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■オープニング本文 「ああ〜、もう。大丈夫っていうから留守番任せたのに〜」 神楽の都、とある小路に面した小さな一軒家。 三つ山のパンが描かれた看板に小さくジルベリア文字でマリアベーカリーと書かれている。 マリア=コールバッハという名の婦人と一人息子のレイトが二人でこじんまりと営業している。父親のダンは飛空船の機関士をしており、年中留守がち。 扉が勢いよく開き、看板と同じ刺繍が胸に施されたエプロン姿の男の子を抱えて、白いコートの女性がへたりこんで深呼吸している。 二人とも煤だらけ。 「はぁー。空気が美味しい……」 戻ると冷えきった店内は、パン焼き竈の中も狭い厨房も煤だらけの惨事である。 「ママが焼いたパンが朝一番で売り切れちゃったから。足さなきゃと思って……」 「何をどうしたら……パン焦がしただけでこうなるの……」 賢明に弁明されるが、意味が判らない。 一生懸命頑張ったという熱意は伝わるが肝心の何をどうしての手順の説明が要領を得ない。 だ、か、ら。一人でやるのは十年早いと厳禁していたのだが。 「だって、毎日見てるし。できると思ったんだもの」 「私のいつもやってる手順、ちゃんと言えるかしら」 「まずおはようございますと厨房器具さん達に挨拶して、それから手を洗って〜」 誰がそこから言えと。と怒鳴りたい気分は我慢して。 「で?」 「〜〜〜〜して、どすんばしんとテーブルに叩きつけて丸めて竈に入れたら、薪を投げ込んで着火!」 「ちっがーう!」 パン種を入れる場所に一緒に薪入れて燃やしてどうするのよ。 それと、粉を混ぜて練ったのすぐ焼いたってパンは出来上がらないのよ。ちゃんと寝かせて発酵させないと美味しく膨らまないわ。 「すぐ変だと思わなかったの!?」 「時計の砂が全部落ちるまで絶対開けちゃいけないってママが」 厨房にある大きな砂時計。場所は取るし無骨なデザインも戴けないが、パンの焼き加減にちょうどいいサイズだったので重宝していた。 よくよく更に追求してみると、途中でぶつけて倒して、気が付いて起こした時間までどのくらい経ったのやら。 「お客さんが来たから、急いで店に出てごめんなさいして……」 常連の奥様の名前を挙げた。とっても話好きの。 たぶん相当長い時間そこでお喋りに付き合わされた事だろう。 「でね、釜の扉を開けたら」 「判ったわ。ところでジョンは?」 飼っている純白の天儀猫の姿が見えない。 「探してくる。寝室かな?」 「ちょっと待っ……」 煤だらけの格好のまま、やめて!? マリアの願いはむなしく、襟首を捕まえるより先に行ってしまった。 案の定、ベッドの上に下に洋服箪笥の中に、所構わず潜り込んで。 ぷちん。 堪忍袋の尾が切れたマリアは、掃除が終わるまで帰ってくるなと息子を外に放り出した。 もちろん、ちゃんと暖かい格好に着替えさせてから。 ◆ 「ジョン、ジョン何処に行ったの〜?あ、居たっ!」 「ん、レイト。やっぱり君のとこの猫だったのか」 綺麗な白い毛並みを煤だらけの猫が通りで顔なじみの開拓者にじゃれついていた。 「そうか。ママの居ない間にパンを焼こうとして……」 マリアの苦労を考えると笑っちゃいけないのだろうが、レイトの失敗話を聞いて、その状況を想像するとつい微笑ましくなってしまう。 「でね……」 明日はパパとママの結婚記念日。 今年はちょうどパパの休暇が一致して家族と過ごせる。 「ママには明日も休んで貰って、ゆっくり二人でデートしてきてよと言うつもりだったんだ」 今日のお出かけは、パパへのプレゼント選びの為。 