閉ざされた闇を越えて
マスター名:白河ゆう 
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/12/20 01:28



■オープニング本文

 落盤の恐れが高い坑道。
 素堀りを木枠で支えただけの構造で、作業員の安全性等は元々考えられていない。
 上乗せされた危険手当に魅せられてか、希望して入る者は絶えないのだから。
 幸いに硫黄の蒸気が出る場所がある訳でもなく、個々人が対策の装備に費やす資金も要求されない。
 裸一貫で体力と覚悟だけあればいい、そう職の口利きに乗せられて来た者も多かろうか。
 割合と手間に対して産出量の高い鉄鉱石が採取できる為に、権利主が払う給金は満足のいくものである。

「おいおい、一番坑が閉鎖って真面目な話かよ‥‥」
 粗末な共同小屋で車座になって酒を喰らう男達。
 一日の重労働の後の憩いの時間のはずだったのだが。
「先日アヤカシが出たとかいう騒ぎは解決したんだろ?」
「あんなもんが沸くの恐れてちゃ仕事にならねぇさ。だがな、関係あるらしいぞ」
 長年に渡って拡張された主坑道が複数。そこから無数に細い坑道が伸ばされ、慣れぬ者には迷路のごとき構造となっているが。
 つい先頃、その坑道のひとつでアヤカシが現れて騒ぎになった。
 のたうつ大蛇のような姿をしたそれは、迅速な通報により人的被害を出す事なく開拓者の手によって退治された。
 だが、その際に暴れたアヤカシの影響で幾つかの亀裂が坑道内に生じていた事が後日の調査で判明した。
 それより相次ぐ小さな崩落。
 ベテランの作業員達の勘によって、虫が騒ぐというのだろうか。
 幸い、その時その場で作業していた者は居なかった。
「一番坑を破棄するって事は、その奥は全滅って事だよな。また別の入口を作るのかい?」
「なんかひょろい技師やら来て、検討してるとからしいが。俺の頭で考えてもよく判らねぇなあ」
「まぁ、俺らはあてがわれた場所で命さ掛けて掘るだけだしな」
 ぐだぐだ言っていてもどうにかなる事じゃない。どうするかは偉い人とかが決める事さ。
 美味い酒でも後少し飲んで、明日の活力を蓄えて寝ようかね。
 そうぼやきながら、乾いた盃に新たな酒を注いだ時――。

 カンカンカンカンッ。カンカンカンカンッ。
 激しい勢いで打ち鳴らされる半鐘の音に、ほろ酔い気分も飛ぶ。
「何事でえ、こんな時分にっ!」
「事故だ、事故!奥の方で派手に崩れたらしいぞ」
「作業はとっくに終わったはずだぞ。誰も坑道に居ないだろ」
「案内役さ連れて技師さんが一番坑の奥に行ってただよ。聞いてなかったか」
「うちの班は朝から坑道で作業してたからな」
 ガヤガヤとがなり立てながら、大勢が坑道の前に集まるがそこで止められる。
「焦るな、焦るな。二次被害の恐れがあるからすぐには誰も入っちゃいかん」
「そうは言っても中に人が居るんだろ」
 法被を着た世話役。まずは状況を説明するから皆静かにしろと手を振る。
「今坑道に入っているのは、技師一人と案内役の作業員一人、それと護衛の開拓者」
「おぉ?開拓者が来てたのか」
「アヤカシが出たばかりだからねぇ。念の為だったんだが‥‥」
 いつでも命令次第すぐに救助活動に入れるようには待機しておくように。
 そう言われた以上、男達はそこで待つしかなかった。

●一番坑奥
 轟音と粉塵、そして訪れた静寂と暗闇。
 相棒の中には主坑道より先には入れない大きな者も居る。
 全員が傍に居た訳ではない状況での崩落。風圧により松明の灯りも消えた。
「全員無事か?まず返事しろや」
 案内役の田朗のダミ声、といっても元から枯れた声で実際は囁きに近い。
「怪我はしなかったみたいだけど‥‥腰から下が埋まったね」
「戸野先生の声がしないな‥‥後、誰だ?」
 技師は二人程の護衛を連れて奥の小坑道に入ったばかりだったはずだ。
「参ったな、俺も動けねぇ。土の中に岩が混じってるなこりゃ」

