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■オープニング本文 人の霊魂。 死してしまった者が何処にいくのか、それは誰も知るものは無い。 知ると云う者もあるかもしれないが‥‥何かの信心によるものであろう。 幾つもの別の答えが導かれ、それぞれに正しいと思い。 それでいいのだ。 還らない事は確かなのだから――。 「彼女は私の中に居る。私が忘れない限りずっと」 だから忘れてはいけない。それがいつしか、男の中で彼女の姿をずっと自分の傍に留めたいという想いに変わっていった。 最初は夢の中。そして今度は現実で耳元で囁く声。魔の声。 男がずっと肌身に付けていた彼女の形見‥‥それは瘴気に侵されていたもの。 後悔、自分への怒り、理不尽への恨み、年月を経てそれは、男の負の念を吸い続けて力を持ち時を得た。 そして男を唆す。 『似た少女を探せ。少しくらいの差異など、何構わぬ。我がその女の姿にしてやろうぞ』 魔に憑り付かれた男は、愛する女の面影を求めて彷徨う。 不幸にも。誰にとっても不幸にも。今生の別れとなってしまった彼女に似た娘が、彼の目に留まった。 道案内を請う人良さげな男に、そこまでだから案内してあげると無邪気に歩く少女。 建物の影となり人目が途絶えたその時、男の手が後ろからそっと伸びて――少女の口は塞がれた。 囁く声のまま。私は何をしたのだろう。 男は自問する。 紙のように白い顔をして、畳の上に倒れた見知らぬ少女。既にぴくりとも動かぬ。 『何じゃ。まだ目を瞑っておれ。我が良いというまでそのままにしておらんと儀式は成功せぬぞ』 既に耳に馴染みとなった囁き声。 固く目を閉じる瞬間。合わせた単衣の胸元から黒い霧が沸き立つのがよぎった。 懐に入れていた女物の肌襦袢の切れ端。洗い清めたが、かつて愛する女の血に染まった布切れ。 そこから沸き出でたモノ。 「光一さん。光一さん、目を開けなさってくださいな」 優しく頬に触れた冷たい指。 「お亮‥‥」 アヤカシに喰らわれてしまった愛する女。かけがえのない大事な人。 男の顔に輝きが満ちる。 たおやかに微笑む娘。さきほどまで倒れていた少女の小袖を着ているが。 間違いなく、彼女。顔形仕草、記憶のままに。 「ありがとう光一さん。これで貴方は‥‥用済みだわ」 女の身体から沸き出た無数の黒い錐が、男の身体を貫く。 何が起きたのか、理解する事もなく。 男の命は終わった。 ぽろり。 美しい形だった人差し指が瞬時に腐敗して、畳の上に落ちる。 「脆い媒体じゃのう。少し力加減を間違えただけで崩れるとは」 憑依ではない。完全に死体を乗っ取るのがこのアヤカシの流儀。 瘴気を増幅して術を使うにあたり、足りぬ分を生物の欠片で補う。 故に、媒体にされたものは徐々に壊れていってしまう。 「だが、なかなか居心地がいいわえ。完全に使い物にならなくなるワで使わせて貰おうぞ」 小袖を脱ぎ白い肌を全て露にして。 美しい唇を開き、倒れた男の身体を貪る。血肉、内蔵、骨に至るまで。全てを。 嫌な音を立て、人の姿で行なわれるおぞましい所業。 満足。 しかし、それも一時の事。 長き時を雌伏した飢えと渇きを癒すべく、アヤカシは次の獲物を探す。 台所の汲み置きで身体を清め、再び小袖を纏い。綺麗な娘の姿で。 しかし右手の人差し指は欠けたまま。 人里での事である。 一人暮らしばかりを狙い。二度、三度は目撃者も無く成功裏に終わったものの。 ちょうど新しい獲物を喰らっている時に訪れた被害者の知己。 「アヤカシじゃ、アヤカシじゃ。人の姿をしたアヤカシじゃ!」 一目散に逃げた男は唾を飛ばし叫びつつ、人通りへと逃げた。 街道筋の小さな宿場町。たまたまそこにふとした私用であろうか。仕事の用事であろうか。 旅途中の茶店で一服していた開拓者達が居合わせたのは僥倖である。 アヤカシと聞いて彼らは即座に立ち上がった。 喰いかけの獲物を残して民家から逃げ去ろうとする全裸の娘姿のアヤカシ。 獲物を喰らった後に悠々と身体を清め再び小袖を纏い、というはずだったが。 白昼堂々血まみれの全裸で飛び出した姿に、裏路地の通行人は恐慌を来たし腰を抜かす。 そのようなものは無視して辻より街道の大路地へ飛び出そうかという時。 駆けつけた開拓者と顔を合わせ、手近で腰を抜かしていた行商の老婆の小さな身体を掴み上げて盾とする。 「邪魔じゃ、退けい。こんな老婆喰ろうても仕方がないわ。素直に退けたら無傷で返そうぞ」 |