「ママ、ゆーじゅーふだんだからね。朝から探しに行かないと」 誰に聞いて覚えたのか、難しい言葉を得意げに使うレイト。 「でも今日、僕が大失敗しちゃったから……」 そのプランは許して貰えなさそうな気がした。 パパもママもいつも忙しいんだから、記念日くらいさ……。 「ねえ、お願い!明日だけだから!」 お店、手伝って貰えないかな。それと、帰ってきた時に喜んで貰えそうな物を用意したいんだ。 パンかケーキがいいかなと思うんだけど……でも僕一人だと。 「いいよ。じゃあ、今からママにお願いに、一緒に行こうか」 「ほんと!?やったあっ!」 営業用のパンの仕込みからなら、今夜のうちから始めないとね。 そこへまた一人、別の顔見知りの開拓者が通り掛かる。 「あら、パン屋のレイト君ではないですか」 「こんにちは!ねえ、明日ね――」 「私も混ぜて貰いましょうか。一日パン屋さんとか楽しそうですよね」 「うん、楽しいよ♪」 「手作り料理のプレゼントですか……そうですね、作り方なら私も教えられますよ」 顔馴染みの開拓者と一緒に家へと帰ったレイト。 マリアは最初はそんな申し訳ないと固辞していたが、並ぶ笑顔の説得にほだされて。 「レイト君の事はご安心下さい。私達にお任せを」 |
■参加者一覧
ラヴィ・ダリエ(ia9738)
15歳・女・巫
十野間 月与(ib0343)
22歳・女・サ
エレイン・F・クランツ(ib3909)
13歳・男・騎
フォルカ(ib4243)
26歳・男・吟
戸隠 菫(ib9794)
19歳・女・武
佐藤 仁八(ic0168)
34歳・男・志 |
■リプレイ本文 「マリアさんのいつもの味は守らないとね」 「あらやだ、レシピなんてそんなちゃんとした物ないんだけど」 「お店の秘密……になっちゃいますかしら?」 「そんなの全然いいのよ。うちは何も特別な事してる訳じゃないわ」 帰ってきた夫にレイトを預け、先に湯屋へ向かわせるのに合わせ。 軽い打ち合わせを済ませた後、翌朝開店準備の刻限に店で集合を約束してひとまずの解散。 「さて、俺達は今のうちに買える物を近所で仕入れておくか。チーズと酢と……人参と苺か?」 「ベーコンも安ければ……それとバターもっ」 「卵はぁ量も要るってんなら朝駆けに買わねえとだな。今頃その辺の小路でおでんの種になってらあ」 惣菜に使う分と、レイトの手作りプレゼントに使う材料。 エレイン・F・クランツ(ib3909)の手にあるのは、大人達が話し合ってる間に二人で描いた夢のパン像の紙。 「どれどれ、さっきはあたしらぁ背中向けてたから良く見てねえんだ」 「俺達の図体でパパとママの目からしっかりと隠してたからな」 佐藤 仁八(ic0168)とフォルカ(ib4243)が両脇から顔を近づける。 「うわっ。二人して覗き込んだら僕の手元が真っ暗になっちゃいますよ」 顔を寄せ合う影法師に、夕餉の買い物籠を提げて家路を急ぐ婦人が微笑ましげに頬を緩めて過ぎる。 「絵心あるじゃあねえか。この捩れたお月様みてえのがクロワッサンってえんだな。こいつぁ簡単に作れるのかい」 「うーん、生地を作るのが難しいし。気をつけないと普通のパンより壊れ易いから。僕も自信ないですけど……」 綺麗に掃除された厨房でマリアを囲むのは、パンの種作りに挑もうと残った女性陣。 持参の割烹着に着替えた戸隠 菫(ib9794)、フリルたっぷりの少女的なエプロンに身を包んだ十野間 月与(ib0343)。 ラヴィ(ia9738)は体格ぴったりのマリアベーカリーのエプロン姿。