●小坑道内
「戸野さん、戸野さん?」
 返事は無い。こちらは往路が塞がっただけで埋もれはしなかったが。
 飛来した岩片が運悪く鉱山技師の戸野律冶の頭を直撃したようだ。
 抱き起こした手に濡れた感触。記憶のある臭い。
 真っ暗で状況が判らないが頭部から流血しているかと思われる。
 翳した指に僅かな吐息。意識は無いが命はあるようだ。

●誰も居ない場所で
 崩落した土砂の反対側で。ぬるりと蠢くモノ。
 大蛇の姿をしたアヤカシが眼を怪しく光らす。
 土の中の瘴気より生じた存在。
 とぐろを巻いて山となった姿は広い主坑道を塞ぐがごとく。鱗は鉄のように硬く。
 こいつの所為で岩盤に不自然な圧力が生じたのか、それは定かではない。
 何か充分な量の美味しそうな気配を近くに感じるが。
 面倒だ、出てくるのを待とうとでもいうかのように薄い瞼を閉じる。


■参加者一覧
珠々(ia5322
10歳・女・シ
からす(ia6525
13歳・女・弓
和奏(ia8807
17歳・男・志
以心 伝助(ia9077
22歳・男・シ
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
ロック・J・グリフィス(ib0293
25歳・男・騎


■リプレイ本文

●第一坑奥にて
 その時、ちょうどX(クロスボーン)をケースより展開し搭乗中であったロック・J・グリフィス(ib0293)。
 洩れ入る空気に混じる細かい土塵。宝珠の起動にかかる時間がもどかしい。‥‥一体何が起こった。
(既に装置の稼動は済んだか‥‥映らぬのは可視光が無いせいか。灯りが欲しいが)
 脚部は故障している訳ではないのに動かない。一度ハッチを開けて様子を見るべきか。
 コツコツ。ノックされるハッチ。
「無闇に動かさないで。貴方の前方に田朗さんの腰から下が埋まっているわ」
 それと背中側に岩の塊がたくさんあるから、動くと崩れるかもしれないから注意して。
 装甲越しに聞こえたのは珠々(ia5322)の冷静な声。
「真っ暗で何も見えぬが、おまえは‥‥そうかシノビだから支障無いのか」
 そう呟いた声は外の珠々には聞こえない。Xの指先で丸印を形作ると、もう一度コツリと拳が当てられ了解を受け取った意を伝えてきた。
 盾となる位置であった為、中央に押し寄せた大きな岩片の大半はXの背に堰き止められる形で被害を軽減していた。
「いつでも動かせる状態で待機すべきか。閉じ込められるのは性に合わないが、合図を待つとしよう」
 エネルギー温存の為に宝珠との接続を一度解除するか迷うが、周囲の安全を第一と考えるといつでも操作できる状態にしておくのが良いか。
 更に重量が加われば支える具合に抵抗の力を注がないと、前方の田朗を巻き込んで倒れ込んでしまうかもしれない。
(クロスボーンだけでも重いのに後ろの土砂や岩石も加わるとしたら、結果を想像するだけでぞっとするな)

「大丈夫でござるか主殿!?」
 からす(ia6525)の傍に控え、共に崩れ流れる土砂の只中に居た地衝。
 主を包み庇うように瞬時の自主判断をしたが、背の小さなからすが頭まで埋もれてしまう事まではどうにもできなかった。
 伸ばした腕の先に主の物であろう弓が触れる。辿った先の小さな手。
「あ、主殿ーっ!!」
 胸下まで自身も埋もれているが幸い両腕は動かせる。土砂とはいえ多くは拳大に砕けた礫片。
 主を救い出す為に片っ端から避けていく。
 頭の周囲から土を取り除かれ、硬質の手が顔を撫でて確認する感触。
「地衝か?」
「怪我は無いでござるか」
「君が守ってくれたから、埋もれただけで済んだようだね。はっはっは。頭まで埋まるとは死ぬかと思ったよ」
「拙者も土に還ってしまうかと思ったでござる」