■参加者一覧
神町・桜(ia0020)
10歳・女・巫
百舌鳥(ia0429)
26歳・男・サ
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
御凪 祥(ia5285)
23歳・男・志
からす(ia6525)
13歳・女・弓
ベルナデット東條(ib5223)
16歳・女・志
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰
クリスティア・クロイツ(ib5414)
18歳・女・砲 |
■リプレイ本文 (このような場所にアヤカシとは、現世には穢れが満ち充ちて居ますわね) 平和だった宿場町に惑う悲鳴。ぶつかりそうな人々を避け、静かな表情のままクリスティア・クロイツ(ib5414)は心中溜め息を吐く。 ふいと姿を隠したからす(ia6525)とは別行動で狙撃手として行動するに適した場所を探す。 弓を手にしたからすが何処へ陣取るか、一瞬視線を交わしただけ。 「嫌な予感がしますわ」 その独り言が的中しない事を祈りながら。 できれば彼女と斜線をクロスできるような位置。あの商家の上がいいだろうか。放置された荷物に登れば何とか屋根に手を掛けられるだろう。 裏手へ通じるはずの別の路地へ向かったからすはおそらく背後を取るはず。 暇つぶしに来てみたら、なんだか面白いアヤカシがいるのねぇ。 可愛い顔を凶相にして威嚇する姿を見て、第一印象そんな事を思ったリーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)。 対照的に意を決した顔をしているのはベルナデット東條(ib5223)。 (私がやる事はただひとつ、滅ぼすのみ‥‥しかし人質か) これだけ喋れるのなら、交渉もできる知能の高いアヤカシかと前に進み出て敵意のない事を示す百舌鳥(ia0429)。 空の手を示し、まぁ武器は捨てろと言われたらその時でと。 「良い女なのに。いやはやもったいないねぇ」 遠慮のない視線。老婆を正面に抱えて盾に取ってるから、見えるのは血に塗れた曲線だけであるが。まだ完成形には足りぬ成熟ながらもそれでも充分に発達した肢体。 (さて、どうやって隙を作れっかねぇ) 人質の他に周囲には呆然とした人、腰を抜かした旅人。彼らを何とか逃がしてやらないと。 鴇ノ宮 風葉(ia0799)もまた対応のしやすい場所を探して物陰へとそっと移動し、御凪 祥(ia5285)も百舌鳥と共に交渉を進めるべく目立つ槍を地面に置き、一歩ゆるやかに踏み出す。 そして神町・桜(ia0020)がじりりと体重を移動しかけたその時。 端から交渉する気が無かった。 いやそれほどの思考も持ち合わせていなかった。 人間の言葉を喋る。それは知識という意味では高かったのかもしれないが。 しかしその本性は獣。否、それ以下。 「――っ!?」 四散する老婆の肉片。血潮。その腹に収められていた物、様々が交じり合った異臭。 それと共に飛び出してきた鋭く尖った無数の黒い円錐。 開拓者が立っていた前方だけでなく、四方八方へと。 骨の接ぎ目から先がぽろりともげ落ちる少女の左腕だったもの。抜け落ちる長い黒髪の幾つかの束。 地面に落下したべちゃりとした嫌な音。 さきほどまで生者の色をしていた部分が、まるで何日も前からそこに放置されていたかのように腐臭を放って転がっている。 咄嗟に身構えた開拓者達の腕を頬を、錐の鋭い先がえぐる。 リーゼロッテの構えた剣に当たった一本が固い音を立てて跳ね、板壁に刺さり霧と還って消えた。 (ふぅん、実体なのこれ。それに無駄に力を使ってるんなら、本気で馬鹿なんじゃないこのアヤカシ) せっかくマトモに話せるアヤカシって貴重なんだから何か意見でも聞きたかったけれど。これじゃ、ダメみたいね。 瘴気を使っても死体の腐敗とか崩壊を停めるのって無理なのか。 疑問だったのだけれど。 さっそく腐ってるじゃない、壊れてるじゃない。 瘴気を使った術にかなりの耐性を持ち、なおかつ武装もしていた開拓者は数本を同時に受けても、それほどきつい打撃ではなかったが。 周囲の一般人はそういう訳にもいかなかった。 何が起きたかも判らず、首筋をえぐられた者、胸や腹に喰らった者。