予備は一着しかなく、マリアとレイトのサイズのみ。 マリアの作るパンは至ってシンプルで、基礎ができてる彼女達に必要な知識といえば水の量と寝かす時間、種をこねる加減くらいか。 それと焼き方。レイトのような大失敗は問題外として、火の加減と入れるタイミング、焼き上がりまでの正確な時間。 説明を受けてハードなパンとソフトなパンを手本通りに作りながら、どちらかといえばお喋りな時間になるのは顔見知りならでは。 「それにしてもラヴィちゃんは何着せても似合うわね〜。同じエプロンのはずなのにすごく可愛らしいわ」 「マリア様の方が可愛いですよ。ね、ね、明日デートでドレスアップするんでしょう?楽しみですわ」 「でもねぇ、まだ何を着て行くか迷ってて……」 「そうだ。マリアさんこれから湯屋に行くんだよね。ごめんね、お時間取って貰って」 留守番はあたい達が。帰ってくるまでに残りの仕込みを済ませてしまうから、と。請け負う月与。 面倒見、仕切りには手馴れた姐御肌がここでも顔を出す。 放っておくとうっかり時間を過ごしてしまうあたり、レイトのそそっかしさは母親譲りかなと思わないでもない。 「じゃ、悪いけど頼むわね。助かるわ、本当」 「ほらほら、早く行かないと旦那さん達と入れ違いになっちゃうよ」 「さあて。それじゃ私はロングロールを担当しようかな。ラヴィさん、ラウンドバゲットお願いしていい?」 「ええ。こちらは伸ばしたらブチっと切れるくらいで。あまり長い時間こね過ぎない方がいいのですよね」 どちらもバターや油分を使わない。濃厚な味の惣菜を載せる事が多く、生地は塩加減も少なめなのがマリアの味。 基本のパンを買う客も単独で食卓に載せるより他の手料理と合わせやすいのを好んで通うのが主な筋だった。 菫とラヴィが作る間に。月与は椅子を作業台に引き寄せ、レイトの為に手帳に丁寧で判りやすい絵入りのレシピを作成する。 「明日、卵安いといいなぁ」 「あのお兄さん、一度にたくさん買うと結構おまけしてくれるよ。店屋じゃないとそんなに買っても使い切れないけどね」 ●パン屋さんの朝 「よっ、すっきりした顔してるなあ。ちゃんと早起きできるたあ偉えな!」 顔を合わすなり頭をわしゃっと撫でた仁八を、レイトが誇らしげな顔で見上げる。 反対の腕には朝市で揃えてきた具材を詰めた大きな布袋を担いで。 「今日一日はレイトが店長だ。頑張れよ」 「パパとママはどうした?」 「寝室でまだママの服と飾りを選んでるよ。大丈夫かなあ、朝一番の開演を見に行くって言ってたけど」 それを聞いて思案する菫。 「あたし達、そっちも手伝った方がいいのかな?月与さんどう思う?」 「ふふ、お邪魔になるから遠慮しとこうか。旦那様の見立てで決まるよ、きっと」 開店前の準備は慌しい。まずは厨房におはようございます!と元気良くレイトに倣って。 パン焼き竈の火入れ。そう、此処からちゃんと覚えて貰わないと。 「いきなりお店の仕事全部きちんとやろうって気負っても無理だしさ。ひとつひとつ確実に覚えていこうね」 「うんっ!」 月与が貸してくれた手帳に、フォルカがやっている作業をしっかりと書き取る。 薪を何処にどれくらい。種火の点け方。筒の吹き方、いざ真剣に覚えようと思ったら事は細かい。 「火加減が違ったら砂時計の正確な時の刻みも意味が無くなるから……パン種の方はどうです?ラヴィさん」 「はい、こちらの準備も大丈夫ですよ。もう窯に入れられる状態に仕上がっていますわ」 飾り気の無い棚に幾段にも並んだ鉄のトレイから微かに湿り気の残る布を一枚ずつ丁寧に外していく。 熱した竈の内棚に第一弾を移し終えたら、今度は惣菜の支度。