「この姿勢で抜けるかしらね‥‥」
 背に差した大剣に両手を掛けるサーシャ(ia9980)。正面に振りかぶるしかないか。
「近くに誰か居るかしら?」
 くぅん。
 何か聞こえたような。遠くくぐもって聞こえたから大丈夫であろうか。
「キャンッ!」
 ガツンと硬い岩片を砕く感触。今度はハッキリと犬の声が聞こえた。
 今、剣で砕いた瓦礫の下だろうか。驚きというよりは注意を促すような鳴き方に聞こえたが。
「確か二匹居たわね、どっちかしら‥‥。少し待っていてくださいね。まだ私、動けないですから」
 大剣を至近に振るうというのも難儀。周囲を砕くだけ砕いて結局は手でひとつひとつ避ける事になるが。

「風巻‥‥」
 大きな岩片と岩片の隙間に埋もれ、身動きのままならぬ相棒。
 これを掘り出すのは珠々一人では時間が相当に掛かるであろう。
 片腕を差し込んで引いてみるが、挟まれ潰れてる状況ではないようだ。だが、救出できる程には隙間は大きくない。
「仕方ありません。後回しです」
 即座に合理的判断を優先する珠々。一秒一刻を争わないのなら他にすべき事を先にやる。
 自身も相棒も目的遂行の為の道具であるとの教育で染め上げられているので、この辺りの判断基準は明確である。

 力任せという感じではあるが、自身の脱出は何とかなったサーシャ。
 破壊的な方法を取ったので空中に舞う粉塵が余計にひどくなり、咳き込む。
 咳の反動で粉塵を深く吸い込んでしまった肺が痛い。
 ブロードマントの裾を掴んで顔にあてる事で遅まきながら何とか急場しのぎをするが。
(狭い閉鎖空間で無思慮に砕いたら、こんな事になるのですね‥‥私、学習しましたわ)
 さて自身はどうにかなったから、次は傍で声のした誰かの相棒を。
「大体ここね。上の岩を叩き壊すから衝撃に備えなさい」
 少々無茶を言うが相手は訓練された忍犬。例え主人の言葉でなくても言っている事の理解はできるであろう。
 鳴き声で位置を暗闇の中で確かめる。今度は息をしっかりと止めて。
 一応は衝撃の入れ方くらいは計算している。大剣の刃毀れについては考慮外。
 戦場で硬い鋼鉄鎧に叩き付けるのと対して変わらないと思えば何ら問題はない。
 救出対象への余波を考えて、真上からガツンと考えなしに突き立てるような事はせず。

「焦ると余計に疲労します。水を飲んで落ち着いて‥‥一口目は濯いで捨てるといいです」
 誰一人、予備の灯りを用意してきていなかったので。行動に多少自由が利くのは暗視で動ける珠々のみ。
 だが彼女の誘導があれば暗闇の中とはいえ他の者も充分に策を施す事は可能だ。
 脚を圧迫されて動けぬ田朗の額に滲む汗。
 力仕事は地衝に任せ、からすは落ち着いた言葉を掛けて彼が余計に力まぬよう心掛ける。

●小坑道にて
「光華姫、ご無事ですか?」
 突然訪れた状況にもおっとりとした様子の和奏(ia8807)が肩の上でしがみついていた相棒の手を握る。
 驚かなかったというより、生来の鈍さで単にまだ危機的な状況というのを飲み込むのに時間が掛かっているというか。
「道は完全に土砂で塞がっているようでやす。まずは戸野さんの手当てを‥‥」
 倒れた戸野の傍に付き添っている以心 伝助(ia9077)。
 膝上に抱きかかえた彼はぐったりとまだ意識が戻らない。微かな呼吸はあるが予断を許さない。
 このままでは何もできないので自身の外套を外して丸めて枕にして、横たえてやる。
 懐に応急手当の材はあったはずだ。頭というのは怪我の程度に比べて派手に出血しやすい。
 止血剤と包帯を手早く当てるが、なかなか出血は止まらない。
 心眼により位置を把握した和奏が光華を連れて傍に寄る。
「姫、申し訳ありませんが力を貸してくださいね。術を彼に掛けてあげて下さい」
 首筋を掠める優しい風。無論密閉された坑道の中、自然の物ではない。
「意識が戻ったっすね。無理に動かなくていいでやす」
 小坑道は非常に狭く人数が入れない為に柴丸を本坑に残してきてしまったが、無事だろうか。
 そんな想いが過ぎるが、頭を振る。賢いからきっと大丈夫であろう。
 それを考えるのは皆と合流してからだ。
「和奏さん達は見えるでやすか?」
「私は位置ぐらいしか判りませんが‥‥光華姫は暗闇の中でも見えますね」
 ならば。ふっと表情を緩める伝助。
 極限の状況といえども、できれば仕事の表情というのは他者に見られたくない。
「皆さんの居る方向はあちらです」
 他に道具も無いので手持ちの苦無で土砂の上方を突き崩す。
 右手の方に何か大きな存在を感じるが、この時点では和奏はそれは誰かのアーマーだと思う。
 サーシャがまだ自機を展開していない事は知る術も無い。数の勘定としては合っている。