命を奪われるには至らなかったものの夥しい量の血を流し泣き叫ぶ者。たまたま直撃を免れたが狂乱に陥る者。 路地は無辜の血肉に染まり、一瞬にして更なる阿鼻叫喚の場へと化した。 アヤカシの予想を超えた暴挙に柳眉をきりりと上げる祥。半ばは自分への怒りか。 侮ったつもりはないが。 (色気も何もあったものじゃないが。交渉が通じる相手と惑わされたのは、結局してやられたという事か。俺もやきが回ったな) 地に置いたばかりの槍を手に取り、一気に間合いを詰めて穂先を突きつける。 仰け反るようにかわすアヤカシ、鍛え上げた双刀を抜いた百舌鳥がその身体の動きを追う。 力任せとも言える重い斬撃。休みなく交互に繰り出される刃にアヤカシは路地の端へと追い詰められてゆく。 「術なんざ使わせるもんかよ‥‥。ちっ、呼吸するように撃ちやがるとは」 円錐の凶器を無の空間、いや周囲に微かに漂う瘴気より生成するのが攻撃手段。それしか能が無いようだが、何の準備行動すらなく飛ばしてくるので読めない。 何処に向かって撃たれたかとか判断する前に、撃たれたと思った瞬間には反射的に行動を取らねば間に合わない。 「まぁ。何だか判らん物でも、物は物だ。そんなら対処のしようがあるってもんだ」 始点は必ずアヤカシの身体。全周に撃ってくるにしても常に肉薄していれば、守れる角度が増える。 「これ以上同じ手でやらせる気なんざ無いんでね」 纏った鎧兜と己の能力を頼りに身を盾に。ここまで至近だと刀で弾くより身で受け止める方が多い。 (一本でも通さねぇ為にはこのぐらい、やってやるしかあるめぇ) 桜が八の字を描く大薙刀に弾かれて、黒い円錐が軌道を変えた。 「ほれ、お主。腰を抜かしておらぬで今のうちに逃げるのじゃ」 振り向いて手を貸してあげられるならいいが。 アヤカシが闇雲に放つ錐が時折こちらにも流れてくるので武器を振り続けるのが今一番守ってやれる事。 とっさに立ちはだかったが、位置を動いては後ろに居る一般人がやられてしまう。 できるなら手を引いて強制的にこの場から逃がしてやりたいが、そうも言ってられぬ。 アヤカシに話し合う気が少しでもあってくれたなら、その間に避難もさせられたのだが。 「報いはしっかりと受けて貰わんといかんの」 視界に入る、目を見開いたまま血に濡れて倒れた死者達。 今は彼らをどうしてやる事もできない。 「こっちだよ。今、手当てをしてあげるからな」 物陰から差し伸べられた小さな手。恐怖と痛みが交差する身体を何とか引き摺った男には神のように思えた。 豊かな黒髪を紅の紐で結った自分の娘とも近い年恰好の少女。裏手に回りこんでいたからすだ。 「大丈夫だ、急所は外れてるから血を止めれば助かる。落ち着いてゆっくりと呼吸するんだ」 大粒の瞳を柔和にして元気付ける微笑を浮かべ。慣れた手つきで手早く処置を施す。 「アヤカシは仲間が追い詰めてる。もう奴はこっちには来ないから陰で休んでいるといい」 そう言って背を向けた時には彼女の表情はすっと消えた。 この辺りの動ける者はさっきの騒ぎで逃げ去った。後は動けない者だけ。 物陰から物陰へ。万が一気付かれて自分へ攻撃が向いてもいいように倒れた者達を避けて。 アヤカシを囲むように仲間達が動いているので、狙いが定め難い。 うかつに撃てば目まぐるしく位置が入れ替わる瞬間に味方へ当ててしまう。 (‥‥そこだ) 意識を研ぎ澄まし、待ち構えていた瞬間。 祥の槍の穂先が淡く夕陽のような光を放ち、アヤカシの動きが鈍った。 百舌鳥が振り抜いた右腕の脇すれすれを抜ける矢が眼窩に突き刺さる。 気に留める様子も無く振り撒かれる反撃。既にからすは位置を変えていた。 彼女が居た場所を錐のひとつが飛んでゆき木箱の一片を砕いて散る。 (仮りそめの身体を壊しても気にも留めぬ、ふむ。乗っ取られた身体の娘は可哀想だが、完全に壊すしか無いのか) 胸に沸く殺気を消して動く影。一人でも多く助けてやろうとベルナデットが瀕死の者を抱えて連れてゆく。 べっとりと他人の血に濡れてゆく錦の手甲。 リーゼロッテの手にした符から沸き出る毒蜂の式が娘の綺麗だった肌を刺す。 そして呪縛。動きを鈍らせてきたアヤカシを双刃が槍が、そして参戦したベルナデットの振るう刀が。 切り裂いた身体は脆く赤黒く濁った血を滴らせて地へ落ちてゆく。 アヤカシの度重なる反撃に、身体の一部だったものがぽろりぽろりと腐れ落ちて。 