く高菜。 (あんな事されたり、こんな事になっちゃったり。いやぁん、私も燃えちゃうわぁっ) スルスル、シュシュッ。ガサゴソ。ガタンッ。 「きゃあああっ!?逆さ吊り!?」 再び一体に戻り足元を上に激しく傾いた寝台。 ジョセフィーヌの鮮やかな早業で肌襦袢は身体に沿うようにぴたりと縄で結びつけられていた。 高菜は見られるのが快感と取った彼女。それを逆手にした虐めに出た次第。 足首から垂らされる醤油が拘束された逆さの身体を伝い汚す。まぶされる砂糖。 「ほな、蟻さんや出番どすえ」 「ああっ、虫が身体中を這いずって‥‥ダメっ、そこに入っちゃダメぇっ」 頭に血が昇る。鼻に醤油が入る。それでも高菜は叫んだ。 「少し黙りなはれ」 「んぐぐ、ぐぐっ」 味噌を口一杯に詰め込まれ猿轡。あれ甘い、これ鯛味噌?いい味じゃない。 「あんさんは美男子やから出汁に使いましょなぁ」 「出汁?私を?あ、あのジョセフィーヌ殿が食されるので?」 熱い湯に入れと命令されたエルディン。天儀の修行とは何と大変な事か。 覚悟を決めて飛び込み。風呂にしちゃ熱いが我慢できなくもない‥‥十数えるくらいなら。 (じっと見つめられるとその、だって全部透け‥‥) 恥ずかし耐えすぎて、茹だり失神。 ● 終わった後の開拓者の顔は何故か輝いていた。 奥様方にも大満足戴けたようだし、帰るのが名残惜しい。 「この倶楽部加入したいです、ねぇそう思いませんか」 「はい、ボクも是非‥‥プライベートでも来たいですね」 「できれば最後に‥‥でもそのあの」 口籠もる真沙羅の腰を抱き鼻歌交じりのネオン。魂が抜け切っている勝一。 「ところでフランヴェルとエルディンが居ないがどうした?」 「さあ‥‥」 続きがあったようで。それは誰にも知らされる事は無かった。 |