手際良く皆の手が忙しく動く。 「ジョンも起きてきたんだね。此処でうろうろしてたら誰かに尻尾を踏まれちゃうよ?」 鼻梁をひくつかせる白い小さな身体を抱き上げて、店の方へと出ていくエレイン。 そこには懐手を組んだ仁八が所在なげにしていた。 ジルベリア風の服とブーツも持ってきたのだが、レイトに言わせればお兄ちゃんはいつもの格好が似合うと。 「看板猫も来たか。外で一緒に客寄せなんて洒落込むのはどうさねぇ」 ふみゃあと欠伸混じりの一声。エレインの温かな腕に鼻を埋められてしまった。 ようやく外出衣装も定まり睦まじく腕を組んで出掛ける夫妻を見送って。 「よし、焼き上がる時間だね。レイト君開けてみようか」 あれもよし、これもよしと一個ずつ自分の準備を確認して。大丈夫だよねと菫の顔を見上げ。鉄の扉を慎重に開けるレイト。 香ばしく焼き上がったパンの匂いが辺り一面に満ちた。 「この調子で昼まで売れ加減を見ながら焼き続ければいいかな。さ、大急ぎで惣菜載せて、お店開けるよ〜」 ●商売繁盛! 「おう、ちっと寄ってってくんねえ。いやこの子が手前で店番してな、結婚記念日に親御さんを休ませてやりてえってんだ」 「えっ、ちょっ、やめてよ仁八お兄ちゃん。恥ずかしいよ!」 「なあに親孝行の感心な話じゃねえか。何にも恥ずかしがるような事ぁねえ」 前の通りで大声で吹聴する仁八の袖を引っ張るレイトの顔は真っ赤。 「客寄せてのぁ、一に威勢で二に笑顔、三四がなくて五に世辞だ。腹から声出せ、腹から」 「う、うん。だからお願い!その話は!」 「兄貴っ、これから一仕事かい。どうでぇ、焼き立ての美味ぇパンなんて。スッカスカじゃねえ腹にしっかり収まるマリアベーカリーのパンだ。これまた美味ぇ特製の惣菜も乗せてお手頃価格!」 「こんがりソーセージが丸々一本!たっぷりのスクランブルエッグ!ジャガイモサラダにはチーズも入っているよ!」 寒空の下、愛想良く声を張り上げる大人と子供。仁八の宣伝も相まって普段は足早に通り過ぎる者もちょっと覗いてみようかと足を店内に向ける。 昼飯時を大分下る頃合までは表も奥も息をついて腰を休める暇もない繁盛っぷりであった。 「厨房も落ち着きましたし、レイト様のプレゼント作りも始めましょうか。作業台はこちら側を使って大丈夫ですよ」 「店番はこのままあたしとエレイン君で。ジャガイモチーズが売り切れたから一皿お願いできるかな」 「今出来た所だ。パンの方はもう種が無い。あれほど作ったのにな」 「うーん、いつも来る人の分は足りるんじゃないかな。見込みより売れたのは惣菜パンの方だし」 「ジョンはどうしてる?」 「さっきふらりとお客さんと一緒に出ていっちゃった」 「そうか」 素っ気無い返答とは裏腹に。帰ってきた頃合にでもまた好物を用意しておいてやろうとフォルカは頬を緩める。 先の食事時は忙しなくて姿を傍で眺めている暇も無いのが残念だった。 「クロワッサンが上手く焼きあがってるといいな、レイト」 「お姉ちゃん達が作ってくれたんだから絶対大丈夫だよ!……僕が壊さなければ」 「デコレーションは落ち着いて、ね♪可愛らしく飾りましょうね」 「うん!」 ラヴィと月与が傍に付き添って。大ぶりのクロワッサンに優しく包丁を入れ、ほどよい固さになったクリームを絞り。 拠り選んだ粒の苺を綺麗に並べる手つきを見守り。 「同じ苺で少量ですけどジャムソースを作ってみました。お皿にメッセージを書いてみるのは如何でしょうか」 パパ、ママ、おめで、とう。レイトの字が皿の長さに収まらなくて途中で曲がってしまったけれど。 「フォルカさん、ジョンが帰ってきましたよ〜♪」 店からエレインの声が。