●脱出への道
 田朗の救助も完了し、グリフィスがXを本格的に稼動させる。
「やれやれ、まさか初めてこいつを使うのが、土木作業になるとはな。ともあれ、これは幸いだったと考えるべきか」
 一人ごちて、苦笑するグリフィス。
 獣騎槍で突き崩した岩片をXの手を器用に動かして後方へ送り地衝が邪魔にならない位置へ運ぶ。
 まずは主人の匂いを探す柴丸の誘導に従い、小坑道を掘りあてるべく。
「この狭い中でアーマーと同時にというのは、効率が悪いですね。入口の方も同時に進めましょうか」
 苦無の当たる音の違いで、出来る限り掘りやすい位置を探す珠々。
 風巻も他の者の後に救出されて同行している。
「待て。そちらにはアヤカシが居るようだ。合流してからの方が良さそうだよ」
 弓弦を弾いたからすの声。念の為と思ったが、嬉しくない大物の反応を捕らえる。

 坑道に何も放置されていない規律の良い鉱山だった事がむしろ仇というか。
 満足な道具も無い為、時間が掛かったが何とか合流を遂げる一行。
 空気穴の無い中での重労働。そろそろ呼吸もきつくなってきたが。
 稼動時間に限界のあるアーマーをアヤカシに備える為、グリフィスとサーシャが交代する。
(多少埃っぽいけど、まだこの中の方が楽ですね)
 ミタール・プラーチィを駆り、まずは他の作業者の為の足場を作る。
 アーマーが抜けられる程の掘削は断念して、上方に抜けられる道を。
 二人とも一度アーマーケースに仕舞い込めば脱出は可能だから。
「動かないね、待ち伏せかな。地衝、いつでも構えられるように心掛ける事」

 ようやく一人這い潜れる程度に開いた抜け道。
「あっしが様子を見てきやすから、続けていてください」
 顔をぎりぎり出さぬ程度に覗いた前方。
 頭が少しぼうっとする程の空気の中に居たせいで見る幻覚かと思いたいが。
(外からの救助が来てる様子が無いのは逆に良かったかもっすね)
 退治されたはずの大蛇。誤報で無ければこれはまた新手が発生したのか。
 動かぬ様子なのもあり、一度後進し皆に偵察して見えた物を告げる。
「もう少し掘りましょう。でも出れるのは一人ずつですね」
 戸野と田朗は安全が確認されるまで出てこない事。それを確認して一人ずつ抜ける。