眼窩と共に矢も地面へと一緒に。 屋根の上で毛布を被り姿を隠したクリスティアが、ほぼ剥き出しの頭蓋骨と為り果てたその中央を砕かんと狙う。 「――神よ」 晴れた空に木霊する銃声。 狙い誤まらず、その銃弾がアヤカシの宿った身体のこめかみにめり込む。 崩れ倒れる身体。やったか。 その残る骨が真っ黒になって崩れる。 と、同時に放たれる夥しい数の黒い円錐。最初の一撃より更なる量、更なる大きさの。 全てがクリスティアが放った攻撃の方角へ向いている。 今までの破壊力から、彼女の下の建物の薄い板壁を砕いて中の者まで害を及ぼしかねない。 とっさにそう思った風葉が黒き壁を召還して盾とする。 強固な壁は円錐の夥しい数の直撃を受けても崩れる事なく耐えた。 からすの放った矢の轟かす共鳴に撃たれた黒い霧を不機嫌そうに睨みつけ。 「アンタ、本気で許せないわよ」 生きてる者達へのひどい仕打ちだけでなく、死者への冒涜。 跡形もなくなった老婆の身体。肉も骨も全てアヤカシに使い果たされてしまった少女の身体。 新たな死者の身体へ逃げ込もうと滑り込む影。 「それ以上、好き勝手なんかさせない。相討ち上等っ!このアタシが負けるわけがないじゃない!」 死者の身体を跳び越え、影へとぶつかるように身を投げ出す風葉。 『――――ッルァグゥゥヴァアアアアアア』 手にした符より沸き出る名状し難き不気味な肉塊。さきほどまで滴り落ちていたアヤカシの仮りそめの肉体がまだ可愛く思える程の腐臭が皆の鼻を曲げる。 怖さではない。何か得体のしれない感覚が風葉の身体の中を掻き回すように駆け抜け。彼女の表情が凍る。 (アタシ‥‥) 死ぬかもなんてその時混乱する思考の中にふとよぎったとは、いやきっと術のせいだろう。 断末にもがくアヤカシの最期の一撃を全身で受け止めながら、それでもふてぶてしい会心の笑みを浮かべる。風葉らしく。 得体の知れぬ肉塊がずるりべちゃりと霧状のアヤカシを喰らい――消滅させた。 「人の事言えねぇな。無茶しすぎだぜ」 茫然自失に近い状態から我を取り戻した時には百舌鳥に抱き起こされていた。 「あ、あによ?何、馴れ馴れしく抱いてんのよ。離しなさいっ、自分で立てるってば!」 頬を赤らめ、ぷいと乱暴に手を振り払う風葉。 「ったく、全部ふっ飛ばしたいくらい胸糞悪い奴だったわ」 そして黙り込んだ。 少女だった残骸の前に膝を落とし、悼む瞳をそっと閉じて骨の粉を掬い黙祷を捧げる祥。 「神よ、どうかこの方々に未来の安息を与えてくださいませ」 一人、また一人と集められる亡骸にクリスティアが祈りを捧げる。 生き残った者達には桜の手当てを。 「回復の術は苦手じゃが、この程度なら少しはの」 黙々と死者や怪我人の処置を続ける中、ふと気が付けばベルナデットとからすの姿が無い。 彼女達は、アヤカシの身体とされてしまった娘の素性を尋ねて探し歩き始めていた。 人相や姿格好を説明するしかないが、もし娘がこの町の者なら誰かが知っていよう。 幾日も前から行方不明だった少女、フミの存在は割とすぐに判明した。 何処の村から出てきたかまでは判らないが、宿の下働きでこの町に定着していたらしい。 親切でよく気のつく娘だったとか。弔う身体すらないと聞いて、彼女を知る者は涙を流した。 名も知らぬ縁を結ぶ機も無かった犠牲者達の弔いを町人と一緒に行なう開拓者。 幾つかの家から、気が付かれぬまま放置されていた遺骸も出てきた。 発端となった男の遺骸もその中にあったが、今となってはその事は誰にも判らない。 一人一人、荼毘に付す前にもう一度顔を見て。遺族から聞いた名を胸に刻むベルナデット。 (忘れぬ、私は。あなた達の身に起きた事を‥‥決して) この世の景色が二度と見られぬ左目が疼く。自身の失われた記憶を埋めるように彼らの犠牲に想いを重ねる。 「あーあ、疲れちゃった。百舌鳥、アンタお茶奢ってくれない?そう、お茶」 戦いが終わってより終始無言だった風葉がようやっと笑いを見せる。 まるで何事も無かったかのような屈託のない笑顔。 「はい、辛気臭い顔はもう終わり。笑わないとやってられないわよ」 と、クリスティアの肩を陽気な調子で叩く。 それで、同じような笑顔を浮かべられるようなクリスティアではないが。 やれる事はやったのだ。 町はきっとまた変わらぬ営みに戻る。 あの路地を通る人はしばらくは途絶えるとしても――。 |