仁八と部屋で色紙や花で飾り付けをしていたフォルカがいそいそと厨房に戻りミルクティを温める。 匂いに誘われて足元に身体を摺り寄せ纏わりつかれ、頬の緩みは止められない。 「ジョン、できたぞ」 ジョン用に確保してあったパンの端切れを浸し、しゃがんで差し出す。 (撫でてもいいだろうか、いや怒るかな) 大男の葛藤などお構いなしに食事に没頭する姿に、そろそろと手を伸ばす。 手を置いた瞬間びくりと反応した背中。しかしそのまま気に留めぬらしい様子に恐る恐る撫でてみた。 ●パパとママと僕の記念日 「ただいま!」 閉店後まもなく帰ってきた二人が順番にレイトを抱き締め、息子の友に感謝の意を伝える。 「今から夕食の支度しますから是非皆様も……わぁっ、見てあなた、素敵だわ!」 花の匂いに満ちた居間のテーブルの上も華やか。壁や天井には、色とりどりの紙輪と可愛らしい型抜き。 「見事なパーティ会場だな。これは料理が位負けしそうだな」 今日は大変だったでしょうから、まあ飲み物でも先に。皆さんどうぞ身体を休めてと。 買ってきたばかりのワインとジュースの封を切り、労う夫のダン。 歓談の間に厨房で料理していたマリアがあなたと大きな声で呼ぶ。 「特別な日にソーセージや芋を焼くのは私の役割でね。失礼」 ほどなくして山盛りの串焼きにされたソーセージとジャガイモのスライスの大皿を抱えたダンが戻ってくる。 その後ろから次々とサラダやらパンやら。食器類も手早く皆の前に並べてゆくマリア。 「たいした物じゃありませんけど、よろしかったらたくさん召し上がっていってね」 レイト特製のプレゼントは閉めた店の方に置いてあり、まだ二人には秘密だ。 家族に六人の客人。袖触れ合う程の距離で囲む和やかな夕食会。 朝からレイトがどんな事をしたか、失敗ひとつなくこなせた様子を饒舌に語り。 そろそろ頃合かな、とレイトと目配せを交わす。 「実はレイト君からご夫妻に素敵なプレゼントが」 月与がそう口火を切ると、仁八とフォルカが傍らに用意していたバイオリンを手に取り、壁際に立つ 重なり合う祝福の音色が気を持たせるように長く響き。 「パパ、ママ、結婚記念日おめでとう!」 「おめでとうございます!」 女性達の拍手とバイオリンの音色の中、デコレーションされたクロワッサンの皿が登場する。 「あとね、これも」 走り戻って取ってきた花束をパパとママどっちに渡そうかと迷うレイト。 「私よりもマリアに似合うよ。素敵だ」 さりげなく息子に助け舟を出すダン。 立ち上がり花束ごとレイトを抱き締めて離さないマリア。 「ちょっとママ!苦しい!お兄ちゃんがくれたお花が潰れちゃうよ!」 「まあ、ごめんなさい!ママったらつい興奮しちゃって。皆様にはお店を手伝って戴いたのにこんなお花まで頂戴して……」 「気にすんなって。レイトだけじゃあねえ、いつも旨えパンを食わせてもらってるあたし達からの気持ちだ。受け取ってくんな」 「あたい達に大切なお店を預けてくれて、切り盛り楽しませて貰ったしねえ」 「一日パン屋さんすっごく楽しかったですよ!シアワセな匂いの中でお客様もみんないい人達ですし」 仁八の言葉をすかさず月与とエレインが後押しする。 デザートは二人で食べるのは勿体無いから皆様も、というので小さな提案。それにはレイトも大賛成。 レイトも味方に付けられては、二人も手を重ね合わせてのナイフ入れを照れながら承諾するしかなかった。 素敵な一日。たくさんの思い出と。そしてレイトには大切なメモがたくさん記された手帳が残った。 いつか彼が一人前のパン屋さんになる為に。 |