●阻むアヤカシを絶つ
 風巻を後ろに従え、抜け穴から飛び降りると同時に第一撃を繰り出す珠々。
 しかし待ち構えていた大蛇に有効打を与えられず、反撃を喰らう。
 続く伝助の漸刃。柴丸のクロウ。硬い鱗に流されるが、注意を向けるだけでも。
 後続の者が展開する隙を作らなくてはならない。
 地衝の目前で尾が脱出口を直撃するが、硬質化により耐える。
「危険ですから光華姫はアーマーの用意ができてから出てください」
 和奏が刀を抜いて土砂を滑り降りると同時に、続いたからすが別の方角へと。
 大蛇の攻撃は地衝が身を持ってからすを庇う。
「全武装の使用を許可する。もう少し入口側に引き付けろ、アーマー展開の場所が必要だ」
「御意」
 暴れる胴をくぐり抜け、走るからす。その背後は地衝が守る。
 周辺の破壊を厭わず暴れる大蛇のせいで舞い上がる粉塵が視界と呼吸を邪魔する。
 心眼で当たりを付けた和奏はゴーグルの保護を頼りに息を止めて刀を薙ぎ払い。
 霞む闇の中によぎる、雲陰のほのかな夕陽のごとき残影。
「グリフィスさん、私が前に行きますっ!」
 抜き放つ大剣を構え突進するサーシャ。からすが頭部に放った響鳴の矢が大蛇の動きを一瞬止める。
 硬い鱗を抉り抜け、ケースの宝珠を起動するサーシャ。ミタール・プラーチィがその勇壮な姿を現す。
 グリフィスが準備を整える間、和奏が大蛇の尾と戦い時間を稼ぐ。その傍に添い誘導する光華。
「燃え上がれ俺のオーラよ。スカルクラッシュトルネード!」
 動き出したXの気配に反射的に壁際へ飛んだ和奏。間際を抜けたXの構えた槍が大蛇の胴を捉える。
 咆哮を上げて暴れる大蛇が洞壁を叩き、パラパラと岩片が降り注ぐ。
(まだ戸野さん達が奥に‥‥)
 第二の崩落を懸念し顔を曇らせる伝助。すぐにでも連れてきた方がいいだろうか。
「ここは任せて私達は行きましょう。風巻、もしもの時は頼みます」
 同じ懸念を抱いた珠々が、声を掛けて抜け道へ戻る。伝助も暗闇で同じように動けると見たから。
「柴丸も頼むでやすよ」
 二人が動く間に突進したミタール・プラーチィが激突の勢いのままに大蛇を通路の中央へ押さえ込む。
 反対側から盾を叩き付けて固縛に加わるX。アーマー二体掛かりで怪力のアヤカシの動きを止め。
 各方から鱗の隙を貫く者達。呪力を込めた矢が、岩砕の剣が、鬼神丸の霊気を帯びた刀身が。
 格闘の末に拳を牙に捕らえさせたサーシャが強い思念を送る。
(行け‥‥っ!)
 炸裂音と共に口中から脳天へと衝撃を与えるミタール・プラーチィの拳。それが決定打となった。
 動きを鈍らせた大蛇。後は完全に瘴気へと還すのみ。

 一般人の前後を固め、抜け道より再び脱出してきた伝助と珠々。
 再び始まった崩落に間一髪。背後に転がり落ちてきた岩塊をXが止める。
「急いで入口の方へ!グリフィスさんも!」

●無事脱出のその後
「ふぅ、何とか全員無事に脱出できたようですね」
 篝火の元で停止させたアーマーから降りて息を吐くサーシャ。
 いい訓練にはなったが、ハードだった。
 灯りの元で見れば全員粉塵まみれ。
 戸野と田朗を彼らの仲間に預け、自分達の傷も手当てを受ける。
 真夜中であるが無事を信じて、湯を沸かして待っていてくれたようだ。
 落ち着いてみれば、冷えが身体を覆う。
 すぐに浴びて浸かりたいところだが、その前に坑道の現状を報告すべきか。
「また、おそらく先日と同じアヤカシが発生してたんっすよね‥‥」
 伝助の言葉に一同の顔色は微かに沈む。もしも再び発生すれば同じ事態を招く。
 アヤカシが沸く事は誰にも止められない。
 対処として常に討伐の者を待機させておくにしても。今回は運が良かったのだ。
 突然の遭遇でありながら誰も喰らわれる事が無かったのだから。

 第一坑の放棄。それは戸野の結論を待たずして確定となった。
「居たのは同じ地点だ。封鎖すれば、そう簡単には奴も出てこれないだろうさ」
 慰みにしかならないかもしれないがと思いながらも、グリフィスが告げる。
 自分達が土中に居た間、大蛇は自ら突き進んでくる事はなかったから。
「それも最後まで手伝ってくぜ。じゃないと安心して帰れないからな」
 胸にドクロの描かれた頼もしい鋼鉄の相棒を示して浮かべる微笑み。
 舞台は地の中であろうとも、矜持にかけて最後までやり遂げて見せよう。